登場人物紹介
よんた・・・言わずと知れたよんた藩国の王。食べることが大好き
かくた・・・よんた王の側近。藩国1の紳士で城内職員の羨望の的
言 成・・・自称音楽家。一人称や語尾が独特
ゆみさん・・・藩国内にある北国食堂の女将さん。なぜか王城内にコネが・・

 その日、よんた藩国は平和だった。そうその日は・・

日付が変わろうかという時間に北国食堂へよろよろと向かう影が一つ
「今日は最悪な一日だったッス・・お腹減ったッス・・お腹と背中がくっつきそうッス・・・一刻早く胃に何か入れないと死んでしまうッス・・・」
その影はとてつもなく空腹だった
「もう少しッス・・・」
目当ての食堂まであと20mほど・・・

ドォーン!

周囲に爆音が鳴り響き、突風が影を吹っ飛ばした
影は10mほど転がり、「なんでッスか・・・」そう言い残し気を失った

時は5時間ほどさかのぼる
王城の執務室
よんたはメガネをなおしつつ、隣に控えている男に話しかけた
「ふぅ~・・お腹がすいたね、食事休憩はまだかな?」
「何をおっしゃっいます。さきほどおやつを食べられたではありませんか」
「そうは言ってもかくたさん。あれだけじゃ足りないよ」
「ダメです。今はそんな余裕ありません」
「いやぁでもね・・」
「ダメです。この机の上をご覧になってください」
そういってかくたは机の上を指し示した。正確には机の上にある山のような書類を
「これを今日中に片付けていただかないと、国が立ちゆかなくなります」
「いや、そうは言ってもね。ほら、腹が減っては・・って言うじゃない」
「ダメです。なぜなら、満腹になりますと眠気が生まれ、それにより集中力が落ちてしまいます。そうなられては困りますので・・」
「じゃあ、間を取って腹八分目にするから。ねっ?」
「小首をかしげながら言っても、ダメなものはダメです。だいたい、このような状況に陥ったのも、元はといえば藩王が・・」
しばらくそんなやり取りが続いていたが、そこに来訪者が現れた
「ものすごく不毛なやり取りッスね」
「おや、成くん。何かごようですか?」
「はいッス。藩王に手紙が来てるッスよ」
そう言って右手を掲げる。
「手紙ですか。誰からです?」
「えーと、差出人欄には『Y』としか書いてないッスね」
「ありがとう。手紙をこちらへ」
「あ、はいッス」
「その、Yという方は?」
「古くからの知人・・みたいなものですよ。色々とお世話になっていましてね」
文面を軽く眺めたあと、それを懐にしまって目を閉じる
「どうかなされましたか?よんた藩王」
「いや、少し考え事を。そうだ成くん。ちょうど君に話があったんだ。ちょっとこっちに」
「なんスか?」
よんたは言 成を手の届く範囲に呼ぶと、「実は・・・」と言うや否や羽交い絞めにした
「な、なにをするんスか!?」
「藩王!?何をなさるおつもりですか?」
その場の空気が一瞬で張り詰める
「私はこれから、どうしても外せない用事が出来てしまったのだよ」
「それで、なんでおれっちにこんなことを?話が見えないッス・・」
「もしも素直に用事ができたと言っても、かくたさんがここから出してくれないのはわかっているからね。君は人質のようなものだよ」
「藩王。やめてください」
「そうッス。やめるッス!」
「すまない成くん。大義の為だ、死んでくれ」
「まずいッス、かくたさん。藩王の目がマジッス。ここは言うとおりにするッス」
「しかし・・・」
「ふはははは、どうするね?」
「くっ・・・」
そのような押し問答が5分ほど続いた。その間もよんたは少しずつ扉に近づいていった
その結果、よんたたちは扉の前まで来ることに成功した
「かくたさん。残念ながら時間切れだ」
そういうと、よんたは言 成をその場に放って走り去った。
「助かったッス・・」

かくたはすぐにあとを追おうとしたが、書類が気にかかり動けなかった。
「この書類を放っておくわけには・・」
と、言 成と目が合った
「何スか?」
「申し訳ありませんが成くん。この書類をお願いします」
「えっ?いや、それはちょっと・・・」
「23:30までに戻ってこない場合は帰っていただいて構いませんので」
「あの、ちょっとかくたさ・・」
「では!」
そういうと風のように去っていった
「この量を一人で・・・ありえないッス」
言 成はひざから崩れ落ちた

(まずはよんた様見つけなくては)
かくたは近くの窓を開け放ち外へ躍り出た。

その後、二人だけの鬼ごっこは熾烈を極めた

徐々に追い詰められたよんたは北国食堂に逃げ込む。
「姐さん。何も言わずにかくまってくれ」
「おや、よんたじゃないかい。また何かやらかしたのかい?」
その言葉には返事をせずに机の下にもぐりこんだ
その直後、食堂のドアが静かに開いた。
「こんばんは。ゆみさん。藩王はいらっしゃいますか?」
「おや、かくたさんじゃないか。藩王ならそこらへんにいるよ」
その会話を聞いて机が揺れた。
かくたはゆっくりと近づき声をかけた
「よんた様、見つけましたよ」
「ちょっと、姐さんひどいじゃないか!いきなりばらすなんて」
「あたしゃ、そこらへんとしか言ってないよ」
ゆみさんはそういって厨房に引っ込んだ
「さあ、よんた様書類が待ってますよ」
「断る。ここでラーメンを食べるまでは」
そういうと懐からスタングレネード取り出し、投げつけた。

一方厨房では独特の異臭が立ち込めていた
「ん?・・しまったあたしとしたことが!?」

「ガス漏れだ!気をつけておくれ!」
と食堂内に響いたとき、スタングレネード宙を舞っていた

気を失っていた影・・言 成が目を覚ました
「なんだったんスか・・いったい」
ふと、横に目をやるとそこには一人の足跡と何かを引きずったような跡が残されていた
そしてそのまま視線を前に向ける・・そこには何もなかった。そう気を失う前にあったものも・・
「今日は厄日ッス・・」
そう言い残し気を失った


(文責:言 成)