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月刊コンピュータソフト情報1983年12月号P54

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緊急連載! MSXはビジネスユースにたえられるか?


冨成 正樹

メーカーの主張する“拡張性”に疑問符!


松下、東芝、日立、ソニー、三洋、三菱そして日本楽器、各家電メーカーは既にMSXパソコンの「第一世代機」の販売を開始。本誌が店頭に並ぶ頃には、街の家電販売店の店先を、MSXマーク入りのパソコンが華々しく飾っていることだろう。先月号ではMSXを従来のパソコンと比較した場合、家庭用テレビを流用する関係から画面の解像度が著しく低いこと、RAMの容量が少ないこと、などを指摘した。今号ではまず、「MSXがビジネスにも使えるのでは」と我々に大きな期待を持たせた“張本人”である「MSX-DOS」についての取材結果から報告したいと思う。結論から言えば、「CP/Mとの互換性あり」という部分に関してはやはり大きく裏切られたのであった。


裏切られた「CP/Mとの互換あり」への期待


 「MSX-DOS」は先月号でも少し触れたようにMSXパソコン用にマイクロソフト社が開発した「OS」(オペレーションシステム)。OSはパソコンのCPU、メモリー、ディスプレイ、プリンター、ディスクドライブなどを効率よく働かせるための基本ソフトで、特にフロッピィディスクを外部記憶装置として利用し、データを大量に処理。管理させるような応用ソフトには必要不可欠なものとされている。
 現在8ビット機用のOSとしてはデジタルリサーチ社の「CP/M-80」、16ビット機用としては同じく「CP/M-86」、マイクロソフト社の「MS-DOS」などがあり、世界的に有名な英文ワープロ「ワードスター」を始め優秀なビジネス用応用ソフトのほとんどがこれらのOSの上で働くように作られている。
 マイクロソフト社によれば、MSX-DOSは今挙げた「MS-DOS」のいわば8ビット版で、MS-DOSとの間にはデータの互換性がある。つまり、MSXは8ビット機なので実際にプログラムを実行させることはできないが、MS-DOS上で動くように作られた応用ソフトであれば、蓄積されたデータをMSX-DOSを介して読むことができる。また、CP/M-80上で働くように作られた応用ソフトの大部分はMSX-DOSの上でも働く、とのことだった。
 8ビット機のOSとしては従来先に挙げたデジタルリサーチ社の「CP/M-80」が圧倒的なシェアを持っており、8ビット機用の高度なビジネス応用ソフトはほとんどがCP/M-80をOSとしているのが実状だ。つまりCP/M-80をOSとしたソフトをMSX-DOSに流用できるとすれば、「ワードスター」を始め現在流通しているCP/M-80版のビジネス応用ソフトがMSXでも使えることになるわけだ。先月号でも触れたように、もし仮にMSX用のビジネスソフトがまったく発売されなかったとしても、MSX-DOSさえあればCP/M-80版のソフトを流用すればいい。ソフトの選択範囲がグンと増えるわけだ。ユーザーにとってこんなにありがたいことはない。
 しかしこう見てくるとけっこうずくめのMSX-DOSだが、現実はやはりそう甘くない。アスキーを訪ねMSX-DOSの取材を終えた後、MSX-DOSに対して持っていた期待感はみるみるしぼんでいく。個人的なことを言わせてもらえばMSXにかなり冷ややかな態度をとっていたソフト情報編集部内で、どちらかというとMSXに肩入れした発言をしていただけに、がっかりするというよりは「裏切られた」という気持ちが強い。先月号で朝日新聞の記者がハシャギすぎだ指摘したが、あのMSX「業務用にも機能拡大」という見出しにもっとも躍らされてたのは自分自身だったのかもしれない。

