今と、明日と

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第7話「今と、明日と」 連邦の出頭要請を受託したグランドコンボイは 政府高官たちによって事情聴取を受けることになった。 だがどうやら、この事情聴取自体が政府内の反TF派の煽動によって開催されたようで、 つまり巨大戦艦がサイバトロン関連のものだという確たる証拠は何一つ無いのだった。 故に、グランドコンボイが知らぬ存ぜぬを通せば (もちろん実際に知らないので、そうするしかないのだが)、 はいそうですかと頷くしかない。 典型的な茶番だが、それでも何らかのリアクションは起こさねばならない。 結局、その巨大戦艦に対し調査隊が派遣されることとなり、 グランドコンボイ以下サイバトロンたちもオブザーバーとして同行することになった。 問題は、現在の火星は連邦の管下にないことだ。さらに相手はおそらく異星人の艦である。 最悪の事態を想定すると、通常の船舶はおろか、軍艦でも心もとない。 ましてや、大規模な艦隊を派遣することも現実的ではない。 そこで白羽の矢が立てられたのが、地球防衛軍だった。 「で、結局断りきれなかったのか?」 「いやー、大空魔竜なら惑星間航行もお手の物だってうっかり自慢しちゃってさぁ」 ガリスは仮面の内側でため息をついた。 連邦政府には大空魔竜を秘密にしていた手前もあり、 真田長官も承諾せざるをえなかったのだろうという事情は察するが。 とはいえ、収穫もあった。 代わりに、というわけでもないが、先日オーブで共に戦ったスペースアークを 出向という形で地球防衛軍に加えることになったのだ。 これなら陣容は申し分ないだろう。 もちろん、スペースアーク側の待遇も、すんなり決まったわけではない。 艦に掛けられた反逆の嫌疑はグランドコンボイやカガリらのとりなしでどうにか解けたものの、 機密漏洩に関してはそうと言われれば否定できないため、 正式に軍属として編入されたうえでスペースアークごと地球防衛軍に押し付けられても、 シーブックたちには拒否できなかった。 しかし、これはある意味幸いだったろう。 リィズも地球防衛軍本部に受け入れてもらえることになり、離れ離れにならずにすんだのだから。 地球防衛軍やサイバトロンと合流すべく、スペースアークがオーブを離れるその前日。 最後の外出許可を与えられ、シーブックたちは、オーブに残る幾人かの友人たちとの別れを惜しんだが、 しかし街を歩くうちに、リィズとはぐれてしまう。 シーブックは妹を探して歩くうちに海岸沿い公園に出た。 そこでリィズと、自分と同じくらい歳の少年と出会う。 どうやら、この少年が、リィズを保護してくれていたようだ。 礼を言うべく近付くと、横合いからもう少し年上の青年が現れ声を掛けてきた。 先の戦争の慰霊碑の前でなんとなく語らう4人だが 青年が慰霊碑を囲む花々に波が被ったことを惜しむと 「ごまかせないってことかも。いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす」 少年はそう語る。 ……なんと悲しいことを言うのだろうか。 けれどもシーブックにはなんとなく想像が付いた。少年の家族は、おそらくもう居ないのだと。 両親は消息不明で傍に居るのは妹だけ。シーブックには少年の気持ちが痛いほど判る。 それは青年やリィズにも判ったのだろう。 だが押し黙る青年とは対照的に、リィズは少年を強く諌めてしまう。 幼いゆえの真っ直ぐな言葉は、しかし少年の心に届いたようには見えなかった。 一方、火星。地表に向けて降下するシャトルの内部。 「ゼルダンよ、どう見た?」 惑星国家キルナの大統領クレスト・ギスカールの質問にゼルダンが答える。 「さて……占拠をご命じならばそれは可能でしょう。ただ、我が軍の戦力の大半を投入すれば、の話です」 それでもあれだけの戦艦である。少なからぬ損害を蒙るのは避けられないだろう。 