合衆国解体


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マニュアルのイントロダクションだとあの世界情勢にどうつながるのか理解できなかったので、Melting Point & Shattered World のイントロダクションとして書きました。それのアメリカ編です。

AAR マニュアル0.5
2019年末から2020年初頭にかけておきた一連の出来事は当時を生きる人々に大きな影響を与えた。一連の出来事に対する後世の歴史家の評価はさておき、激動の時代に身を投じる指導者たちのために、この僅かな期間に起きた数多くの出来事を記しておきたい。

20世紀後半が人類の統合の時代ならば21世紀は人類の分裂の時代と人々は称するだろう。
20世紀から21世紀にかけて世界を率いた大国の多くがこの僅かな数ヶ月間に地図から姿を消した。

合衆国崩壊
2008年のアメリカにおける不動産バブルの崩壊、そして原油をはじめとする各種資源の高騰が僅か12年後にアメリカ合衆国自体を崩壊に追い込んでしまうとは、当事者たちの誰もが想像すら出来なかった。
サブプライムローンという金融工学の錬金術によって生み出された怪物は世界の金融市場を連鎖的な崩壊に追いやり、2010年にはOPECのドルベック制離脱を招いた。資源価格の高騰は資源を持てる地域の富を拡大したが、結果的に引き起こされる世界経済の急減速は第二次、第三次産業を基盤とする国に大打撃を与えた。経済の急減速にかかわらず高止まりする資源価格は“持たざるもの”と“持てるもの”の格差を拡大させた。資源を有する国や地域の多くはその流入する富を再分配するのではなく、自らのためだけに使うことを選んだ。そのことが世界各地で分裂と紛争を生み出した。第二次世界大戦の終結から約80年。世界は再び戦火に包まれようとしていた。

2017年の過ち
2017年、当時のアメリカ合衆国大統領、ジョージ・ブッシュ3世は低迷するアメリカを救うため、カナダ侵攻計画を考案するも、その計画は国際社会から猛烈な非難を浴びた。計画を策定したアメリカ政府首脳陣は“アメリカを救わなければならない”という純粋な愛国心によって計画を考案したのだが、その代償は高くことになった。20世紀の後半と21世紀初頭にかけて築きあげてきた“世界の警察”としてのアメリカの信用は一夜にして瓦解し、これまで米軍の駐留を許してきた地域は一転して米軍の退去を要求した。NATOや日米安全保障条約は機能不全に陥り、血を分けた盟友とまで言われた米英関係も終焉を迎えることになった。アメリカの政治力と軍事力によって信任されていた外国為替市場もNY証券取引所もシカゴ先物取引市場も大混乱に陥り世界経済を更なる混迷に引きずり込んだ。
国内においても連邦政府に対する信頼は完膚なきまでに失われた。特に、徴兵制の復活はそのターゲットとされた貧困層、黒人層、ヒスパニック層から痛烈な反発を招き、全米各地での大暴動に発展した。
各州の世論も分裂した。カナダ侵攻計画を支持する州、しない州。大統領弾劾に賛成票を投じる議員、投じない議員。アメリカ合衆国は南北戦争以来最大の分裂の危機を迎えた。

分かれたる家は立つことあたわず
第16代アメリカ合衆国大統領、エイブラハム・リンカーンは南北戦争の後、「分かれたる家は立つことあたわず」と演説し合衆国の再統合に腐心した。アメリカ合衆国は合衆国というひとつの家であり、分裂してしまってはもはやアメリカではないと彼は考えたのであろう。しかしながら2010年から2020年にかけての連邦政府の混乱と失策は、アメリカ国民と合衆国を構成する各州に、連邦政府はもはや必要ないと思わせるだけの失策を重ねてきた。合衆国の分裂をとめようとする人々の努力もむなしく、合衆国の分裂はもはや時間の問題と思われた。そして2019年7月、カナダの崩壊によって引き起こされた侵略への誘惑は連邦政府を支持する州と支持しない州にアメリカ合衆国を二つに割った。

合衆国軍解体
2019年。カナダ侵攻を批判する北部各州は、州内に展開する合衆国軍を州軍に編入する決定を下した。連邦政府は、北部各州の公然とした反逆に対し軍事力を使うことを躊躇した。連邦政府の煮え切らない態度に業を煮やした、テキサス、イリノイ、ジョージア、カリフォルニア各州は北部各州に対抗するため、それぞれの領域内に展開する合衆国軍を接収した。各州の州知事や州知事に代わって権力を握ったものたちはその配下の軍隊を使い各州の独立を既成事実化しつつあった。有力各州が独立の方向へ舵を切ったことで、他の諸州も追随。各州の動きに対して連邦議会もペンタゴンもなんら有効な手を打つことが出来なかった。

全米各地に展開する接収を免れた合衆国軍は州軍に包囲され身動きの取れない状態にあった。合衆国軍が実力を持ってすれば、包囲を突破することも、各州の接収を免れることは十分に可能であったが、その場合、合衆国軍は本来守るべきアメリカ国民に対して銃を向けることになる。そのジレンマから合衆国軍は動けなかった。ホワイトハウスもまたアメリカ分裂を決定的なものとする引き金を引きたくないとの思いから、各州に対して強硬な手段に出ることを躊躇した。

星条旗よ永遠に
2020年春。ワシントンDCキャピタル・ヒルに大統領以下政府要人、上下両院議員、各州の代表者、そして各界の有識者らが集った。このときすでに連邦政府は事態を収拾する能力を失っており、連邦政府の支配の及ぶ領域はワシントン特別区のみとなっていた。
合衆国最後の議会。それぞれの立場の者たちの全身全霊をこめた議論が戦わされた。
ある者は「・・・この国及び国家機関は、国民の下にある。国民が存在する政府に飽きているならば、彼らにはそれを修正する憲法上の権利、あるいはそれを分割または倒す革命的な権利を行使することができる・・・」と主張し、
またある者は「・・・リベラルのアメリカも保守のアメリカもなく、ただ“アメリカ合衆国”があるだけだ。金持ちのアメリカも貧乏人のアメリカもなく、ただ“アメリカ合衆国”があるだけだ。黒人のアメリカも白人のアメリカもヒスパニックのアメリカもアジアンのアメリカもなく、ただ“アメリカ合衆国”があるだけだ。戦争に反対した愛国者も、支持した愛国者も、みな同じアメリカに忠誠を誓う“アメリカ人”なのだ・・・」と主張した。
議事堂の外ではアメリカ合衆国の解体を支持する市民と、政権の交代を行えばよしとする市民の間での衝突が起こっていた。

議会の開始から2日目。北部諸州とテキサス、イリノイ、ジョージア、カリフォルニアの各有力州との対立が頂点に達する。各州の代表者たちはアメリカ合衆国からの離脱を宣言。
超大国“アメリカ”がこの瞬間、正式に分裂した。各州知事たちはかつての州境、国境を封鎖し州軍から国軍に昇格した軍隊に動員をかけた。

この日の夜、ワシントンDCに掲げられたアメリカ国旗がゆっくりと引き降ろされた。アメリカ国歌「星条旗」の歌詞が夜空に響き渡る。
「・・・星散りばめたる旗よ 永久にたなびけ 自由なる大地 勇者の故郷に」

アメリカの分裂を歓迎する者、歓迎しない者。様々な人々の思いを乗せ、歴史の歯車がゆっくりと回りだす。来るべき戦いが、「アメリカ合衆国の2度目の内戦」と歴史に記憶されるか、それともまったく新しい国の戦争として歴史に記憶されるか、この時点で答えられるものは誰もいなかった。

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