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駅に到着する。熊井は、職場までビル街を行きながら秘書と連絡を取った。
部下からの報告や日程を確認、出社を果たす頃には、丁度よい按配に汗ばんでいる。
エントランスでガードマンに社員証を掲示し、部下や同僚等と挨拶を交わしていると、
正面からやって来た有原と遭遇する。彼から届いたメールへ返信しそびれていたが、
彼の方は気にした様子もなく、あっけらかんとした声で件のメールと同じ内容の事を言った。
「昨日はどうしたんだい、せっかく例の店予約していたのに。あれからどうだい?」
「うん、もういいんだ。悪いね折角よくしてもらったのに」
「いい? 疲れてるんだろう、疲れはとれたの?」
社の生え抜きの部長である熊井と、中途採用で課長待遇の有原とでは立場は違うが、
同い年という事もあり、親睦会等で懇意になってからは気さくに話せる仲であった。
とはいうものの、昨晩の桃子――今思い出したが苗字は嗣永といった――との係わりについては、
お互い触れずに置こうとする、暗黙の了解が知らぬ間に出来ており、一言も彼女の名は出なかった。
「まぁ、また疲れたと思ったら頼むよ」
「予約はすぐに取れるから、いつでも」と有原が言って、2人は別れた。
熊井が、個室デスクの椅子へ座ると、先ほど携帯電話越しに話した、秘書の徳永も入室した。
美人秘書というには些か器量に欠けるものの、彼女の脚線美は典型的なバービー人形タイプであり、
社内でも頗る評判がよく、当人もそれを意識してかしないでか、好んでミニスカートを穿いているようだ。
徳永は「シュガーも入れておきました」と、熊井に紅茶を差し出して、その花開く笑顔を注いだ。
朝礼を終え、熊井は会議に取り掛かった。