2人はたった今、火星上空に現れた巨大戦艦の首脳との会談を終えてきたところだった。 先方の説明によれば、彼らは事故によって偶然この宙域にやってきてしまった異星人であるという。 容姿は驚くほど地球人に似ていたが、確かにその技術力は現在の地球の比ではない。 出来れば取り込みたいところではあるが。 「それでは地球侵攻に支障を来たすか。だが放置するわけにもいくまい」 しばらくの滞在許可は与えたはしたが、長居されてもそれはそれで困る。 「このまま去ってくれればそれでよし、ですが可能ならば地球に押し付けたいところです」 「地球にか?確かにな。しかし連邦、いやプラントあたりの手に落ちても厄介だぞ」 「そのためのエネルゴン、そして装甲巨神の奪取でありましょう」 現在の地球にアルゴノートのような、強大かつどこの陣営にも属さぬ艦が現れたらどうなるか、 それは言わずもがなであろう。 だからこそ、キルナが乗じる隙も生じるというもの。そうゼルダンは言うのだった。 刹那・F・セイエイは孤独な……否、ガンダムエクシアと、 そして沙慈・クロスロードと共に逃避行を続けていた。 特務部隊「アロウズ」の動向を追っていた刹那はその途中、 カタロンの構成員の嫌疑を掛けられていた旧知の沙慈と再会、 彼を救出したのだった。 しかしその代償として、2人はアロウズに追われることになってしまう。 先のフロンティアサイドでのダメージも修理できていない満身創痍のエクシアで、 それでも何機か返り討ちにする刹那。 だが遂に、アロウズに捕捉されてしまうときがきた。 損傷のためにもはや回避もままならぬ状況に、さしもの刹那も覚悟を決めたが。 いかなる偶然か……いや、あるいは黄金の種族の意志なのだろうか。 次の瞬間、なんの前触れもなく、強烈な時空震がその宙域を襲った。 火星に向けて出発した直後、地球防衛軍艦隊(二隻だけだが、真田長官はそう称した)は 近くの宙域からの緊急通信を受信した。 「救援要請?ほっとけ、アロウズには関わりたくない……いや、恩を売っておくのもいいかな?」 真田のあまりにも正直すぎる発言に周囲が慌てたが、 アレクサを始めとした連邦の調査団の面々、 とりわけ軍から派遣されたセルゲイ・スミルノフ大佐は苦笑しただけだった。 「待って下さい、この反応は……アリ塚です!アリ塚が二基!」 だがルルの報告に、その苦笑も凍りつく。 アロウズ部隊を襲っているのは青銅の種族だったのだ。 これはさすがに看過できない。 調査団からも正式に要請され、大空魔竜とスペースアーク、そしてトランスフォーマーたちは 現場へと急行した。 別の一団も、アリ塚出現の報を受けて対応を迫られていた。 アルゴノートの乗組員たちである。 キルナとの交渉を通じて、いま居るこの場所が過去の太陽系であると確信した彼らは、 無用の混乱を生じさせるのを避けるため、エイジと合流するとともに、 太陽系外縁のどこかに身を潜めよう、という結論を一旦は出したのだが。 「我々が連れて来てしまった、ということか」 おそらく、磁気嵐のなかアルゴノートを追撃してきたアリ塚なのだろう。 彼らの知る歴史では、青銅の種族との接触はもっとずっと未来、 人類が他星系に進出してからの出来事であるはずだった。 『行きましょう艦長。我々をこの時代に導いた黄金の種族の意図を知ることはかないませんが、 今はこれが我々のなすべきことだと信じます』 かつて、青銅の種族の襲撃で、人類は母なる地球を捨てねばならなかった。 その悲劇を、いまこの時点で引き起こさせるわけにはいかない。 ディアネイラの決断を受けて、アルゴノートは地球に向けて発進した。 まったく予想外の脅威の出現にアロウズ部隊は混乱していた。 個々のパイロットは未知の相手にも臆することなく果敢に迎撃するものの、 集団としては有効な反撃態勢をとることができないまま、潰走しつつあった。 だからと言って刹那たちが助かったわけではない。 青銅の種族に取り付かれたエクシアの内部で沙慈は己が運命を呪った。 虫の餌になるくらいなら、アロウズのほうがまだマシだった、と。 