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「……シモ…ン……も、もう、いいだろう……?」
「ん、いや、もうちょっと」
「い、今更……今更見たところで…………なんで今更だ!!」

 そう、本当に今更すぎる。
 大雑把に四捨五入すればとうに20年近く昔の話だ。なのに、どうして今になっていきなり。


 事の起こりは、今日の夕方に突然、
 いつもの事だが何の連絡も寄越さずにシモンがふらりと訪れたところからだ。
 超銀河ダイグレンが地球圏に停泊している時期でもカミナシティの自宅に戻っている事はそれ程ないというのに、偶然と言うにはあまりにも不自然な高確率で自分の元を訪う男に対する細かいツッコミを放棄してから既に久しい。
 だから今日も、どうして帰っていると解ったのかとか何をしに来たとかの無駄な質問は一切せず、昨日なんとなく多めに買ってしまっていた材料で夕食を作って出し、彼が手土産にと持ち込んだ南方の地酒で晩酌と雪崩れ込み、他愛のない会話を交わしていただけなのに。

 何がきっかけだったのかもさっぱりだが、何故か話題がかつて同時期に収監されたことのあるリンカーネ刑務所の事に触れ、何故か急に神妙な顔をしたシモンが「……なあ、ヴィラル」と切り出し、続けて言ったのだ。
「そういえば俺、あの時お前のセクシーショット見逃してた!」
 何がそういえばで何がセクシーショットだ、と流石に突っ込めば、どうも要領を得ない説明が返ってきて、だいたいの所をかいつまめば要するに、その約20年近く前、刑務所のシャワールームで他の囚人達から袋叩きにされていたシモンを助けた(とは言うが、あれは単に見苦しい行いをしている獣人連中にイラッと来ただけで別にこいつを助けようなどという意図は毛頭なかった)際に、ちょうど床に倒れていた奴の視界にうっかりとタオルの陰になっている部分を披露してしまっていたらしい。

「俺、あの時ゃかなり無気力だったからなー、うーん惜しいことをした」
 そんな、下らないにも程があるような事でしきりと残念そうな顔をしている男を殴ってやろうかどうしようかと考えあぐねていた間に、一人で勝手に解決策を見出したらしいシモンはいかにも「俺にいい考えがある」といった顔でこう提案してきた。

「よし、じゃあ今、見てもいいか?」


 ……もちろん快諾などはしていない。むしろ一発顔面にいいのを喰らわしてやったくらいなのだが、こいつときたら大して堪えた様子もなく「ごめんごめん」と誠意の欠片も見当たらない調子で軽く謝り、そして、どの程度自覚しているのかは解らないが、いつも人を誑し込もうとする時必ず見せる食わせ物の表情で「駄目か?」などと訊くものだから、当然駄目に決まっているのだがつい魔が差してというかなんというかで……

「言っとくけどな、チラっとでいいって言ったのに下全部脱いで大開脚したのはお前の方だぞ」
「う、うう、うるさい! さっさと見終われ! 気が済んだらもう一発殴らせろ!!」
「さっきので充分もらっただろ……ほんとお前ってば現場から離れても手が早いんだから」
 こっちはこんなに可愛いのにな、としみじみ抜かしながらの溜息が、ふっと粘膜をくすぐっていく。
 大きく開かされた両脚の間へ屈み込むような体勢になったシモンのその視線が、その呼吸が、あられもなく剥き出しで晒された場所を触れもせず犯しているような心地がして、どうにもさっきから腰椎のあたりがそわそわと落ち着かない。

「どうした、ちょっと色、濃くなってきてるぞ?」
「………………!! い、いい加減な、こと…を………」
 言い返す声が些か尻窄みとなってしまったのは、確かに好ましからざる体の反応を自覚してしまったためだった。
 奴の視線と息に撫でられ続けるそこがいつの間にか熱を持ったように疼き、体の内側から何かが迫り上がってくる。

「ん、真っ赤になってひくひくして……匂いも、ずいぶん強くなってきたな……」
 眼を細めて、大きく鼻を鳴らすような仕草に、いい加減溢れ出す寸前だった羞恥が煽られる。
「言う…な、馬鹿、そんな…っ、嗅ぐなんて……この、変態………! やだ……も…やめ……!!」
 泣きを入れたところでこいつがそうですかと切り上げてくれよう筈もなく、却って図に乗らせるだけなのは重々承知しているのに、それでもつい思う壺の反応をしてしまうのは何故なのか、自分でも解らない。

「いや、別に捕まえたり縛ったりしてるわけじゃないんだから、止めたかったら俺を蹴っ飛ばして逃げればいいだろ。なのに口で言うだけで、いつまでもなすがままになってるのはどうしてなんだ?」
 ほら、こう来るのは解ってたんだ。
 じゃあ何だ、私はこうされたくて形ばかりの抵抗を見せているだけなのか? そんな馬鹿な。

 頭が混乱して、ぎしりと金縛りにあったような私の脚の間で、シモンがにまにまと嫌な笑い方をしている。
 その視線の先でゆっくりと口を開き、滲み出る分泌液に湿りはじめた粘膜へ、ふっ、と息を吹きかけられた途端、悔しいが私の体は全面的に降服してしまっていた。

「……って…る……なら……」
「ん?」

「わかってるならさっさと来い、この馬鹿ったれが!!」
 もはや八割以上自棄っぱちで怒鳴りながら、両脚で奴の頭を抱え込むようにして引き寄せる。
 自分が果てしなく恥ずかしい真似をしているという自覚はあれど、とうの昔に陥落している理性などというものが歯止めとなってくれようはずも、今更なかった。