銀河社会における通信事情


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個別宇宙船と惑星との通信


銀河社会において、通常の宇宙船に配備されている超光速通信の速度はおよそ1MTLほどである。
1MTLは、宇宙船の速度としては銀河列強主力艦に相応しい速度になるが、これでもアトラス銀河系の端から端まで約50日。
1万光年でも、およそ片道3日半、「もしもし」「はいこちらPRWです」とやり取りするだけで7日間かかってしまう。
通常の銀河の旅であれば、それでもそこまで困ることはない。
遭難時であっても、近傍惑星に救援を依頼すれば、基本的には大丈夫である。
希宙域などで最寄りの文明惑星まで1000光年離れていても、8時間で救援要請は届く。(文明惑星のほとんどない宙域には星間連合がテクトラクタや基地を設置することも多い)
例え宇宙船が緊急事態になろうと、8時間持たないのだとすればそれは通信速度に関係なく手遅れの可能性が高いため、
現状においてはそれ以上速くするのはコストを度外視しない限り見合わないと考えられている。


惑星と星間連合本部との通信


銀河社会においても、戦争や侵略者が存在しない訳ではない。戦時などには緊急通信が必要である。
単なる宇宙海賊レベルならばともかく、ヴァーツや銀河列強による本格侵略の場合、個別惑星による対処ではまず太刀打ちできない。
僅かな対処の遅れの結果、簡単に惑星数百を制圧することも可能となり、取り返しのつかない事態になる可能性がある。

通常は、惑星やテクトラクタ、大型宇宙基地などには、緊急用の超超光速通信網がある。
多くの銀河連合は、加盟にあたって原則、この通信網の端末の設置が義務付けられる。
これで個別惑星と銀河連合との通信を確保できるのである。(ただし、本星につけるとは限らず、同一星系の別惑星や衛星につける例などもある)
また、銀河連合総会の開催や星間戦争開戦など、星間連合からの重要な通知も、この装置を通じて行われる。

この端末は、普段は個別宇宙船につけられている通信装置よりはかなり速い通信機として機能する。
緊急時でなければ日常的な星間通信に用いることも許されている。
通信速度はおよそ5MTL程度であり、個別惑星にはこのレベルの通信端末が一つあれば、通常は十分としたものである。
運用方法は惑星によってまちまちであり、惑星政府が独占する場合も多いが、市民に金銭などを払わせることによってある程度解放している場合もある。
(もっとも、使用料は市民には高額であり、一市民の利用には堪えず大企業などが使う場合が多い)
新参開発者惑星に対しての惑星顧問のチームにも、必ずこういった通信の技術を教導する技術者がいる。

これらの端末の緊急回線を開けば、アトラス銀河系の端から端まで、およそ2時間程度。距離1万光年なら10分足らずで連絡が可能となる。
また、列強の重要艦船は、個別艦船からこうした個別惑星の通信機器にアクセスすることで、テクトラクタなど列強主要基地と高速連絡を取ることも可能である。
もちろんこの緊急回線は速度と引き換えに非常にデリケートであり、通信量にも限りがある。
狼少年のような事態になることもあり、緊急回線の濫用は簡単に安全保障問題になるため警告がなされる。
なお濫用される場合、通常の通信機としての使用が禁じられたり、連合当局の担当者にしか使わせないといったペナルティもある(それでも引き払ったりしないのは、通信網がそれだけ重要だと言うことなのだが)

また、敵対勢力であっても、交信すらできないのでは外交が成り立たない。
オリオン大戦の最中のアトラス連合とタイランタ連邦ですら、この通信の回線は切らなかったと言われており、終戦に至った連邦総統府からの声明もこの回線を通じてなされている。



制銀権


銀河社会において惑星を制圧すると言うのは、この「所属する通信網を自身連合の通信網に変えさせることを意味している」と言っても過言ではない。
自身の味方の通信網の範囲内であれば、本部との間、あるいは何光年もの距離を置いて散開する艦隊間でも、相互に緊密な連携が取れる。(通常宇宙船の通信速度1MTLなら1光年30秒で通信が可能である。)
ところが、敵の通信網の中に飛び入り、自身の味方の通信網から離れるならば、それは惑星からの通信という形での支援が非常に受け辛くなる一方、敵は通信し放題になる。
後方支援基地からの援軍がどこに乱入してくるかわからないなど、戦略的な戦闘の主導権は敵方に奪われてしまう。
密集した艦隊内部ならば通信速度の問題は生じにくく、戦術的影響は小さい場合も大きいが、宇宙艦隊を密集させるのは、艦隊の働きが非常に悪くなってしまう。
絶対的な力の差に物を言わせ、艦隊を密集させて1か所めがけて進撃させると言う戦術もなくはないが、総力戦になればいくら密集艦隊でもなす術がないケースも多い。
時には待ち構えて機雷を大量に敷設しておくなどといった極めて初歩的な戦術に引っかかることもある。
多くは起死回生を狙ったイチかバチかの戦法であり、戦況優位な側がとる戦法ではない。

