無題            咲×和           百合注意         ID:0dqr++wB 


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無題 咲×和 百合注意 ID:0dqr++wB氏
第1局>>93~>>98



   吹きつけてくる風が春めいた色から、薫風の初夏の色味を増してきた。
   合宿も終わり、予選まで中休みといった雰囲気漂う夕暮れ前。
   旧校舎屋上のいつもの部室の開かれた窓の側、ふたつの影が寄り添う。

   「……県予選も対戦校が決まりましたね」

   多数の学校名が記されている紙を手に、和は緊張した面持ちで呟く。

   「そうだね、原村さんはどこが手強いと思う?」

   その紙を覗き込んでいる咲が、視線を紙から和に移しつつ問う。
   近過ぎる咲の顔に、和の頬が少しだけ赤みを増す。

   「部長が言うには、龍門渕、風越女子、鶴賀学園が要注意だと…」
   「ふぅん…どんな人と闘えるのかなぁ? 楽しみだねっ」
   「…そうですね。どこと当たろうとも、全力で挑みましょう」

   強敵との闘いに臆することなく、無邪気に笑顔を浮かべる咲に
   和も追随して柔らかい笑顔を向ける。

   「原村さんと一緒なら、絶対勝ち抜けるよ!」
   「…はい。勝ちましょう」

   共に全国へ行くという夢を追うため、咲と和は改めて絆を強くした。
   「一緒に行こう! 全国へ!」
   幾度となく交わされた決意の言葉――――。
   あの雨の日から何度口にしただろうか。


   『麻雀を好きでもないあなたに……』

   『今のままの打ち方を続けるというなら…』

   『退部してもらえませんか?』

   最初の印象は一言で言えば最悪。しかし、そこから紆余曲折を経て、
   今こうしてすぐ傍にいられること。その何とも言えぬあたたかさが
   くすぐったいような嬉しいような…不可思議な感覚がふたりを包んでいた。

   窓から入ってくる風の心地良さと涼しさが、火照った頬を冷やしてくれる。
   その場から窓の外に目をやれば、主不在のロングチェアーと、日よけの
   パラソルも優しい風に吹かれて佇んでいた。

   「ところで、今日は集まりが悪いですね…?」
   「あ、会長と染谷さんは予選会会場の下見でー、優希ちゃんは
    隣町のタコス屋さんが開店するからって向かったみたい。で、京ちゃんは」
   「優希のお供……という訳ですか」
   「……うん」

   読み通りの展開にふたりは思わず顔を見合わせ吹き出してしまう。
   合宿前ではとても考えられなかった光景が繰り広げられている。
   誤解。 
              衝突。 
                            邂逅。
   様々なものを乗り越え、切っても切れない絆を形成したふたり。
   そこからさらに一歩、足を踏み出すのには時間はかからなかった。

   窓際で外を眺めながら、和はゆっくりと咲に寄りかかる。
   その様子に咲は気づき、一瞬目を丸くするもすぐに悟り、互いに身を預ける
   ように寄り添いだす。

   沈黙が続く。静かすぎて耳鳴りを感じる錯覚に陥る一歩手前で、
   和が口火を切った。

   もじっ…と居心地が悪そうに身体の位置を変えると、見つめ合う形で
   咲との視線が絡み合った。濡れたような黒さの咲の瞳に自分が写り
   込んでるのに気づくと、さあっと白い頬に紅が差した。
   そんな様子を目の当たりにさせられ、まともな精神で居られるほど咲も
   鈍感ではなかった。徐々にお互いが高まっていくのが分かる。自らの
   鼓動が耳で捉えられるほどに速まり、強まっていた。

   「……宮永さん……」
   「…原村…さん……」

   見つめ合ったままゆっくりと、互いの唇にどちらともなく口づける。
   何度目のキスか、もう数え切れないが、いつだって口づける時は
   緊張が止まらない。柔らかな感触の後に、甘い電流のような痺れが
   走り、それが脳を存分に蕩ろかせてゆく。

   ほぼ密着しているふたりの僅かな隙間を、翠の風が通り抜けて空へ消えた。

   角度を変え、高さを変え、極めて濃厚なキスは続く。

   正面で密着していると、咲の薄い胸に和の大きすぎる胸が当たり、
   そこからの熱も淫猥さに拍車をかけていく。腰に手を回し、よりいっそう
   深く抱擁し合い、窓から少し離れた部室のベッドまで歩み寄って――。


   ――――パサッ

   衣擦れの音と共に、二人の身体が白いシーツの上に新たな皺を形成する。

   舌を味わい尽くし、制服の裾から侵入する手は、それぞれの胸に達して
   狂おしく、優しく撫で合う。鼻にかかる、くぐもった嬌声が古びた部室に
   響いた。その場に似つかわしくない淫靡な音が羞恥を更に煽る。

   「……っ、 み、宮永…さん…っ 好き、です……」
   「はぁ……っ ふう…ん、 わ、わたし…も、好き…」

   接吻の合間に自然と漏れる愛おしい気持ちからの声。それがますます
   互いを惹きつける誘爆を誘う。
   ふたりは時が経つのも忘れて、愛を確かめ合った―――――。

   太陽が低い位置まで身を落とし、部室の中が橙に染まる頃、
   ようやくベッドから身を起こした和は、まどろんでいる咲の頬にキスを
   落としてから、優しく揺り起こす。

   「宮永さん、そろそろ――――」
   「ん………。もうこんな時間…?」
   「そろそろ起きないと、みなさん戻ってくるかも……」

   和の予感は3秒後に的中した。

   「たっだいま戻ったじぇー☆」
   「ヘイヘイ、戻りましたよーっと」

   片手に新作タコスを握りしめ、ハイテンションで優希が飛び込んできた。
   あとに続くはペット扱いな京太郎。手には多数の紙袋。きっと中身は
   全部タコスだろう。

   「おかえりなさい」
   「おかえり、優希ちゃん」

   何事もなかったように優希と京太郎を迎え入れるふたり。
   そして下見から戻ってきたまこと部長も加わり、
   いつもの平穏な麻雀部が戻ってきた。
   しかし、咲と和の手は、背後でしっかりと深くつながれている。
   永遠を誓った証明であるが如く…………。
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