更新日:2017/12/19 Tue 18:19:46


組体操に関するGma氏の論考
に違和感が爆発してしまったので、一筆書いてみることとした。


学校教育、特に体育系の協議について「安全絶対」という訳にもいかないことはご承知の通りである。

安全性と必要性の兼ね合いで危険性のあることも行われるのが当然であり、危険性は高いがどうしても必要だから教える、と言うこともある。
逆に、危険性は低いが必要性も低いからわざわざ時間を取って教えない、ということも考えられるだろう。

その点で危険性と必要性の評価をどうとるかは人によって考え方が分かれる。
白銀は危険性が高いと考えるが、学校内でのほかの行事などと事故発生率を比較する材料も持っていない。
Gma氏とて、安全性をどうでもいいなどと考えていないことははっきり文中に示している。

感性の差、と言う点が大きいことを認めた上で、Gma氏の視点にものすごく違和感があった点がいくつかあったのでそこを指摘しておきたい。



一、難しいから達成感があるのか?


白銀も小学校の頃は組体操をやった経験がある(中学ではやらなかったが、安全性問題故かは不明)。
特にピラミッドをはじめとする危険性が高い競技の場合、下の段にいる生徒たちは自分で自分の競技の「結果」を見ることはできない。
白銀は体が大きかったためにいつもピラミッドは下に置かれ、ピーと言う笛が鳴ることでしか自身の作品の「完成」を知ることが出来ない。
写真に撮ったところで、大勢の一人としてしか映らないのである。白銀自身、写真はあったが尻しか映っていなかった。(正面は他の親が殺到してしまう)
多数のピラミッドが立ったため、正面の写真を見る機会すらなかった。

こんなものに対して「難しいから達成感」というのは、あまりに論理が飛躍しているのではないだろうか。
そういうものに達成感を感じる子どもたちがいるのは否定しないが、白銀にとって組体操は痛い思い出でしかない。


二、組体操の有する「強制」の側面


生徒は判断能力が未成熟である。
事故が起こり、自分が障害を抱えて生きていくとか、その意味を十分理解できていない。

「生徒がやりたいと言ったから自己責任」と免罪符にするのは論外である。
ただし、生徒が自分からやろうとしているからこそ、一定の教育効果があるという可能性はあるだろう。

実は白銀の通っていた小学校は「無理なら加わらず座っていていい」というお達しがあった。
だが、父兄や先生方、来賓が見ていて周囲は皆組体操をやっている中で、少人数だけがただ衆人環視の中で座って見ている。
これでは「自分は組体操できません」と、衆人環視の中で晒し者にされるのと変わらない。
実際、座っていた生徒は白銀の周囲にはいなかった。

組体操について、危険性を感じたり、身体能力的についていけない児童生徒に「組体操に加わらない」という選択肢はほぼ残されていない。
人による身体の条件などをチェックされることもないまま「とにかくやれ」が組体操になっていると言う現実には目を向けるべきであろう。

三、組体操を支えられない学校現場


組体操が本質的に危険と言うより研修の形式化や不行届が背景になっているケースも多く、残したいという意見である。
仮に研修を形式化せず、監督不行届がなければ大丈夫だとすれば(個人的にはそうは思えないが)、確かに何とか残すという意見にも一理出てくるかもしれない。

だが、これは学校現場の疲弊と言う状況を無視して語れない。(なお、この点はGma氏は意識している)
既に学校現場において、先生方は科目教育、進路指導、生活指導、保護者対応などでブラック企業並みの激務にさらされているケースが多い。
全員顧問制で部活指導までさせないで欲しいという悲鳴も先生方から聞かれているのが実態である。
研修の形式化などは、それでも先生方の人数と質を何とか守っていかなければならないが故の苦肉の策と考えられる。

組体操は、あくまでも運動会などで行われる一種目にすぎない。
そのためだけに形式的でないきちんとした研修をせよ、残していこうというのは無茶である。
そんなにも残すべきなら、運動会の一種目と言う扱いにする必要もないではないか?

そして、順序として、形式的でない徹底的な研修と十分な監督環境が整ったので組体操を復活させるという流れが適切であろう。
想定外の事故が起きてみて安全性を再検証するというのはやむを得ない場合もあるが、事故連発と言う状況でも続けながら模索と言うのは子どもの安全を軽視していると言われてもやむを得ない。

四、親の責任???


