俺らの女神を保管する。
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俺らの女神を保管する。
ja
2009-10-04T07:46:49+09:00
1254610009
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『おしょうがつ』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/80.html
いくら総指令と言えど議会が休みの盆と正月は自宅でのんびりまったりできる。
年の瀬どころか大晦日の夜、紅白を見て年越し蕎麦を愛猫と啜っていても誰にも咎められない。
非番!何て素晴らしい響き!
隣りでは「ぜったいジョヤのカネきくんだ!」と息巻いていたので、
眠気覚ましにと淹れてやった緑茶をちびりちびりと飲んでるヴィラルがいる。
それが、先程から何かのチラシを熱心に見つめて時折「はぁ」とか
「うん」とか呟いてはクレヨンで何やら書き込んでいた。
「……何やってるんだ?」
と問い掛けると、その言葉を待っていたーァ!と言わん許りのキラキラおめめが俺を見据えた。
「あしたのはつうりで、かうプクプクロにしるしつけてた!」
あーこの目は行く気満々だなぁ……
明日は寝坊しつつ昼過ぎ辺りに初詣なんて想定してたんだが、こりゃあそうも言ってられないな。
とシモンは一呼吸置いてから腹を決めた。
「福袋な。うっし、じゃあ明日早起きして初売りに出撃だ!だから早く寝るぞ!」
「めいれいか?」
「いいや、提案だ」
「だったらのったー!ブータもはやくねるぞ!」
「ブミュ」
ウキウキしながら二階の寝室に駆けてく小さい姿を見やって、
自分もコタツから体を引き抜いて伸びをする。
福袋が欲しいなんて、やっぱり女の子なんだなぁ
と思いながら、置きっ放しになっていたチラシを手に取ってどれどれと目を通す。
「……前言撤回」
何故なら、しるしが付いていたのは洋服やアクセサリー等の福袋ではなく、
トビタヌキソーセージ詰め放題の写真にそれこそデカデカと赤いクレヨンで三重丸がついていたからだ。
「……俺も寝よう」
なんだか1年分の疲れがドッと押し寄せた心持ちで、トボトボと寝室へ上がる地球政府総指令であった。
翌朝、腹に強い衝撃を受けて飛び起きた。
「ぐぎゃっ!」
「おきろシモン!あさだ!はつうりだ!」
テンションゲージMAX状態で、俺の腹上で踊り狂う子猫の頭をぽふぽふ叩いて宥める。
「解ったから、とにかく腹の上をのしのしするの止めような。昨日の蕎麦が鼻から出そうだ」
「うん!」
ぴょんと反動を付けて飛び退いたもんだから、再び息が詰まるが何とかかんとかこらえて、
シモンは暖かい布団にさよならした。
早く早くと急かされるままに雑煮を適当に飲み下
2009-10-04T07:46:49+09:00
1254610009
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『さよならに向けて』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/79.html
泣き声を聞いた。それもとても沢山の。あのときはどうしてか頭がぼんやりして、喧しいとしか思えなかった。意識がはっきりしてからあんまりな考えに後悔したのだけれど、誰も彼もそれほど弱い奴ではなかったのだ。
ありがたいことだと安堵していたのに、今悲鳴に近い泣き声が聞こえてきている。人のマントに顔を埋めて、体を二つに折って泣いている。どれだけの間そうしていたのだろう、掠れてしまった声で何度も何度も自分を呼んでいた。
ヴィラル。
会いたい、寂しい、と泣く彼女に呼びかけた。もちろん声は届かなかった。艶やかだったはずの髪を撫でてやっても、ヴィラルは顔を上げようともしない。
それでも次第に彼女のしゃくりは収まって、ついにはマントから顔を離した。雨風に晒されていた布に付いた埃や泥が移った頬を涙ごと拭い去って、ヴィラルはゆっくりと立ち上がった。自信に溢れたあの表情はどこにも見当たらず、食いしばる口元にばかり目がいってしまう。今にも崩れ落ちてしまいそうな体を懸命に支え、自分の墓に背を向けたヴィラルをカミナは見ていることしかできなかった。
