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特集
互換性、拡張性に優れたホームパーソナルコンピュータ
MSXシステムの全貌

 今年6月16日、マイクロソフトとアスキーが提案した、ホームパーソナルコンピュータシステム仕様“MSX”が発表されました。このページでは、MSXの主となるコンセプトを紹介し、以降、提案されたMSXのハードウェア/ソフトウェア仕様の詳細について解説を加えます。なおこの発表に関しては、本号EXPRESS(86ページ)をご参照下さい。

 1971年、ビジコンとインテルの両社によりマイクロプロセッサがこの世に出現したのは周知のことだろう。それ以来、ワンボードマイクロコンピュータから始まり、様々なシステムが我々の前に姿を見せてくれた。そしてここ5年ばかりの間に、高性能なパーソナルコンピュータシステムが各社から出揃い。一時期に比してユーザーの数は爆発的に増えようとしている。昔では考えられなかった各社製品のテレビやラジオでのCMや、子供が一番欲しいものはというアンケートでパーソナルコンピュータが一位になるなど、もはやマイクロコンピュータシステムは日常生活に溶け込んでいるかのように語られている。

ホームユースとしてのコンピュータ

 ところでその一方、ある程度システムに通じた人間から見ると、現在パーソナルコンピュータが日常生活に入るにはまだまだ多くの問題が残されていることに気づく。ソフトウェア、ハードウェアをある程度知らなければ電源を入れることだけしかできないといった問題や、また市販のソフトウェアを利用しようと思っても自分のシステムに適合したソフトの選択範囲があまり広くないという現実もあるだろう。

 パーソナルコンピュータが一般家庭の中で普及するためには、コンピュータにまつわる様々な規格をある程度標準化簡易化し、コンピュータの操作に関する知識ひとつの文化として形成する必要があると思われる。つまり、我々がテレビやラジオの操作法を誰にも教わることなく使いこなしているように、最終的にはパーソナルコンピュータも、例えマニュアルがなくても操作をはじめることができる位の簡易性が要求されることになろう。

標準化の提案

 マイクロソフト社は、そのBASICが各社のパーソナルコンピュータに採用されることで、BASICのコマンド体系に一つの標準化を果たしている。新旧どのマシンでも、マイクロソフトBASICの搭載されたものであれば、詳しい画面表示の仕様など除いて同じプログラムを走らせることができ、コマンド・ステートメントも機能が違ってもある程度移植作業が容易となっている。

 今回、マイクロソフトとアスキーがMSX仕様を提案したのは、これをさらに推し進め、一つのソフトウェアカートリッジやソフトテープをどのマシンにでも利用することができるという画期的なものである。このため、ソフトウェアの多くの商品化が期待でき、ユーザーが選択できるソフトウェアも種類の非常に多いものになることが期待できる。

 つまり、ソフトウェアメーカーとっては開発リスクを小さくできることになる。従って、互換性をもった多くのソフトウェアが市場に流通されることになろう。

 また、多くのソフトウェアが流通することで、一人のユーザーが要求する内容のソフトウェアも多くなることが期待できる。これにより、必要なソフトウェアを完全に自作したり、市販ソフトを改造したりということから開放されることも可能となるだろう。

 これとは別に、ハードウェアでもキーボードの配置やカートリッジバスの信号など、細かい仕様が標準化されることで周辺ハードウェアの仕様も高められている、これによりどのメーカーのコンピュータでもMSX使用の周辺装置であれば接続が可能になる。

 一つの周辺機器がどのパーソナルコンピュータにも接続可能であれば、その装置の高度化及び目的による製品分化が進み、結局メーカー、ユーザーのどちらもが利益を享受できることになる。プリンタインターフェイスにおけるセントロニクス社仕様がいい例であろう。現在ほとんどのメーカーがこの仕様を採用し、ケーブルを接続するだけでどのメーカーのプリンタでも簡単に使用できるようになっている。

MSXの特徴

 MSX仕様のコンピュータシステムは、ゲームなどのホビー用からスモールビジネス程度の範囲までサポートされる。

 また、特に青少年のために使い易いパーソナルコンピュータを提供する、先のとおりカートリッジに互換性を持たせソフトウェア産業の発展とユーザーの便宜を図る、MSXを国際的な標準として、パーソナルコンピュータのソフトウェアとハードウェアの日米相互乗り入れを可能にするという考えのもとに提案されている。

 MSXホームパーソナルコンピュータシステムの主な特徴をまとめると、以下のようになる。
  • MSXシステム用ソフトウェアは、各社各機種間で互換性を持つ。
  • 低価格帯のパーソナルコンピュータである。
  • CPUにはZ80、マイクロソフトのビジネス仕様拡張BASICを中心とした構成。
  • 16色のカラーグラフィック、サウンドジェネレータLSIによる音楽、特殊効果機能などがサポートされている。
  • 固定されたシステムではなく、多種多様なホームアプリケーション、ホビー、さらにはスモールビジネスの範囲まで互換性を保ったまま拡張が可能。

特徴を持ったパーソナルコンピュータも可能

 MSXシステムの拡張性は、そのシステムを購入してから拡張が可能という意味だけでなく製品自体の特長にもかかわっている。ハードウェア仕様にあるスロットの概念(ハードウェア編参照)が、システムの柔軟性を高めているのである、今後発売されるMSXシステムは、各社の趣向が生かされた特徴あるマシンになる可能性が大きい。

 最終的には各社の製品発表を待たなければならないが、シンセサイザなどの電子楽器にノウハウを持つメーカーは、MSXにそれらの機能を内蔵させた製品を考えるであろう。

 また、ビデオディスクやオーディオ機器、VTRを開発しているメーカーでは。これらをコントロールする機能を標準として持たせることなどが予想される。さらにMSXシステムをテレビ受像機に内蔵させ、カートリッジやキーボードを接続するだけでゲームやプログラムの作成ができるシステムが可能である。

 このように、MSXは使用の標準化に起こりがちな機能の制約ができる限り取り去られたものになっている。

 今後、このMSXシステム仕様によってホームパーソナルコンピュータシステムが家庭内に普及し、同時に、アメリカのように日本でもソフトウェア分野が発展することを期待したい。



月刊ASCII1983年8月号(通巻74号)P110 特集記事より転載