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白銀的な考え方⑤里見臨時総理は何を好きにしたのか」(2016/09/14 (水) 22:00:22) の最新版変更点

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&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) *里見臨時総理は何を好きにしたのか ※当項目はネタバレ項目です。ネタバレが苦にならない方以外はシン・ゴジラ本編鑑賞まで閲覧を控えることをお勧めします。   シン・ゴジラにおける里見祐介農林水産大臣。 どっかで聞いた声だと思ったら、ウルトラマンガイアの千葉参謀でございました。 初見では特に千葉参謀を意識しなかったものの、言われてみればそっくりで、ガイア放送から15年以上が経過したことを思わせる。 &bold(){これから書く白銀の里見農水大臣に対する考察は、妄想全開である。} 妄想全開の考察を書きたくなるくらい考えてみたくなるキャラだ、ということで一つご理解いただきたい。 白銀は、里見臨時総理は最後の大活躍がなかったとしても、無能キャラだ、とは白銀は考えなかったと思う。 創作ものでは、しばしばおべんちゃらで上に上がったような無能キャラがトップとか大臣の座に居座り、主人公とかの障害となったり、引き立て役にされる。 だが、シン・ゴジラのリアルさならありがちな無能大臣はないと思うのだ。 物語の盛り立て役として、噛ませ犬的無能キャラをおくこと自体は見せ方の一つだが、決してそれはリアルではない。リアルを追求したシン・ゴジラの作風にも合わないだろう。 (GDWにおいても、ただやられるための雑魚はGma氏が最も嫌う存在の一つである。) 他方、アニメ界で男を上げた無能キャラとしては、[[HELLSING>http://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1981.html]]の[[シェルビー・M・ペンウッド卿>http://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1201.html]]がいる。 「家柄だけで海軍中将にまで出世してしまった」と自覚していつつも、だからこそ最後の最後まで命がけで使命を全うしたその生き様は多くの人に感銘を与えている。 一部では「世界一カッコイイ無能」とまで言われているが、&bold(){里見の活躍にペンウッド卿を思い浮かべた人はそれなりにいるんじゃないだろうか。}(検索してみたところ実際にいた) ペンウッドが本当に無能だったのか?という疑問はあるところだが、あえて無能と呼ぶのもアニメ民によるある種の敬意だと思う。 里見臨時総理はどんな考えを持っていたのだろうか。 全て白銀の妄想である。 里見臨時総理は、タバ作戦までは外遊中で不在、戻ってきてみれば内閣は閣僚の多数が死亡。 そして、半ば押し付けられる形で臨時総理に就任。 特別国会を開いて内閣総理大臣を正式に決め直している余裕がないと考えられる状況。(法案を作るよう求めていたため、国会は何とか動いていたと思われるが) そして彼は、臨時総理になった時点で、&bold(){派閥の年功序列で大臣になったと言う評価が定着するような人物}であった。 少なくとも、「有能な切れ者キャラ」と言う評価を得られている人物ではない。 その上、 #center(){「やっぱ総理の仕事って、大変なんだなぁ・・・」 「あーあ、(ラーメンが)のびちゃったよ…」 「とにかく不測の事態だけは避けてよ!?」} 事なかれ、やる気はないが仕方なくやってる、全部部下任せ・・・ 一般に言われる日本の政治家の悪い所を詰め込んだようなキャラだと感じた人は多いだろう。 だが、少し考えてみてほしい。 矢口蘭堂にせよ赤坂秀樹にせよ泉修一にせよ、政界は超有能な人物の巣窟である。 