「2」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

2」(2008/07/16 (水) 15:51:52) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

夫から外食で済ますとの連絡を受けたので、茉麻の拵えた夕餉は3人前。 熊井との間に儲けられた2人の娘が、食卓からキッチンを窺っている。 やがて茉麻が、片手に一枚ずつ、スパゲッティを乗せた皿を運んで来ると、 母の手料理を待ち焦がれていた娘達が群がった。 残る自分の皿をテーブルに置き、茉麻はスパゲッティを頬張る娘達を眺めた。 「美味しい?」という茉麻の問いかけに対して、娘達は揃って頷いて見せた。 好み通りに作ったのだから解りきっていたことなのに、茉麻は安堵した。 「ママ?」 唐突に、長女の梨沙子が茉麻を呼んだ。 「はやく食べないとスパゲッティさめちゃう」 「あ、そうね、ありがと」 姉が笑うから妹の舞もつられて笑い声をあげた。 一方の茉麻は、手料理を喜ばれた安堵に潜む違和感を察した。 茉麻は、梨沙子に名を呼ばれるまで、脳裡に彷徨うあらぬ光景、 というよりは過去に浴していた感触を味わっていたのだ、無意識の内に。 ほんの刹那、梨沙子の口が女陰を模り、梨沙子の口をめがけて昇る麺のうねりが 夫の長い指と視え、フォークを掴む白くか細い五指は乱れ動く自らの肢体と思え、 食堂へ麺が流れて行く音に、乳房を吸う夫の舌触りを想った。 我が娘の身に、夫との営みを想起してしまう、己の浅ましさににゾッとする茉麻ではあったが、 いまだ張りも艶もある皮膚の奥から膨れ上がってくる肉欲を、これ以上意識しないではいられなかった。 起伏なき幸福が、女の性的な機能を妄想へ移譲していたのだ。 [[←前のページ>1]]   [[次のページ→>3]]
夫から外食で済ますとの連絡を受けたので、茉麻の拵えた夕餉は3人前。 熊井との間に儲けられた2人の娘が、食卓からキッチンを窺っている。 やがて茉麻が、片手に一枚ずつ、スパゲッティを乗せた皿を運んで来ると、 母の手料理を待ち焦がれていた娘達が群がった。 残る自分の皿をテーブルに置き、茉麻はスパゲッティを頬張る娘達を眺めた。 「美味しい?」という茉麻の問いかけに対して、娘達は揃って頷いて見せた。 好み通りに作ったのだから解りきっていたことなのに、茉麻は安堵した。 「ママ?」 唐突に、長女の梨沙子が茉麻を呼んだ。 「はやく食べないとスパゲッティさめちゃう」 「あ、そうね、ありがと」 姉が笑うから妹の舞もつられて笑い声をあげた。 一方の茉麻は、手料理を喜ばれた安堵に潜む違和感を察した。 茉麻は、梨沙子に名を呼ばれるまで、脳裡に彷徨うあらぬ光景、 というよりは過去に浴していた感触を味わっていたのだ、無意識の内に。 ほんの刹那、梨沙子の口が女陰を模り、梨沙子の口をめがけて昇る麺のうねりが 夫の長い指と視え、フォークを掴む白くか細い五指は乱れ動く自らの肢体と思え、 食堂へ麺が流れて行く音に、乳房を吸う夫の舌触りを想った。 我が娘の身に、夫との営みを想起してしまう、己の浅ましさににゾッとする茉麻ではあったが、 いまだ張りも艶もある皮膚の奥から膨れ上がってくる肉欲を、これ以上意識しないではいられなかった。 起伏なき幸福が、女の性的な機能を妄想へ移譲していたのだ。 [[←前のページ>1]]   [[次のページ→>3]]

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: