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※定時王女体化注意
※キャラの性格別人化注意
※くそくだらない話注意
※エロ寸留め注意

以上に地雷臭をお感じの方はくれぐれもお読みにならないことをお勧めします。
あと一応、全年齢板への転載はご遠慮下さい。


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地響きを立てながら、巨大な鋼鉄の足が荒野を踏みしめ、歩んで行く。
螺旋四天王が一人、怒濤のチミルフに与えられた人間掃討軍の地上母艦型巨大ガンメン・ダイガンザン。

その腹の中に位置するハンガーの一画、立ち働く整備員達の手により今しも発進準備を整えつつある一機の白いガンメンの足元で、二つの人影が言葉を交わしていた。

「ヴィラルよ、そう急かぬでもよかろう。明日の朝には投擲射出で到着できる距離まで近付けるのだぞ」

この艦の主であり、獣人達の地上軍統括者でもあるチミルフは目の前の部下に窘めるような声を掛ける。
視線の先、上官の魁偉な巨躯に並べば大人と子供ほどの体格差を感じさせる、獣人にしては華奢な体躯を暗い色の軍服に包んだ女はしかし整備員に指示を出して出撃シークエンスを中断させようとはしなかった。揺らがぬ決意を湛えてチミルフを仰ぎ見る、白皙の輪郭を軽く覆う程度のプラチナブロンドが揺れ、金色の眼の中で縦に裂けた瞳孔がくっ、と収縮する。

「先駆けをお許し下さいチミルフ様。武人として、グレンラガンとその操縦者とはどうしても私自身の手で決着を付けたいのです」

生真面目で且つプライドに拘る部下の血の気の多さは、獣人の軍勢の中においては美徳であったからチミルフとしてもそれ以上制止する理由が無い。獲物の居所が判明したなら一駆けにその喉笛へ喰らい付くべく疾るのは獣の習いだ。

「ふむ、ならば行くがいい、ヴィラル。だが遊ぶのに夢中になって合流の時間を忘れるなよ」

「は、心得ます」

嬉しそうに姿勢を正した部下の、細く引き締まった腰にうっかり回してしまいそうになった自分の手をチミルフは危うく引き戻し、代わりにその肩を豪放に叩いて彼女の愛機へと送り出した。

 >>>

「これはヴィラル様、明朝私どもの仕上げが済みましてからごゆるりとお着きになられるものかと思っておりましたが」

霧深い山中の温泉旅館──とは仮の姿、地上を彷徨く人間達をおびき寄せ葬り去るための工作部隊の拠点だ──の統括責任者であるオカミが慇懃な物腰で応対するのに、さほど興味も無さそうに頷いた極東方面部隊長はふと牙を剥き出した獰猛な笑みをその唇に乗せた。

「他の人間共は好きにしろ。だが、グレンラガンの操縦者は私の獲物だ」

「殊の外ご執心だという噂、どうやら本当のようですわね。見た限り、頭の悪そうな男と冴えない子供としか思えませんけれど」

「愚か者ではあるがそれだけに突拍子もないことをする奴らだ、そう一筋縄にも行かんぞ」

言外に色々含みを持たせた、微妙にギスギスとした会話をヴィラルはさっさと一方的に切り上げる。

「で、今奴らはどうしている?」

「ホホホ、油断しきって露天風呂になぞ浸かっておりますわ」

「では私が始末を着けて来よう。お前達は手を出すな」

「あ、その前に」

ゆらりと立ち上がり、愛用の鉈の柄に触れながら部屋を出ていこうとするヴィラルをオカミが呼び止め、手にしていた何かを押し付けた。

「今はまだ仕掛けの途中です。軍装で歩かれては台無しですから、この女子従業員の制服にお召し替え下さいな」

渡されたものをぴらりと広げたヴィラルがうっ、と嫌そうな顔をする。
真っ赤なエナメル生地のボディスーツ兎尻尾付きに同じく真っ赤な兎耳付きカチューシャ、網タイツ、白いカラーとカフスに黒の蝶ネクタイ、そしてネームプレートの付いた淡いグリーンの法被。

