メルペオネ希宙域会戦
概要
総説
決戦の背景
この頃、セイヴァネスロードの
リオハール4姉妹率いる先遣軍が、遅まきながらアトラス銀河系に到着したことで、アトラス連合軍は一気に士気を取り戻した。
ユコローズ超宙域会戦の大打撃の中でも兵力を集め、セイヴァネスロードと共に戦うならば、決してヴァーツに競り負けない、と考えた。
厳密に言えば、それでも不安要素は当然にある。だが、この時点で
惑星ロイガードが陥落し、メルペオネ希宙域を進むヴァーツ主力軍を叩かなければ
プレアディス・リングワールド(PRW)陥落の恐れがある状況下で、あまりとやかく言ってられないという状況でもあった。
(PRWの陥落は、日本で言えば、大阪&京都&神戸を制圧されるに等しい状況である)
そんな中で行われたのがメルペオネ希宙域(プレアディス・リングワールドと
アトラス・テクトラクタの間にある希宙域)会戦である。
アトラス連合軍とセイヴァネスロードの混成軍とヴァーツ軍の衝突はこの大戦では初めてであり、失地回復や仲間たちの防衛への使命感に燃えるアトラス連合軍の戦意は高い。
リオハール4姉妹の末娘ハヤトーメの武勇も凄まじく、ヴァーツ軍も一時は後退模様に追いやられ始めた。(あわよくばこれでヴァーツが撤退してくれれば…とも考えていた)
ハヤトーメは戦死したものの、アトラス連合軍も攻勢に出て優位になっていた。
が、 その腰をへし折るが如く「アトラステクトラクタ陥落」の報が入ったのは、まさにこの時 であった。
これはヴァーツのデマであった。しかしながら、ヴァーツサイドもこの会戦に当たり、アトラス・テクトラクタへの攻勢を激化させる等、この陽動作戦を成功させる下地は整えていた。
アトラス・テクトラクタが陥落したという知らせは、たちまちの内にアトラス連合軍を動揺させた。
さらにヴァーツはユコローズ超宙域会戦で拿捕したアトラス連合の艦船に裏切りを装わせてアトラス連合軍の背後を衝かせた。
策としては非常に単純かつ初歩的なものであり、 アトラス連合軍も落ち着いて対処すれば簡単にヴァーツの作戦と見抜けたはずであった。
しかし、テクトラクタ陥落の報に動揺したアトラス連合軍にはヴァーツも予想外なレベル(ヴァーツとしては若干の足止めができれば十分程度に考えていた)で効果てきめんだった。
流石にセイヴァネスロードの艦隊は、これがヴァーツの作戦であると見抜いた。
だが、セイヴァネスロード軍の必死の抑止も、大混乱を起こしたアトラス連合軍には通用しない。 同士討までもが始まり、リオハール4姉妹の次女・セイピュは味方であるはずのアトラス連合軍の砲撃を食らって戦死(セイピュは脱出方向を指示しようとしていた)。
連合軍は完全に統制を失った。そこをヴァーツ軍が襲いかかりあっという間に連合軍は蹴散らされ、セイヴァネスロード側にも多くの被害が出た。
総司令官格であったリオハール4姉妹の長女・ギヤマントも戦死。
アトラス連合軍は更に悲惨で、多くの艦船が連携を失い、ある者は勝手にアトラス・テクトラクタに帰還し、ある船はヤケクソ特攻を仕掛けて自ら散った。
ここまで連合軍がメタメタになってしまったのは、 アトラス連合軍はユコローズ超宙域会戦でシャグラ・コルミエル元帥はじめセイヴァネスロードと対応可能な多数の優秀な将官や熟練兵を失っていた ことだった。
艦船をなんとか揃えたアトラス連合軍でも、人材枯渇まではどうしようもなく、 急にかき集めた新兵の悲しさ が災いした。
ユコローズを生き残った将官はこの戦いでも少なからず討死し、生き残った者の多くはアトラス連合への他銀河からの客将であったという。
ギヤマント率いるセイヴァネスロード先遣隊も、ギヤマント4姉妹のうち3人が戦死。唯一生き残った三女・ハーネミーも重傷であった。
精鋭艦を失い、セイヴァネスロード本隊の到着まで戦う力を失ってしまったのである。
メルペオネ希宙域会戦の敗因は、ある意味ではエルメトルに非常に大きな問題があった。
勝算がなければ、ギヤマントはPRW陥落を無視してでも断固決戦には反対したであろう。
実際戦いに出ても、切り札のハヤトーメを先に出し前哨戦でこけ脅すことでヴァーツの撤退を狙うという戦略を取ることになり、しかも功を奏さなかった。
本来の四姉妹の必勝戦術である、切り札ハヤトーメを予備としておき、戦局を変える切り札として投入するという戦略を手放すことになってしまった。
だが、流石にエルメトルは優秀であり、ユコローズ敗戦後でもアトラス連合軍が限界ギリギリまで将兵&艦船をかき集めた。PRWを失陥させるわけにはいかず、ここで兵力を使ってでも闘わなければならないというのも、アトラス連合の将官としては当然の判断である。
しかし、この中途半端な優秀さは、かえってアトラス連合軍を窮地に追い込んだ。
本来なら、演習等でアトラス連合軍の力量を見なおさなければならなかったが、戦局の緊迫は、エルメトルにもギヤマントにもそんな暇を与えてはくれなかった。
会戦の影響
この戦いの結果は純損害としてみれば、ユコローズ超宙域会戦の被害を上回るものではない。
だが、 負け方として一番やってはならない負け方をアトラス連合はしてしまった。
この会戦の最大の問題は、この戦いでセイヴァネスロードとアトラス連合軍に亀裂が入ったことであった。一番肝心な戦いの時に、士気ががたっと落ちて大敗北に至ってしまうアトラス連合軍を、セイヴァネスロードが「頼りにならない」と考えだしたのだ。
責任追及をするわけではなくとも、今後の作戦立案への障害は別問題である。
エルメトルの責任問題にもなりかかった。
装備などの数的状況は事前知識としてエルメトルもマスターしギヤマントにも伝えられていたが、「兵たちの能力が落ちている」ことまではエルメトルでさえ正確に認識できていなかったのであるが、そこを認識すべきがエルメトルの責任であることは明白である。
非常人事として留任は許されたものの本来ならば即刻予備役編入(完全な懲罰人事である)となっておかしくない大失策であった。
エルメトルはセイヴァネスロードの本隊到着以降、自分自身では戦局指揮への関与を諦め、タイランタをはじめとする外交戦に舞台を移していくこととなる(「土下座事件」も、こうした背景の下で起こったのだ)。
また、アトラス連合軍側からのセイヴァネスロードへの反発の声(アトラス連合軍の自滅に等しい客観的状況が明らかになる中、なおもセイヴァネスロードに対する反発の声が出ること自体、アトラス連合軍の未熟さの証拠であった)を黙らせたのも、エルメトルであったと言われる。
ギヤマント四姉妹唯一の生き残りであるハーネミーは、負傷からの復帰後、指揮官への復帰を捨て、セイヴァネスロードと対応できるよう、アトラス連合の将官たちをしごいていくこととなる。
この戦いでアトラス連合軍はアトラス銀河系の盟主としての面目は完全に丸つぶれとなった。
ユコローズ会戦は確かに大敗であったが、それでも諸共同体はアトラス連合を中心とした対ヴァーツ戦線をキープしていた。
だが、戦意をなくしてセイヴァネスロードまで巻き込んで一方的にボロボロにされたアトラス連合軍の負け方は、みっともないどころの話ではなく、アトラス連合の軍事力の隠し様のない低下を諸共同体に印象づけた。
この戦いに勝利したヴァーツは、プレアディス・リングワールドへの攻勢を激化させる。
リングワールド防衛軍の獅子奮迅、またメルペオネでの損害があったこともあり、陥落を免れたとは言え、アトラス連合主要2都市の連絡までが遮断され、アトラス連合の銀河規模での組織だった抵抗は難しくなった。
デザイン・プロフィール:クロイティス銀河大戦の大決戦の一つであり、イメージは特にないが、
「アトラス・テクトラクタ陥落の報に引っかかって屈辱的な敗戦を喫する」というのは初期コンセプトとしてあった。
ただし、銀河連合の軍としてあまりに初歩的な作戦に引っかかるのはどうか、という感もあったため、ユコローズ超宙域会戦の後遺症という形で理由をつけ、自滅的な敗戦をした大型決戦の一つとして位置づけている。
2014年、「
艦隊これくしょん」の
金剛型戦艦4姉妹金剛・比叡・榛名・霧島をモチーフとするリオハール4姉妹(ギヤマント・セイピュ・ハーネミー・ハヤトーメ)を新たに絡めることで、設定に厚みが増している。
最終更新:2014年10月26日 17:02