カミナがカミナとして意識を保てるようになるまでには結構な時間が必要だった。気が付けば戦いが終わっていて、墓に参りにきたシモンは人として一回りも二回りも大きくなっていた。ふわふわな髪をした女性を連れてきて、沢山の話をしてくれた。自分が死んだときのことに、その後のシモンの心情や隣にいるニアに会ったときのこと。何もかも包み隠さず話す中に、当然ヴィラルの話題もあった。
かなりの間、ヴィラルがカミナの死を知らなかったこと、テッペリンでヴィラルと戦ったこと。そうして、ヴィラルが自ら死なない体になったと言ったこと。本当かどうかは分からないけれど、とシモンは付け加えた。とても高い所から落ちたようだったから、実際不死でもないと生きてはいないだろう、とも言った。
「アニキ、俺、思うんだ。俺達は獣人がいたから穴の中で暮らしていたけど、今の獣人を憎むのはおかしいかもしれないって。ロージェノムが獣人にそうさせてたんだから、憎むべきはロージェノムが作った体制だって俺は思う」
だから、とシモンは言葉を切った。
「俺はヴィラルを恨まない。もし、別に何か悪いことをすれば別だけど、アニキを殺したとかそういうことでは憎みたくないんだ」
よし、よく言ったシモ
2009-09-28T13:17:45+09:00
1254111465
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『アバン艦長ショタ返り4』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/78.html
「……っ、く……」
食いしばった歯の間から抜けていく空気が、やけに甘えた声音となったことに自分でぎくりとしたのか、少年の体が僅かに跳ねる。
「ひっ!?」
身動きしたせいで、薄皮一枚に守られた肉と血管が、少し硬いもの──例えば、そう、尖った歯とか──に当たったような気がして咄嗟に全身が竦む。
が、いつまで経っても予期した痛みなどはなく、その器官はただ温かく濡れて柔らかな感触に延々と撫で回されて、これまでに体験したこともない、強烈な快さに翻弄されるばかりだった。
ついさっき、抵抗する間もなく下穿きを剥ぎ取られた驚愕と恥ずかしさとその他諸々で一瞬縮み上がったかに見えたというのに、今や臆面もなく怒張し、屹立しているそれは既に自分の体の一部ではないかのように意のままにならない。
だというのに受け取る感覚だけは忠実に脳裏へ送られ、腰から下の骨が抜かれでもしたかと思うほどの快感で意識が埋め尽くされている。
「や、やや、やめ……っ、…て……そこっ……ぁ、あ!?」
静止の声が途中から裏返り出したことに、それまで少年のなだらかな下腹部に顔を埋めるようにしていた女もふと気付いた風に顔を上げる。
もとい、視線だけは上げたものの、口と手では未だ休みもせずに捕らえたものへの奉仕が続行されていた。
「…んっ……ここ、辛いか……? シモン…」
ぴちゃぴちゃと湿った音を立てながら、剥き出しにされたての粘膜を熱くて僅かにざらっとした舌で舐り回された途端、少年の全身ががくがくと震える。
問いかけられる言葉にも満足に答えられず、肯定か否定かも判然としないそぶりでひたすらにかぶりを振る様に、それを否定と取ったのか、女は更に執拗な動きでその場所を攻め立て始めた。
「あぁっ、やっ、ちが……っ…!」
微かにひりひりとする場所を舌の平で丁寧に撫でられ、雁首の縁やその下で僅かにたるむ薄皮の中までも舌先でなぞられる触感に腰椎が痺れ、全身がぐずぐずと蕩けてしまいそうになる。根元から幹のかしこまで行き来する指先はぬめりを帯びた液体を助けに忙しなく、しかし爪が当たらないよう慎重を期しながら擦り立て、時にやわやわと嚢を揉んでいく。
頭の中に靄がかかり、目の奥で何か眩いものがちかちかするような忘我のうねりの果てに、先端の小さな窪みに舌先をねじ込まれ、同時に唇で吸い上げられる
2009-09-28T13:12:58+09:00
1254111178
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『アバン艦長ショタ返り3』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/77.html
意識が浮上するのに伴って、さっきまで夢の中で繰り返されていた記憶の連なりが、大量の水が流れ込むようにして脳裏に焼き付けられる。
昨日の朝と同じ、遠く過ぎ去ったはずの記憶と実際に体験した記憶が同じくらいの鮮明さで重なり合う現象に頭がひどく混乱して、目の前がぐるぐる回っているみたいな調子で少し気持ちが悪い。