早い話がバニーガールの衣装一式というやつだった。

 >>>

「……何故私がこのようなふざけた格好を……」

無駄に長い板張りの廊下を一人歩みながら、ヴィラルは法被を羽織った肩を窮屈そうにそびやかした。
オカミやその配下達のような擬態能力は持ち合わせていないので、人間共に正体を見抜かれないためには外見上、最も獣人的な特徴である両腕は法被の袖に突っ込んで腕組みをするような格好に隠すしかない。牙は口を開かなければ何とかなるし目元は前髪を落として誤魔化すとして、この腕だけは流石にどうしようもなかった。

というか根本的にここの擬装コンセプトはおかしい。どうしてこう無闇に和風な温泉旅館で仲居だけがバニーガールなのか。誰だそもそも最初に企画した奴。

そんな今更の疑問を呈しつつ、足はようやく露天風呂の入口まで差し掛かった。
何故か今は無人の番台を境として、色違いの暖簾が掛かった通路で男湯と女湯が振り分けられている構造。赤い暖簾の向こうからは、若い女数人が囀りさざめいているのだろうかしましい声が響いてくる。とりあえずあちら側には用はない。
不意に青い暖簾の向こうでからりと戸の滑る音がして、ヴィラルは咄嗟に戸口の陰に身を隠した。

ぺたぺたと小さな足音をさせて男湯から走り出てきたのは素っ裸の幼い子供一人だけで、何が面白いのか独りできゃっきゃとはしゃぎながら番台を回って女湯へと走り込んで行く。
それ以上の動きがないことを確認し、ヴィラルは足早に青い暖簾の奥へ身を滑り込ませた。

まずは脱衣場の籠を確認する。脱いである服は3人分、一番小さいものは先程走り出て行った幼児のだとして、中にいるのは確実にあと2人。籠の縁から乱雑にはみ出し垂れ下がっている細長い晒し布には見覚えがある。
腰に吊るわけにもいかず背中に隠していた鉈の鞘を払い、開け放されたままだったガラス戸から露天風呂に足を踏み入れる。自然石らしく配された岩と立ち篭める湯気とでいい具合に視界は悪く、獣人よりも視力で劣る人間に向こうから発見される可能性は低い。
それでも身を低くし岩陰を伝うようにして温泉に近付けば、何やら会話を交わす人の声がする。

いた。

…のはいいが何故か湯に浸かってはおらず、小高い岩の上に登って月など眺めながら裸ザルが2匹、ぽつりぽつりと話し込んでいる。
お前ら尻丸出しで何やってるんだ、アホかと内心思いつつ湯の中をそろりそろりと近付くヴィラルの耳に、ようやく途切れ途切れではあるが会話の内容が飛び込んできた。どうやらサル共は地上へ出てからの出来事を回顧しているらしい。折角まとめているところで悪いがその道程も今宵限りでお終いだ。

「…アレ? そんなヤツいたかぁ?」

「もう忘れちゃったの兄貴!? あんなに苦戦したじゃない、あのほら狩りに行ったとこで兄貴が襲われた」

いきなり話題が自分の事と思しき箇所へ差し掛かって、ヴィラルは岩陰でぎくりと身を固くした。

「忘れた! なんだっけ? シロスナワニウサギ? ヌメリブドウカバ?」

「それタダの動物! ほらぁ、あのなんかちょっと見た目は人間に似てたけど歯がギザギザで手がでっかくて鉈持ってて顔が二つあるガンメンに乗って」

「あァ! トビタヌキ!」

「いくら何でもそれは違「「違うッッ!!」

呆れ果てたようなシモンのツッコミを遮ってハスキーな怒声が露天風呂に響いた。
ぎょっとして振り返ったグレン団の義兄弟の目の前で、派手に飛沫を跳ね散らかせて湯の中からざばあと立ち上がった人影は右手に握った鉈で空を払い、ぴたりとその刃先を宙に静止させる。

「人間掃討軍極東…「「なんだお前、痴女!? ノゾキ!?」

訂正の名乗りをブッちぎったカミナの反応に、その場の空気がしん、と少し冷える。
今の今まで頓珍漢な会話のネタにしていた相手がいきなり目の前に、よりによって男湯の中に何故かバニーガール姿で、鉈を振りかざして、と、どこから反応したりツッコんだりしていいのか解らない雰囲気を最初に破ったのはやはりカミナだった。

