あなたのカニは、私のカニよ!第一章「乙女 集結」その1


城門の前で坂下 真砂は時計を見ながら人を待っていた。約束の時間はとっくに過ぎていた。

(遅いなぁ・・・まさかまだ寝てるのかな?いやいや、さすがにそれはないと思うけど、一応部屋まで呼びに行っこかな。)

真砂の前をかくたと裕樹が走りすぎて行った。「あっ、裕樹くん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど?グラちゃんって見てない?」

呼び止められた裕樹はすごくあせっていたが「今日は見てへんわぁ」と、律儀に答える。そしてそのままかくたを追って走り去っていった。

だいぶ焦ってたけど、何かあったのかな?それにしても、やっぱり一度グラちゃんの部屋に行ったほうがよさそうね。まぁすれ違ったらそのときはそのときよね。)

真砂は歩き出した。

そして・・・
AM:11時ごろ、とある一室にて・・・
グラジオラスはいすに座っていた。周りの風景が妙に白く見えたが、気にしなかった。なぜなら、目の前には大きなテーブルがあり、その上には『シュガー!ヨンタ饅(全種類)』が所狭しと並んでいたからであった。
グラジオラスは幸せそうに呟いた。

「チョコバナナにストロベリー、アーモンドにキャラメル・・・小豆餡まである。どれにしようかなぁ・・・最近発売されたきな粉味からいこうかな・・でも、カスタードクリームも捨てがたいな・・・いやいや、やっぱり王道にするか・・・それとも・・・」

しばらくお待ちください・・・・・・・・それから約10分後

「よし、決めたわ!やっぱりはじめは王道よね。ということで、バニラ味、君に決めた!」

 そういうとともに、シュガー!ヨンタ饅 バニラ味 を掴み、口をあけて一口目を食べようと・・・

ドンドンドン!!

周囲にすごい音が響く。

「もうなによ。人がバニラヨンタを食べようってときに・・・まぁいいわ、無視よ、無視」

無視することを決めつつ、バニラヨンタを食べ・・・

ドンドンドンドン!!

一段と大きな音が響く。
その音でグラジオラスは目を覚ました。

 ?

グラジオラスは自分の状況を理解しようとする。その間も大きな音は続いている。

 (ひとまず、この音は無視ね。えーと・・・たしか、いすに座って、こうヨンタ饅を食べようと・・・)

ドンドンドンドン!

 (もうなによ、うるさいわね。人が大事なことを考えているときに。 それで、食べようとしたときに、大きな音がして・・・)

ドンドンドンドンドンドン!!!

音が苛烈さを増す。
だんだんイライラしてきたグラジオラスは「うるさいって言ってるでしょ!!」と叫びながら、立ち上がる。と、そのとき、いやな考えが頭の中によぎった。

「まさか・・・」

あわてて周囲を見回す。間違いなく自分の部屋だった。そして、さっきまで自分がいた場所を見る。そこにあるのは、テーブルでもヨンタ饅でもなく、ベッドだった。今、自分が起きたばかりのベッドがそこにはあった。

 「そんな、まさかの夢オチ?夢オチなの?」

 グラジオラスの周囲にめらめらと怒りの炎が燃え上がる。

 「たとえ、夢だとしても仕方ないわ。でもひとつも食べられないなんて、あんまりよ、あんまりすぎるわ。それもこれも・・・」

 グラジオラスの視線が扉へと降り注がれる。音の正体はノックであった。今、扉は踊るように震えている。ノックの音も変わらずに続いている。

 「あの音が原因よ!」

 的外れな怒りとしか言いようがないが、食べ物の恨み(たとえ夢であっても)は恐ろしいのである。グラジオラスは肩を怒らせながら扉の前まで行き、鍵を開けいきおいよく扉を開けると、そこに立っていた坂下 真砂に文句を言った。

「どうしてくれるの!?シュガー!ヨンタ饅が食べられなかったじゃない!」

完全に言いがかりであった。言われた真砂は少し困惑したが、気を取り直し冷静にグラジオラスを見ながら口を開いた。

「ヨンタ饅・・・? 何を言ってるの? というか、完全に寝ていたわね。もう、今日は最近お城の近くにオープンした、ヨンタ饅専門店に行こうって約束してたじゃない。」

それを聞いたグラジオラスの頭が徐々に冴え渡っていく。

「・・・?お城・・・オープン・・・約束・・・!あっ、ご、ごめんなさい真砂姐ぇ。忘れていたわけじゃないのよ。ただ、昨日は寝るのが遅くって・・・」

真砂はしどろもどろに答えるグラジオラスを見ながら、「仕方ないわね」とつぶやき

「わかったから、早く準備しなさい。あのお店は人気があって並ばないといけないんだから」

「了解です。真砂姐ぇ。5分ほど待ってくださいね。」グラジオラスは瞬く間に着替えを終え準備をすませる。「お待たせしましたわ。行きましょうか。」

「ええ、そうね」真砂はグラジオラスをつれて、歩き出した。

真砂とグラジオラスがお城の前の広場を歩いていると、右手の方向にある噴水横のベンチで休んでいる支那実を見つける。

「あれは支那実ちゃんじゃない?」

「あっ、たしかに支那実さんですね。休んでいるみたいですけど・・・そうだ、真砂姐ぇ、支那実さんも誘ってみませんか?多いほうが楽しいですよ、きっと。」

「グラちゃん、ナイスアイデアよ。支那実ちゃんを誘いましょう。」

二人は支那実の近くまで歩いていき、声をかけた。

「こんにちは、支那実ちゃん。今はお昼休憩中かな?」

「あら、真砂さんにグラちゃん。こんにちは。いえ、今日はお休みなのでのんびりしていたんですよ。お二人こそ、どうされたんですか?」

「私たちも今日は休みなの。それで、ここの近くに新しくできたヨンタ饅専門店に行くところなのよ。それで、支那実ちゃん今からってあいてる?よかったら一緒に行かない?」

「いいんですか?実は私もそのお店に興味があったんですけど、一人で行くのはちょっとって思っていたんですよ。」

「じゃあ、決定ね。」

「真砂姐ぇ、ついでだから、誰か誘いませんか?」

「そうねぇ、誰がいいかしら?」

「裕樹さんとか槙さん、らいさんにお声をかけてはいかがでしょうか?ちょうどお昼ごろですし・・・」支那実が提案する。

「あの三人かぁ・・・たぶん無理だと思うわ。さっきかくたさんと一緒に必死で誰かを捜してたみたいだから。なにかあったんでしょうね。」

「そうなんですか、じゃあ真砂姐ぇさま。思い切ってよんた様はどうですか?誘ったら絶対一緒に来てくれると思いますけど」

「だめよ、いくらお昼休みだからってお城の外に出るのは無理よ。お忙しい方だから・・・」

「でも、姐ぇさま、あそこ・・・」グラジオラスは広場にある遊歩道を指差した。


その2に続く・・・