昨日はリットナーの村を出て七日ほどの場所で、ちょうど良く身を隠して休めそうな岩場にキャンプを張っていたはずだった。
ラガンで周囲を偵察してみたら少し離れた緑地に小さな泉があって、飲み水を充分確保した後でヨーコは水浴びに行ってくるとやけに張り切って出掛け、リーロンはいつものようにラガンとグレンのメンテナンスを、カミナは見張りのためと登った岩山の上でやおら刀を振り回し、どうやらイメージトレーニングらしきものを始めていた。
何をしているのかと訊ねてみれば、彼は存外に真面目くさった顔で『その内、またこないだのケダモノ大将とやり合う日が来るに違いねえ。そん時にゃ今よりもっと強く上手くなってなきゃいけねえからな!』と、おそらく脳裏に描いたヴィラルの太刀筋と斬り結んでいるのだろう刀捌きを続けながら答えて──
「…………ヴィラル!?」
「呼んだか、シモン?」
目を見開くと同時に上掛けを跳ね飛ばす勢いで起き上がれば、すぐ傍らから叫んだ名に応える、些か面食らったような声と表情。
白地に青いラインの入った不思議な形の服を着て、思い出した姿よりも随分と長い髪をさらりと肩口に流し、どこか心配そうな面持ちで覗き込んでくるその顔は確かに、記憶にある限りではほんの僅か前、リットナー近くの湿地で遭遇し、熾烈な戦闘を交わした獣人の女だった。
「な…んで……?」
本当の一昨日に初めて見たときはただ変わった姿だとしか思わなかった肘から下の大きな異形の両腕も、その手に生えた鋭い爪も、刃物の先端を並べたような歯も、あれら全てが地上に出た人間の命を刈り取るために存在しているのだと他の誰でもない、この獣人が言ったのだ。
カミナもヨーコも今は自分の側にいないのに、どうして自分たちとは敵対していた筈のヴィラルがこんな、自分のもっとも側にいるのだろう。
「どうした、具合が悪いのか? リーロンを呼ぶか?」
鼻の頭がくっつきそうなほど近くから覗き込んでくる金色の目が
2009-09-28T13:12:18+09:00
1254111138
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『アバン艦長ショタ返り2』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/76.html
数分後、ブリッジに戻った副官により「過労の兆候が見える艦長を休養させるため」停泊及び擬装形態にて艦を隠蔽せよとの指令を受けたカテドラル・テラは久方ぶりに、戦火に艦体を洗われぬ一日を送ることとなった。
「……あ、あの……」
シーツを換え、綺麗にベッドメイキングされた寝台の隅に所在なげに腰掛けているシモンは逡巡の末、勇気を振り絞る思いで今は唯一、同じ室内にいる自分以外の人物に話しかけた。
「どうした、何か必要なものが……そうか、そういえばまだ食事をしていないな。今持ってこよう」
穏やかな声音で応じたその女性は意外なほどきびきびとした動きで続きの部屋へ姿を消し、ほんの数分もしない内にまた戻ってきた。手にしたトレイに乗っていたのはどれも見たことのない食べ物だったが、食欲をそそる匂いに、今まで驚きの連続ですっかりと忘れていた空腹はきゅうと音を鳴らして歓迎する。
それとほぼ同時に、壁の一部が細く切れ込んだかと思うと薄い板のようなものがそこから飛び出してきて、するすると何の支えも無しに宙を滑り、ちょうど胸のすぐ下あたりの位置まで来るとぴたりと止まった。その上に微かな音を立ててトレイが置かれれば、料理から立ちのぼった湯気がふわりと頬をくすぐる。
「あ、おいしい……!」
何だかよく解らないことだらけながらも、未知の料理を一匙口に運んだシモンは思わず弾んだ声を上げた。
ジーハ村での食事と言えばブタモグラの肉以外に食材は無く、それが焼いてあるか煮てあるか、あるいは干してあるかくらいの差しかなかったが、目の前のトレイに盛りつけられた食事は色も形も、材料も調理法も見当が付けられないものながらもどれも何故か不思議と舌に快い。
「口に合って、良かった」
食事を持ってきてくれた女性は、妙にほっとしたような顔でベッドの傍らに立っている。
その不思議な色合いの眼が自分の一挙手をつぶさに見つめていることに気付いたシモンはどこか座りの悪い心地になって、ふと料理を口に運ぶ手を止めた。
「えっと、あなたは……食べないんですか?」
「私はいいんだ」
あっさりと即答され、それ以上の会話が繋がらない。
