朝、窓から差し込む朝のとろとろとした柔らかい光が寝崩れた寝間着からのぞく肌へ注いでいる。
お日様に抱かれながら私は寝ているとも起きているともつかないまどろみの淵でたゆたっていた。
きょうは一日ねてよっかなあ・・・・・・。
それは甘いゆうわく。
ホントにそうやって過ごしてあとで、あ〜失敗したって思うこと幾たび。
いい加減私だって学習した。したったらしたの。
よし、おきよう。
起きるんだ私。
無駄に気合を入れて瞳を開き、思いっきり伸びをしてみる。
朝の光を受けて爪が光った。特にこれといった手入れをしてるわけじゃない。細かいヤスリをかけただけのそれはつやつやと輝いていた。
「ふぁ・・・・・・」
なんとも気の抜けた声、う〜と寝ぼけたうなりを上けながらまだ開ききっていないねぼすけの目には頼らず手の感触で時計を探す。
ぱたぱた。
あ、この丸っぽくて硬いの、あったあった。
ん〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・。
目をぐしぐしして時計を見る。
7:18。
ゆっくり朝食を作ってるヒマはなさそう。
手早く準備して昨日の晩の残りを小麦のパンに挟んだだけの手抜きサンドをほおばった。
一晩置かれて味が馴染んだ具とパン。質素だけど充分に味わい深い。
さて、今日も一日元気に行きますかっ!
外へ飛び出す。
まだ少し冷たい風を和らげるように暖かい日差しが身を包む。
通り道の草花は朝露にぬれてキラキラと輝き、新芽が土を割って伸びだそうとしている。
その姿がなんとなく健気でたくましく思えた。
淡い緑、深い緑、そのなかで張り切って花を咲かせたタンポポ。
思わず立ち止まってその黄色にそっと触れてみる。指先に感じる瑞々しさがかわいらしくて心地よかった。
一杯、種飛ばしてあちこちにもっとふえるといいなあ。
そんなことを考えつつ道を行く。
今度は道すがらに犬を見つけた。毛並みは艶やかでつぶらな瞳。
こちらをじ〜っと見て、しっぽをふりふり。
きゅんっ。
な、なでたい・・・・・・。
いいかな?いいよね?
おずおずと手を伸ばす。


犬は逃げようともせず、どぞとばかりに頭を差し出していた。
さわさわ、さわさわ。
もふもふ、もふもふ。
あ゛ーーーーーーーー。もう・・・・・・。
そのしなやかな手触りにおもわず、ぎゅっとしたい衝動に駆られた。
だめだめ、そんなことしてたら遅刻する。
でも、でも・・・・・・。
う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
犬はそんな葛藤などお構いなしに気持ちよさげに目を細めて、もっともっと〜と催促してるようだった。
いかなきゃいけないの。そんな目でわたしをみないでええええええええ!!
どうにかわんわんトラップから脱出して仕事場に到着。
なんてキケンなトラップだったんだろう。あやうくあのまま一日終わっちゃうところだった。
でもまあ、エネルギーわけてもらったからよしとしよう。うん。
同僚に今日に一日ファイトっ的なスマイルをかまして仕事をかたづけていくことにした。

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今日もよく働いた。つかれたあ・・・・・・。
ばふっっとベッドに倒れこむ。ぐで〜っと人目に晒せないくらいだらしない。
でも、明日はYASUMI。
休日!
オフ!!
ああ、なんて甘美な響きだろう。
朝のめざましを気にしないでいい。それだけでこんなに晴れやかな気分になるなんて。
視察に行った小学校も順調そうだし。
自分が作成に関わった物がうまいこといくのはやっぱり気分がいい。
子供たちが元気にそだってくれるといいなあ。
わんぱくでもいい、たくましくそだってほしい。ってか。
自分が作ったもので笑顔がふやせるなら、デザイナー冥利につきる。
そんなことを考えながら、ちょっと寄り道してみた。
帰り道、いつもの道をちょっと外れて小さいけれど当たりの店をみっけ。お気に入りに追加。
お手頃かつ豊富なメニュー。いいお店で美味しいご飯と。普段お疲れな自分へのご褒美。


そのあとは、なじみのいつものバー、いつものカクテル。気心しれたマスターとのたわいのない会話。
真砂ちゃん、お疲れとそっと出してくれる一杯が心地いい。
微酔いを楽しみながら。少しずつ読み進めていく本。ゆっくりと流れる時間。
気が付けば閉店の時間。
またくるね、とチェックを済ませて、今に至る。
アルコールでちょっぴり火照った身体と髪をながしてメークを落とし寝間着に着替えてリラックス。
木綿のシーツをピンと張ったベッドに倒れ込み、日向のにおいを吸い込む。胸一杯。
今日一日、目にしたものを、この気持ちを、絵にするならどんなだろう?
どんな風に描いて、どんな色を乗せて、どう仕上げていけばいい?
これは難しいな、でも楽しそう、そんなとりとめのない構想を練るとき、なんとなく幸せを感じる。
技族の性分なのかな。
いつも上手くいく訳じゃない。むしろ上手くいかないことの方が多いかも。
それでも。
ほんの少しでも、にっこりできた出来事。物事。
眠りに落ちながら、思い返してみれば。
なんてことない一日にも、こんなにたくさん。
それらを数え上げれば、こんなにも幸せ。悪くない。
今日も良い一日だったな。口の端、ほんの少しほころびながら。
きっと明日もささやかだけど、素敵なことが待っている。そう信じて眠ろう。
おやすみなさい。


文章:よんた@よんた藩国
イラスト:竿崎裕樹@よんた藩国

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最終更新:2009年05月16日 22:22