ベトラーズ造反事件
概要
総説
基準時から3000年後、
タイランタ連邦内の紛争(
タイタニア紛争)に伴って、
アトラス銀河系の
ディガスで発生した比較的大規模な内紛事件。
内紛自体は穏やかに収束し、内紛自体によって死者が出たり、直接市民生活等を脅かす事態にはならなかったものの、基準時頃の
オリオン銀河大戦時代のディガスの活動に強い総括が迫られ、それ以降のディガスの活動に小さからぬ影響を及ぼした。
オリオン大戦とディガス
オリオン大戦において、ディガスはタイランタ連邦の本人の意思すら無視した
ゼクローム・
ザイローム作成等の活動を非難する立場に回り、
第一次オリオン危機等でたびたび連邦の非人道的人体実験を暴きたてて来た。
他方、ディガスは生命秩序と宇宙の平衡性維持を目的とした騎士団であり、過度の介入を戒める組織でもある。オリオン大戦の勃発はEUC2052年であったが、ディガスの本格参戦はEUC2063年まで遅れた。
この「ひずみ」から生まれている犠牲者に対し、ディガスの
エル・ドレイン大使をはじめ、オリオン大戦期以前からの古参大使の一部は、ディガスの反省すべき点ではないかと気に留めてはおいたものの、事を荒立てることを恐れ、表立てることは少なかった。
ところが、この穏健策が思わぬ形でディガスを震え上がらせる内紛を起こさせることになる。
ベトラーズ・キトゥリンのディガス批判
当時、アトラス銀河系のディガスに、350歳の若さで高位大使となった気鋭の人物が生まれていた。
ロイゲール種のベトラーズ・キトゥリン高位大使。
開発者種族初の
ケイロアス星間大学学生会会長を務め、後には
アトラス連合教育省長官にまで上り詰めた
ヒアギーノ・キトゥリンの子孫にあたる。ロイゲールから高位大使が出たのは、後にも先にも彼一人だった。
彼の昇進には、既にアトラス銀河系のディガスの重鎮にまで上りつめていた
グレアス・ウィシア高位大使の強い推薦があったとされ、実際高位大使を務めるだけの切れ者であった。また、タイランタ連邦がきな臭くなり、ゼクロームやザイロームと対峙することの多かったロイゲールの種族的経験値も期待されたようだ。
ところが、彼がタイランタ紛争時に発した提案は、ウィシアどころかアトラス銀河系の主要大使たちの度肝を抜くことになる。
エル・ドレイン大使はじめ、重鎮たちは、いつか来る主張だと身構えてはいたようだが、そうでない大使たちには衝撃があまりに大きかったようだ。
ベトラーズは、確かにタイランタのやり口は非道であることを認めていたが、ディガスはそれを非難せんが為に更なる生命を危険に晒していると極めて辛辣な評価を下した。
第四次タイタニア戦争でもタイランタに余計な大義名分を与えたのはディガスの
ユピテイル・エルザール高位大使の調査活動であり、オリオン大戦とて、ディガスが暴かなければ戦禍は避けられたのではないか。
タイランタも「戦時故に」更に改造人間をつくることが増えていたのも事実であった。
せめて、オリオン大戦期まででタイランタが更生していれば、「やむをえない一時の犠牲であった」と言いえたかもしれないが、実際にはほとんど何の成果も出せていない。それどころか、不干渉姿勢を盾に、オリオン大戦勃発から10年もの間本格参戦をしなかったことを、ベトラーズらは
「不干渉に名を借りた無責任である」と評した。
不干渉なら不干渉、干渉するなら最後まで面倒を見よ。これが彼の主張であり、彼は最後まで面倒をみることは無理と判断、ならば最初から一切手を出すなと主張したのだ。
若手大使たちの反逆
もちろん、オリオン大戦期から活躍してきた周囲の古参正大使や高位大使たちはベトラーズの主張に対しては断固反対した。
だが、ここでもう一人、古参の正大使が彼についてしまったのが事態に拍車をかけた。かつてオリオン大戦の終戦交渉で活躍した優れた外交官タイプの大使、
ユスラビオン種の
フィスバスト・マルベータ正大使である。
オリオン大戦以降、彼の苦心の外交交渉は、全く実を結んでいなかった。一時的に何とかなったかのように見えても、事態はすぐに戻ってしまうのである。そして、外交官としてタイランタの立場を見据えれば、そこにおけるディガスの失態も、見えてきてしまう。
また、オリオン大戦時
惑星アーク(GDW地球)で活躍した
アル・ドレイク大使ら、大物大使が何人かベトラーズを支持し、更に若手大使を中心にベトラーズの主張に対する支持は広がってしまった。
無論、ディガス内部でも、その干渉不干渉・方法論に関して、見解の対立は四六時中である。その職務においてギリギリの判断を迫られることも少なくはない。強く曲げられない信念を持つ者たちばかりであるだけに、対立が激しくなることも多い。自然発生的に、各人の思想傾向から派閥のようなものもある程度は出てくるが、それ自体は別段問題ではない。組織内で微妙な問題について議論がない方がそもそも不健全であろう。
・・・だが、それはあくまでも「ディガスの任務を機能不全に陥らせない」という大前提があっての話だ。
ところが、遂にこの論争はディガスの主流派とベトラーズ支持派に本格的な亀裂を生じさせた。
ATのベトラーズが構える第四リングコロニーの支部で、
彼を慕う大使たちが事実上独立行動を開始しはじめてしまったからさあ大変である。ディガスで大使たちが見解の対立から本格的ににらみ合うのは前例がない話ではないが、アトラス銀河系ではここ数万年来なかった、ディガスの深刻な分裂であった。
