07 ―酉の三つ―「遺された名前 ―とおりかぞえうた―」



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ひとつ
ひえだのおやしきに
ひとよひとよとうまれたあのこ
ひとかそれともおにのこさんさ
あのかべこえてはならぬ
ひそりひそりひとあしこえ さあさおうちにかえりましょ


ふたつ
ふるいわあじどおり
ふられふるふるかべふるほうへ
ふたつつづくみちのむこうへは
けしてふりかえらぬよう
ふらりふらりふるみちふみ まっすぐおうちにかえりましょ


みっつ
みなかみあみのかわ
みなもゆらしてながるるみずに
みるみるうちにのぞきこまれて
そのあしつきづきやせん
みずしらずのひとはおいて さっさとおうちにかえりましょ


よっつ
よいまちあよのはし
よごとよどおしさがすあのこを
よにもおそろしてんぐさまみてる
とおいやまへつれられて
よみのこみちわたるまえに そろそろおうちにかえりましょ


はらりと
言葉零す
行く行く道に
続く謡の
その意味知らず


いつつ
いつまであごたけで
いなのかばねはひとまちぼうけ
いわのむしろにおいかくされて
くさもぼうぼうはえしきり
いちもくさんにうしろむいて いそいでおうちにかえりましょ


むっつ
むつまたあむこうじ
むすめひとりじゃそのあしおそく
むくれきげんのようかいのかげ
おいたてられたおれふす
むざんむざんとならぬよう そっとおうちにかえりましょ


ななつ
ななさとあしちざか
ながくつづくはそのはてしらず
ながたびのはやりやまいからか
とうとうこえられはせず
なみあしこあしあしをふんで しっかりおうちにかえりましょ


やっつ
ややこしあやのつか
やねのしたにねむるのはどなた
やんごとなきおひとのかわりに
ぜんぶぜんぶとっかえて
やわりとわりとくちむすんで きちんとおうちにかえりましょ


はらはら
伝う記憶
行く行く道に
続く謡よ
意味など知らず

いつかいつか
遺された名は
明日へ渡る
その日は遠く


ここのつ
この名を抱いたなら
いずれ桜の下に眠れど
いまだこの身のかく或る限り
そうそうはいよとゆずりゃせん
歌え童 歌えるうち さあさあおうちにかえりましょ―。
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最終更新:2018年07月20日 18:33
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