お嬢様の妄想        衣×京太郎×一×透華                 衣の人    


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お嬢様の妄想1/3 衣×京太郎×一×透華 衣の人
第3局>>225~>>247


   「一の雰囲気が変わった気がしますわ、純と智紀はどう思います?」
    ここは龍門渕麻雀部部室、龍門渕透華は国広一がお手洗いに立った隙に、気になっていた事について井上純と沢村智紀に意見を訪ねる・・すると。
   「なぁ・・」「なんと・・」
    二人は信じられないモノでも見たかのように驚き黙り込む、そんな二人を見て透華は首を傾げた。
   「どうしたんですの二人して、もしかして気付きませんでしたの?」
   「あっ、いや、気付いてはいたが・・・まさか、本人を目の前にして言わないとは・・」
   「透華が空気を読むとは思わなかったから驚いた、私も気付いてはいたけど」
    智紀の言葉にうんうんと頷く純。
   「あ、あなた方は・・私をなんだと・・・」
    自分が空気を読めない子扱いされている事に、透華はこめかみをぴくぴくと引きつらせる、しかし。
   「ま、まあ良いですわ、私は大きな心の持ち主ですわ・・その程度では怒りませんことよ、ほほほ」
    大人の対応・・というよりは強がりで怒りを抑えた、透華は余裕の笑みを見せる。
   「おお、これも耐えたぞ」「本当に心は大きいようね・・胸は小さいけど」
   「誰が小さいですって!」
    大きい心はどこにいったのか、胸の事を言われた透華は眉を吊り上げ声を荒げて、智紀を睨みつける。
   「誰って・・・・ふっ」
    智紀は自分の胸と透華の胸を交互に見て鼻で笑う。
   「ううっ・・これは・・その・・」
    透華も智紀の胸を見て自分胸を見ると、悔しそうな表情をして段々と声が小さくなり、最終的には黙って何かを考え・・・そして。
   「私はスレンダーなのですわ、そんな無駄な脂肪はついていないだけですわ!」
    少し涙目になりながらも、透華は言い放つ・・誰でもわかる強がりを。
   「でも、純にも負けている」
    智紀の言葉が透華の胸にぐさりと突き刺さる、それでもめげない透華は純を睨みつけた。
   「純は殿方の癖に胸がありすぎるだけですわ!」
   「いや、それはさすがにどうだ・・・今回は男扱いされても、あんまり悔しくないぞ」
    明らかに負け惜しみとわかるのか、純は怒らずに哀れみの視線を透華に見た。
   「ぐぅぅぅ・・」(な、なんですの、こ、これでは私がまるで、負け惜しみを言っているみたいではありませんの!?)
    みたいではなく100%負け惜しみなのだが、透華はそれを認めることは無かった。
   「はぁぁ、そんな話していたんじゃないだろう、とにかく話を戻そうぜ」
    普段ならここで一がフォローするのだが、今は居ないので透華の様子を見かねた純が話題を元に戻す様に提案する。
   「そうだった、透華の反応が面白くてつい・・ごめん」
    笑みを浮かべ謝る智紀はあまり反省している様子には見えなかったが、透華もこれ以上胸の話を続けたくないのか。
   「そ、そうでしたわね、えっ~と、そうですわ一の話ですけど、どう思いますの?」
    純の意見に素直に乗って、話を本筋に戻した。
   「あっ~、そうだな・・・表現し難いが・・なんとなく幸せそうかな・・」
   「少しの変化・・・でも充実を感じる、何かあったと思うけど・・・」
   「そうですわね、嫌なことではないでしょうが、何があったか気になりますわ」
    それぞれで一の様子を思い出しながら、少し変化した雰囲気が何から来るのかを考える。
   「う~~ん、単純だけどよ、恋とかじゃないか?」
    特に何かしらの意見が出ないので、純は思いついた意見を口にした。
   「こ、恋ですの!?」
   「単純な、でも可能性はあるかも・・」
    驚く透華に対して、智紀は落ち着いて純の意見について考えてみる。
   「だろ、なんとなくだけど、恋人ができた後の衣に似ているっていうか・・・幸せそうな雰囲気ってやつだけど」
   「そ、そう言われましたら・・」「そんな気もする・・・」
    透華と智紀は、京太郎の話をする時の衣の様子を思い出し、その後で一の今日の様子を思い出して、頭の中で照らし合わせるとかなり似ている気がした。
   「し、しかし、それだとは一が誰かにこ、ここ、恋をしていると言うんですの!?」
    透華は焦りまくりながら、純に詰め寄り問い詰める。
   「確実って訳じゃないが」「あくまで可能性の話・・」
    純がしたのはあくまで可能性の話なのだが、透華はそれを信じきっているようだ、実は純の予想が当たっているのだが・・この三人にそれを知る術は無い。
   「あ、相手は誰ですの・・?」(は、ハギヨシは・・・ありませんわよね・・)
    まるで推理小説で犯人を捜す探偵の様に、親指の爪を噛みながらまだ見ぬ一の恋の相手を予想する透華。