子どもに愛情があるなら事故が起きる前に目を配れ、というのはあまりにも無体な言い種であろう。
ここについては、組体操守りたさにGma氏も筆を滑らせた感がぬぐえない。

組体操は、ある程度専門性を有していると思われる体育教師ですら安全性が確保できない代物である。
それに父兄のような素人が口出しをしたところで、より安全な組体操が実現できる可能性などないだろう。
実際に親にできることは、せいぜい生徒に「参加するな」と指導するストライキか、事故が起こってから事後的な賠償を請求することくらいしかない。
現実に体育教師が組体操をやると言ったところで、事故が起きた訳でもないのに学校に問題提起するならば、モンスターペアレントと扱われることは必至である。

現状を否定するばかりで今後のためにはならないというが、そのために非現実的な対応を要求することこそより今後のためにならないのであり、ここについてはあまりにも不条理な言い種と考える。


五、排除の論理と排除の責任


組体操がより安全に、かつ現実的な方法で行えるのであれば、既にそうしているはずであろう。事故を起こしたくて事故を起こす教師はいない。
しかし、それが今に至っても事故が連発し、なおも抜本的な改善が認められないのは、当面現実的な代案というものが存在しないからなのではないか。
既に起こった事件について、「個別教師の監督不行届」ではとどまらない、「宿命的な危険」を疑うべき時に来てしまったのではないかと考えるのだ。

というのも、最初、組体操を行うかどうかは個々の学校の裁量に任せられていた。
つまり、個別の教師が「これでは無理だ」と判断して組体操の実行を止めたり、安全を確保した方法で行うことが適切な安全への歯止めになり、排除せずに安全を保てると考えられていた。問題になったのが比較的最近であるためか「排除の論理」が突然登場したように見えたのかもしれないが、実はすでに排除の論理によらずに済むように、個々の教師がやるかやらないかを判断するという方法に任されていたのである。
しかし、そうして許していた結果、十分な指導ができないのに「伝統」「絆」などと言う言葉で押し切られてしまい、組体操が危険か否かにかかわらず一律に行われ、事故が後を絶たない。
結果として、お上による一律禁止と言う「排除の論理」に頼らざるを得なくなったのである。


排除せず共生を模索することは重要だが、共生できない域というのはどうしても存在する。
一度免許を取った人であっても、道路上で事故を起こし、他の車や歩行者と共生できないと判断された運転者は最後は免許を取り上げられ、安全運転ができるようになるまでは車の運転から排除される。
どれだけ生活に必要な車でもである。
それが交通安全を守るべき警察や行政の責任である。

事故を繰り返し、生徒と共生するようになることができない組体操は排除される。
それが生徒を守るべき大人の責任・けじめである。
運転免許は大人が自発的に取っているが、組体操は生徒に半強制的に行わせる以上、運転免許より強く学校の責任やけじめが意識されるべきだ。

白銀は「既に教師の裁量に任せていた時期で、排除に拠らない方法は模索された。それで事故が防げない以上、もう組体操はけじめをつけるべき時に来てしまった」と認識しているのだ。
せめて、個々の教師が「無理な組体操を行わない取組」などをしっかり行い実績を残しているならば、白銀も「個々の教師の問題で模索の猶予を与えるべき」と言う指摘に説得力を見出したと思う。
しかし、監督不行届は相変わらずだし、一部では学校が「伝統」の一言で押し切ってしまう例もあるという。これでは、むしろけじめの必要性を自ら露呈していると言える。

おそらくGma氏も、仮に今後何十年も事故が起こり続け改善が見られないとなれば、安全を守るべき学校の責任としての排除は支持すると思われる。
どこでけじめをつけるべきかは感覚に違いがあるかもしれない。
しかし、「ここにきて共生を模索することもないまま排除の論理が最近突然登場した」という認識ならば、白銀の認識とだいぶ違うと言うことは言える。

六、白銀の私見


ちなみに白銀自身は、組体操の中でも危険性の比較的高い物については「志願者制」ならば支持する。
志願した生徒を選び、体格や運動能力をチェックした上で体格的・運動能力的に合わない場合には辞退してもらう。

もちろん募集に当たっては危険があることなどを十分理解してもらい、加わらない生徒に対しても「加わらなくて当然、卑屈になる必要はない」としっかりフォロー。
いわば少年団やサークル活動として扱うことで、組体操による達成感を望む生徒たちに道を開くことはできるだろうと考えるのだ。

むろん、そのような対応を学校現場で行うことは難しいのかもしれない。
それならば、組体操禁止はやむを得ないと考える。




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最終更新:2017年12月19日 18:19