夜半過ぎに突然電話がかかって来て、ロシウはおもむろに受話器をとった
「ロシウ!昔私が風邪をひいたときに作ってくれたアレ!アレの作り方を教えてくれ!」
こんな真夜中に何を考えているんだ!と一喝したい気持ちを押さえて、電話の向こう側で息巻いている相手を諌めた
「とりあえず落ち着いて…何があったんだ?」こちらの冷静な対応に相手も落ち着きを取り戻した様だ、咄々と状況を説明しだした
「堀田が熱を出したんだ…確かに帰って来てからも様子がおかしかったんだが、さっき熱を測ったら39度6分あって…」
それで、と先を促すとヴィラルはしばし押し黙って自分の心と葛藤する
ロシウはそれが気に入らなかった
一途で真直ぐ…実直で真面目それは彼女の長所だ
だが、今回の任務はそれが仇になっている
「ヴィラル、君のご所望の卵酒は僕が作る…だからこれから取りに来なさい。少し会って話したいこともあるから」
一方的にそれだけ言って受話器を置いた
これ以上彼女をあの学園に潜入させておいて良いのだろうか?
これは戦略的観点からしても不利ではないか?
そんな事をグルグル考えながら、ロシウはソファに深く腰を下ろした
それよりも…自分は彼女の心があちらに傾く事を恐れているのではないか?
彼女が自分から離れて行く事を恐れてはいまいか?
「バカバカしい」
巡る思考をバッサリ切り捨てて、ロシウは再び受話器を取ると部下を呼び付けて買い出しに行かせた
「ロシウ!昔私が風邪をひいたときに作ってくれたアレ!アレの作り方を教えてくれ!」
こんな真夜中に何を考えているんだ!と一喝したい気持ちを押さえて、電話の向こう側で息巻いている相手を諌めた
「とりあえず落ち着いて…何があったんだ?」こちらの冷静な対応に相手も落ち着きを取り戻した様だ、咄々と状況を説明しだした
「堀田が熱を出したんだ…確かに帰って来てからも様子がおかしかったんだが、さっき熱を測ったら39度6分あって…」
それで、と先を促すとヴィラルはしばし押し黙って自分の心と葛藤する
ロシウはそれが気に入らなかった
一途で真直ぐ…実直で真面目それは彼女の長所だ
だが、今回の任務はそれが仇になっている
「ヴィラル、君のご所望の卵酒は僕が作る…だからこれから取りに来なさい。少し会って話したいこともあるから」
一方的にそれだけ言って受話器を置いた
これ以上彼女をあの学園に潜入させておいて良いのだろうか?
これは戦略的観点からしても不利ではないか?
そんな事をグルグル考えながら、ロシウはソファに深く腰を下ろした
それよりも…自分は彼女の心があちらに傾く事を恐れているのではないか?
彼女が自分から離れて行く事を恐れてはいまいか?
「バカバカしい」
巡る思考をバッサリ切り捨てて、ロシウは再び受話器を取ると部下を呼び付けて買い出しに行かせた
出来上がった卵酒を保温ポットに注ぎつつ、彼は深いため息を吐き出した
今は彼女を信じて任せると決めたのだが、やはりどうにも心の縁に蟠るものがある
「僕は一体何をしているんだ…」
と、正に愚痴を零しかけたその時に奴は現われた
「ロシウ!今回の作戦こそ絶対の絶対なんだぞ!ペットのやつがグッタリしたシモンから心の声を引出してだな!」
入ってくるなり身振り手振りオーバーなアクションで、まくし立てるヴィラルにロシウはがっくり肩を落とした
「それで名案を思い付いたんだ!その名も病気で気弱になった堀田のハートをノックアウト大作戦!」
どうだ!完璧だろう!と胸を張る幼馴染みに、昔と何も変わっちゃいないな…と感想を覚えた
「それで、昔おまえが作ってくれたタマゴザケを思い出してだな」
「あぁ、解ったから…これ」
そう言って差し出されたポットに相手はポカンとする
「これじゃあ私の真心が籠って無い」
《はぁ…またこの子は突拍子も無い事言い出したよ…》
と辟易しつつ、ロシウは眉間を擦った
「君は忘れてしまったかもしれないが、昔僕の真似をして作った卵酒のおかげで僕はER送りになったんだぞ」