   「聞いちゃいねぇな」
   「こうなると仕方ない、けど・・そこまでして考えなければならないことかしら?」
   (う~ん、もしかして・・・先を越されたからか・・いや、さすがに無いか・・)
    まさかと思いつつも疑問のままにしておけないからか、純は透華に声をかけた。
   「なあ透華さんよ」
   「・・なんですの純?」
    考え事の途中に話しかけられて、透華は不機嫌そうな表情で純を見た。
   「まさか・・自分より先に恋人ができたら許さない、とか言わないよな?」
   「えっ、そ、そんな事はあるわけ無いではありませんの!」
    突然に聞かれたからか、それとも実際にそう思っていたからか、どちらからはわからないが妙に言い訳の臭い否定をする透華。
   「なら良いんだけど、それなら別にそこまで気にする必要ないんじゃないか?」
   「で、でも、純は気になりませんの、もし・・もしもですわ、相手が変な男だったらどうしますの?」
   「そりゃ、多少は気にもなるが、あいつなら大丈夫だろう」「一なら大丈夫」
    純も智紀も気にならないわけではないが、一ならば変な相手に引っかからないだろうと思っていた。
   (こ、これでは、私がまるで一の事を信頼していないみたいじゃありませんの!、別に信頼していないわけではありませんわ、ただ心配なだけで・・ううっ・・)
    落ち着きまくっている二人を見ていると、一の事で心配している自分が信じて居ないような錯覚に陥った透華は・・考えた末。
   「そ、そうですわね、は、一が変な相手に引っかかるわけありませんわ」
   「ほぉ・・まあ、そうしてやれよ」「それがいい」
    少し無理をしながらも一を信じることにした透華、それを見て安心して胸を撫で下ろす純と智紀。
   「はぁ・・でも、恋とはそれほど良いものなのでしょうか?」
   「なんだ、まだ引っ張るのか?」
    やっと終わったと思っていた時の発言に、少しうんざりした表情で透華に訊ねる純。
   「そうではありませんわ、ただ・・その衣も凄く幸せそうですし、そ、それに一も幸せそうですから、そ、そんなに良いものですの・・そ、その私はそういう経験が・・」
   「あっ~そういうことか」
    ようするに恋をした事がないから、そこまで幸せそうにするのが良く分からない透華は純と智紀に意見を求めたのだ、だが・・・。
   「いや・・そのな、俺も良く分からないな・・・」
   「でも、純は女性の方とは沢山お付き合いしたのではなくて?」
   「はぁぁぁ、また男扱いかよ、もういいや・・そういう意味で付き合った奴は居ないぞ、透華はどうなんだよ、たとえばだけど好きなタイプとか居るのか?」
    もはや反論するのも疲れたのか純は適当に流して、逆に透華に恋愛経験を訊ねた。
   「す、好きなタイプですの、それは・・えっ~と・・と、智紀はどうですの?」
    そんな事を訊ねられるとは思っていなかったのか、透華は焦り先ほどから黙り込んでいた智紀に話を振った。
   「好きなタイプ・・・須賀京太郎」
   「な、なんですってぇ!?」「なんだとぉ!?」
    出たとしても優しいとか背の高いなどと言う、抽象的な表現が出るものと思っていた透華と純は、智紀の口から突然飛び出した個人名に驚く。
   「と、ととと、智紀、あなたなにを言っていますの!?、須賀さんは衣の恋人ですわよ!」
   「そ、そうだ、それ以前にお前恋愛に興味ないとか言ってなかったか!?」
    須賀京太郎は天江衣の恋人、それは周知の事実、何より恋愛に興味を示していなかった智紀の発言に透華と純の驚きは数倍に膨れ上がっていた。
   「別に奪う気は無い、ただ衣の幸せそうな顔を見ていると恋も良いと思えてきた、私は今まで男性にあまり興味が無かった、だから知っていて良いと思えるのは須賀京太郎だけ」
    淡々と理由を語る智紀、それを聞いて純と透華も納得した。
   「た、確かに・・そうですわね、私も家族を除けば知っているのはハギヨシと須賀さん位ですわ」
   「知っている中で須賀は良い奴だと思うが・・・」
    遊園地デートの一件で、透華も純も京太郎の評価は低くなかった、なによりも衣を喜ばせ楽しませるのが上手いというのはポイントが高いようだ。
   「あの遊園地の事も大きいけど、須賀京太郎の様な恋人が居たら楽しいと思えてくる」
   「そ、それは・・」「そうだが・・」
    須賀京太郎の様な恋人をそれぞれ思い描く、透華、純、智紀、三人の脳裏に浮んだのは偶然にも同じ光景で、
    観覧車で衣と熱いキスを交わした時の京太郎の顔、そして京太郎のキスしている相手が衣から自分に・。