そんな巣窟にいるから比較対象が悪すぎただけで、農水相になった訳であるから、&bold(){常人とは比べ物にならないほど有能な人物}であると考える。 孫悟空やベジータ・ピッコロが仕切っている中でのクリリンや天津飯みたいなものである。 白銀自身は政界と全く無縁な世界で草食に生きているが、それでも日本の政界なめんなよと思う。 そして、&bold(){不測の事態を避けるのは当たり前のこと}だ。 全てに対応できないのは仕方ないが、全く想定していない事態を作らず可能な限りの想定をしておくことは必要である。不測の事態は避けてよという指示は100%正しい。 素人的知識でしゃしゃり出た挙句、全てをめちゃくちゃにするようなタイプはもっと困ってしまう。 仕方なくやってるとしても、ある程度有能で常識的な感性を持つ人間である限り、あの状況で総理をやりたがる人はいない。 それが分かっているからこそ、里見は臨時総理を押し付けられたらしいと言う評判も立っていたのであろう。 &bold(){色々な意味で里見は常識人であり、優秀な凡人なのだと思う。} そして、里見臨時総理は、おそらく総理の椅子に座った時には、&bold(){「自分の限界」を悟っていた}のではないかと思う。 農水大臣に派閥人事などで成り上がってきたと言われ、大河内総理が肝いりで連れてきたような専門家や気鋭の人物ではない。 しかも、総理の座を押し付けられる程度には高い立場にいた。 やたらと幹事長になりたいと言う泉ほど出世欲全開でなくとも、いつか総理になることを夢見たこともあっただろう。 「やっぱ総理の仕事って、大変なんだなぁ・・・」「こんな形で、歴史に名を残したくはなかったなぁ・・・」 という言葉は、&bold(){自分も総理という立場に憧れ、あるいは総理という形でなくとも歴史に優れた政治家として名を残すことを夢見ていたからこそのセリフ}と取れなくもない。 そして現実に自分が総理の椅子に座ることができたが、自分が総理の椅子に座ることができた理由はと言えば、人がいないから押しつけられただけ。 自分が総理の椅子に座るに値する人材だからと推薦されたなら、やるだけやってやろうという気にもなったかもしれないが、実際は「とにかく誰も総理をやらないのが困る」以上の理由はなかったと予想される。 里見臨時総理を持ち上げた周囲はおべんちゃらでいろいろ言ったかもしれないが、それがおべんちゃらにすぎないことが分からないほど里見は無能ではないだろう。 里見臨時総理は、ことが終わった後まで踏まえた組閣をし、ゴジラ凍結後は次世代の新たな政権運営に託す選択をしたことがわかり、作中では男を上げた。 だが、これも個人的には &font(red){「よし、俺が総理になったんだ。短期決戦で一気にやるべきことをやる、俺が日本をなんとかしてやるぞ!!その後は若手に任せるのが日本のためだ!!」} というような燃え上がった使命感の産物というよりも、 &font(blue){「総理になっちゃったけど、自分では何にもできないよ・・・とにかく中継ぎは何とかするし、邪魔もしないから、あとお願い・・・」} というような&bold(){無力感・消極性の産物が結果的に的中しただけではないか}と思えるのである。 なぜなら、組閣の時点では、巨災対ですらこの時点でゴジラ凍結の目途はたっていなかったのである。 組閣の時点で事態が本編のように一先ず片付くなんて予想していたとすれば、それは慧眼ではなくて度を越した楽観主義か完全な現実逃避だろう。 そして就任したはいいが、予想通り事態は悪くなっていく一方。 「東京を核攻撃させる」未来永劫日本国民の大多数に憎まれる決断まで迫られ始めた。 2週間では東京から避難できていない都民も多いと思われ(中央道は完全に詰まってしまっていた)、&bold(){何十万何百万の都民を直に殺害する決断となる可能性も高い}。 かといって、事態が事態だけに、「国民世論を敵に回す」なんて悠長なことを言っていられない。 (白銀は国民感情を無視するようなやり方は国民の協力を得られなくなり政治の運営を難しくするという考え方に傾くことが多いが、それでもあそこで国民世論に配慮すべきというほどハト派ではない^^) 政界を長い間渡ってきたし、ありがちな無能キャラじゃなければ、自分では力不足であること、仮に自分に力があったところで事態がどうにもならない可能性が高いことも分かっただろう。 逃げ遅れた老夫婦のためにゴジラ攻撃を中止した大河内総理の時のように、ゴジラの脅威の度合いがはっきり分かっていなかったならば、まだ不確定要素があるといってそこに逃げられたかもしれない。 だが、放射線流の圧倒的な威力。閣僚の多数が失われる状況。諸外国からの核攻撃が迫る事態。 もう&bold(){里見臨時総理の思考に逃げる場所はない。} 里見臨時総理も、本当は現実から逃げたかったのだろう。 「ラーメンが伸びちゃったよ・・・」という一見してやる気なさそうな態度は、&bold(){あの時点での精一杯の現実逃避だったと思えてならない。} ラーメンを食べることでとにかく一瞬でも逃げたい現実なのに、伸びてしまったことで「そんなの許しませんよ」とラーメンにまで言われた。 そう思うと、観客的にはクスリとできる、あるいはこんな総理で大丈夫なのかという不安を覚えるシーンだが、里見臨時総理としては胃に穴が開くような瞬間だったと思う。 そんな中で、赤坂と里見臨時総理の &bold(){「総理。そろそろ、好きにされてはどうでしょう?」} &bold(){「…そうだな。…で、どれに判を押せばいいんだ?」} と言うやり取り。 そこで思ったこと、&bold(){里見臨時総理は何が好きにできなかったのだろうか?} 赤坂は何から里見臨時総理を好きにさせたかったのか? 赤坂のキャラからして、全く意味のないことを言ったとは思えないし、短時間でも臨時総理の人物も相応に把握できていたことだろう。 里見臨時総理だって、避難しなければならない都民を思う心がある。何とかして核攻撃は避けたいと思っている。 でも、現実は日本という国やおそらくまだ都内に残されている多数の都民に引導を渡すかのような対応しかできない。 赤坂のこと、おそらく里見臨時総理にも矢口と話した程度のことは伝えているだろうし、里見臨時総理も分かっていただろう。 では精一杯にあがくのがよいか。 そこで&bold(){精一杯にあがくことができず、あきらめの境地に達してしまうのは人間という生き物の性である。} 「人はピンチになったら死ぬまで戦える」訳ではない。そういう人は確かにいるが、それができる人は決して多くはない。 そんな人間観を持っている人、リアルで遭遇したこともあるのだが白銀は内心で嘆息し、距離を置くようになった。 もしそれが本当なら、日本で毎年2万人以上の自殺者が出て来る訳がないのである。 それに、&bold(){精一杯にあがいた結果として、事態がさらに悪化するリスクもある。} ヤシオリ作戦自体、綿密に練った作戦ではあるが失敗リスクは非常に高いものであった。 白銀自身、ヤシオリ作戦を史上最も綿密なヤケクソ作戦と評している。 かつて矢口が閣僚に日本国民300万人を死に至らせたとして否定した「机上の空論」「希望的観測」「こうあってほしいと言う願望」のかたまりの下に実行されている。 もしゴジラが無人新幹線爆弾などでうまく転倒しなかったら? 血液凝固剤がゴジラの進化によって耐性ができてしまうかもしれない。 凝固すれば生態原子炉が止まる、という仮説は立てられていたが、もし止まらなければ、逆にメルトダウンの危険さえあったのではないか? 経口投与に際して大暴れされてしまったら建機部隊では手の打ちようはない。 特殊建機予備隊の待機組が熱線の流れ弾でやられるリスクもあったところだ。 タバ作戦ではほとんどの攻撃にまともに反応もしなかったゴジラのこと、大した火力のない航空攻撃に対し、無駄だと判断して止めてしまう可能性すらある。 全てありえた話であり、&bold(){どれか一つが実現しただけでも、全ては台無しである。} 本来ならとりあえず実験して有効性を確認するべきだが、そんな時間的・設備的余裕はない。 巨災対は超優秀な人物の集まりであり、周囲に迎合して何も言えない、なんてことがない骨太な人物の巣窟である。 こういうリスクがあることも分からないとは白銀は考えない。 