「はン、誰かと思ゃあこないだのヒトだかケモノだか中途半端女じゃねえか。わざわざこんなとこまで俺達を闇討ちしに来たってか?」

「正々堂々とガンメンで勝負を着けてやろうとも思ったが今のでその気も失せた! 貴様等如き下等で愚かな裸ザルには戦士としての死に舞台をくれてやるのも勿体ない!」

カミナの腕にひしっとしがみつくようにしてガタガタと怯えていたシモンが裸と言われた途端、慌てて股間を手で隠す。しかし隣のカミナは動じる様子もなく、いちおうブータはひっついてるけどむしろそれ丸出しよりカッコ悪くね? な姿のまま敵に正面を向けて相対していた。

「あ、ぁ兄貴、どっ、どうしよう、刀も置いて来ちゃった、のに、に、にに逃げっ」

「落ち着けシモン、素っ裸だからってビビるんじゃねえ。やいコラ、ケダモノ痴女」

「ヴィラルだッ!! 言っておくがサル如きの裸になぞ興味はない!」

どこまで本気でどこから挑発なのか微妙に判然としないカミナの物言いに、肩をいからせたヴィラルが鉈を構えた手へ一層の力を籠める。煌々と照らす月明かりを反射しているその刃が兄貴や自分の上に振り下ろされたら、と気が気でないシモンの心配もよそに、カミナはいつも通りのマイペースで口上を続けていた。

「風呂は命の洗濯たぁ誰が言ったか知らねぇが、身も心も究極に丸腰でいるところを襲ってくるとは卑怯この上ねぇ所行、だがそれよりも何よりも、一番許せねぇのはだ!」

ビシィッと音まで鳴るほどの勢いで突き出された人差し指が目の前のバニースーツを纏った女獣人を指す。

「なんで風呂の中で服着てんだよ! マナー違反にも程があらぁ!!」

「そっ、それが一番問題なの兄貴!?」

「な゛…っ、貴様の優先順位はおかしいぞ!!」

弟分と敵の口から妙に息の合ったツッコミを受けながらもカミナはどこ吹く風といった様子で、しかし俄に口を尖らせながら何故かいきなりの文句垂れモードに突入していた。

「大体よう、女っつーのはどうして普段これ見よがしにギリギリな格好してるくせにイザとなったら肝心なところは見せねぇってーかキャー変態とかこのスケベとか覗いたら殺すとか言い出すんだ? 俺にはサッパリ納得行かねェ」

「知ったことか! 心の底からどうでもいい!」

一向に緊迫感を覚える気配もなさそうなユルい態度に、ビキビキと額に青筋を立てた女獣人の大きな手が鉈を振りかぶり、空を裂いて唐竹割りに振り下ろす。

「もはや御託はいらん、死…ねェ!!」

「兄貴危ない!!」

ガキン、と甲高い金属音が響いて鉈の柄を握った手に硬い手応えが伝わってくる。
一糸纏わぬ姿だったはずの相手がいかなる手で一撃を防御したのか、不測の事態のあまり現状に認識が追い付いていなかったヴィラルの目が、次の瞬間驚愕に見開かれた。

ドリルが。

人の頭ほどもある円錐系の金属の塊が振り下ろされた刃を受け止め、押し返している。
円錐系の底面からはハンドルと思しき棒状パーツが伸び、それを握る人間の、ヴィラルのそれに比べれば半分位もないほど小さな手と腕に続いていた。

「な、貴様…なぜ……」

そんなものを風呂の中に持ち込んでいるのかという至極当然の疑問はもちろんのこと、その細い腕に構えられたドリルが、獣人が充分な力を乗せて振り下ろしたはずの刃を受け止めて揺るぎもしないというシュールな状況に割と常識派の女軍人の頭は疑問符で埋め尽くされる。
無用に人間を見下し侮ってしまうのは獣人の常で、前回の敗退もそこに原因があると自戒し、充分警戒も怠ってはいなかったはずのヴィラルではあったがこれはさすがに予想外の要素だった。白兵で注意を払うべきはカミナの刀と不意打ち戦法だけで、一緒にいる小さい方はあの妙な小型ガンメンに乗ってさえいなければ物の数にも入らない、そう思っていたのだが。
ジーハ村にいた頃のシモンを知らない者には、実際の年よりも幼く見える小柄で細い体躯は発育が悪いのではなくて狭い坑道に矯正されていただけに過ぎず、日々土木作業に従事し良質のタンパク質を摂取して鍛えられたその腕には手回しドリルで半日に数十メートルの岩盤を掘り抜くだけの剛力が秘められていることなど当然想像も付きはしない。
但しこれについては一緒に旅をしているヨーコ達をはじめ、当のシモンですら自分の力量については過小評価をしているせいで正確なところを把握しているのはカミナくらいのものだったから、ましてや間近で相対するのはこれが初めてのヴィラルに脅威度を解れと言う方が無茶だった。