   「ごめん、衣と話し込んでいたら遅くなっちゃった」「透華、純、智紀、衣と一緒におやつだぞ!」

    絶妙なタイミングで一が衣を連れて戻ってきた。
   「お、おおおお、おそかったですわね、ししし、心配したじゃありませんの」
   「そ、そそ、そうだな、待ちくたびれたぞ」
    タイミングがタイミングだけに、顔を真っ赤にさせて言葉遣いもかなり怪しくなる透華と純。
   「どうしたというのだ、透華と純は?」「さぁ、さぁ・・どうしたのかな?」
    そんな二人を見て首を傾げる衣、一は二人の態度から何かがあったと感じ取るが、なんと無く聞かないほうがいいと思い気づかないフリをした。
   「・・・・ほぉ」
    智紀も少し頬を紅く染めて静かに胸を撫で下ろしていたことには、一も衣も気付いていなかった。

    毎度の事で竹井久から部の買出しを命じられた京太郎、でも今回はいつもとは違い同行者が居た。
   「京太郎、ころちゃん家に泊まったって本当か?」
   「ああ、この前の週末な」
   「ふ~~ん」
    同行者である片岡優希は、京太郎の答えを聞いて手に持っていたタコスを齧りながら考える、京太郎が衣の家に泊まりに行ったらどうなるか・・簡単に想像できた。
   「・・・やっぱり・・じょうこう・・しまくだったじょ?」
    少し頬を染めてたどたどしい言葉だが、凄まじい質問をする優希。
   「まあな・・って言うか、今回は少しやりすぎた感があるが・・・」
    質問に答えながら状況を思い出し冷や汗をかく京太郎、興奮させた罰とは言え衣と一が精根尽きるまでしてしまった事を少し反省していた。
   「はぁぁぁ・・良いな・・だじぇ」
    艶かしく溜息をつきながら、やり過ぎるまでやれられた姿を想像し羨ましそうに呟く優希。
   「な、なぁ京太郎、その・・ここでしたいって言っちゃ・・だめか?」
   「今、ここでか・・それはちょっとな・・」
    今は人が居ないが、ここは通学路なので清澄の誰かが取り掛かる可能性もある、
その辺の草むらに隠れれば見つからない可能性もあるが、喫茶店の事もあり京太郎は外でしたいとは思わなかった。
   「やっぱりか・・はぁぁぁ残念だじぇ」
   「それに俺が一回始めると大変なのはわかっているだろう?」
    京太郎との情交を思い出せば、一人でするにしろ、誰か呼び出してするにしろ、時間がかかりこの場所で行うのが無理なら事は優希にも理解できた。
   「そうだったじぇ、仕方ないから諦めるじょ・・」
   「今度、時間を見つけてちゃんとしよう、だから・・今日はこれで我慢してくれ」
    落ち込んだ優希を慰めるために、優しく口付けをする京太郎。
   「・・今はこれで我慢するけど・・次はちゃんとお願いだじぇ・」
    キスされて少し葉機嫌が良くなった優希は、笑顔で可愛らしくお願いをする。
   「ああ、約束はちゃんと守るぜ」
   「ならよし・・うん、今日もタコスが美味いじぇ」
    情交の約束を取り付けた優希の機嫌は完全に良くなり、もっていたタコスを満足げに平らげる。
   「そう言えばころちゃん家で思い出しけど、日曜にのどちゃんがころちゃん家に遊びにいくって言っていたじょ」
   「ああっ、そういやエトペンを見せるとか衣が言っていたな」
    そんな会話をしながら、優希と京太郎は咲達の待つ部室へ向う足を速めた。