彼をそれで暗殺するなら構わないが…と、付け加える
すると、当時の事を思い出したのか、赤くなったり青くなったりしていた彼女が、改めて首を振った
「ロシウのタマゴザケは最高だから堀田だってオチるに決まってる!だからこれでいい…」
やや尻すぼみに付け加えられた言葉に、トゲトゲしかった気持ちが少し和らいだ
「アルコール分も飛ばしたし、自白剤も入れていない…あとは君の魅力とやらで何とかしてくれ」
ポカンとしているサスーンを取り置いて、疲れたから寝ると寝室のドアを開ける
「あぁ、あと、プリンとかゼリーとか喉越しの良いものを買って行けば良い。コンビニならまだ開いているだろう」
と言い終えると扉を閉めた
向こう側からは、ありがとう的な言葉が聞こえたが、無視を決め込んでベッドに倒れ込んだ
「本当に僕は一体何をしているんだ?」
その疑問に答えるものはいない
今は彼女を信じて任せると決めたのだが、やはりどうにも心の縁に蟠るものがある
「僕は一体何をしているんだ…」
と、正に愚痴を零しかけたその時に奴は現われた
「ロシウ!今回の作戦こそ絶対の絶対なんだぞ!ペットのやつがグッタリしたシモンから心の声を引出してだな!」
入ってくるなり身振り手振りオーバーなアクションで、まくし立てるヴィラルにロシウはがっくり肩を落とした
「それで名案を思い付いたんだ!その名も病気で気弱になった堀田のハートをノックアウト大作戦!」
どうだ!完璧だろう!と胸を張る幼馴染みに、昔と何も変わっちゃいないな…と感想を覚えた
「それで、昔おまえが作ってくれたタマゴザケを思い出してだな」
「あぁ、解ったから…これ」
そう言って差し出されたポットに相手はポカンとする
「これじゃあ私の真心が籠って無い」
《はぁ…またこの子は突拍子も無い事言い出したよ…》
と辟易しつつ、ロシウは眉間を擦った
「君は忘れてしまったかもしれないが、昔僕の真似をして作った卵酒のおかげで僕はER送りになったんだぞ」
彼をそれで暗殺するなら構わないが…と、付け加える
すると、当時の事を思い出したのか、赤くなったり青くなったりしていた彼女が、改めて首を振った
「ロシウのタマゴザケは最高だから堀田だってオチるに決まってる!だからこれでいい…」
やや尻すぼみに付け加えられた言葉に、トゲトゲしかった気持ちが少し和らいだ
「アルコール分も飛ばしたし、自白剤も入れていない…あとは君の魅力とやらで何とかしてくれ」
ポカンとしているサスーンを取り置いて、疲れたから寝ると寝室のドアを開ける
「あぁ、あと、プリンとかゼリーとか喉越しの良いものを買って行けば良い。コンビニならまだ開いているだろう」
と言い終えると扉を閉めた
向こう側からは、ありがとう的な言葉が聞こえたが、無視を決め込んでベッドに倒れ込んだ
「本当に僕は一体何をしているんだ?」
その疑問に答えるものはいない
熱でぼんやりしていた意識も解熱剤のおかげか、だいぶハッキリしてきた
「先生、何処行っちゃったんだろ?」
熱を測って、解熱剤を飲むまではいたのだが、今は全く気配が無い…
何だか言い知れぬ心細さに、布団に頭まで埋まる
だが、すぐに息苦しくなって顔を出す
いつも側にあったモノが無くなる喪失感は、こう言った時に自覚するものなんだな…と柄にも無く涙が滲んだ
すると、玄関扉が開く音が静かな家の中に響いた
《あぁ良かった》
身体中に安堵が広がり、心地よさに眠気が戻って来るが、結局飛び起きなければならなくなる
「せ、先生!何ですかそのかっこ!?」
「見れば解るだろう?医者だ!」
「そんなキワドいお医者見た事無いですよっ!」
バーンと開け放たれた襖の向こう側には、白衣…と下着だけと全くもってけしからん格好のサスーン先生があらせられた
「あ!やっぱりお前もミニスカナースが良かった口か!?それとも巫女巫女ナースか!?」
「何処でそんなネタ仕入れて来たんだよ!」
と入れ知恵した奴を呪う様な崇める様な複雑な心境を、知ってか知らずか
サスーン女医は四つん這いでジリジリ近付いて来る!