元より、十四年ほどの人生において母親以外の女性と差し向かいで話す機会などついぞ無かったし、両親を亡くしてから後はむしろ女の人というのは努めて避けて通りたい
2009-09-28T13:11:26+09:00
1254111086
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『アバン艦長ショタ返り1』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/75.html
※内容説明とご注意点など※
このSSはかなり前の過去スレでネタの出されたアバン艦長ショタ返り話です。
以下の点にご注意の上、趣味に合わないと判断されました場合は無理に読まずにファイルをゴミ箱へ放り込んで下さい。
・このSSは成人向けの性的及び暴力的表現を含みます。
・しかもエロパートと暴力/流血描写パートとそれ以外のパートの割合がpropellerのエロゲ並みです。
・エロにはおねショタが含まれます。
・文体が冗長です。というか長すぎて全3話に分割されてます。
・ペット子が「雌犬奴隷のふりをしている」バージョンです。
・アバン艦長が中二病通り越して大変に女々しいです。
・艦の名前はどうでもいい理由により、超銀河ダイグレンではなくカテドラル・テラのままです。
・匂わせる程度に書かれている背景事情は深く気にしないで下さい。
・SFガジェットや用語の使われ方はおおむねいい加減です。
・スレ内の雑談・小ネタをところどころ勝手に拝借しています。
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星々の引力圏から離れ、公転運動に従っている訳ではない宇宙戦艦の内部とはいえ便宜上の一日という概念は存在する。
ただ、故郷である小さな惑星を発つ際に地上の標準時に合わせられていた時間の区切りも今は時計の刻む数値の上にしかなく、艦内の者達にとって朝と言えば彼らの艦長がブリッジへ現れる時間帯であり、夕といえば彼がその席を払う頃という認識へと変わりつつあった。
「……タブー」
背後からの声に、第一艦橋の最上部に位置する司令塔からクルーたちへ指示を下していた長身の副官はそれ以上の内容を求めずに頷いた。
「現時点、超螺旋索敵圏内に敵影は認められません。どうぞお休みください」
振り向いた視線の先でうっそりと席を立つ影のような姿は、炎を纏ったロングコートの裾を翻したかと見えた刹那、淡い碧の光を残して宙に溶けるよう消え失せる。
主の姿が無くなった艦橋内には、ほんの僅かだが緊張感の弛んだ空気が漂い始める。
太陽を持たない小世界に、夜が訪れようとしていた。
>>>
緩く手を握り、開く。
そんな動きを半ば無意識のうちに繰り返していた事に、やっと気付く。
今日も大勢殺した。
広大な真空に隔てられてはいても、堅牢な外殻で鎧われて
2009-09-28T13:09:43+09:00
1254110983
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『手をつないで帰ろう』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/74.html
「見ろっ、シモン!!」
大変に元気な声とぽてぽてっという足音と共に、左脚の太股やや後方あたりに飛びついてくる、柔らかくてあったかい感触。
「見ろったってそこじゃ見えないよ。どれどれ?」
ゴロゴロ喉を鳴らしながら脚にしがみついてる生き物を、両脇の下を持ってひょい、と抱き上げる。
いつものフワフワした色の薄い金髪にぴんと立った三角形の耳、得意満面といった感じの表情。
そして首から下はといえば……
「お、ダリーの昔の服だな」
「えっ、シモンさん憶えてたんですか!?」
少し遅れてヴィラルの後を追いかけてきていたピンクの髪の少女が、ものすごく意外そうな顔をする。
俺ってそんなに、他人のことに注意を払わない質だと思われてるのかな……ちょっとショックだ。
「これを選ぶときにロシウが凄い顔して悩んでたから印象に残っててさ。動きやすくて丈夫で、女の子らしく清楚かつ健康的な……とか何とか、ずっとブツブツ唱えながらカタログめくってたんだぜ」
自分が小さい頃の話をされるのは、たとえ話題の中心が自分本人のことでなくともやっぱり微妙な気持ちになるんだろうか、ダリーがなんとなくむず痒そうな表情をしている。