だが次の瞬間、エクシアに取り付いていた青銅の種族が爆散した。 「無事か、刹那!」 「この声は……ティエリア?ティエリア・アーデか!?」 かつてのガンダムヴァーチェの酷似したMSが周囲の青銅の種族を薙ぎ払っていく。 だがいかんせん、数の桁が違いすぎる。 ヴァーチェの後継機たるセラヴィーガンダムと言えど、単機ではそう長く支えられない。 「刹那、トレミーに逃げ込め!」 そう、ソレスタルビーイングは滅んではいなかった。 四年もの長きに渡って、再起の機会を伺い、力を蓄え、 そして再び仲間に迎え入れるべく刹那を探していたのである。 青銅の種族の群れを粉砕しながらこちらに近付いてくるプトレマイオス2に向かって、 刹那はエクシアの最後の力を振り絞って加速をかけた。 「ガンダム!逃がすか!!」 「よせ准尉!退くんだ!」 ルイス・ハレヴィ。かつては沙慈のガールフレンドだった。 今は両親と、自らの左手を奪ったガンダムを憎悪する、アロウズの兵士。 彼女はエクシアにトドメを刺さんと追おうとするが、 それは同僚のアンドレイ・スミルノフと、 なにより間に立ちはだかった青銅の種族によって断念させられる。 「だが虫どもが離脱させてくれそうもないか」 ガンダムと違って、こちらには助けは来そうにない……こともなかった。 地球の方向から、巨大な竜が、こちらにやってくるのが見えた。 「あれは確か……?」 アンドレイがその詳細を思い出すまえに、 大空魔竜とスペースアークから出撃した鋼鉄の戦士たちが、青銅の種族とぶつかった。 刹那は着艦するや、再会の挨拶もそこそこに予備機の有無を尋ねた。 青銅の種族と戦うつもりなのだ。 刹那の意志が固いとみるや、イアン・ヴァスティはため息をつきながらも新しい機体を示す。 ダブルオーガンダム。二基の太陽炉を同調稼動させるツインドライヴシステムを採用した機体。 未だ起動成功には至っていないが、 Oガンダムの太陽炉ともっとも相性が良いとされるエクシアのそれならば、 起動するかもしれない。 沙慈が複雑な視線で見つめるなか、特急仕事でエクシアのGNドライヴがダブルオーに移設された。 だが……同調しない。 強引に同調させるべくトランザムを発動させるも、粒子融合率がわずかに足りない。 刹那は叫ぶ。 「目覚めてくれダブルオー。ここには0ガンダムと、エクシアと……俺がいる!」 トランスフォーマーならば慣れたもの。そのほかの地球防衛軍メンバーにとっても、 青銅の種族は二度目の相手だ。ある程度は勝手も判る。 だが宇宙戦そのものに不慣れな者も多く、やはり数も違う。 どうしても対応しきれない相手も出てくる。 やや弱体のスペースアークの対空砲火を掻い潜って、 何体かの青銅の種族が艦体に肉薄する。シーブックたちも追撃するが間に合わない。 ……その窮地を救ったのは、遂に起動したダブルオーガンダムだった。 「ソレスタルビーイング、ともに戦ってくれるのか」 その光景を見たセルゲイは感慨深げに呟いた。 いずれ再び戦わねばならない相手だからこそ。 その後、地球防衛軍とトランスフォーマー、ソレスタルビーイング、 そして残存するアロウズの奮闘でアリ塚の一基は破壊され、 あらかたの青銅の種族は片付けられた。 戦況不利とみたもう一基のアリ塚は撤収しようとし…… 遠距離からの砲撃を食らって爆発四散した。 一斉射撃でアリ塚を屠ったアルゴノートの威容に圧倒されながらも 真田長官は呟いた。 「ああ、うん、手間が省けたからいいんだけど……さ」 事態が収束するとこれ以上の長居は無用とばかり ソレスタルビーイングは早々と姿を消し、 ルイスたちアロウズにも、もはやそれを追う力は残されてはいなかった。 [[前へ>未来と、今と]] [[フローチャートに戻る>フローチャート]] [[次へ>カミングスーン]] 初登場ユニット ダブルオーガンダム(刹那) セラヴィーガンダム(ティエリア) プトレマイオス2(ラッセ) アヘッド ジンクス3アロウズ仕様(ルイス他) その他MSのアロウズ仕様 初登場キャラクター 沙慈・クロスロード ティエリア・アーデ ラッセ・アイオン フェルト・グレイス イアン・ヴァスティ ミレイナ・ヴァスティ クレスト・ギスカール ルイス・ハレヴィ チェックポイント ・アルゴノートの動向 話中で言及しましたが、どこか遠くに引き篭もってもらっても困るので いつどこに青銅の種族が現れるか判らないので、 地球からあんまり離れられないという制約をつけようかと。 どうやって追いつくか、についてはアルゴノートの方からやってくるという、 実に身も蓋もない方法で解決。 エイジは原作を見る限り、単独で恒星間航行が出来るので、適当に地球に来るんじゃないかと。 力の制約をどうするかにもよりますけど。 その辺も含めてまだ意見がいろいろあるみたいなので、 すいません以降は8話に丸投げのままです。 あとは連邦政府に任せて地球防衛軍は帰還、でいいかも。 ・スペースアーク このまま不安定な立場なままのもナンなので、 正式に地球防衛軍に出向ってかたちにしてみましたが、どうでしょうか? 余談ですが友人は全員が降りたわけではないので、 サム・エルグとかジョージ・アズマとかを出したりできるようにはしてます。 F91はある程度1stを準えてるようなんで、もしTV版が作られていたら 友人たちがMSパイロットになったり、という展開もあったかも。 ・シーブックとリィズとシン(とキラ) シン仲間化の伏線なんですけど、いちおう張るだけ張ってみただけで 使わなくてもいいような感じで。 妹キャラ繋がりでいけるかなぁと考えたんですが、 司馬まゆみはさすがに幼すぎるんでリィズで。 ・ダブルオー起動 アイディアを使わせていただき、今回の登場。 宇宙編1話でエクシアリペアが出た以上、 どっかでやらないといけないですしね。 沙慈が出たので各作品の主人公は一応全員登場したことになるのかしら? ・次回 こんなサブタイトルですので羅螺帝国登場編? もちろんあくまでも仮題ですので 別の題名で別のネタでも全然かまいませんし。
*第7話「今と、明日と」 連邦の出頭要請を受託したグランドコンボイは 政府高官たちによって事情聴取を受けることになった。 だがどうやら、この事情聴取自体が政府内の反TF派の煽動によって開催されたようで、 つまり巨大戦艦がサイバトロン関連のものだという確たる証拠は何一つ無いのだった。 故に、グランドコンボイが知らぬ存ぜぬを通せば (もちろん実際に知らないので、そうするしかないのだが)、 はいそうですかと頷くしかない。 典型的な茶番だが、それでも何らかのリアクションは起こさねばならない。 結局、その巨大戦艦に対し調査隊が派遣されることとなり、 グランドコンボイ以下サイバトロンたちもオブザーバーとして同行することになった。 問題は、現在の火星は連邦の管下にないことだ。さらに相手はおそらく異星人の艦である。 最悪の事態を想定すると、通常の船舶はおろか、軍艦でも心もとない。 ましてや、大規模な艦隊を派遣することも現実的ではない。 そこで白羽の矢が立てられたのが、地球防衛軍だった。 「で、結局断りきれなかったのか?」 「いやー、大空魔竜なら惑星間航行もお手の物だってうっかり自慢しちゃってさぁ」 ガリスは仮面の内側でため息をついた。 連邦政府には大空魔竜を秘密にしていた手前もあり、 真田長官も承諾せざるをえなかったのだろうという事情は察するが。 とはいえ、収穫もあった。 代わりに、というわけでもないが、先日オーブで共に戦ったスペースアークを 出向という形で地球防衛軍に加えることになったのだ。 これなら陣容は申し分ないだろう。 もちろん、スペースアーク側の待遇も、すんなり決まったわけではない。 艦に掛けられた反逆の嫌疑はグランドコンボイやカガリらのとりなしでどうにか解けたものの、 機密漏洩に関してはそうと言われれば否定できないため、 正式に軍属として編入されたうえでスペースアークごと地球防衛軍に押し付けられても、 シーブックたちには拒否できなかった。 しかし、これはある意味幸いだったろう。 