などと解説に行を費やしている内にシモンのもう一方の手がハンドルの尻に付いたクランクを握り、もの凄い勢いでぐるぐる回転させ始める。自然、その螺旋回転に巻き込まれる形になった鉈はギャリギャリと耳障りな音と火花と共に刃こぼれを起こし、ヴィラルの手から奪い取られるようにすっぽ抜けて宙へ跳ね飛ばされた。
金属が摩擦して灼けた時独特の嫌な匂いが漂い、次の瞬間、湯の中に鉈が落下して沈むぽちゃりという音がその場にいた全員の耳を打つ。

「サンキュー、シモン! 用意のいい弟分を持つとホント助かるぜキィーッック!!」

さっと姿勢を低くしたシモンの頭越しに、相変わらず変なネーミングセンスと共に宙を薙いで繰り出された上段回し蹴りが、不覚にも得物を失ってぽかんとしていたヴィラルの側頭部に思い切りヒットした。
目の奥に火花が散り暗転しかける意識の中、最後にヴィラルの目が捉えたものは、自分を蹴り倒した裸ザルの股間にどういう訳かひっしとしがみついている小動物のたぶん尻に付いている星形マークに似たピンクの斑模様だった──

 >>>

「へぇ、腕の方ってこんなんなってんだな」

「こんなに下腕だけ大きいと服に袖通すのとか大変そうだよね」

なにやら勝手なことを言い交わす声が耳に届く。頬に冷たく濡れた石の感触。ぼんやりと身を起こそうとして手が動かないことに気が付く。両腕が、後ろ手に拘束されている──

「な…っ!? 貴様ら、私に何を………!?」

「おっ、目ぇ覚めるの早いなケダモノ女」

意識が立ち戻った一瞬で自分の置かれた状況を把握する。
湯船の縁と思しき段差に凭せかけるよう、平たい岩の上に上半身を俯せに転がされている。脚はまだ湯の中に浸っていて、水分を含んだタイツが張り付いて気持ち悪い。そして両手首は背中で交差させる形に、おそらく先程まで羽織っていた法被を使って縛られている。露出した二の腕の中程から指先までを覆う獣毛が濡れていて夜気に冷える。背後に裸ザルが2匹。

「折角のイイ湯をまた邪魔されたくないんで、ちょっと縛らせてもらったけど悪く思うなよ」

「思うわ! というか私をどうする気だ、虜囚の辱めなど受けんぞ、いっそ殺せ!」

床に突っ伏して自由の利かない体勢で精一杯吠える女獣人を見下ろすカミナとシモンは少し困惑したように顔を見合わせた。

「…殺せって言われても、なぁ」

「そうだよ、こんな所でそんな事したらここの温泉に迷惑だし」

「つーかソレ以前に俺達のひとっ風呂が台無しだぜ」

何か色々言っているが、要するにヴィラルの軍人としての矜持なぞよりも温泉を満喫する方が大事らしい裸ザル共の言い草に内心ぎりぎりと歯噛みする。

「ま、どうせだからお前も温泉入ってけば? 今夜ばかりは切った張ったは願い下げだがハダカの付き合いなら歓迎するぜ」

「断る!」

とことんまで人をコケにした態度に、牙を剥き出して怒鳴り返したヴィラルはふと視界の端に何かが入ってきたのを認め、次の瞬間反射的にそれを注視してしまったことを後悔した。
ピンクの星形、を尻に付けた小動物、が何故かひしっとしがみついている裸ザル(大)の股間。