あまりに多すぎる「CP/Mとの互換性を得るための条件」


 結論から言えば「MSX-DOSはCP/M-80との互換性を考慮した」と言いながら、CP/M-80版の応用ソフトが実際にMSX-DOS上で働くためには、必要となる条件があまりにも多すぎる。たぶん現在市販されているCP/M-80版応用ソフトの中でそのままMSX-DOSで働くのは毎度おなじみの“μCOSMOS”ぐらいではないか。
 これでは「大部分」ではなく「例外的に働くものもある」というに過ぎない。このあたりの事情を解り易くするためにまずアスキー技術本部長・山下良蔵氏の話を一問一答ふうにまとめてみた。
――― CP/M-80との互換性はどんな方法で実現させているのか。
山下氏 CP/M-80とはファンクションコールのレベルで互換性を持たせてある。「大部分」と断わってあるのは、ファンクションコールのレベルより、さらに深くCP/Mの構造に立ち入って作ってあるようなソフトはMSX-DOSの上で動かない可能性があるからだ。
――― しかし、そもそもCP/MとMSX-DOSとでは、ファイルのフォーマットが違うはずだからMSX-DOSでCP/Mのプログラムやデータを読むことができないのでは。
山下氏 その点はユーティリティプログラムを付加することで解決している。簡単に言えばこのユーティリティを使って、まずMSX-DOSのディスクにCP/Mをコピーし、次にCP/Mのフォーマットに従ってCP/M版応用ソフトのプログラムを読ませ、さらにそれをMS-DOSのフォーマットに書き直させるわけだ。ただCP/Mは各メーカーから専用のものが出ているので、このユーティリティプログラムをどのメーカーのCP/Mに対応させるか、という問題が残る。
――― つまりもし日電のCP/Mにしかそのユーティリティが対応できないとしたら、他のメーカーのユーザーにとっては事実上互換性は存在しないことになるわけか。
山下氏 その通りだ。
 「どこが解り易いのだ」とお叱りを受けそうだが、連載中の「ハードからの独立宣言」や四月号以来の「互換性」関連の記事をたんねんに読んでいただいている方には、ある程度理解してもらえたのではないかと思う。
 山下氏はここで二つの重要なことを言っている。
 まずひとつは、CP/M版応用ソフトがMSX-DOS上で働くためには、、そのソフトがCP/Mの構造に深く立ち入って作られたものでないこと、つまりハードにまったく依存しないソフトでないとMSX-DOSに流用できないというわけだ。
 もうひとつは、たとえある応用ソフトがひとつめの条件を満たしていても、ユーザーがその応用ソフトを働かせているCP/Mに、MSX-DOSについているユーティリティプログラム(これはCP/MのフォーマットをMSX-DOSのフォーマットに変換するオマケのプログラムと考えればいい)が対応していなければ、MSX-DOSとの間で互換性は生まれない、ということだ。(CP/Mは各メーカーからそれぞれのハード専用のものが出ていて、たとえばPC-8801用のCP/M-80を、FM-8に流用することは不可能)