おそらく&bold(){白銀に思いつくリスクの何倍ものリスクを認識しつつ、それでもやるしかないからやったのだと推察する。} そして、赤坂が矢口に語っていたとおり、日本は既に諸外国の支援が必要な状況になっている。 日本もゴジラ対策のためにあえて首都を差し出したという精一杯の犠牲を払えばこそ諸外国も支援してくれるだろうに、&bold(){もたつかせてゴジラは生き残るわ諸外国からはそっぽを向かれるわとでもなれば、絵に描いたような最悪の事態}になってしまう。 フランスはうまく動いてくれたが、ここで自体が最悪の方向に転べばフランスの立場だってただでは済まない。 ヤシオリ作戦のような実験の伴わない希望的観測に頼った無謀な方策を諦め、次善でも確実な方策を選ぼうと考えることは、総理の決断として決して間違っていない。(熱核攻撃なら流石のゴジラも確実に死ぬと言う考えは観客視点ではともかく、作中人物の視点としては全く正しい) &bold(){好きにする、というのは、そういった意味での合理的な判断、もっと詰めて言えば、自身が無力であるという前提の考えを捨てる、ということである。} ある意味職務放棄でもあるが、それくらいならば臨時総理の権限の範囲内である。「最善」ではないが、「ルール違反」ではない。 &font(red){無力感に苛まれた状態で無難な判断をせざるを得ない立場と、日本に希望をもたらすかもしれない作戦に賭けたい個人的本音。&br()それが里見臨時総理の中でぶつかっていることを見抜いたからこそ、赤坂は「好きにしていいんですよ」と背中を押したのではないだろうか。&br()背中を押され、それに応じたということは、彼自身が無力感から完全ではないにせよ解放されたということでもある。&br()可能な限りの最大の手である、自身のコネのあるフランスとの交渉に赴き、見事成功。「私は無力」と言う考えのままでは、できなかったことだろう。} &bold(){その意味であのシーンで「好きにした」のは、赤坂も同じだったと思われる。} 総理に現実的な意見を提示し補佐すると言うこれまで己が忠実にやってきた職務。その視点からすれば、赤坂も最善ではないと言うことは分かっていたはずだ。 それでも、最善ではないようにも思われる決断をしたいと思っている臨時総理の背中を押した。 それ以前から核使用に対しては否定的な感情を端々に出していた赤坂のこと、&bold(){総理の背中を押すという形で、ルールを破らずそれでいて自分の「好き」を押し通したのかもしれない}。 ヤシオリ作戦は、そういった安全・最善策を取らないで成功したパターンではある。 ヤシオリ作戦が失敗したならば、核でゴジラは倒せても日本の復興への道筋は悪化していた可能性が高い。 里見臨時総理も、「派閥上がりの臨時総理の分際で余計なことをして日本の復興を阻害したダメ総理」として、死ぬまで日本中の憎しみを受けたことだろうし、現実に日本の復興が数十年遅れるという結果になったかもしれない。 それが分かるので、少なくとも、映画の中での行動を見る限り、白銀は東京への熱核攻撃という決断をしたとしても、里見臨時総理を非難する気にはならない。 だからこそ、里見臨時総理の活躍に来るものがあるのである。 白銀は熱戦射程外に住んでいる上に自分勝手な人間なので、作品世界の中で暮らしていれば、断じて許さん!という気になったかもしれないが。 ---- &link_up(△)&aname(メニュー,option=nolink){メニュー} &link_edit(text=項目変更)&link_copy(text=項目コピー)&link_diff(text=項目変更点)&link_backup()&link_upload(text=アップロードページ) ---- #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600) } #comment #center(){&link_toppage(-GDW世界 白銀の賢者分室)} #center(){[[GDW メインページ>http://gdwall.image.coocan.jp/]]}