湯の中を歩いて近寄ってきたカミナから離れようと必死で身を捩るヴィラルの努力も空しく、刺青に飾られた腕が伸びてきて二の腕を掴まれ、上体を引き起こされる。

「何を……っ」

そのまま向かい合わせに引き寄せられて背中に腕が回る。有り体に言って抱き締められたとしか思えない体勢で体が密着し、加えてごつんと軽い衝撃と共に、額に相手のそれが突き合わされた。
顔が近い、というか近すぎる。咄嗟にピントを合わせづらいほどの至近距離で、紅い虹彩にぼんやりと月の光を映した、睫毛の長いタレ目がじっと覗き込んで来る。

「やっぱな、良くねぇと思うんだよ」

何が、と聞き返したくても喉が強張って上手く声が出ない。脇の下をくぐった手が背中をするすると撫でる感触。いや、背中というか──バニースーツの背面にある小さな金具を探り当てた指先にぐっと力が籠もって。

「風呂の中で服を着てるのは、よ!」

ジジッと音を立ててファスナーが一気に引き下ろされ、偽の兎尻尾のすぐ上辺りまでスーツが開いて背中が露わになる。同時に、タイトな衣服の締め付けを失ったバストが一旦ぽよんと弾んで、ずるりと重力に従ったエナメル地の衣装から隠すもの無い外気の中へとまろび出た。

「な! な、なな、な……」

何をするとか何のつもりだとか言いたい気はすれども舌がもつれてそれ以上言葉の形を成さない。その間にも乱暴だが意外と丁寧な手つきは体の線を下って行って、果物の皮を剥くように赤いバニースーツと網タイツを剥ぎ取り終えてしまっていた。

「さて…っと」

べしゃっと音をさせて濡れた衣服をその辺に放り出したカミナの、すっと細められた視線が自分の足元から喉の辺りまで舐め上げるのを感じて、ふと己の今の格好を認識し直したヴィラルの口から少し問題の焦点がズレた言葉が飛び出した。

「何故カラーとタイだけ残す!」

「え? いや何となく気分で」

ほぼ全裸にバニー衣装のカラーと蝶タイ、あと多分縛られてる両手首にカフスだけと言う、ある意味真っ裸よりも恥ずかしい姿を宿敵の目前に晒している事に今更ながら気が付いてざあっと頭から血の気が引く。

「ほーぉ、ケダモノだけあって服の下は結構……」

「み、見るな! というか触るな!!」

必死の制止も空しく、再び伸びてきた手が脇腹あたりの毛並を撫でた。
胸から肩周りにかけては肌が露出していてあまり人間と変わらないが、背中から体の側面を通って肋骨の上や下腹へ続くなだらかな曲線は異形の腕と同じく毛足の短い柔らかな獣毛に覆われている。一見、あたかももう一枚下着を着けているように思えなくもない様相ではあるものの、正真正銘この状態が素っ裸なので男の手などに撫で回されては無論穏やかではいられない。
そんな内心など知ったことではないとでも言うように腹から胸までをなぞり上げた掌が、何に守られることもなく剥き出しだった両の乳房に掛かり、次の瞬間指に力を籠めてそれを鷲掴んだ。

「ッ!!」

「…思ったよりやーらかいな、しかも結構デケぇし」

「あ、兄貴、あのさ」

指先が沈み込むほどの柔肉の塊をぐにぐにと揉みしだきながら勝手な感想を述べているカミナに背後から控え目に声が掛かる。いつの間にかお務めを終えて泳ぎ戻ってきたブタモグラの子供を掬い上げ肩の上の定位置に戻したシモンが、どこか相手の顔色を窺うような表情で、時折背後の塀を気にする素振りで視線を泳がせながらそれでも一応意見を口にした。

「…それ以上は、その、あんまり…良くないと思う、んだけど」

「いいかシモン、俺は何も、誰でもいいから乳が揉みてぇとか隣がちっとも覗けねー鬱憤をちょうどノコノコやって来たケダモノ大将で晴らそうとか思ってる訳じゃねえ。ヒトがこんな、完璧に丸腰でいるところに不意打ち喰らわしてくるような奴をこのまま素直に帰してみろ、今後寝てる時もメシ食ってる時もおちおちしてられねーだろ、だったらこれ以降、二度とンな気起こせねぇようにしてやる必要があるわけだ」

「…兄貴本音が表に出すぎだけど、うん、わかったよ」

いいぞ小さい方のサル、さっさとこの超弩級バカを止めてくれなどと内心応援していたヴィラルの淡い期待がものの一瞬で叩き壊される。ていうか上手く丸め込まれている風を装って全部承知の上かこのチンチクリン。