でもあの頃の──カミナシティの人口がどんどん増えて、インフラも整備され始めてきて、俺たち大グレン団の皆も今まで着の身着のままで旅をしてきた頃のようには行かなくなったあたりのロシウは、本当にあれやこれやでいっぱいいっぱいだった。早く学校を作ってギミーとダリーを通わせなくちゃ、とか毎日のように言いながら、昔の教育制度についての本を難しい顔で読んでたっけ。俺もちょっとだけ読んでみたけど、昔の基準で言ったら俺やロシウも、たぶんニアもその学校ってやつに通わなきゃいけないんじゃないのかなー、って言ったら「高等教育は基礎教育を一般化させてからです!」とか早口言葉みたいな勢いで却下された憶えがある。
結局、俺たちは学校に通ったりする機会もなく、リーロンやテッペリンのデータベースから引き出した教育カリキュラムにだいたいの知識や護身術を含む訓練なんかを叩き込まれてそういった年頃を終わってしまったけど。
ちなみに余談だけど、ニアは姫としてテッペリンにいた頃に一通りの教育を修め終わっていたみたいで、自分の修得している分野においては一緒に勉強と言うよりはむしろ先生の側
2009-09-28T13:02:08+09:00
1254110528
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『入れ替わりこぬこと飼い主さん(一方あちら側)』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/73.html
目がさめたらなんだか体がへんだった。
いつもと同じシモンのベッドにねてたはずなのに、どうしてかひどくきゅうくつだ。
まえ足もうしろ足もきゅうにながくなったみたいなかんじがするし、どうたいもおもたい。とくにむねのところが。
とにかく、おきあがって、じぶんの体をたしかめてみる。
「……!?」
すごい!
おっぱいが大きくなってて、まるでふうせんみたいだ!
まえ足をのばしてみたら、やっぱりながくなっている。シモンとおなじくらいながいかもしれない。
うしろ足もしゅーっとのびてて、まっすぐにのばしたらベッドからはみ出すくらいだ。
さっきからかたにさわっててくすぐったいのはかみの毛だった。
せなかよりずっと下までながくのびてて先のほうはおしりのところまである。
さらさらできらきらしてて、えほんで見たおひめさまみたいだ。
もしかして、わたしはおとなになったんだろうか?
ねこがせいちょうするのは早いときくが、こんなにとつぜん、ねているあいだになんばいも大きくなるものだとは知らなかった。
やった!
はやくシモンにも見せてあげよう!
「シモン、あさだぞ、おきろ! ほら、はやく!」
いつものように、ふとんの中でぐっすりねているシモンのかたにまえ足をかけてのぞきこんで、ほっぺたをぺろりとなめる。
うーんむにゃむにゃとこえを出して、ねぼけたままもち上がったシモンの手がわたしのあたまをふかふかとなでた。
まぶたがぴくぴくしてゆっくりとひらいて、くるっとうごいためだまがわたしを見て。
「うわぁぁあああああああああああ!?」
ものすごいおおごえを上げてとびおきたシモンはベッドのはしからうしろ向きにおっこちた。
+ + + + +
「えーと、君、名前は?」
「う゛ぃらる!」
「…年は?」
「4かげつ!」
「住んでるところは?」
「シモンのうち!」
にこにこと満面の笑顔で元気にお返事をする半裸というかほとんどハダカの美女は、先程と全く同じ主張──自分は俺が飼っていた仔猫のヴィラルで、今日から大人(成猫?)になったのだというそれを繰り返した。
んなバカな。
「そんないきなり、途中の段階をすっ飛ばして成長する筈がないだ
2009-09-28T12:46:10+09:00
1254109570
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『ご開帳』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/72.html
「……シモ…ン……も、もう、いいだろう……?」
「ん、いや、もうちょっと」
「い、今更……今更見たところで…………なんで今更だ!!」
そう、本当に今更すぎる。
大雑把に四捨五入すればとうに20年近く昔の話だ。なのに、どうして今になっていきなり。
事の起こりは、今日の夕方に突然、
いつもの事だが何の連絡も寄越さずにシモンがふらりと訪れたところからだ。