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) *里見臨時総理は何を好きにしたのか ※当項目はネタバレ項目です。ネタバレが苦にならない方以外はシン・ゴジラ本編鑑賞まで閲覧を控えることをお勧めします。   シン・ゴジラにおける里見祐介農林水産大臣。 どっかで聞いた声だと思ったら、ウルトラマンガイアの千葉参謀でございました。 初見では特に千葉参謀を意識しなかったものの、言われてみればそっくりで、ガイア放送から15年以上が経過したことを思わせる。 &bold(){これから書く白銀の里見農水大臣に対する考察は、妄想全開である。} 妄想全開の考察を書きたくなるくらい考えてみたくなるキャラだ、ということで一つご理解いただきたい。 白銀は、里見臨時総理は最後の大活躍がなかったとしても、無能キャラだ、とは白銀は考えなかったと思う。 創作ものでは、しばしばおべんちゃらで上に上がったような無能キャラがトップとか大臣の座に居座り、主人公とかの障害となったり、引き立て役にされる。 だが、シン・ゴジラのリアルさならありがちな無能大臣はないと思うのだ。 物語の盛り立て役として、噛ませ犬的無能キャラをおくこと自体は見せ方の一つだが、決してそれはリアルではない。リアルを追求したシン・ゴジラの作風にも合わないだろう。 (GDWにおいても、ただやられるための雑魚はGma氏が最も嫌う存在の一つである。) 他方、アニメ界で男を上げた無能キャラとしては、[[HELLSING>http://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1981.html]]の[[シェルビー・M・ペンウッド卿>http://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1201.html]]がいる。 「家柄だけで海軍中将にまで出世してしまった」と自覚していつつも、だからこそ最後の最後まで命がけで使命を全うしたその生き様は多くの人に感銘を与えている。 一部では「世界一カッコイイ無能」とまで言われているが、&bold(){里見の活躍にペンウッド卿を思い浮かべた人はそれなりにいるんじゃないだろうか。}(検索してみたところ実際にいた) ペンウッドが本当に無能だったのか?という疑問はあるところだが、あえて無能と呼ぶのもアニメ民によるある種の敬意だと思う。 里見臨時総理はどんな考えを持っていたのだろうか。 全て白銀の妄想である。 里見臨時総理は、タバ作戦までは外遊中で不在、戻ってきてみれば内閣は閣僚の多数が死亡。 そして、半ば押し付けられる形で臨時総理に就任。 特別国会を開いて内閣総理大臣を正式に決め直している余裕がないと考えられる状況。(法案を作るよう求めていたため、国会は何とか動いていたと思われるが) そして彼は、臨時総理になった時点で、&bold(){派閥の年功序列で大臣になったと言う評価が定着するような人物}であった。 少なくとも、「有能な切れ者キャラ」と言う評価を得られている人物ではない。 その上、 #center(){「やっぱ総理の仕事って、大変なんだなぁ・・・」 「あーあ、(ラーメンが)のびちゃったよ…」 「とにかく不測の事態だけは避けてよ!?」} 事なかれ、やる気はないが仕方なくやってる、全部部下任せ・・・ 一般に言われる日本の政治家の悪い所を詰め込んだようなキャラだと感じた人は多いだろう。 だが、少し考えてみてほしい。 矢口蘭堂にせよ赤坂秀樹にせよ泉修一にせよ、政界は超有能な人物の巣窟である。 そんな巣窟にいるから比較対象が悪すぎただけで、農水相になった訳であるから、&bold(){常人とは比べ物にならないほど有能な人物}であると考える。 孫悟空やベジータ・ピッコロが仕切っている中でのクリリンや天津飯みたいなものである。 白銀自身は政界と全く無縁な世界で草食に生きているが、それでも日本の政界なめんなよと思う。 