「祭りの中のエトセトラ」

side B-1~メード服と騎乗銃~


『男の子は化粧すると怪人になります。

怪人二十面相は化粧の達人でした。

ところが女の子は化粧すると美人になるのです』

               ~真砂が呟いた言葉~



「へ?どうしたんすか?やぶからぼーに」いきなりの真砂姐ぇさんの言葉に面食らう支那実。

「いやぁ、故人の言葉は本当にその通りだなぁ と再認識してたところ」

感嘆のため息をつく様に、いや、実際そうなのか。
化粧も済み、すっかり麗しき桜娘となった支那実を、てっぺんからつま先までじっくりと見ながら言う真砂。
所々に桜のアクセントが付いたその衣装は、まるで彼女に着られるために存在し、服自身がそれを誇るかの様に、纏う者と完全に調和している。

この衣装に関して言えば、この娘以上に似合う娘は居ないんじゃないかと、かなり本気で思う。


「向かいの部屋の知り合いに挨拶に行くって言ってましたけど、何かあったんですか?」

真砂は、あーーと曖昧に発音しながら、天井を見上げ言葉を捜し、その長く艶のある髪に指を剥き入れる様にして、額に手をあてる。
せっかく眼の保養で晴れかけた気分が曇り空に戻った。

(裕樹クンともう一匹の変なのはともかく、まさかアノ人があんなだとは思わなかった。
あーもう、この乙女心をどうしてくれようかしら)

「・・・いたわ。怪人が。3匹ほど。最もこの場合、読んで字の如く「怪しい人」だったけど」

「はぁ・・」よくわからない支那実。

しばしの沈黙。

その後、何か思いついた

というより、思いついちゃったと言うべきか。

そう、そうよ。今回はお祭り。つまりギャグ。ギャグなのだ!

口元に三日月を張り付かせると、音も無く嗤い、眼鏡の奥で妖しく目を輝かせる真砂姐ぇ。

次の刹那には、嘘のようにニッコリと微笑を浮かべる。

「ねぇ、支那実ちゃん。貴方は今自分が何を着てるか分かる?」

「はぁ、えっと、メード服ですよ?今朝配給して頂いた」さらによくわからない。

「ええ、そう。その通り。そして貴女のメード服はロングスカート+三つ折りソックスよね」

「えと、まぁ、そうですね。」自分でも改めて確認しながら支那美。

言葉と共に真砂の纏う空模様は急激に移ろう

晴れから、雨へ、雨から雷雨へ、雷雨から嵐へ。

「そう、メード服は、はるか彼方の時代からロングスカート+三つ折りソックス。許容しても私みたいに黒ストまで!
それをアノ怪人どもは事もあろうに、膝上!ガーター!ニーソ?美しき伝統をバカ面して汚しているのよ!」

「えと・・・・真砂さん?この前、学校で裕樹さんに思いっきりガーターメード服着せてませんでした?満面の笑みで」

      • 嵐から凪へ。

「支那実ちゃん」

「はい」

「それはそれ、これはこれよ」

「・・・なんか、読者の人が反乱起こしませんか?それ」

「読者怖くて、こんなこと言ってられないのよ!」

うあ、言い切ったよ。この人。

そう言って軽く咳払いをして「ともかく」と真砂。耳が少し赤い。

「あれを、放っておく訳にはいかないの。そして支那実ちゃん。」

「はぁ、なんでしょう?」

「あれを撃退できるのは、貴女しかいないのよ!」支那美を指差しながら真砂。背景は荒波の日本海といった所か。

「へぇ!?なんで私が!?」

「支那美ちゃん」優しい口調で言う真砂。

「は、ぃ・・」何が何やらな支那実。

「知識っていうのは、持ってるだけじゃダメなの。
その頭の中の知識を知恵に変えて、行動に移せることが大事なのよ」

「・・・もっともらしく聞こえますけど、なんか論点ずれてるような、」

「支那美ちゃん!」

「ハ、ハイ!」

「貴女が優しいのはよくわかったわ。その優しさは貴重なものよ。
でもね、覚えていて。その優しさが人を傷つけることもあるの!」

仰々しく抑揚を付けて喋る真砂。
この坂下真砂という姐さん。面白い事に関してという限定ではあるが
無理を通して、道理を引っ込めさせることにかけて天才的な能力を発揮する。

「そんな貴女に私から餞別よ☆」

そう言って、鞄からごそごそと何か取り出す真砂。

「あのー、それって・・」

鞄から出てきたのは、ライフルを切り詰めたような形の古めかしい1挺の銃。
グリップ部分が女性でも握りやすいように加工してある。

「ウィンチェスターランダルカスタム。30-30Winchester弾に換装してあるから至近距離なら熊だって一撃の心強い乙女の味方♪」

「あのー。それって、当たったらふつーに危ないんじゃ」至極真っ当な疑問を口にする支那実。
何で鞄から銃が出てくるのと聞かない辺りに、真砂姐ぇに対する彼女の理解の深さが表われていると言って良いだろう。

「支那実ちゃん」

「は、はい。」

「大丈夫よ。今回はギャグだから。腹に大穴空いても、次回には復活してるわ」
当たり前のように、当たり前でない事を言ってのける真砂姐さん。

「なんていうか、その、そろそろ読者がキレ始めませんか?」

「大丈夫。だいじょうぶ。文句ある奴の所にはスパムメール大量に送りつけるから」

「や、止めましょうよ、そういうリアルな嫌がらせは・・・」

「いいからいいから。ホラ、手に持って。そう、そう。」

そう言って無理やり支那実の手に銃を握らせると、満面の笑み。

「あらー、ホントよく似合うわ。この娘ったら。それに、メード服と騎乗銃。うん。語呂も良いし」

「・・・何か。微妙にパクってませんか?それ」

「パクリじゃないわ。インスパイアよ」

(どっちも同じじゃ・・・)

「まぁ、そんな事はいいの。どうだっていいの。さあ、行きましょう!」

そう言った真砂の手にはCA870ショットガン なんて言うか、殺る気マンマンである。

「えと、あの、何処へです?始まるまであと10分しかないですよ?」

「そりゃ、勿論かく、、じゃなくて向かいの部屋の連中の所よ。ちょっと挨拶にね。大丈夫、可能な限り穏便に済ませるし・・・」

「済ませるし?」

(フフフッ、あの男め・・・3秒で、終わらせるてあげるわ。人生を。)

「ううん、なんでもない。なんでもないの。さぁ、行きましょう。うーん、殺る気出てきたわー」



(イラスト 竿崎 裕樹)
                                      sideA-2へ続く




(文:槙 昌福)