超銀河ダイグレンが地球圏に停泊している時期でもカミナシティの自宅に戻っている事はそれ程ないというのに、偶然と言うにはあまりにも不自然な高確率で自分の元を訪う男に対する細かいツッコミを放棄してから既に久しい。
だから今日も、どうして帰っていると解ったのかとか何をしに来たとかの無駄な質問は一切せず、昨日なんとなく多めに買ってしまっていた材料で夕食を作って出し、彼が手土産にと持ち込んだ南方の地酒で晩酌と雪崩れ込み、他愛のない会話を交わしていただけなのに。
何がきっかけだったのかもさっぱりだが、何故か話題がかつて同時期に収監されたことのあるリンカーネ刑務所の事に触れ、何故か急に神妙な顔をしたシモンが「……なあ、ヴィラル」と切り出し、続けて言ったのだ。
「そういえば俺、あの時お前のセクシーショット見逃してた!」
何がそういえばで何がセクシーショットだ、と流石に突っ込めば、どうも要領を得ない説明が返ってきて、だいたいの所をかいつまめば要するに、その約20年近く前、刑務所のシャワールームで他の囚人達から袋叩きにされていたシモンを助けた(とは言うが、あれは単に見苦しい行いをしている獣人連中にイラッと来ただけで別にこいつを助けようなどという意図は毛頭なかった)際に、ちょうど床に倒れていた奴の視界にうっかりとタオルの陰になっている部分を披露してしまっていたらしい。
「俺、あの時ゃかなり無気力だったからなー、うーん惜しいことをした」
そんな、下らないにも程があるような事でしきりと残念そうな顔をしている男を殴ってやろうかどうしようかと考えあぐねていた間に、一人で勝手に解決策を見出したらしいシモンはいかにも「俺にいい考えがある」といった顔でこう提案してきた。
「よし、じゃあ今、見てもいいか?」
……もちろん快諾などはしていない。むしろ一発顔面にいいのを喰らわしてや
2009-09-28T12:43:00+09:00
1254109380
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『痴話★喧嘩』
https://w.atwiki.jp/virako/pages/71.html
公休。地球防衛軍戦術的戦略的移動型拠点基地でもある超銀河大グレン艦内に職場も、
仮だが住居もあるわけで、
もっぱら休日は宇宙に止まり残務の片付けをするのだが、
この日はそれが幾許多く時間が余ってしまった…
地上に降りるには些か足りないそんな時間をどうしたものか…と思案していた中
ふと思い当たって弁当を拵えて環境調整区画へと出向いた。
自分としては珍しく軽いピクニックのつもりで出かけたのだったが…
「まったくお前って奴は…」
環境調整区画のとある木陰、この艦の女艦長ヴィラルは隣りで
自分が握った特大握り飯に嬉々としてパクついている男を睨み付ける。
「ん?何か言ったか?」
広角についた飯粒をペロリと舐め取ってあっけらかんと問う男に出かかった言葉を飲み込んだ。
「はぁ…まぁいい」
「…うん?いいならいいけど。弁当、旨いぞ食わないのか?」
「心配するな食べている」
「あ!それ最後の唐揚げ!」
「私が作ったものだ。何を食べようと文句を言われる筋合いは無い」
「あ!それは最後の卵焼きっ!」
おかずを殲滅してやれば男が年甲斐も無くしょんぼりうなだれる。
まったく、飯ごときで…と思った辺りで
そういえばカミナと初めて会った時も夕食のトビタヌキを取り合いしたんだったか…
と思い起こして、改めてシモンの頭をなぜる。
「馬鹿者、また作ってやるからそんなにへこむな」
ポフポフと暫く撫ぜていれば、シモンがおもむろに顔を上げ遠くを見つめるので、
自分もそちらに視線を移す。
「お前がそうやって優しくしてくれるから甘えたくなるんだよな」
ポツリと呟かれた言葉に何を突然!とこちらの思考が斜め45度にすっ飛んでくのを知ってか知らずか、
男シモンはふぅと息を吐いて視線を足下にうつした。
「ここ作るの、おまえが指揮したんだってな」
いつもの事だが全く脈絡の無い男は芝生を撫ぜながらそう呟くので、改めてその場を見渡す。
「…クルーは艦に缶詰になる事が多いのでな。なるべく地球の環境に近付けようと思ったんだ」
どんなに遠くに行ったとしても心の在処は母星たる地球にあるはずなのだ。
「やっぱりこの艦はお前のものだな」
「は?何を言っているんだ?」
艦長なんて職務であって艦自体は地球政府の持ち物だろうと指摘せんと振返れば、
男はニヤリと笑っていた。
2009-09-28T12:34:26+09:00
1254108866