そして、&bold(){不測の事態を避けるのは当たり前のこと}だ。 全てに対応できないのは仕方ないが、全く想定していない事態を作らず可能な限りの想定をしておくことは必要である。不測の事態は避けてよという指示は100%正しい。 素人的知識でしゃしゃり出た挙句、全てをめちゃくちゃにするようなタイプはもっと困ってしまう。 仕方なくやってるとしても、ある程度有能で常識的な感性を持つ人間である限り、あの状況で総理をやりたがる人はいない。 それが分かっているからこそ、里見は臨時総理を押し付けられたらしいと言う評判も立っていたのであろう。 &bold(){色々な意味で里見は常識人であり、優秀な凡人なのだと思う。} そして、里見臨時総理は、おそらく総理の椅子に座った時には、&bold(){「自分の限界」を悟っていた}のではないかと思う。 農水大臣に派閥人事などで成り上がってきたと言われ、大河内総理が肝いりで連れてきたような専門家や気鋭の人物ではない。 しかも、総理の座を押し付けられる程度には高い立場にいた。 やたらと幹事長になりたいと言う泉ほど出世欲全開でなくとも、いつか総理になることを夢見たこともあっただろう。 「やっぱ総理の仕事って、大変なんだなぁ・・・」「こんな形で、歴史に名を残したくはなかったなぁ・・・」 という言葉は、&bold(){自分も総理という立場に憧れ、あるいは総理という形でなくとも歴史に優れた政治家として名を残すことを夢見ていたからこそのセリフ}と取れなくもない。 そして現実に自分が総理の椅子に座ることができたが、自分が総理の椅子に座ることができた理由はと言えば、人がいないから押しつけられただけ。 自分が総理の椅子に座るに値する人材だからと推薦されたなら、やるだけやってやろうという気にもなったかもしれないが、実際は「とにかく誰も総理をやらないのが困る」以上の理由はなかったと予想される。 里見臨時総理を持ち上げた周囲はおべんちゃらでいろいろ言ったかもしれないが、それがおべんちゃらにすぎないことが分からないほど里見は無能ではないだろう。 里見臨時総理は、ことが終わった後まで踏まえた組閣をし、ゴジラ凍結後は次世代の新たな政権運営に託す選択をしたことがわかり、作中では男を上げた。 だが、これも個人的には &font(red){「よし、俺が総理になったんだ。短期決戦で一気にやるべきことをやる、俺が日本をなんとかしてやるぞ!!その後は若手に任せるのが日本のためだ!!」} というような燃え上がった使命感の産物というよりも、 &font(blue){「総理になっちゃったけど、自分では何にもできないよ・・・とにかく中継ぎは何とかするし、邪魔もしないから、あとお願い・・・」} というような&bold(){無力感・消極性の産物が結果的に的中しただけではないか}と思えるのである。 なぜなら、組閣の時点では、巨災対ですらこの時点でゴジラ凍結の目途はたっていなかったのである。 組閣の時点で事態が本編のように一先ず片付くなんて予想していたとすれば、それは慧眼ではなくて度を越した楽観主義か完全な現実逃避だろう。 そして就任したはいいが、予想通り事態は悪くなっていく一方。 「東京を核攻撃させる」未来永劫日本国民の大多数に憎まれる決断まで迫られ始めた。 2週間では東京から避難できていない都民も多いと思われ(中央道は完全に詰まってしまっていた)、&bold(){何十万何百万の都民を直に殺害する決断となる可能性も高い}。 かといって、事態が事態だけに、「国民世論を敵に回す」なんて悠長なことを言っていられない。 (白銀は国民感情を無視するようなやり方は国民の協力を得られなくなり政治の運営を難しくするという考え方に傾くことが多いが、それでもあそこで国民世論に配慮すべきというほどハト派ではない^^) 政界を長い間渡ってきたし、ありがちな無能キャラじゃなければ、自分では力不足であること、仮に自分に力があったところで事態がどうにもならない可能性が高いことも分かっただろう。 