『和のフィアンセ気分で~8年後の和編~』                     ◆bwfL1IDZzI氏

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『和のフィアンセ気分で~8年後の和編~』                     ◆bwfL1IDZzI氏」(2010/01/09 (土) 14:51:10) の最新版変更点

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『和のフィアンセ気分で~8年後の和編~』 小ネタ ◆bwfL1IDZzI氏 第3局>>500~>>501 『和のフィアンセ気分で~8年後の和編~』 ――12月25日。今日はクリスマスである。  俺もこの年になってようやく、「恋人達の聖夜」を満喫する資格を得たようだ。 今日もいつもどおり仕事を終え、駅に向かって歩きながら携帯を取り出す。 数コールの後、俺の最も愛する彼女が電話に出る。 「はい、もしもし」 「あぁ、和?仕事はもう終わったか?」  電話越しの声が少しだけハイテンションになって耳に入ってくる。 「あっ、もう終わりました!」 「そうか、早いじゃん」 「ええ、だって今日はクリスマスですから。もうオフにしてもらいました」 「いいのか?」 「いいんです。アイドル雀士と言ったって、本当にアイドルじゃないんですよ?」 「あはは、そうだな」 「うふふ」  こんな他愛も無い会話がたまらなく楽しくて、いとおしい。 「それで、待ち合わせは駅前でいいかな」 「はい」 「それじゃ、また後で」  電話を切って、雪の降りしきる道を駅に向かって進む。何年ぶりかのホワイトクリスマス。 こんな日に和とデートなんて、俺はつくづく幸せ者だと思う。  何と言ったって、彼女はプロ雀士であり、テレビにも出演するアイドル雀士なのだ。 そんな和のプライベートを独り占めできるのは、世界中で俺しかいない。  駅に着くと、もうすでに和は着いていたようだった。 「ごめん、待ったか?」 「いいえ、あなたのことを考えていたので、待ったうちに入りませんよ」  そう言いながら俺だけに見せる天使の笑顔。 「そっか。じゃあ、行こうか」  手を握り合う俺と和。しかし、しばらく歩いたところで、 「ねえ、握ってる手だけ、手袋外しませんか?」と和。 「そ、そうだな」と答え、手袋を外してもう1度握り合う。 直に伝わってくる和の体温。手袋なんか無くてもへっちゃらだ。  そうこうしているうちに、目的地に着いた。細い路地の雑居ビルの地下、こぢんまりとした店内。 ここは俺と和の行きつけの店であり、また、2人の出会いの場所でもある。  扉を開けると、俺たちに気付いたマスターがコップを拭くのをやめ、何やら準備を始める。 そして何も言わず、ただちょいちょいと手招きをして、店の奥へ入っていく。  俺達も黙って付いて行くと、2人用の小さな部屋に通される。 「マスター、いつもの」 「かしこまりました」  短い会話の後、料理が出てくるまでの間、俺と和はいつも麻雀をする。マスターが気を利かせて くれて、この部屋にはいつも麻雀セットが置いてあるのだ。  2人打ち麻雀というのもなかなかオツなもので、将棋のような1対1の緊張感や、高い手が作りやすい のがなかなか気に入っている。 「ねえ、打ちましたよ」 「あ、ああすまん、和。えーと……」 「うふふ、メ・ン・チ・ン」  俺が牌の取捨に迷っていると、和は決まってこうからかってくる。まあ確かにメンチン狙いなんだが。 手を読まれるのは嫌だが、和が可愛いので何でも許してしまう。 「これでどうだ」 「残念、七対子」  また振り込んでしまった。渋々俺が点棒を出していると、ちょうどよく料理が運ばれてくる。 「よーし、今日はここまでだ」 「あっ、逃げましたね?」  ニコニコと笑う和に、俺はまたドキッとしてしまう。もう付き合って大分経つのに、いつまでたっても この笑顔にはドキドキさせられる。  食事を終えた俺達が行くのはもちろん―― 2人の夜は、まだ始まったばかりだ。

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