    部室での一が恋をしたかもしれない、と言う話し合いから数日後の夜。
   「はぁぁぁ・・・眠れませんわ」
    溜め息をつきながらベッドから起き上がった透華は、テラスに続くガラス戸を開けテラスに出て月を眺める。
   「はぁぁ・・」
    もう一度溜め息をついて、月を見上げれば眠れない原因である一の顔が浮かんできた。
   (純と智紀にはああいいましたけど・・・やっぱり気になりますわ)
    別に一を信頼していない訳ではない、ただ途轍もなく気になるだけの話。
   (一の恋の相手・・・私がまだ知らぬ男性ですわよね)
    本当は知っているのだが、まさか相手が京太郎だとは想像すらしない透華には、思い当たる男性など居らず・・仕方なく、曖昧なイメージで思い浮かべるが・・。
   (硬派な男性?・・それとも軟派な男?)
    あまり男性自体を知らない透華には、イメージもかなり曖昧でどれもピンと来ない。
   「はぁぁ・・そう言えば、一と殿方の話などした事もありませんでしたわ」
    三度目の溜め息をついて一との会話を思い出す透華、食べ物やファッションの話などもした、衣の事や麻雀に関してかなり話もしたが、こと恋愛・・特に異性の好みなど話した事も無く。

   「こんなことなら話しておけば良かったですわ、って何を・・今更」
    後悔先に立たず、今それを言っても無駄なのは透華にも良く分かっていた、それにたとえ話ができていたとしても。
   「できていたとしても、そのタイプが今好きな殿方とは限りませんわね、一の好むタイプは・・私と似ているのでしょうか?」
    一の異性の好みが分からない透華は、仕方なく自分の物差しで計ろうとしたが・・。
   「あ、あれ・・お、おかしいですわね?」
    透華の脳裏には好みのタイプが浮んでこない、もう一度考えてみたが今まで異性にあまり興味をしめさなかった事もあり思いつかない。
   「も、もしかして・・私は途轍もなく疎いんですの!?」
    純か智紀がこの場に居れば『何を今更』と言いそうだが、透華にはとって衝撃的な事実だった。
   「男性ですわ・・男性、とりあえず知っている男性を思い浮かべれば・・」
    知っている男性を適当思い浮かべる透華、顔見知り程度のならばかなり居たが、ある程度知っているとなる数は限られてゆき、残ったのはやはり執事のハギヨシと衣の恋人である京太郎のみ。
    ハギヨシは恋愛対象にはならないので、直ぐに外されて残ったのはただ一人。
   「須賀さん・・」
    透華が知っている中ではもっとも年が近い男性、衣の恋人で龍門渕麻雀部の全員が好印象を持っている人。
   (あの智紀を恋愛に興味を持たせて、彼みたいな人が恋人なら居たら楽しい、とまで言わせるほど・・でも)
    ふと透華の脳裏に浮かぶ疑問、それは京太郎がそれほど魅力的なのだろうかという事、だから透華は京太郎の事を真剣に考えてみた。
   「麻雀は弱いですわ、あとは・・優しくて、気が回って、衣をよく見ていて、大事にしてくれる・・・あ、あれ・・お、おかしいですわ・・」
    挙げていけば麻雀に弱い以外は悪いところはなかった、いやそれすら弱点と言っていいのか透華には分からなかった。
