09 置き捨て小傘怨み節



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遥か昔か終ぞ昨日か
生まれも知らぬ我が身なれども
この胸の奥に宿る灯火は
嘗ての主を求めて


灯火一つ 行き先照らす
道程遥かな 旅路なれども
募る思いに 心を焦らす
こんなの苦にも なりゃせんと

おぼろげな記憶 さても恋しく
あの手の温もりを どうかも一度
あなたに抱かれた かつての場所へ
艱難辛苦を 乗り越えて

提灯行灯
蛇の目揺らして
下駄の音響く先
どこまでもあなた…

ああ愛おしきひとよ我が主
千里の果てより今参らんと
胸の火に焦がされ歩むこの道
主のもとへと続くこの恋路


見渡す限りの雨傘模様
しとどさざめく連れ合いの中に
あなたは独り肩を濡らして
雨の上がりを待つのでしょう

雨傘なんぞは主人に持たれ
雨に身晒すのが幸せだから
わちきは必ずその手に戻り
きっとこの身を捧げましょう

砂払い
片目隠して
下駄の音響く先
いつまでもあなた…

ああ愛おしきひとよ我が主
袖振れ合うのはあなたですかと
胸の火に焦がされ探すこの道
主のもとへ続くこの恋路


雨にけぶる
懐かしき影
その手には見知らぬ
雨傘の姿…

ああ恨めしきひとよ我が主
燃える燃え上がる鬼火を胸に
行く先も分らぬ傘が独り
置き捨て小傘の怨み節
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最終更新:2020年07月21日 23:33
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