《あぁ待って!そのポージングだと胸が!胸がぁああああっ!》
理性を保つためにギュッと目を瞑ると、額に冷たいモノがあてがわれた
「日本のコンビニエンスストアは凄いな。冷えピタからプリンまで何でも揃ったぞ!」
そろりと目を開けると、ビニール袋からポカリやらプリン…ゼリー等々を取り出している健気な姿が拝めた
「とりあえず買って来た。それから…」
とやや間を開けて、先生は保温ポットを取り出した
「これはタマゴザケだ」
飲むか?と聞かれて、怖々うなづくと
それに気分よくしたのか、ニコニコしながらマグに卵酒を注いで俺に差し出す
「温かいし、甘いし、旨いぞ」
確かにマグの中の液体はアルコールの臭気も無く、変わりに甘い香りがしてトロンと誘う様に揺れていた
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
恐る恐る口をつけるが、想像していた見た目は普通だけどヤバい味、なるオチは無かった
一言で言うなら優しい味
「先生…」
呼び掛けると、ん?と言って覗き込む顔にキッパリ言った
「これ、先生が作ったんじゃないですね」
鋭いツッコミにサスーン先生は目を丸くするが、予想外にも柔らかく笑って見せた
「あぁ、それは私が幼い時にも飲んだやつだ」
「思い出の味…ってやつですか」
うん。とうなづく彼女の向こう側にソイツを見た気がした…
「羨ましいな」
思わず呟いた言葉に、即座に切り返しが入るが、無視を決め込んだ
だって癪に障るではないか…
こんなに彼女の事を思ってるのに、わざわざ俺のための卵酒なんか作って…それが大人の余裕ってやつかよ
ロシウ・デコイ
「なぁ、堀田」
「何ですか?」
イライラとささくれ立った気持ちを押し殺して聞き返すと、満面の笑顔で突拍子も無い提案をされる
「SEXしょう!」
「はぁ!?」
「大丈夫!ちゃんーとコンドームも買って来た!避妊措置はバッチリだろう!」
「いやいや、そうじゃなくて!何で突然そんな話になるんですか!?」
改めて尋ね直すと、呆けた顔で俺を見つめてから密やかに眉寝を寄せた
「だって、風邪を引いたらうつすといいって…それにはSEXが手っ取り早いって…」
「……それ何処の同人誌ですか?」
お互いしばし無言が続いた
「えぇええええっ!アレって一般常識なんだとばかりっ!」
「なわけ無いでしょう…病気で弱ってる身体酷使してどーするんですか」
「だって、いっぱい汗をかくといいって!」
「それは身体を温めて体内のウィルスの活動を押さえる…って観点を解りやすく例えた言葉です」
あとは代謝とか関係してるかも
と付け加えた頃には、サスーン先生はがっくり肩を落として畳にのの字を書いていた
何も、そんなに落ち込まなくったって…
「ぅう…私の完璧な作戦がぁああああっ!」
メソメソと泣き始めた同居人に、志門はやれやれと言った調子でサラサラの髪を梳いた
「先生の望んでいる様な事はしませんが、側にいてくれませんか?」
「ふぇ?」
「風邪を引いた時って無性に心細いんです。だから、先生に側いてほしいな…なんて」
と告白すれば、さっきまでの涙は何処へやら…不敵に笑って俺の頭を抱いた
「なーんだ!堀田はまだまだお子様だな!」
「処女の先生に言われたくないです」
「な、何故それを!?」
鎌をかけたつもりが、また図星だった…
《やっぱり年長者の言う事は聞いておくべきだな》
と別次元の自分に手を合わせて身体を横たえる
「先生、俺こんなどさくさ紛れに初めて奪いたくないんで寝ますね」
と背中を向けて言うと、ゴソゴソと何かが布団の中に潜り込んできた
「先生…狭い」
「側にいてと言ったのはお前だぞ!」
風邪っぴきは早く寝ろ!とバシバシ肩を叩かれて渋々目を閉じた…
何だか、風邪を引くのも悪くない気分だな
「先生、何処行っちゃったんだろ?」
熱を測って、解熱剤を飲むまではいたのだが、今は全く気配が無い…
何だか言い知れぬ心細さに、布団に頭まで埋まる
だが、すぐに息苦しくなって顔を出す
いつも側にあったモノが無くなる喪失感は、こう言った時に自覚するものなんだな…と柄にも無く涙が滲んだ
すると、玄関扉が開く音が静かな家の中に響いた
《あぁ良かった》
身体中に安堵が広がり、心地よさに眠気が戻って来るが、結局飛び起きなければならなくなる
「せ、先生!何ですかそのかっこ!?」
「見れば解るだろう?医者だ!」
「そんなキワドいお医者見た事無いですよっ!」
バーンと開け放たれた襖の向こう側には、白衣…と下着だけと全くもってけしからん格好のサスーン先生があらせられた
「あ!やっぱりお前もミニスカナースが良かった口か!?それとも巫女巫女ナースか!?」
「何処でそんなネタ仕入れて来たんだよ!」
と入れ知恵した奴を呪う様な崇める様な複雑な心境を、知ってか知らずか
サスーン女医は四つん這いでジリジリ近付いて来る!