このように、通信網を掌握している状態を制銀権と呼ぶことがある。

銀河連合境界宙域においては、しばしば差し手争いともいうべき「制銀権の奪い合い」が展開される。個別惑星に対して「うちの通信網に入れ」と勧誘するのである。
特に大規模な艦隊決戦が見込まれる場合には、普段は利益誘導で済む奪い合いが激化し、外交的恫喝が日常茶飯事となる。
惑星も惑星の側で、時には、死の商人のように両方の通信網を置いておくと言うしたたかな手段を取る惑星も少なくない。
これは外患誘致に近い行為である。事態が明らかになった場合には、星間社会から激しい社会的非難が発生することも少なくない。
他方、銀河連合間の戦争という荒波に翻弄される個別惑星が生き残るにあたっては仕方がない対応だと言う面もある。(「銀河列強の外交的恫喝に屈しない個別惑星」は監視者惑星でも容易ではない)
そのため、勢力地図や戦力面に余裕がある銀河連合は、多くの場合こうした死の商人行為や寝返り行為に対してはある程度は寛大な対応を取る。
戦後制銀権を回復するに際しても、個別惑星の監視を強めるにとどめる。逆に外圧に屈さず通信網を維持し続けた惑星に対し、防衛軍の増派など、外交的な配慮を行う形での差別化をすることが多い。
逆に、余裕のない開発者連合は、しばしばそういった惑星に対して強引な進駐を行うなど強硬対応を取る。勝てばよいが、敗北した場合には非人道的連合として事後的にこうした外圧が槍玉にあげられる例も少なくない。


通信中枢艦


通信中枢艦は、更にこの制銀権の概念をもひっくり返しかねない代物である。
個別の惑星に設置すべき通信端末を艦に載せ、テクトラクタや本部基地との超超高速通信をこれ一隻で可能にできる。
通信中枢艦以外の通信艦もあり、テクトラクタや本部基地と連絡することができる。
しかし、これらは味方の個別惑星端末を通じた通信を前提にしており、制銀権があることを前提にしなければ超超光速通信の運用まではできないのである。
通信中枢艦を派遣することで、敵の制銀権における優位を奪うことができるのである。

しかし、通信中枢艦によって制銀権概念が無意味になるかというと必ずしもそうではない。

通信中枢艦があったとしても、通信機器は巨大であり更に超超光速通信につなぐとなればデリケート極まりない。少なくとも開発者種族による建造はほぼ不可能と言える(艦があれば運用自体はある程度可能)。
分離合体艦に搭載することも技術的には非常に困難である。
必然的に大型化して守りにくくなるし、速度も出せなくなる(艦隊に随伴するとそれだけで艦隊の速度が落ちる)。大量の護衛艦をつけなければならないし、目立つし、重要性が容易に分かってしまうために狙われやすい。
(開き直って大型化させ、移動要塞のようにする例もあるが、それでも前線にバリバリ出す例はないと思ってよい。銀河社会において、支援兵力による相対的不沈艦はあれど、絶対的不沈艦はまずありえない)
空間シールドをつけるのは当然だが、空間シールドさえつけておけば無敗というほど空間シールドの防御力は絶対ではないし、シールドを展開するとそれだけでもう通信できない。
星雲が間に入っているとそれだけでジャミングが起こるなど、運用における配慮は非常に頭が痛いことになる。
しかも、監視者技術でさえ、戦艦を量産するより1隻作るのが大変である。(通信中枢艦1隻と引き換えに惑星数百個買えると思うべき)
このため、制銀権があるならば制銀権に頼った運用をする方が断然お得である。

それでも、最新鋭戦艦十隻と通信中枢艦一隻の取引ですら、「通信中枢艦一隻やられる方が大きい」と言われるほどにその戦略的価値は重視されている。
これを作って運用できるかどうかが「監視者連合」の格を象徴すると言っても過言ではない。(役割が重要すぎるため、「通信中枢艦を使い捨てするほどに大量に保有する銀河列強」はチート疑惑をかけられると考えた方がよい)
また、どちらかといえば制銀権のない所に出張する場合、すなわち攻勢向けに運用する兵器であるため、戦況が守勢に回ると出番がないケースが多い。(安定した監視者連合が攻勢に出る例自体そう多くはない)
アトラス連合は通信中枢艦を複数有していたにもかかわらず、タイランタに押し込まれたのは攻勢に出なかったため通信中枢艦の出番がなかったためである。

当然、これを投入するのは非常事態の中の非常事態であり、常時に制銀権を確立しておくことが重視されるのは通信中枢艦の保有の有無を問わないのである。


デザイン・プロフィール:当初は装備としての通信中枢艦を考えていたものだが、銀河社会の通信事情や制銀権の概念に思いが至ったため、通信事情という視点からまとめなおしている。
もちろん、これは白銀試案に過ぎず、Gma氏による監修が必要である。
地球上であれば、1秒地球7周半の光による通信で全く不便はないが、宇宙では1光年でも通信に1年かかってしまう。
地球から1番近い星までも片道4年以上となってしまい、全く実用的ではない(GDW宇宙はそんなに気宇壮大ではない^^)。
宇宙もの創作では、意図的に無視していることも少なくない要素であるが、GDWにおいて無視していいとも思えず、むしろこうした縛りを生んだ方が社会考証として面白さが出てくると踏んだもの。
制海権や制空権の概念すらよく分かっていない白銀であるが(爆砕)、「制宙権」ではもっと局地的なイメージがあった上、制河権では川に見えるので、制銀権という名前だけはかっこよさげな考え方を考案したもの(爆)。


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最終更新:2016年09月06日 01:15