見知った顔、見知らぬ人


地上ルート第二話 「見知った顔、見知らぬ人」


「邪魔大王国に羅螺帝国?」
パラレルワールドから来たという真田三月の説明に対し、
司馬宙はどうも半信半疑の風であったが、
ともかくも真田健には引き合わせてくれるという。
宙ならば、と三月も打ち明けたのだが、
宙の方はというと、こんな荒唐無稽な話を半分であっても信じたのは、
本当の研究課題は並行世界についてだと、真田健本人から聞いたことがあったからだ。
司馬モータースからの道中、宙はこの世界の情勢……、
とりわけ、現在日本を脅かす二つの勢力について三月に語った。

邪魔大王国とは古代日本を支配していた異形の勢力である。
如何なる理由かこの西暦2312年のいま、長い眠りより目覚め、
現代にかつての版図を復活せんと、各地に尖兵を送り込んでくるのだという。
そして羅螺帝国とは。

「親父の……司馬遷次郎の友人だった羅螺博士が作った、世界征服を企む秘密結社だ」
「羅螺小父さんが……」
「そうか、君も知り合いか」

羅螺博士は三月にとっても父の友人として、古くから親しくしていた存在である。
あくまでも元の世界で、だが。
こちらの世界の羅螺は遷次郎、真田とともに共同で研究していた古代遺跡の大部分を持ち逃げし、
その技術を独占、あろうことか羅螺帝国を名乗って地球連邦に宣戦を布告したのである。

どちらの勢力も、現代の科学力では計り知れない超技術の軍団を擁しているため、
通常の地球連邦軍の戦力ではとても太刀打ちできない。
連邦軍最強の誉れも高い特殊部隊アロウズならば対抗することも出来たが、
しかしこれは精鋭だけに数の不足は否めず、
さらにアロウズ本来の任務である対テロ作戦をおろそかにするわけにもいかない。
そこで白羽の矢を立てられたのが、遷次郎と真田だったのである。

彼ら2人が中心となって結成されたのが「地球防衛軍」なる私設防衛組織。
今、三月と宙が向かっているのは、その地球防衛軍の司令本部「ビルドベース」。
概ね平和を謳歌していた自分たちの世界とはあまりにも違いすぎる状況に、
さすがの三月も目の前がくらくらするのを自覚した。


もっとも眩暈の度合いでは、地球防衛軍長官の真田健も負けていなかったろう。
羅螺帝国との交戦にかろうじて競り勝って安堵したところで、
いきなり並行世界の自分の娘を名乗る少女に引き合わされたのだから。
とはいえ、

「信じるしかないでしょう、羅螺でも知らないような僕の癖まで良く知ってるし」
「お父さん!」

歓喜のあまり抱きつこうとする三月を押しとどめながら、しかし、と真田長官は続けた。
並行世界の存在が証明されたのは嬉しいが、今の自分は防衛軍司令長官としての任務に忙殺されて
並行世界間を移動する研究は未完成。
だから、もし四加一樹が見つかっても、すぐに元の世界に帰せるわけではない。
それ以外のこと、つまり一樹やホットロディマスの捜索、
そしてデストロンの捜査については出来る限り協力するという。

「まあ、その辺はおいおい相談していくことにしよう。
今日のところはそうだなぁ、ホテルにでも……」
「それだったら続けてウチに泊まってもらっていいぜ。狭いが、それでよければ大歓迎だ」
「ありがとうございます。でも、お父さんの家に帰りますから」

三月は、狼狽する真田長官を強引に説き伏せて

「宙さん、有難うございました。また改めてお礼に……」

そこで突如、警報が鳴り響いた。
邪魔大王国が出現したのだ。近隣の連邦軍基地が襲われている。

「どうやら俺の出番みたいだな!」
「うむ、頼むぞ宙君!」

飛び出していく宙の背中を見送りながら、真田長官は三月のために解説した。
この世界の彼は、邪魔大王国と戦う戦士「鋼鉄ジーグ」なのだ、と。

邪魔大王国は異次元科学の粋、彼らがハニワ幻人と呼ぶ巨大な尖兵を用い破壊の限りを尽くす。
そもそも二線級の装備しかない連邦軍基地では、端から勝負にならなかった。

「羅螺帝国との戦いで戦力が出払った隙を突かれたか。敵もやりおる」

呟くマシンファーザー……それは司馬遷次郎の人格を移植された、このビルドベースの巨大電子頭脳である。
邪魔大王国の襲撃によって亡くなった遷次郎だが、死してなお、彼らと戦い続けているのだ。

「感心してる場合じゃないでしょう。宙くんと美和さんだけで大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、2人ならやれる!」

連邦政府の監察官・山野茜の問いかけに断言するマシンファーザー。
司令室に駆けつけた真田親子とともに見守るモニターの向こうでは、
今まさに鋼鉄ジーグとハニワ幻人軍団との決戦が開始されようとしていた。

「今日こそ息の根を止めてやるぞ鋼鉄ジーグ!」

邪魔大王国三幹部の一人イキマが吼える。

「数が多けりゃいいってもんじゃないぜ! 鉄ジーィィィグ!」
「ジーグパーツ、シュート!」
「ビルドアァァップ!!」

掛け声とともにジーグヘッドに変身、支援機ビッグシューターから射出された胴体部と合体し、
今ここに司馬宙は無敵の戦士・鋼鉄ジーグになった!!
たちまち群がってくるハニワ幻人どもを千切っては投げ、投げては粉砕し、
獅子奮迅の働きをする鋼鉄ジーグ。
だがそれは邪魔大王国の罠だった!