《あぁ待って!そのポージングだと胸が!胸がぁああああっ!》
理性を保つためにギュッと目を瞑ると、額に冷たいモノがあてがわれた
「日本のコンビニエンスストアは凄いな。冷えピタからプリンまで何でも揃ったぞ!」
そろりと目を開けると、ビニール袋からポカリやらプリン…ゼリー等々を取り出している健気な姿が拝めた
「とりあえず買って来た。それから…」
とやや間を開けて、先生は保温ポットを取り出した
「これはタマゴザケだ」
飲むか?と聞かれて、怖々うなづくと
それに気分よくしたのか、ニコニコしながらマグに卵酒を注いで俺に差し出す
「温かいし、甘いし、旨いぞ」
確かにマグの中の液体はアルコールの臭気も無く、変わりに甘い香りがしてトロンと誘う様に揺れていた
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
恐る恐る口をつけるが、想像していた見た目は普通だけどヤバい味、なるオチは無かった
一言で言うなら優しい味
「先生…」
呼び掛けると、ん?と言って覗き込む顔にキッパリ言った
「これ、先生が作ったんじゃないですね」
鋭いツッコミにサスーン先生は目を丸くするが、予想外にも柔らかく笑って見せた
「あぁ、それは私が幼い時にも飲んだやつだ」
「思い出の味…ってやつですか」
うん。とうなづく彼女の向こう側にソイツを見た気がした…
「羨ましいな」
思わず呟いた言葉に、即座に切り返しが入るが、無視を決め込んだ
だって癪に障るではないか…
こんなに彼女の事を思ってるのに、わざわざ俺のための卵酒なんか作って…それが大人の余裕ってやつかよ
ロシウ・デコイ
「なぁ、堀田」
「何ですか?」
イライラとささくれ立った気持ちを押し殺して聞き返すと、満面の笑顔で突拍子も無い提案をされる
「SEXしょう!」
「はぁ!?」
「大丈夫!ちゃんーとコンドームも買って来た!避妊措置はバッチリだろう!」
「いやいや、そうじゃなくて!何で突然そんな話になるんですか!?」
改めて尋ね直すと、呆けた顔で俺を見つめてから密やかに眉寝を寄せた
「だって、風邪を引いたらうつすといいって…それにはSEXが手っ取り早いって…」
「……それ何処の同人誌ですか?」
お互いしばし無言が続いた
「えぇええええっ!アレって一般常識なんだとばかりっ!」
「なわけ無いでしょう…病気で弱ってる身体酷使してどーするんですか」
「だって、いっぱい汗をかくといいって!」
「それは身体を温めて体内のウィルスの活動を押さえる…って観点を解りやすく例えた言葉です」
あとは代謝とか関係してるかも
と付け加えた頃には、サスーン先生はがっくり肩を落として畳にのの字を書いていた
何も、そんなに落ち込まなくったって…
「ぅう…私の完璧な作戦がぁああああっ!」
メソメソと泣き始めた同居人に、志門はやれやれと言った調子でサラサラの髪を梳いた
「先生の望んでいる様な事はしませんが、側にいてくれませんか?」
「ふぇ?」
「風邪を引いた時って無性に心細いんです。だから、先生に側いてほしいな…なんて」
と告白すれば、さっきまでの涙は何処へやら…不敵に笑って俺の頭を抱いた
「なーんだ!堀田はまだまだお子様だな!」
「処女の先生に言われたくないです」
「な、何故それを!?」
鎌をかけたつもりが、また図星だった…
《やっぱり年長者の言う事は聞いておくべきだな》
と別次元の自分に手を合わせて身体を横たえる
「先生、俺こんなどさくさ紛れに初めて奪いたくないんで寝ますね」
と背中を向けて言うと、ゴソゴソと何かが布団の中に潜り込んできた
「先生…狭い」
「側にいてと言ったのはお前だぞ!」
風邪っぴきは早く寝ろ!とバシバシ肩を叩かれて渋々目を閉じた…
何だか、風邪を引くのも悪くない気分だな
「ふぇええん…頭痛いー、身体ダルい~」
「あんな格好で寝るからですよ!まったく!」
と言いつつ差し出したプリンを幸せそうに飲下する先生に
やっぱり自分は“なおされる”より“なおしたい”と感じた
「あんな格好で寝るからですよ!まったく!」
と言いつつ差し出したプリンを幸せそうに飲下する先生に
やっぱり自分は“なおされる”より“なおしたい”と感じた