   (麻雀が弱ければ衣の近くには居られない、そんな考えをしていたのに・・須賀さんは弱くても衣の側に居る、私のできなかった事を・・平然とこなしてしまう殿方・・・凄い方ですわね)
    最初は悔しかったはずなのに、今はそんな悔しさも無く京太郎の凄さが身にしみて分かってきた。
   「智紀じゃありませんが、確かにあの方の様な恋人なら居たら・・」
    そして想像する透華、自分も衣の様に優しくされて大事にされ、そして衣とデートした時の様扱われて・・最後に観覧車で。
   「はぅ!?」
    最後のキスしている場面を想像した瞬間、透華は顔を真っ赤にして想像を止めて・・いや正確には思考がフリーズしたと言うべきか。
   「・・・・・・あっ」
    とは言え今回は遊園地の時の様に、長時間呆けては居らず直ぐに意識を取り戻した。
   「はぁぁぁ・・私は何を考えていますの、須賀さんは・・衣の恋人ですわよ」
    溜め息をついて透華は空を・・月を見上げた、そこに浮ぶのは仲睦まじい京太郎と衣の姿だった。
   「う、羨ましくなんて・・ありません・・わよ・・・」
    口から出た言葉は強がりで、本音の反対である事は透華自身が良くわかっていた。
    でも一つ分からないのは、羨ましくなっているのは・・。
   (衣にあんな笑顔を見せてくれる須賀さんが、それとも須賀さんに優しくしてもられる衣か・・って)
   「だ、だから私は・・羨ましくなんて・・」
    否定するのも空しくなり途中で言葉を止める透華、それでようやく気がついた。
   「たぶん・・・どちらも羨ましいんですわ・・」
    最初は衣の笑顔が見られる京太郎の立場が羨ましかった透華、でも今はどちらの立場も羨ましくなっていた。
   「でも、どうしようもありませんわね」
    何かをすれば衣を悲しませるかもしれない、それは透華が一番嫌いな行為、今透華にできることがあるとすれば。
   「衣と須賀さんを見守るくらいですわね・・・」
    それが透華の思いつく中で出来る事・・・後はせいぜい二人のデート費用を出す位。
   「う~~~ん、悩むのは止めですわ・・・」
    背筋を伸ばして、再び月夜を見上げる透華・・・しかし、気持ちが完全に整理がつくことはなくもやもやとした心が晴れわたる事はない。
   「ふぅ、お天気みたいに簡単に晴れては頂けませんのね・・しかたありませんから、部屋に・・うん?」
    部屋に戻ろうとした矢先、庭で動く影に透華の目は釘付けになる。
   「えっ・・あ、あれは・・は、一!?」
    遠目だが庭を走ってゆくのは一で間違い無かった。
   「は、一・・どうして、このような時間に・・・ま、まさか、あ、逢引ですの!?」

    自分の恋愛について考えていて、すっかり忘れてしまっていたが、透華は元々一の事で眠れずこのテラスまで態々出てきたのだ。
   「こ、こうしては居られませんわ!」
    これから一が恋人に会いに行くと考えると、透華は落ち込んでいた事など忘れ、一の後を追うためにテラスから部屋に・・そして部屋から廊下に飛び出した。