なんのために「CP/Mと互換性あり」を謳ったのか


 先にも触れたように、CP/M-80とMSX-DOSの間で応用ソフトの互換性が生まれるためのひとつめの条件を満たすようなソフトは、現在のところほとんど市販されていないといっていい。また、ふたつめの問題である各社ユーティリティプログラムの対応にしても
「現在販売されている各社専用のCP/M全部にユーティリティを対応させることは技術的には可能ですが、実際にMSX-DOSを供給する際、どのメーカーのものにまで対応させるかは検討中です」(山下氏)
 といった具合で、これはもうマイクロソフトの匙加減ひとつ。
 これでは何のためにわざわざ「CP/M-80上で動くソフトがMSX-DOSでも使える」と謳ったのか理解に苦しむ。あれは単なるコケおどしだったのか。
 角度を少し変えて、それでは実際にどんなCP/M-80版の応用ソフトがMSX-DOS上で動くのか、と質問してみると、さすがに山下氏も困った様子で、
「他のメーカーのソフトについてはテストしていないのでなんとも言えない。現在マイクロソフト系の言語が動くことだけは確認しています。ただ今後、たとえば『ワードスター』のようなCP/M上で動くワールドワイドなソフトが動かないなんてことがはっきりしたときは、何らかの対応策を考えざるを得ないのでしょうね。ワードスターが動かないのでは『CP/M上で動くソフトも使える』と謳っている以上やはり問題ですから。具体的な対応策?それはまだ未定です」
と何やら歯切れが悪い。
 また、たとえマイクロソフトやアスキーの主張するようにCP/M-80とMSX-DOSの間に、ある条件付で理論的には互換性が成立するのだとしても、MSX用の8インチや5インチのディスクドライブが供給されるかどうかといった問題、さらにCP/M版のビジネス応用ソフトのほとんどが、MSXよりはるかに高度な画面コントロール機能をもった8ビット機を想定して作られているため、MSXの画面コントロール機能では対応しきれない問題など、実際にCP/M版のぷ用ソフトをMSX-DOSを介してMSXで働かせようとすると、クリアしなければならない問題点が多すぎる。
「まあ好意的に解釈すれば、データやプログラムそのものの互換性を狙ったというよりも、今までCP/Mを使っていたユーザが自分の経験からつかんだCP/Mに対するノウハウ、それをMSX-DOSでもそのまま生かせる。そのあたりのことを『CP/Mと互換性を持たせた』という言葉で表現したかったのではないですか」
 これはCP/Mに詳しいあるソフトハウスの声だ。
 しかし、それにしても、これから紹介する各家電メーカーのMSXに対する姿勢を考えたとき、どうしてもMSX-DOSはMSXシステム全体から浮き上がって見える。逆に言うと、マイクロソフト、アスキーによるMSX-DOSの発表がMSXのコンセプトを不明確なものにしてしまったという印象をどうしてもぬぐい去ることができないのだ。もし、「MSX-DOSがCP/Mとの間に互換性がある」なんて話を耳にしていなかったら、たぶん、“MSXをビジネスに”なんて「幻想」は自分自身持たなかったに違いない。


「まずパソコンに親しんでもらう」明解な家電メーカーのコンセプト


 10月下旬から発売開始されたMSXパソコンの第一世代機を見る限り、各メーカーのコンセプトはかなり明解だ。ターゲットはまず小中高生の「子供」たちであり、次に今までまったくパソコンに親しむ機会のなかった大人たち。各社とも「ROMカートリッジさえ差し込めばだれでも簡単にゲームもできるし、教育・学習にも使えますよ」といった調子でMSXをアピールし、とにかく「難しい、解りづらい」といったイメージを極力避けようと相当気をつかった様子がうかがえる。周辺機器の発売についても
「当初は拡張用カートリッジとデータレコーダ、それにゲーム用のジョイスティックだけ。なにしろパソコンに初めて触れるという層をターゲットに絞り込んでますから、あれもこれもと周辺機器を出して戸惑いをもたれても困りますし」(ソニーMC営業部MK課長・大川和男氏)
とかなり慎重な声も聞かれる。ディスクドライブでさえ、「出すなら3.5インチだが、どの程度ニーズがあるのか。出す時期を判断するのが難しい」(大川氏)という。
 東芝、三菱電機などは「ここまでシステムアップ可能」とMSXシステムの構成図をカタログにのせたりしている(次項)が、
「同時発売を予定しているのは、ジョイスティック、増設スロット、プリンターインターフェース、漢字ROMまで」(東芝ホームコンピュータ開発部商品企画担当課長・川内康弘氏)
と実際発売される段階でのシステム構成はソニーと似たりよったりだ。もちろん、MSX用の周辺機器の開発まで手が回らなかったろいう面もあるだろうが、当面供給されるソフトがゲーム、教育、学習用であることから「この程度の周辺機器のサポートで十分」という判断がメーカーの側にあったと考えられる。プリンター、ディスクドライブといった周辺機器の発売時期は「まずMSXがどの程度受け入れられるのか、それを見極めてから、発売時期を考えたい」


東芝「パソピアIQ」のシステムアップ構成図

MSXがワンチップ化される日も!?