造反組の大使とて決して付和雷同でついて行った訳ではなかった。ディガスが姿勢を改めることを望んでいたため、交渉は何度か持たれたが、全て決裂した。両者に存在する小さからぬ価値観の溝は、交渉程度で埋まるものではなかった。
ディガスにもはや猶予はなかった。このままではディガスが分裂する。クールダウンによる解決を待てるほど事態は穏やかではない上、もし造反組大使が自分たちこそ真正のディガスと名乗り出しては取り返しのつかないことになると判断した主流派は、非常(非情)手段に出る可能性まで踏まえて、決断を下した。
ベトラーズ大使始め、第4リングコロニーに半ば籠城同然に立てこもる大使たちの大使職を預かる旨を通告、同時に支部を明け渡さなければ事態をアトラス連合・オルガナ同盟・イグザ銀河系のアトラス・イグザ銀河団ディガス本部に通報し、強硬手段も辞さないと表明。実質的な最後通牒であった。
本部は一時、支部の武力制圧の可能性すら考えていたという。本来、周囲まで含めた大災害とディガスの声望失墜&職務への障害につながるので避けるべきなのだが、そこまで本部は追い詰められたのだ。
さらには、分離したディガス支部をヴァーツ魔将校シュアークらが襲撃し、それをあろうことかゾアクロイドの工作員であるゼルガ・ローヴがシュアークと一戦を交えて食い止めるという一幕もあった。
魔神オメガの同志であるゼルガにとって、ディガスは確かに敵ではあるが、ディガスが脱皮しようとしているのを察知していたゼルガにとって、シュアークの襲撃は邪魔以外の何者でもなかったのである。
ところが、紛争の結末はひどくあっけないものであった。一部の準大使らが強硬に反抗や新ディガス創設を主張、離脱する事態もあった。
当のベトラーズはなぜか勧告に対してあっさりと引き下がり、彼につき従っていた大使は多くが元の鞘に戻った。何故と問い詰める他の大使たちに、ベトラーズはただ飄然と、黙って聞いていたと言う。
外部に漏れていればアトラス銀河系が震え上がったかもしれないディガス内部の紛争は、意外にもあっさり決着。
思わぬあっけない幕切れに、ディガスは胸をなでおろした。
反逆者たちのその後
この騒動の後、造反組の大使の大半は辞職し、散り散りとなった。
ベトラーズも、マルベータも、ドレイクも、造反組の主要大使は全員大使を辞任した。
少数の仲間でディガス以外の義勇軍的な活動に身を投じた者、タイランタに身を投じた者すらもいたと言う。
造反してなおディガスに残った者もある程度いたが、後に名を残したか、結局辞めてしまったかのどちらか極端だったと言う。
目立った形で戦闘になることはなかったため、市民にはディガスの変容についてほとんど知ることはなく、「一度に多くの大使が辞めた」程度のことしか知らない。
ディガスから、ディガス弾劾法院には事の顛末が仔細に伝えられたが、弾劾法院はこの件についてディガスの「迅速な決断」を評価。皮肉にもこの騒動によってディガス弾劾法院は数千年の間、その活動を事実上ハンコ突きに落とすことになる。
だが、最終的に、ベトラーズはこの様子を見ることはなかった。
彼はこの件で大使を辞任して「数日」と持たず、彼は血を吐き、死亡することになる。
アロトーア・シャノー同様、ロイゲールには無理な身体強化がたたったのもあった。だがそれ以上にこの問題での過労・心労が祟り、その350歳にもならぬ生涯を終えたのだ。
時期的にピッタリすぎたため、一説には何者かが毒を盛ったか、服毒自殺ではないかという説も流れているが、実際には本当に過労により体が持たなくなったのである(そもそも彼は「自殺」などは使命の投げ出しであると捉えている)。彼には子はおらず、結局、この事件でヒアギーノの家系は途絶え、別家に嫁いだ家系がヒアギーノの血を続けることになる。
アル・ドレイク大使はかつて自分が活動した
惑星アークで隠棲。アークは旧知のドレイク大使を快く迎えたものの、大使を辞めた理由について彼はついに口を割らなかった。
大使復帰を希望する者もいたが、頑として戻らなかった。
マルベータ大使は、その後行方が知れなくなり、表舞台に出てくることはついになかった。が、タイランタ紛争の際に、なぜか戦士として活躍したユスラビオンが死亡したという記録が残っており、それがマルベータ前大使ではないかとも言われるが、遺体も保存されていないため、真相は藪の中である。
この事態に遭遇した主流派のディガス大使たちは、事件から7000年経ったクロイティス大戦期でさえもこの話題に触れたがらなかったと言う。
ただし、一方で彼の出した問題提起は、タイランタ紛争の損害をギリギリまで収めることに貢献した。
デザイン・プロフィール:ちょうど、これを考案したのは、「魔法少女リリカルなのはBetrayers」という
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を読んだことが影響している・・・と言っても原作自体は影も形も残っていないが、個人的にはこれを読んで数日間消化不良に陥るほどの衝撃であった。
それについて考えていてできたのが、「使命感故に全ての悪役を引き受けるキャラ」のベトラーズである。そして、どこにそれを入れるか、と考えた時に、
ふと以前から抱いていたディガスへの疑問部分と結び付き、一大エピとして練り上げたものである。
聖域に大型のひびを入れるも同然のエピで「最凶挑戦状」等と銘打っておそるおそる出したが、G-ma氏の評判もよく、今後さらなる設定の練り上げが期待される。
最終更新:2013年10月06日 21:24