「き、貴様ら如きが何をしようとこの私を諦めさせることなど……に゛ゃっ!?」

突然、水中に体を引きずり込まれてヴィラルの口から妙な声が上がる。
湯の深さは底に尻を着けても肩まで浸かる程度なため溺れたりする心配はまず無かったが、次の瞬間、己の今いる場所を認識した途端にいっそ溺死した方がマシだという思いが胸に去来した。

裸ザルの、膝の、上。

湯の中に胡座をかいたカミナの膝の上へ正面から向き合う体勢で座らされ、蒼い刺青の這う腕の中に抱え込まれた形。片腕だけを支えに上体を僅かに後ろへ傾かされただけで、両腕を封じられた体は殆ど自由が利かなくなる。もう片方の手が膝から太股、腰骨から脇腹へと徐々に撫で上がってくるのに空しく身じろぐ程度の抵抗しか出来ない。

「じゃ、さっきの続きからな」

ふざけた宣言通りに左の胸を掴まれる。手の大きさより僅かに余るほどの乳肉は、何かの生地でも捏ねるよう揉み回される内にみるみる張りを増して食い込む指先に弾力を返しはじめた。胸に血が集まって重くなるような感覚に、知らず喉の奥から熱の絡まった息が吐き出される。

「…っや、止め、ろ……貴、様…許さんぞ……っ」

「何を許さねぇって?」

空とぼけた声と共に胸の頂を尖らせている突起を強く抓られて、思わず上げそうになった悲鳴をヴィラルは奥歯を噛み締めて呑み込んだ。鋭い牙がぎりっと軋む音がして、苦しげな呼吸だけが微かに洩れる。
胸を弄くる指は尚も容赦なく、敏感な薄い皮膚を押し潰し、撚り、爪の先で軽く引っ掻きと暴虐の限りを尽くす。痛痒いような感覚に、いつの間にかどことなく甘い痺れが取って代わろうとする。噛み締める奥歯に更に力が籠もった。

「……うぁ!?」

声を上げまいとする努力が崩れたのは、それまで放置されていた右胸に突然濡れた感触が這ったからだった。いつの間にかぎゅっと瞑っていた目を開けば、喉の下辺りで青い髪が揺れている。胸に顔を埋めた男が乳首を含んだのだと頭が理解した時には既に、右胸からの感覚は熱く湿った舌と唇に蹂躙されるそれ一色に塗り潰されていた。
普段は意識する事もない身体の一部から送り込まれる感覚の奔流に、気道が塞がったような錯覚を起こして呼吸が乱れる。思わず口を開けて喘ぐように息をしたところで見計らったかのように胸の頂点へ歯が立てられ、その拍子にびくりとわなないた喉が引き攣れた悲鳴を上げた。
軽く甘噛みした箇所を宥めるようになぞっていた舌先がそのままつうっと胸から這い上がり、カラーを弛めた喉元で止まると同じ場所に啄むようなキスが落ちる。

「随分とカワイイ声が出るじゃねえか、なぁ? 大将」

額をくっつけて覗き込んでくる顔が薄ら笑っているのが忌々しい。精一杯睨み返したところで、目の縁に溜まった涙のせいでひどく憐憫だか嗜虐心だかを誘う表情にしかなっていないのに自分では気付かないまま、不意に上半身を抱き寄せられた事にヴィラルはぎくりと身を固くした。
相手の厚い胸板に押し付けられてバストが撓む。背中に回った腕はするするとその位置を下にずらして行く。尻たぶを掴むように撫で回す掌の感触。悪い予感に思わず身を捩ると、更に抱き寄せられて体がひたりと密着した。
尻を撫でていた手がするりとその奥へ滑り込む。更にそのまま両脚の間へ。

「………!?」

他者の手に触れられてはじめて、そこがぬめりを帯びた分泌液を溢れさせていることに気付く。

「ひ…っ、……や…嫌だ……触る、な……」

掠れる声の制止も聞かず、揃えられた指先は縦に滑って湯と体液に湿る獣毛の茂みを分けた。
ぬるり、粘液に助けられてさほどの抵抗もなく、一本の指が体内へ侵入する。
中の具合を確かめようとでも言うのか、ゆるゆると探りを入れた指は次に第二関節から先を曲げ、潤む粘膜を軽く掻いた。
ひくりと喉が鳴り、舌が震える。強張った肌の表面へ、宥めるようもう片方の掌が滑らされる。