 このように各家電メーカーのMSXに対する商品作りの姿勢を具体的に見てくれば、まず間違っても「ビジネスにMSXを」とは思わない仕掛けになっている。さすがに家電メーカー、ユーザーをよく知っているなと感心させられる。
 ところでMSX-DOSに話を戻すと、MSX-DOSに対する家電メーカーの姿勢はかなり消極的。無関心と言わないまでも、自社のMSXシステムにどう位置づけていいのか戸惑っている、そんな感じを受けた。ほかには「あれはマイクロソフトとアスキーの企業戦略上の問題から出て来たも
の。ああいったややこしいものが出て来るとMSXに対するユーザーのイメージが混乱して困る」と迷惑顔の担当者もいる。
 とうやら、あくまで親しみ易さを売物にまったく新しいパソコン市場を開拓しようとする家電メーカーの思惑と、高度なOSであるMSX-DOSを開発し、将米は画面コントロールの機能も強化した上で、現在のビジネス用の8ビット機と比較しても何ら遜色ないパソコンにMSXを育てようとするマイクロソフト、アスキーの思惑との間には、相当のズレがあるようなのだ。MSX-DOSがMSXシステム全体から浮き上って見えMSXのコンセプトが今ひとつはっきりしない印象を受けたのもたぶんこうした背景からなのだろう。
 こうした思惑のズレは、今後MSX規格がどうなるかを考えるうえでなかなか示唆に富んでいる。
 MSXを発売したメーカーのほとんどはそれぞれ、MSXの上位機種にあたるパソコンを持っている。MSXがアスキー、マイクロソフトの思惑通り高い機能を持つようになった場合、そうした上位機種とどう折り合いをつけていくのか。
 なかには、「MSXは入門機でいい」と強く主張するメーカーも現われてくるだろう。
 あるいは、MSXの本体をワンチップ化し、増設ボードとして上位機種に組み込めるようにすることで、MSX規格の存続を図ると同時に、上位機種にステップアップしたいというユーザーのニーズにも応えるやりかたが、妥当だと考えるメーカーも出てこよう。
 MSXによって開拓されると思われるまったく新しいパソコン市場を底辺として入門機から高性能機までのラインアップをととのえた、従来のパソコンとはまったく別のMSXパソコンのピラミッドを築くのか。
 それとも、ワンチップ化などの方法で従来の互換性のないパソコンにもMSX規格を浸透させていき、MSXによって拡大したパソコン人口を上位機種に吸い上げていくのか。
 現在目ぼしい上位機種を持たないメーカーにとっては前者の方が有利だし、先発3社を含めて上位機種のラインアップをそろえているメーカーにとっては後者の方が有難いだろう。いずれにせよ、技術の進歩が著しいコンピュータの世界にあって、MSXが三年も五年同じであるはずがない。とすれば、MSXが今後向う方向は今挙げたうちのいずれかだ。
 もっとも、各メーカーが競争力をつけるために独自の機能を次々と付加し、結局MSX規格自体が有名無実化する可能性も否定できないが。

結論「やはりMSXはビジネスユースにはほど遠い」


 二ヶ月近くにわたって多くの方たちからMSXについて話を聞いてきた。なかには誌上で紹介できないような話もあった。それらも含めあえて独断的に言わせてもらえば、やはりMSXはビジネスユースにはほど遠い存在だ。なんといってもソフトがないのが致命的。MSX-DOSとCP/Mとの互換性が事実上否定されたわけだから、MSX-DOS版の応用ソフトが出るのを待つしかない。もちろんマイクロソフト、アスキーは意地でもMSX-DOS版のビジネス応用ソフトなるものを出して来るだろうが、他のソフトハウスは当分動かないに違いない。なにしろゲーム、教育ソフトを作っているソフトハウスでさえ、MSX用ソフトを作ったものの売れるかどうか内心おっかなびっくりなのだから。
 また、このあたりのことを承知の上で、入門機としてMSXを買いたいというひとには、できれば来春三月頃まで待て、と言いたい。それまでにはディスクドライブを初め周辺機器も出そろっているだろうし、何より春の各種ショーに向けて「第二世代」のMSXの話がチラホラ出ているはずだからだ。その話をキャッチすれば今後のMSXの方向がかなりハッキリ解るに違いない。

