静かな夜だった、世界が寝静まったかのような、そんな夜だった。
そんな夜に、秋には黄金畑と呼ばれる麦の畑、その端、町よりの1ヶ所だけが騒がしかった。
照明に照らされて闇夜に浮かぶ半球形の建造物、食糧倉庫である。
騒がしいといっても周りと比べれば、である。
食料の搬入を行う昼に比べれば、静かなものだ。
その食料倉庫の片隅、物陰に5つの影があった。

「おかしいなあ、いつもはこないな所まで巡回なんてせえへんのに」

「大丈夫なんかいな?サンダー」

小声で話す怪しい5人組、彼らはハンターである、ただ一口にハンターと言っても色々である、一番有名なのはソックスハンターであろうが彼らは違った。
美食ハンター、『美味しいものを腹いっぱい』をスローガンに掲げる集団である、美味い物のためならどんな危険も顧みない者達だ。
今回のターゲットは食糧倉庫内にある食材、そんな彼らの襲撃を知ってか知らずか、今日の警備は少しだけ厳重だった。

「しかし、今日を逃せばチャンスは無い、明日になれば目的の食材は輸送されてしまうからな」

彼らのリーダーらしき男が唸るとこのメンバーで唯一の女性が立ち上がった。

「そうですね、仕方ありません、彼らには眠ってもらいましょう」

「おお、さすがマジカルメード、相手を眠らす魔法でもあるんすか?」

「いえ、そういうのは私おぼえてないんですよ」

そう言って物陰から出た彼女は、ごく自然な足取りで巡回警備中の歩兵二人に近づいていく。

「いいんっスか、フィサリスさん一人で行かせて!」

「こら!バード、作戦中はコードネームで呼ばないか」

「すいませんっス、キング。でも……」

「彼女なら大丈夫だろう………たぶん」

そうこうしている内に歩兵の背後に接近する。

「あの…ごめんなさい」

突然声をかけられて慌てて振り向く二人の歩兵、その瞬間一息で距離を詰め近くの一人を当身で気絶。

「なっ!」

驚きで動きが鈍るもう一人の足を蹴り、バランスを崩すと喉に手をかけ一気にぶん投げた、背中から叩きつけられた男に上から追い討ちをかけ気絶させる。

「ふっ、と皆さん片付きましたよ」

物陰の男達に声をかけると皆一様に引きつった笑顔で出てきた。

「さすがですホオズキさん、お見事でした」

キングと呼ばれていた男が彼女に賞賛の言葉を送る。

「いえ、たいした事ではありませんわ」

(あれで大したこと無いって言ってるっスよ)

(下手に逆らわれへんなあ、これは…)

何故か戦慄している男性陣をよそに、当の本人は大きいですね~、とか言いながら倉庫を見上げていた。

「あ~、そうだ、こんな所で話している余裕は無い。ツーテンカク、この倉庫の地図は?」

「はい、ここに。わての情報網を駆使して手に入れとります」

ツーテンカクと呼ばれた男は皆の前で地図を広げてみせる、そこには食糧倉庫の中でも最大規模を誇る目の前の倉庫の内部構造が余すことなく記されていた。

「それでは、これより侵入作戦を開始、総力をあげて対象を確保する。行くぞ!」

キングの号令の下、美食ハンターの熱き戦いがいま始まった!

(文:フィサリス)