    幸いと言うべきか、龍門渕家の庭は広く木など障害物があり、透華は一に気付かれずに後をつける事に成功していた、だが透華は微妙な表情で・・木の陰に隠れていた。
   (わ、私は何をしているのかしら・・)
    勢いで部屋から飛び出したが、冷静に自分の姿を見れば寝巻きのまま、ここで誰かに見つかれば変人扱いはされないだろうが、間違えなく心配はされるだろう。
   (こ、こんなところを純と智紀に見られたらなんていわれるか・・・)
    透華の脳裏に呆れて溜め息をつく純と智紀が思い浮かぶ。
   「ち、違いますわ、これは決して興味本意と言うわけではなくて・・・そう、こ、この様な時間帯に婦女子を呼び付けるのは、如何なものなのか・・・そうですわ、会って注意しないといけませんし・・」
   (そのついでに相手が確認できてしまうのは、仕方が無いことですわ!)
    誰かに聞かれたり指摘されたりした訳でもないのに、言い訳を並べ自分を正当化する透華。
   「で、ですから仕方ないのですわ・・・これは不足の事態・・あっ、い、いけませんわ」
    そんな事をしている間に一との距離が開いてしまい、透華は慌てて後を追う。
   「これならまだ追いつけますは・・」
    今は夜で人も居らず、今日は月が出ているために比較的明るいので、透華は何とか一を追うことができた。
   (でも、おかしいですわ、裏口に行くのなら方向が違いますわね)
    裏口から出て誰かに会いに行くものと思っていた透華、だが一が進むのは裏口ではない方向、その先にあるのは・・ある人が住む建物。
   (そんな・・まさかそんなことはありませんわ・・)
    浮んだ考えを否定しながら、透華は一に気付かれない様に必死に後をつけた・・・そして。
   「そ、そんな・・・」
    一のたどり着いた場所を見て透華は驚愕する、そこに在ったのは間違えなく龍門渕別館・・衣の住む城だった。
   「ど、どういうことですの・・・一は逢引をしにきた訳では?・・それともここでは無い?」
    混乱する透華をよそに、つけられているとも知らない一はゆっくりと扉を開けて屋敷の中に入っていった。
   「やっ、やはりここで間違いないのですわ、でも・・それなら何故、はぁ!・・ま、まさか!?」
    唐突に透華の脳裏に浮かんだ事、それは。

    衣の部屋、思いつめた表情で衣に近づく一。
   「ごめん・・ボク・・・ボクは衣の事が大好きなんだ!」
   「衣も、一が好きだぞ」
    一の言葉に、衣は普通に答えるが一はゆっくりと首を横に振る。
   「違うよ、ボクは友達としてじゃなくて、衣の恋人になりたいんだよ・・お願いだよ、ボクを愛してよ・・」
    目を潤ませて衣に詰め寄り懇願する一、そんな一の態度に衣は焦りを隠せない。
   「だ、駄目だ・・衣には京太郎という恋人が・・・」
    一に詰め寄られてベッドに倒れこんだ衣は逃げ場も無く。
   「だ・・だめだ、あっ・・」
    抵抗する力が無いのか、それとも本心では抵抗する気が起こらなかったのか、衣の口だけの抵抗もむなしく・・・部屋に飾られていた椿の花がぽとりと落ちた。

   「って、な、何を想像していますの私は!」
    自分のありえない妄想に思わず声を荒げる透華。
   「あ、ありまえませんわ、それなら一が、あれほど衣と須賀さんの事を祝福したりはしないはずですし、そ・・それに一がもし女性で迫るなら・・わ、私のハズ・・」
    麻雀部の部員の中で、一と一番仲がいいのは自分だ・・そんな思いが透華の中にあった。
   「って、な、何言っていますの・・私は、こ・・ここで考えていても仕方ありませんわ、中に入りましょう」
    このままここで変な妄想に耽っていてもしかたないと思い、透華は音を立てない様にゆっくりと扉を開けて屋敷に入った。

