小麦畑の四季


よんた藩国の夏は、北国であることから非常に過ごしやすい。
厳しい冬の寒さとは反対に、夏の暑さはたかが知れている。
しかし、夏の陽の光は他の季節に比べて暑いことには変わりがない。
そしてその夏の光こそが、作物を作る上で重要なのである。

小麦をはじめとする夏を生きる作物は、その多くが夏の日差しを浴び大きく成長する。
水と日光と土の栄養をたっぷりと吸収し、その背丈を伸ばし、葉を茂らせ、実りを膨らませる。
ただ、北国である以上、夏に気温があまりあがらない冷夏が起こることも少なくない。
そのため、昔から知恵を凝らして対策を施してきた。
また、冷害に強い品種の開発も進め、その成果によってこれまでに幾度となく不作を回避してきた。

他の季節に比べ、土壌の乾燥が起こりやすいため、水やりは欠かせない。
だが、ただ水をやればよいというものではない。
トマトのように、与える水を制限すれば味が良くなるものもある。
乾燥を回避するために、地面に藁などをかぶせなければならないものもある。
カボチャのように、ツル状で地面に直接実る種類の場合、藁などを敷くことは傷が付きにくくするためでもある。

夏に旬を迎えるのはナスやトマトやピーマンなど、ナス科の作物が多い。
これらを続けて栽培した場合、土の中の成分のバランスが崩れたりして不作になりやすい。
この回避のためにトウモロコシをはじめイネ科の植物を栽培し、その葉や茎などを土に混ぜたりすることで土を豊かにする。
トウモロコシの実はもちろん、食用や家畜の飼料として使用される。

夏と言えば忘れてならないのがスイカである。
水分とカリウムを大量に含むスイカは疲労回復や夏バテに効果が高く、寒さには強いが暑さにはあまり慣れていないお国柄のために国が栽培を奨励している。
と、世間一般には言われているが、その実、単に藩王他藩国首脳陣が夏においしいスイカを食べたかっただけと噂されている。

作物には非常にいい季節だが、やはり人には厳しい季節である。
いくら北国で気温が極端には上がらないとはいえ、暑さに慣れていないために夏バテを起こしやすい。
そんな夏を乗り切るスタミナをつけるため、国民総出で川へウナギを取りに行く日が決められている。
本当に国民総出でやるため、藩王が器用にウナギをつかんでいる姿は夏の風物詩となっている。
この日捕まえたウナギは、川辺で国のメードにより調理され、その場で参加者にふるまわれる。
捕りすぎた分は、保存や養殖に回されるものを除いて川へと還される。
藩王いわく「来年もうまいうな重が食いたいじゃないか」である。

日中、ウナギを追い回し汗をかいた日の夜は、皆で星を見るイベントがある。
古い書物にも書かれている通り、夏の夜とは良いものである。
家族や、仲のいい友達、仲良くなりたいあの人と夜の畑で星空をただ見上げる。
夏の間、多くの流れ星を見ることができ、タイミングさえよければまさに雨のように降る流星群を見ることができる。
お年頃な少年少女にとって絶好の告白チャンスであり、多くの恋人が生まれる日であるが、一方で涙を流すことになる人も多く、悲喜こもごもなイベントである。

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涙と案山子と星空と


好き、です。が夜の川にとけてゆく

でも案山子が居たから平気でした、平気です。

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あの人の、笑顔が苦手そうな笑顔が好きでした。

人は笑うけど、目を閉じても、授業中でも、ベッドであしのゆびひらいてるときも、病気のようにあの人が目に浮かびました。


距離よ縮まれと願い、距離を縮め始める前に

風船が割れるように、パチン。
恋は終わりました。苦手そうな笑顔は、私でない女の人に向けられていました。

その笑顔が好きでした。だから、私は逃げました。走って遠くへ逃げました。

気がついたら夜でした。案山子の揺れる夏の麦畑。

私はじわじわ涙します「たましいなんてほしくなかった」

「・・・」なにか聞こえた気がして、振り向きます。一本の案山子がいました。

口の利けぬ案山子が、星の下で涙してました。そうみえました。

やさしいまなざしでなみだながす案山子がいて、あのひとに心の中でサヨナラと言えそうでした。

でも。もうすこしだけ、涙を流させてください。

夏の夜空は綺麗過ぎて。独りにはなりたくなかったのです。


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作物


前述の通り旬を迎えるナス、トマト、ピーマンなどは連作による不作が起こりやすい。
別の種であるトウモロコシを収穫後、葉や茎を細かく砕いてから土に混ぜ込むことで土中の成分の種類を増やし、微生物の種類も増やす。
それにより、単一の成分や微生物が増えすぎることによる成長障害を回避している。

  • ナス
説明不要な紫の野菜。乾燥に弱いのでナスを植えた地面には藁を敷いて、土の湿度を保っておく。
「秋ナス」の言葉があるように秋のイメージが強いが、収穫が秋の始めなので主に夏を生きる野菜である。
よんた藩国でとれるものは主に「水ナス」と呼ばれる丸っこい種類である。
本来、ナスは生で食べるには向かない野菜であるが、水ナスはほのかな甘さと大量の水分が特徴で生で食べることができる。
また漬物にされることも多く、水ナスのぬか漬けや浅漬けは季節の味として楽しまれている。

  • トウモロコシ
ただ食べるだけでなく、家畜の飼料やデンプンの精製など有用性の高い野菜。
国内ではおもに屋台での「焼きトウモロコシ」や、茹でたスイートコーンとして消費される。
ただ、トウモロコシは収穫後の劣化が早いため気を配らなくてはならない。
そのため、短期保存の場合は食糧倉庫を使用し、冷蔵保存する。
長期保存の場合、乾燥させてから潰して粉末状にし、小麦粉のように使用する。

  • 枝豆
ビールのお供の枝豆。本来は完熟させて大豆となるのだが、一部は夏に収穫し枝豆として食される。
種を蒔いてから収穫までが早く、連続して栽培しても問題がないため、他の作物の栽培を休んでいる間にも作りやすい。
国内ではやはり酒の肴として消費されることが多い。枝付きのまま茹で上げ、塩を振りそのまま食べる。
簡単なので、農家の晩酌には夏の間、よく出されることになる。
また、枝豆として収穫せずにそのまま熟させ、大豆として収穫する場合もある。
大豆は栄養価も高く加工方法もたくさんあるため、非常に有用な資源となり得る。


季節の楽しみ

  • ウナギ
よんた藩国中央を流れる川にはウナギも生息しており、夏バテを防止するのにちょうどいい栄養源となっている。
主な食べ方は、腹を開いてそのまま焼き、タレをつけていく。
山椒を少し振って、山盛りのご飯と食べる。夏にバテた人には貴重な栄養源となってる。

  • スイカ割り
夏のイベントで一番簡単に盛り上がるのは、やはりこれでしょう。
目隠しをした人が周りの人の声を頼りに、手に持った棒でスイカを割ろうとするゲーム。
海辺で行われることが多いが、山でやっても、その辺の軒先でやっても変わらず楽しめます。
何らかの罰ゲームとして、スイカの横に人が頭以外を埋められている場合もあります。


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文章:槙昌福@よんた藩国 雷羅来@よんた藩国
イラスト:竿崎裕樹@よんた藩国 小野青空@よんた藩国



                                                                                                    
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