逃げ遅れた老夫婦のためにゴジラ攻撃を中止した大河内総理の時のように、ゴジラの脅威の度合いがはっきり分かっていなかったならば、まだ不確定要素があるといってそこに逃げられたかもしれない。 だが、放射線流の圧倒的な威力。閣僚の多数が失われる状況。諸外国からの核攻撃が迫る事態。 もう&bold(){里見臨時総理の思考に逃げる場所はない。} 里見臨時総理も、本当は現実から逃げたかったのだろう。 「ラーメンが伸びちゃったよ・・・」という一見してやる気なさそうな態度は、&bold(){あの時点での精一杯の現実逃避だったと思えてならない。} ラーメンを食べることでとにかく一瞬でも逃げたい現実なのに、伸びてしまったことで「そんなの許しませんよ」とラーメンにまで言われた。 そう思うと、観客的にはクスリとできる、あるいはこんな総理で大丈夫なのかという不安を覚えるシーンだが、里見臨時総理としては胃に穴が開くような瞬間だったと思う。 そんな中で、赤坂と里見臨時総理の &bold(){「総理。そろそろ、好きにされてはどうでしょう?」} &bold(){「…そうだな。…で、どれに判を押せばいいんだ?」} と言うやり取り。 そこで思ったこと、&bold(){里見臨時総理は何が好きにできなかったのだろうか?} 赤坂は何から里見臨時総理を好きにさせたかったのか? 赤坂のキャラからして、全く意味のないことを言ったとは思えないし、短時間でも臨時総理の人物も相応に把握できていたことだろう。 里見臨時総理だって、避難しなければならない都民を思う心がある。何とかして核攻撃は避けたいと思っている。 でも、現実は日本という国やおそらくまだ都内に残されている多数の都民に引導を渡すかのような対応しかできない。 赤坂のこと、おそらく里見臨時総理にも矢口と話した程度のことは伝えているだろうし、里見臨時総理も分かっていただろう。 では精一杯にあがくのがよいか。 そこで&bold(){精一杯にあがくことができず、あきらめの境地に達してしまうのは人間という生き物の性である。} 「人はピンチになったら死ぬまで戦える」訳ではない。そういう人は確かにいるが、それができる人は決して多くはない。 そんな人間観を持っている人、リアルで遭遇したこともあるのだが白銀は内心で嘆息し、距離を置くようになった。 もしそれが本当なら、日本で毎年2万人以上の自殺者が出て来る訳がないのである。 それに、&bold(){精一杯にあがいた結果として、事態がさらに悪化するリスクもある。} ヤシオリ作戦自体、綿密に練った作戦ではあるが失敗リスクは非常に高いものであった。 赤坂も「不確定要素が多い」と指摘しているし、白銀自身、ヤシオリ作戦を史上最も綿密なヤケクソ作戦と評している。 かつて矢口が閣僚に日本国民300万人を死に至らせたとして否定した「机上の空論」「希望的観測」「こうあってほしいと言う願望」のかたまりの下に実行されている。 もしゴジラが無人新幹線爆弾などでうまく転倒しなかったら? 血液凝固剤がゴジラの進化によって耐性ができてしまうかもしれない。 凝固すれば生態原子炉が止まる、という仮説は立てられていたが、もし止まらなければ、逆にメルトダウンの危険さえあったのではないか? 経口投与に際して大暴れされてしまったら建機部隊では手の打ちようはない。 特殊建機予備隊の待機組が熱線の流れ弾でやられるリスクもあったところだ。 タバ作戦ではほとんどの攻撃にまともに反応もしなかったゴジラのこと、大した火力のない航空攻撃に対し、無駄だと判断して止めてしまう可能性すらある。 全てありえた話であり、&bold(){どれか一つが実現しただけでも、全ては台無しである。} 本来ならとりあえず実験して有効性を確認するべきだが、そんな時間的・設備的余裕はない。 巨災対は超優秀な人物の集まりであり、周囲に迎合して何も言えない、なんてことがない骨太な人物の巣窟である。 こういうリスクがあることも分からないとは白銀は考えない。 おそらく&bold(){白銀に思いつくリスクの何倍ものリスクを認識しつつ、それでもやるしかないからやったのだと推察する。} そして、赤坂が矢口に語っていたとおり、日本は既に諸外国の支援が必要な状況になっている。 