リィズも地球防衛軍本部に受け入れてもらえることになり、離れ離れにならずにすんだのだから。 地球防衛軍やサイバトロンと合流すべく、スペースアークがオーブを離れるその前日。 最後の外出許可を与えられ、シーブックたちは、オーブに残る幾人かの友人たちとの別れを惜しんだが、 しかし街を歩くうちに、リィズとはぐれてしまう。 シーブックは妹を探して歩くうちに海岸沿い公園に出た。 そこでリィズと、自分と同じくらい歳の少年と出会う。 どうやら、この少年が、リィズを保護してくれていたようだ。 礼を言うべく近付くと、横合いからもう少し年上の青年が現れ声を掛けてきた。 先の戦争の慰霊碑の前でなんとなく語らう4人だが 青年が慰霊碑を囲む花々に波が被ったことを惜しむと 「ごまかせないってことかも。いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす」 少年はそう語る。 ……なんと悲しいことを言うのだろうか。 けれどもシーブックにはなんとなく想像が付いた。少年の家族は、おそらくもう居ないのだと。 両親は消息不明で傍に居るのは妹だけ。シーブックには少年の気持ちが痛いほど判る。 それは青年やリィズにも判ったのだろう。 だが押し黙る青年とは対照的に、リィズは少年を強く諌めてしまう。 幼いゆえの真っ直ぐな言葉は、しかし少年の心に届いたようには見えなかった。 一方、火星。地表に向けて降下するシャトルの内部。 「ゼルダンよ、どう見た?」 惑星国家キルナの大統領クレスト・ギスカールの質問にゼルダンが答える。 「さて……占拠をご命じならばそれは可能でしょう。ただ、我が軍の戦力の大半を投入すれば、の話です」 それでもあれだけの戦艦である。少なからぬ損害を蒙るのは避けられないだろう。 2人はたった今、火星上空に現れた巨大戦艦の首脳との会談を終えてきたところだった。 先方の説明によれば、彼らは事故によって偶然この宙域にやってきてしまった異星人であるという。 容姿は驚くほど地球人に似ていたが、確かにその技術力は現在の地球の比ではない。 出来れば取り込みたいところではあるが。 「それでは地球侵攻に支障を来たすか。だが放置するわけにもいくまい」 しばらくの滞在許可は与えたはしたが、長居されてもそれはそれで困る。 「このまま去ってくれればそれでよし、ですが可能ならば地球に押し付けたいところです」 「地球にか?確かにな。しかし連邦、いやプラントあたりの手に落ちても厄介だぞ」 「そのためのエネルゴン、そして装甲巨神の奪取でありましょう」 現在の地球にアルゴノートのような、強大かつどこの陣営にも属さぬ艦が現れたらどうなるか、 それは言わずもがなであろう。 だからこそ、キルナが乗じる隙も生じるというもの。そうゼルダンは言うのだった。 刹那・F・セイエイは孤独な……否、ガンダムエクシアと、 そして沙慈・クロスロードと共に逃避行を続けていた。 特務部隊「アロウズ」の動向を追っていた刹那はその途中、 カタロンの構成員の嫌疑を掛けられていた旧知の沙慈と再会、 彼を救出したのだった。 しかしその代償として、2人はアロウズに追われることになってしまう。 先のフロンティアサイドでのダメージも修理できていない満身創痍のエクシアで、 それでも何機か返り討ちにする刹那。 だが遂に、アロウズに捕捉されてしまうときがきた。 損傷のためにもはや回避もままならぬ状況に、さしもの刹那も覚悟を決めたが。 いかなる偶然か……いや、あるいは黄金の種族の意志なのだろうか。 次の瞬間、なんの前触れもなく、強烈な時空震がその宙域を襲った。 火星に向けて出発した直後、地球防衛軍艦隊(二隻だけだが、真田長官はそう称した)は 近くの宙域からの緊急通信を受信した。 「救援要請?ほっとけ、アロウズには関わりたくない……いや、恩を売っておくのもいいかな?」 真田のあまりにも正直すぎる発言に周囲が慌てたが、 アレクサを始めとした連邦の調査団の面々、 とりわけ軍から派遣されたセルゲイ・スミルノフ大佐は苦笑しただけだった。 