●各社のMSX仕様「第一世代機」
メーカー ナショナル ヤマハ サンヨー
品名 CF-2000 YIS-503
YIS-303
WAVY-10(MPC-10)
価格 54,800円 未定 48,000円
特徴 ・かな配列をアイウエオ順にしたタイプライター型キーボードを採用
・本体操作部に二つのカートリッジ装着可能なダブルススロット方式の採用。
・シンセサイザー機能を中心としたモデルでYIS-503は32KBのRAMを標準装備
・他にMIDI (楽器インタフェースの国際標準規格)を装備した「CX-5」や、ゲームソフトなどセットの「AX-501」がある。
・ライトベン機能付きで、モニター画面上にライトペン入力が可能
・本体内に32KBのRAMを標準装備
メーカー 東芝 ソニー 富士通
品名 パソピアIQ
(HX-10D
HX-10S)
HiTBiT
(HB-55)
FM-X
価格 65,800円
55,800円
54,800円 49,800円
特徴 ・HX-10Dはフロッピーディスクユニットの接続を想定して、64KBのRAMを標準装備 ・住所録・スケジュール・メモの三種類のデータ処理ができるソフトウェアを内蔵。作成したデータは付属のデータカートリッジに記録される。1個のテータカートリッジで約80名分の住所録が可能。 ・シリンドリカルタイプのキーボードを採用。
・FM-7にFM-Xをつなげて使用可能。FM-7本体のRAMを使い、FM-Xのユーザーエリアが32KB に拡張。



コラム:MSX-DOSは「OS戦争」から生まれた? マイクロソフトVSデジタルリサーチ


 MSX-DOSにはいまひとつわからない部分が多い。各ハードメーカーが「親しみ易きさ「解り易さ」をMSXの基本的なコンセプトにしているのになぜ、日本では従来のパソコンにもまだまだ普及していない高度なOSが必要なのか。あるいはMSX用のフロッピーディスクとして各メーカーは3インチか3.5インチのマイクロフロッピーを本命と考えているのに、MSX-DOSが3インチ、3.5インチの他、5インチ、8インチでも供給すると発表されているのはなぜか。
 これからの疑問に対する答えはMSXから少し離れ、宿命のライバル?マイクロソフトとテジタルリサーチの関係で見てみると、ある程度想像できるようだ。
 ベーシックのマイクロソフト、CP/Mのデジタルリサーチ、とよく言われるように、マイクロソフトが「MS-DOS」を手がける前まで言語はマイクロソフト、OSはデジタルリサーチという具合に、まるで紳士協定でもあったかのごとく、得意とする分野が分れていた。
 だが、マイクロソフトの「MS-DOS」がIBMの16ビットパソコンに採用されるに及んで、16ビット機用のOSでは「MS-DOS」とデジタルリサーチの「CP/M-86」がシェアを分けあう格好となった。
 しかし、8ビット機用のOSは依然としてデジタルリサーチ「CP/M-80」の独占状態。この状況がマイクロソフトにとっておもしろいはずがない。なんとか「CP/M-80」のシェアに食い込みたいと思ってもOSはいわば列車のレールのようなもの。いったん引いたレールをはがして、新しい幅のレールを引き直すなんて並大抵のことでは不可能だ。そこでMSX。まだ野っぱら同然のMSXに「MSX-DOS」というレースを引くのはたやすいことだ。けれどその上を走る列車(応用ソフト)がなければレール(MSX-DOS)も無用の長物。そこで「CP/Mと互換性あり」とブチ上げた。そしてMSXを足がかりにこんどはCP/M-80のシェアへ食い込みを図る。
 と、まあ、これはすべて想像だがそうとでも考えないと、マイクロソフトが8インチ、5インチのMSX-DOSを供給する理由がわからない。


月刊コンピュータソフト情報1983年12月号(通巻13号)P54 緊急連載! 記事より転載

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