    衣の部屋の前で戸に耳を当てて中の様子を窺う透華。
   「・・・何も聞こえませんわね」
    部屋の中は特に騒がしくないのか、何も聞こえてこなかった。
   「・・か、確認ですわ・・念のために・・」
    部屋の戸を少し開けて、透華は中を覗きこむが・・動くものはおろか人の気配も無く音も無く、あるのはただ静寂のみ。
   「異常無しですわ、ここに居ないとなると、一はいったい・・」
    戸をゆっくりと閉めて一が何処にいるのか考える透華。
   「この屋敷に居るのは、衣以外ですと・・・まさかハギヨシに・・はありませんわね」
    一がハギヨシに告白している姿は思い浮かばず、透華はすぐさま自分でその考えを否定した、そして再び考える。
   「それでは、誰に会いにきたのでしょうか・・・あっ!」
    思考を巡らせていると、透華はハギヨシに報告された事を思い出した。
   「そうですわ、確か今日は須賀さんが泊まっていましたわね」
    何度も泊まりに来ている上、今日は一の事で頭がいっぱいだったこともあり、すっかり忘れていた透華。
   「挨拶もできていませんわ、駄目ですわね・・・うん、須賀さん?」
    忙しかったのもあるが、客人に挨拶を忘れてしまった事を反省する透華、だが京太郎の事を考えていると透華はある可能性に気がついた。
   「ま、まさか・・は、一のあ、逢引の相手は・・」
    そんな可能性が透華の脳裏に新たな妄想を生んだ。

   「須賀君、やっぱり駄目だよこんな事・・止めない?」
    数多くあるゲストルームの一室で、一は肩を震わせながら提案するが、ベッドに腰掛けた京太郎は不敵に笑った。
   「駄目ですよ、国広さんが言ったんでしょ・・衣に酷い事しない代わりに、俺を満足させてくれるって・・ねぇ!」
    一の言葉を信じてすっかりやる気になっている京太郎は、一の手を引いてそのままベッドに押し倒す。
   「あっ・・だ、駄目・・だよ、す、須賀君・・こんな事衣にしれたら・・」
    自分が提案した事とは言え、事の重大さを感じ取り一は止めるように京太郎に懇願するが。
   「良いんですよ、いやなら止めても・・ただ、それならいまからここに衣を呼んで・・」
    あえて言葉は伏せる京太郎、でもそれが何を意味するのか一には分かっていた。
   「そ、そんなのだめ、お願いだよ、衣には優しくしてあげで、そんな事をしないであげて・・ボクが衣の身代わりになるから」
    止めても無駄だと、あるいは止めることはできても、今自分も向けられている欲望の矛先が衣に向くと理解した一は、抗うのを止めた。
   「そ、その・・は、初めてだからや、優しく・」
   「一」
   「あっ・・」
    京太郎に名前を呼ばれ体を大きく震わせた一は、その言葉が京太郎の求めているものとは違うことに気付く、下半身に手を伸ばして下着を脱ぎ捨て。
   「うっ・・ううっ」
    少し躊躇しながら、足を開いて何者にも進入をゆるしていない乙女のもっとも大切な部分を京太郎の前に晒して・・一はお願いを口にした。
   「ぼ・・ボクの処女を奪って、ボロボロに・・お、おか・・犯してください・・」
    一の涙ながらのお願いに満足げな様子の京太郎。
   「ああ、そうさせてもらうよ・・さぁ、せいぜい悲鳴を上げてくれ!」
   「・・・い、痛っ!!!」
    一の悲痛な叫びが部屋に響き、花瓶に挿されていた椿の花がぽとりと落ちた。

   「・・・・・」
    自分の妄想ではあるが、あまりの光景に顔を真っ赤にさせ黙り込んでしまう透華、だが・・すぐにその矛盾点に気付く。
   「殿方は狼と申しますが・・・須賀さんはそこまで鬼畜ではないでしょう、そんな方なら遊園地デートの時にあんなに優しく出来るとは思えませんわ」
    透華にしてみれば、あの遊園地デートの時の京太郎のイメージが強いのか、それほどの鬼畜な所業が京太郎にできるとは思えなかった。
   「とにかく、須賀さんの泊まっている部屋に行ってみれば、何かわかるかもしれませんわ」
    そもそも今は一が京太郎に会いに行った確証がある訳でもなく、確認のために透華はハギヨシに聞いていた京太郎が泊まっているゲストルームに向けて歩き出した。