「待って下さい、この反応は……アリ塚です!アリ塚が二基!」 だがルルの報告に、その苦笑も凍りつく。 アロウズ部隊を襲っているのは青銅の種族だったのだ。 これはさすがに看過できない。 調査団からも正式に要請され、大空魔竜とスペースアーク、そしてトランスフォーマーたちは 現場へと急行した。 別の一団も、アリ塚出現の報を受けて対応を迫られていた。 アルゴノートの乗組員たちである。 キルナとの交渉を通じて、いま居るこの場所が過去の太陽系であると確信した彼らは、 無用の混乱を生じさせるのを避けるため、エイジと合流するとともに、 太陽系外縁のどこかに身を潜めよう、という結論を一旦は出したのだが。 「我々が連れて来てしまった、ということか」 おそらく、磁気嵐のなかアルゴノートを追撃してきたアリ塚なのだろう。 彼らの知る歴史では、青銅の種族との接触はもっとずっと未来、 人類が他星系に進出してからの出来事であるはずだった。 『行きましょう艦長。我々をこの時代に導いた黄金の種族の意図を知ることはかないませんが、 今はこれが我々のなすべきことだと信じます』 かつて、青銅の種族の襲撃で、人類は母なる地球を捨てねばならなかった。 その悲劇を、いまこの時点で引き起こさせるわけにはいかない。 ディアネイラの決断を受けて、アルゴノートは地球に向けて発進した。 まったく予想外の脅威の出現にアロウズ部隊は混乱していた。 個々のパイロットは未知の相手にも臆することなく果敢に迎撃するものの、 集団としては有効な反撃態勢をとることができないまま、潰走しつつあった。 だからと言って刹那たちが助かったわけではない。 青銅の種族に取り付かれたエクシアの内部で沙慈は己が運命を呪った。 虫の餌になるくらいなら、アロウズのほうがまだマシだった、と。 だが次の瞬間、エクシアに取り付いていた青銅の種族が爆散した。 「無事か、刹那!」 「この声は……ティエリア?ティエリア・アーデか!?」 かつてのガンダムヴァーチェの酷似したMSが周囲の青銅の種族を薙ぎ払っていく。 だがいかんせん、数の桁が違いすぎる。 ヴァーチェの後継機たるセラヴィーガンダムと言えど、単機ではそう長く支えられない。 「刹那、トレミーに逃げ込め!」 そう、ソレスタルビーイングは滅んではいなかった。 四年もの長きに渡って、再起の機会を伺い、力を蓄え、 そして再び仲間に迎え入れるべく刹那を探していたのである。 青銅の種族の群れを粉砕しながらこちらに近付いてくるプトレマイオス2に向かって、 刹那はエクシアの最後の力を振り絞って加速をかけた。 「ガンダム!逃がすか!!」 「よせ准尉!退くんだ!」 ルイス・ハレヴィ。かつては沙慈のガールフレンドだった。 今は両親と、自らの左手を奪ったガンダムを憎悪する、アロウズの兵士。 彼女はエクシアにトドメを刺さんと追おうとするが、 それは同僚のアンドレイ・スミルノフと、 なにより間に立ちはだかった青銅の種族によって断念させられる。 「だが虫どもが離脱させてくれそうもないか」 ガンダムと違って、こちらには助けは来そうにない……こともなかった。 地球の方向から、巨大な竜が、こちらにやってくるのが見えた。 「あれは確か……?」 アンドレイがその詳細を思い出すまえに、 大空魔竜とスペースアークから出撃した鋼鉄の戦士たちが、青銅の種族とぶつかった。 刹那は着艦するや、再会の挨拶もそこそこに予備機の有無を尋ねた。 青銅の種族と戦うつもりなのだ。 刹那の意志が固いとみるや、イアン・ヴァスティはため息をつきながらも新しい機体を示す。 ダブルオーガンダム。二基の太陽炉を同調稼動させるツインドライヴシステムを採用した機体。 未だ起動成功には至っていないが、 Oガンダムの太陽炉ともっとも相性が良いとされるエクシアのそれならば、 起動するかもしれない。 沙慈が複雑な視線で見つめるなか、特急仕事でエクシアのGNドライヴがダブルオーに移設された。 