「いくらでも掛かって来い、俺の敵じゃ……なに!?」
「うわっはっは、引っ掛かったな鋼鉄ジーグ!アマソ、やれ!」
「おう!」

突如として出現した幻魔要塞ヤマタノオロチが、その大蛇の首で、ビッグシューターを捕えたのだ!

「キャァァァ!」
「み、ミッチー!」

それだけではなかった。
新たなハニワ幻人がビルドベースに迫っていたのだ。
鋼鉄ジーグを始めとした戦力を全てカラにさせ、丸裸のビルドベースを襲う、
それが邪魔大王国の女王ヒミカが自ら立てた作戦であった。

「しまった、これが狙いか!真田、出撃させたコアロボットは!?」
「いま全力で帰還させていますが、それまで持つかどうか」

ビルドベースにも防御用の武器はあるとはいえ、さすがにハニワ幻人には敵わない。

「こういう時こそ俺様の出番だぜー、って、うぉぉぉい!」

自称宙のライバル、黒鷲のドンとその子分パンチョが乗るメカドンが現れ、
ハニワ幻人に挑みかかったがまったく歯が立たない。まさに絶体絶命!

「これは本格的に不味いな……司馬先輩、しばらく指揮をお願いします」

真田長官が三月を連れて行ったのは格納庫。そこには赤い巨大ロボットが一体。

「君はこのロボットで脱出してくれ」

負けるつもりはないが、万が一ということもある。
協力すると言ったそばから申し訳ないが、君にはやることがあるのだろう?
最初は反対した三月だが、そう真田長官に説得されてその「コアロボット2号機」に乗り込んだ。

「操縦はそんなに難しくない。シンパシーボールを握ってどう動かしたいか考えればいい。
発進のタイミングはこちらではかるから、とにかく逃げることだけ考えるんだ」

だが三月はそうは思わなかった。
まだ直接会っていないが、こちらの世界ではあの温厚な卯月美和まで必死に戦っている。
そしてなにより、こちらの父が死んだら、元の世界に帰れない!

飛び出したコアロボットは、まっすぐハニワ幻人に向かっていった!
もちろん敵うわけがない。簡単に動かせるといっても、
初めての三月の操縦は、暴走と言って良いレベルだ。
施設のあちこちにぶつかって、書庫や資材倉庫を壊してしまう始末。
だがその動きがかえってハニワ幻人を惑わした。
生じたその隙にメカドンが乗じて一撃をお見舞いする。
ハニワ幻人は、たまらず膝を付く。

「ああ、ワシの可愛いハニワ幻人が!」

空中に対して有効な攻撃手段を持たない鋼鉄ジーグをいたぶっていたアマソだが、
ビルドベースでの戦況に一瞬、気を取られる。
その隙を、鋼鉄ジーグは見逃さなかった。
ジーグビームの一撃で大蛇の首を薙ぎ払ってビッグシューターを解放すると

「ミッチー、マッハドリルを頼む!」
「了解。マッハドリル、シュートッ!」

鋼鉄ジーグが装着したマッハドリルの一穿は見事幻魔要塞ヤマタノオロチを切り裂く。

「ええい、またしてもか。鋼鉄ジーグ!そして地球防衛軍め!覚えておれ!」

たまらず、ヤマタノオロチは退却していった。

ビルドベースのハニワ幻人も、
急ぎ帰還したコアロボット1号機と3号機の攻撃で撃退された。

「厳しい戦いだったな。邪魔大王国がここまでの戦力を投入してくるとは」
「これからこちらも戦力の充実を考えねばなりませんね。それにしてもあの子は一体……?」

マシンファーザーと茜の視線の先では真田長官が三月を叱っていた。
勝てたからよいものの、まかり間違えば、君も、
ひいてはこの世界のどこかにいるであろう一樹も助けられなくなるところだった、と。

「……ごめんなさい、お父さん」

うなだれる三月に、だが真田長官は最後に付け加えて笑った。

「……それから、これからは外では長官と呼んでくれ、三月。この世界の私は、まだ未婚なんでね」





チェックポイント
  • デュアル!組について
一通り登場させ、さらに三月がパイロットになるまでを消化。
なので次回はデュアル!組のことはあまり気にせずやれるかと思います。
なお、四加一樹がこちらの世界に現れるのは、
原作によると三月の一ヵ月後なので、まだしばらく登場させないでも大丈夫です。

  • 司馬遷次郎と真田健、羅螺博士
同じ大学の先輩後輩、くらいな間柄と想定。

  • 地球防衛軍司令部ビルドベース
ちょっと強引ですが、両者を一緒にしてみました。
余談ですが原作での地球防衛軍司令部は区役所だか市役所の建物を使っています。

  • 鋼鉄ジーグ
まだサイボーグだと知らない時点にしてみました。
デュアル!のDがアンドロイドみたいなものなので、
なにかドラマが作れるかな、と。

  • ハニワ幻人
      • については良く知らないので個体名の補足は識者に任せた!

  • 次回
テラーコンがやってくるお話、だと思いますが
トランスフォーマー、とくにスーパーリンクは全く存じませんので、
後は任せたぞ、さらばだ!はっはっはっは!

新登場ユニットおよびキャラクター

味方
  • 鋼鉄ジーグ(鋼鉄ジーグ)
  • ビッグシューター(卯月美和)
  • メカドン1号(黒鷲のドン&パンチョ)

  • コアロボット1号機(弥生・シュバエル)
  • コアロボット2号機(真田三月)
  • コアロボット3号機(D)

  • マシンファーザー(司馬遷次郎)
  • 山野茜


  • 幻魔要塞ヤマタノオロチ(アマソ)
  • ハニワ幻人各種

  • イキマ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年10月02日 20:06