「~~~~ッ!!」

充分に解れている事を確認してか、指がもう一本追加された。狭い隙間が圧し拡げられようとする圧迫感に、身体は異物を排除しようと粘膜を蠢かす。きつく絡み付く熱い肉襞を、しかし入り込んだ指は意に介することもなく執拗に掻き混ぜ続ける。
弄られる箇所から微弱な電流にも似た感覚が背筋を這い上がって、寒くもないのに全身の皮膚がぞくぞくと跳ねた。呼吸がいっそう上擦って視界はぼやけ、口の中が唾液で妙に粘る。

「あっ…やぁ……っ! 止め…ろぉ…」

命令口調のまま哀願の色を帯びてきた声も甲斐なく、身体の中を掻き回す指の横暴は止まらない。
温泉の湯とぬるぬると分泌される体液を絡めて動き続けるものが敏感な粘膜を暴き、擦り立て甚振る感触に次第と頭が眩み、縋りつくように顔を埋めてしまった男の肩に、蒼い刺青で彩られた皮膚に、弾け飛んでしまいそうな間際で必死に抗う意思が歯を立てさせる。
通常なら鋭い獣の牙は皮を裂きその下の肉を引き千切る事も容易に為し得た筈だったが、慣れない快楽に力を奪われた顎は弱々しく、陽に灼けた肌の上を軽く噛んだだけに止まった。それでも尖った牙の先端は僅かに皮膚の下へ沈んで口の中へじわりと鉄錆の味を拡げ、しかし不本意に煽り立てられた獣の本能はそれすらも昂揚を呼ぶものと捉えて体温を上げる。

「痛てて…いくらイイからって噛むこたぁ無ぇだろ」

「い、いい、わけなど、ある…ものか………ひぁっ!?」

噛み付いたお仕置きとばかりに一度に2本指が増やされ、叩きかけていた憎まれ口が敢え無く中断させられる。
初めの頑なさは見る影も無く、今や4本もの指を受け入れている秘所は益々と潤みを帯びて侵入者を舐めしゃぶり、時折あたかも逃しはしないと言わんばかりに纏わりついては締め付けを与えていた。

「こっちはすっかり出来上がってんのに往生際が悪いぜ」

耳元に熱い息を吐きかけて囁いた口が、濡れた髪を分け露わにされた耳朶の付け根に噛み付いた。咬み裂く牙には足りなくとも少し尖った犬歯が柔らかい皮膚と軟骨を捉え、その後から温かく湿った舌が這わされる。他方で再び片乳を揉み捏ね始めた手指は休みなく動き、身体の内側を苛める指は――俄にずるりと全てが抜け出し、解放された粘膜は急な喪失感に名残りを惜しむよう、軽くひくついた。

惜しい、などと。
一瞬でも感じてしまった己が許せず、ヴィラルはぼやけた頭に正気を取り戻すべく現状の再認識を試みた。相手の膝の上に乗せられた状態で抱き込まれている体は殆ど自由が利かない。両の腕は湯に浸かったせいでより解け難くなった布切れに封じられたままだ。脚は自分を掴まえている裸ザルの体を跨ぐ形に開かれて、その付け根では今まで散々弄くられ感度を増した牝の部分が物欲しげに疼いている。そう、今まさに入口に押し当てられた硬いものを待ち侘びてでもいるかのように──

「…うっ、うあ゛ぁぁぁぁぁあああ゛! ちょ、止せ、止めろ貴様正気かこの人間風情が!!」

激しく今更ながらに悟った貞操の危機に、やにわに声を荒げて抵抗を試みるも既に体勢は合体秒読み段階で逃げようもない。背中で縛められた両腕が空しく藻掻いて水音を立てる。

「その人間風情にヒイヒイ言わされたら、明日からどんだけ偉そうに出来るか見物だな? ケダモノの部隊長さんよ」

「ギャ─――─ッ! あ、後で殺す! 絶対殺してやる!!」

ほんと色気がねえなあ、と呟いたカミナの手が細い腰を掴んでぐいと引き寄せた。ふらり泳いだ上体が仰け反って肩と後頭部が湯に沈み、当て所無く暴れていた両手の指先が水底を掻く。