日本もゴジラ対策のためにあえて首都を差し出したという精一杯の犠牲を払えばこそ諸外国も支援してくれるだろうに、&bold(){もたつかせてゴジラは生き残るわ諸外国からはそっぽを向かれるわとでもなれば、絵に描いたような最悪の事態}になってしまう。 フランスはうまく動いてくれたが、ここで事態が最悪の方向に転べばフランスの立場だってただでは済まない。 ヤシオリ作戦のような実験の伴わない希望的観測に頼った無謀な方策を諦め、次善でも確実な方策を選ぼうと考えることは、総理の決断として決して間違っていない。(熱核攻撃なら流石のゴジラも確実に死ぬと言う考えは観客視点ではともかく、作中人物の視点としては全く正しい) &bold(){好きにする、というのは、そういった意味での合理的な判断、もっと詰めて言えば、自身が無力であるという前提の考えを捨てる、ということである。} ある意味職務放棄でもあるが、それくらいならば臨時総理の権限の範囲内である。「最善」ではないが、「ルール違反」ではない。 &font(red){無力感に苛まれた状態で無難な判断をせざるを得ない立場と、日本に希望をもたらすかもしれない作戦に賭けたい個人的本音。&br()それが里見臨時総理の中でぶつかっていることを見抜いたからこそ、赤坂は「好きにしていいんですよ」と背中を押したのではないだろうか。&br()背中を押され、それに応じたということは、彼自身が無力感から完全ではないにせよ解放されたということでもある。&br()可能な限りの最大の手である、自身のコネのあるフランスとの交渉に赴き、見事成功。「私は無力」と言う考えのままでは、できなかったことだろう。} &bold(){その意味であのシーンで「好きにした」のは、赤坂も同じだったと思われる。} 総理に現実的な意見を提示し補佐すると言うこれまで己が忠実にやってきた職務。その視点からすれば、赤坂も最善ではなく、矢口をたしなめた発言が正しいことは分かっていたはずだ。 それでも、最善ではないようにも思われる決断をしたいと思っている臨時総理の背中を押した。 それ以前から核使用に対しては否定的な感情を端々に出していた赤坂のこと、&bold(){総理の背中を押すという形で、ルールを破らずそれでいて自分の「好き」を押し通したのかもしれない}。 ヤシオリ作戦は、そういった安全・最善策を取らないで成功したパターンではある。 ヤシオリ作戦が失敗したならば、核でゴジラは倒せても日本の復興への道筋は悪化していた可能性が高い。 里見臨時総理も、「派閥上がりの臨時総理の分際で余計なことをして日本の復興を阻害したダメ総理」として、死ぬまで日本中の憎しみを受けたことだろうし、現実に日本の復興が数十年遅れるという結果になったかもしれない。 それが分かるので、少なくとも、映画の中での行動を見る限り、白銀は東京への熱核攻撃という決断をしたとしても、里見臨時総理を非難する気にはならない。 だからこそ、里見臨時総理の活躍に来るものがあるのである。 白銀は熱線射程外に住んでいる上に自分勝手な人間なので、作品世界の中で暮らしていれば、断じて許さん!という気になったかもしれないが。 ---- &link_up(△)&aname(メニュー,option=nolink){メニュー} &link_edit(text=項目変更)&link_copy(text=項目コピー)&link_diff(text=項目変更点)&link_backup()&link_upload(text=アップロードページ) ---- #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600) } #comment #center(){&link_toppage(-GDW世界 白銀の賢者分室)} #center(){[[GDW メインページ>http://gdwall.image.coocan.jp/]]}

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