だが……同調しない。 強引に同調させるべくトランザムを発動させるも、粒子融合率がわずかに足りない。 刹那は叫ぶ。 「目覚めてくれダブルオー。ここには0ガンダムと、エクシアと……俺がいる!」 トランスフォーマーならば慣れたもの。そのほかの地球防衛軍メンバーにとっても、 青銅の種族は二度目の相手だ。ある程度は勝手も判る。 だが宇宙戦そのものに不慣れな者も多く、やはり数も違う。 どうしても対応しきれない相手も出てくる。 やや弱体のスペースアークの対空砲火を掻い潜って、 何体かの青銅の種族が艦体に肉薄する。シーブックたちも追撃するが間に合わない。 ……その窮地を救ったのは、遂に起動したダブルオーガンダムだった。 「ソレスタルビーイング、ともに戦ってくれるのか」 その光景を見たセルゲイは感慨深げに呟いた。 いずれ再び戦わねばならない相手だからこそ。 その後、地球防衛軍とトランスフォーマー、ソレスタルビーイング、 そして残存するアロウズの奮闘でアリ塚の一基は破壊され、 あらかたの青銅の種族は片付けられた。 戦況不利とみたもう一基のアリ塚は撤収しようとし…… 遠距離からの砲撃を食らって爆発四散した。 一斉射撃でアリ塚を屠ったアルゴノートの威容に圧倒されながらも 真田長官は呟いた。 「ああ、うん、手間が省けたからいいんだけど……さ」 事態が収束するとこれ以上の長居は無用とばかり ソレスタルビーイングは早々と姿を消し、 ルイスたちアロウズにも、もはやそれを追う力は残されてはいなかった。 [[前へ>未来と、今と]] [[フローチャートに戻る>フローチャート]] [[次へ>カミングスーン]] 初登場ユニット ダブルオーガンダム(刹那) セラヴィーガンダム(ティエリア) プトレマイオス2(ラッセ) アヘッド ジンクス3アロウズ仕様(ルイス他) その他MSのアロウズ仕様 初登場キャラクター 沙慈・クロスロード ティエリア・アーデ ラッセ・アイオン フェルト・グレイス イアン・ヴァスティ ミレイナ・ヴァスティ クレスト・ギスカール ルイス・ハレヴィ チェックポイント ・アルゴノートの動向 話中で言及しましたが、どこか遠くに引き篭もってもらっても困るので いつどこに青銅の種族が現れるか判らないので、 地球からあんまり離れられないという制約をつけようかと。 どうやって追いつくか、についてはアルゴノートの方からやってくるという、 実に身も蓋もない方法で解決。 エイジは原作を見る限り、単独で恒星間航行が出来るので、適当に地球に来るんじゃないかと。 力の制約をどうするかにもよりますけど。 その辺も含めてまだ意見がいろいろあるみたいなので、 すいません以降は8話に丸投げのままです。 あとは連邦政府に任せて地球防衛軍は帰還、でいいかも。 ・スペースアーク このまま不安定な立場なままのもナンなので、 正式に地球防衛軍に出向ってかたちにしてみましたが、どうでしょうか? 余談ですが友人は全員が降りたわけではないので、 サム・エルグとかジョージ・アズマとかを出したりできるようにはしてます。 F91はある程度1stを準えてるようなんで、もしTV版が作られていたら 友人たちがMSパイロットになったり、という展開もあったかも。 ・シーブックとリィズとシン(とキラ) シン仲間化の伏線なんですけど、いちおう張るだけ張ってみただけで 使わなくてもいいような感じで。 妹キャラ繋がりでいけるかなぁと考えたんですが、 司馬まゆみはさすがに幼すぎるんでリィズで。 ・ダブルオー起動 アイディアを使わせていただき、今回の登場。 宇宙編1話でエクシアリペアが出た以上、 どっかでやらないといけないですしね。 沙慈が出たので各作品の主人公は一応全員登場したことになるのかしら? ・次回 こんなサブタイトルですので羅螺帝国登場編? もちろんあくまでも仮題ですので 別の題名で別のネタでも全然かまいませんし。

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