「!」

湯船の底とは違う、薄く硬いものの触感が指の先に触れた。
先程手放した鉈だと認識する暇もあらばこそ、必死に爪の先を引っかけるようにしてそれを手繰り寄せ、手に馴染んだ柄を逆手に握り込む。刃は半分ほどこぼれてしまっているが、手首を拘束する布地に裂け目を入れる程度の働きは出来そうだった。

「…く、ぅう、あっ、くそ、入って…来るなぁっ!!」

渾身の力を込め脆くなった縛めを引きちぎった腕が、そのまま反動を付けて振り抜かれる。
まともに当たれば頭が割られるか首の骨が折られるに違いない獣人の平手打ちを咄嗟に仰け反って躱したカミナの頬を、それでも避けきれなかった鋭い爪の先が薙いで3本の血の筋を描いた。

「痛ェ!!」

思わず力の弛んだ腕の中から、弾かれたように跳びすさったしなやかな肢体が宙を舞ってやや離れた岩場にすたっと降り立ち、湯中たりと恥辱とその他諸々の原因で淡く朱に染まった肌を震わせて叫ぶ。

「こ、ここは一旦退いてやるが憶えていろ! この屈辱の代価は明日にでも倍にして支払わせてくれる!」

どう見ても負け犬の遠吠えです的な台詞と共に、うっすら涙の滲んだ眦をきっと吊り上げて未だ湯に浸かったままの宿敵を睨み付けた女獣人は次の瞬間踵を返し、目にも止まらぬ速さで脱衣場へと姿を消した。

「…なんだったんだ、ありゃあ」

「さあ……ところで兄貴、顔、血だらけだよ」

頭に乗せていた手拭いを差し出してカミナの頬を拭ったシモンは次の瞬間、妙に言いづらそうに言葉を継いだ。

「それとさ……ここまでの声とか、ぜんぶ女湯に筒抜けだよ、たぶん」

さっき塀の向こうから何やってんのってヨーコに訊かれたもん、と沈痛な表情になった弟分の声を聴きながらカミナは思った。
どういう予定になってるんだかよく解らんが明日、先っぽだけ突っ込んだお代を倍額払わされる前に俺は死んでるかも。

 >>>

「ヴィラル、どうした、応答せんかヴィラル!」

夜半過ぎ、灯りの落ちた通信管制室にチミルフの野太い声が響いた。
意気軒昂なところを買って出撃させたはいいが、とうに夜は更け、明朝の作戦開始時刻も近付こうというのにヴィラルからの連絡が一向に無い。

まかり間違って撃破されたなどという事があれば現場の工作部隊から報告がある筈で、成功したとも失敗したとも判明しないまま昼型の獣人にとっては活動限界である深夜に差し掛かってしまっている現状に、流石に不安を覚えたチミルフは指揮官権限で強制的にヴィラルの乗機、エンキドゥへの直通回線を開いた。
隠密行動の為に通信を遮断しているのかと思いきやそんな事はなく、あっさり開いた通信画面にしかしパイロットの姿はない。ガンメンを降りているのかと思い通信を切ろうとしたその時、空座となっている操縦シートの脇に何か白いものが見えるのに気が付いた。試みに通信用カメラの角度を変え、ついでに受話音量も上げてみる。

そこに映し出されたものは何故か素っ裸の上にバスタオル一枚を巻き付けただけ、髪からはぽたぽた水滴が落ちているという格好でコクピットの床に体育座りをし『先端だけだからセーフ、全部入ってないからノーカウント……』などとぶつぶつ呟き続けているヴィラルの姿で、何が何だか事情はさっぱり解らないものの激しく声を掛けづらい空気を窺い取ったチミルフは黙って通信を切った。

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なお、その後数日の間、よく見える場所に獣人の残した歯形と引っかき傷をつけたままのカミナにヨーコは近寄ろうとも口を利こうともせず、結果としてグレン団のダイガンザン強奪作戦は何の支障も無くとんとん拍子に成功し、物語はカミナ生存ルートに突入してたりもするのだがまあそんな事は全くどうでもいい話だった。


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色んな意味で超スマンカッタ。