   「ここ・・ですわね」
    京太郎の泊まるゲストルーム、その前についた透華は少し扉を開けて部屋の中を覗きこむ、すると。
   「あっ・・きょ、京太郎君・・おっきいのが・・」
   「一が・・締め付けるから・・」
    ベッドの上で情交を交わす、京太郎と一の姿が視界に飛び込んできた。
   「なぁ・・・」
    手で口を押さえ込んで必死に声を押し殺す透華。
   (一と・・須賀さんが、激しく体を擦り合わせて、こ、これが男女のま・・交わりですの?)
    目の前で繰り広げられるのは透華の妄想していた行為、だがそれは透華が妄想していた甘いひと時とは違い激しい肉と肉、性と性のぶつかり合い、どちらかと言えば最後に妄想した、凌辱の場面に近い印象すら受けた。
   「ひゃぁぁぁ!」
    でも一は嫌そうな表情も苦痛の声も上げていない、言い表すならばどちらも歓喜、本当に好きな相手と交わる喜びに溢れていた。
   (無理やり・・ではありませんわ、今までの一の態度も考えますと・・まさか!?)
    今日までの一の態度、そして今目の前で繰り広げられている状況、それら諸々の事情から透華の脳裏に浮かんだ答えは。

   「すみません、国広さん・・こんな事頼んじゃって」
    ベッドに腰掛ける一に謝る京太郎は、本当にすまなそうな顔をしていた。 
   「そんなに謝らないで須賀君、その・・須賀君もやっぱり男の子だから仕方ないよ」
    一は苦笑しながら京太郎の股間の膨らみを見て、恥ずかしそうに視線を逸らす。
   「でも俺は・・衣って言う・」
   「それは言わないで・・お願い!」
    京太郎の言葉を制止する一、その目は友と読んだ人物を裏切っているからか切ない・・悲しい色をしていた。
   「すみません・・」
   「ううん、須賀君は悪くないよ、ボクはね・・衣の代わりなんだ、衣とはこう言う行為するのは早いでしょ、でも・・やっぱり須賀君も年頃の男の子だから、恋人が居るのに我慢はつらいでしょう・・だから」
    一は立ち上がると、着ている物を全て脱ぎ捨てて京太郎に裸体を晒す。
   「国広さん」
   「一って・・衣が須賀君とできるまでの間で良いから、お願い・・今は、今だけは衣の代わりに恋人として扱って、一って名前で呼んで」
    多くは望めない立場にある一のあまりに切ないすぎる懇願、京太郎もそれに理解を示して聞き入れる。
   「わかりました・・・一」
   「あっ・・」
    京太郎に名前を呼ばれた瞬間、一の目が潤み、頬が染まり、心臓が大きく脈打ち、喜びが全身に広がる、だが。
   (でも・・これもいつかは衣に向いて・・ボクには・・)
    一にはそれが一時的なものだと理解できた、理解できたからこそ・・・喜びの分切なさが溢れてくる、だからそれを誤魔化すために・・・目の前の大好きな人に、眼を潤ませて見上げながら短いお願いを口にする。
   「抱いて・・」
   「一!」
    そんな気持ちがわかっているのか、それとも一のお願いする表情に我慢が聞かなくなったのか、京太郎は一の名を叫びベッドに押し倒した。
   「するぞ・・一」
   「う・・うん、優しくしてね・・」
   「ああ、約束する」
    優しい言葉を囁きながら、京太郎は唇を重ねようとした・・・が。
   「だ、駄目・・キスは・・駄目」
   「キスはされるのは嫌ですか?」
    京太郎の問いに首を横に振って否定する一、一は京太郎とのキスを嫌がっている訳では無い・・ただ、その心底に眠る感情を押し殺そうと必死だった。
   「したい・・けど、したらきっと我慢できなくなるから・・」

   「そう悲しそうに呟く一の顔を見ていた京太郎は我慢できなくなり、無理やり唇を奪う『あっ、だめ・・京太郎君』口では抵抗するものの実質の抵抗は皆無、されるがまま受け入れてしまう一・」


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