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「瓦解小説 空想ガルドラン偽予告集」(2007/12/25 (火) 00:12:08) の最新版変更点
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<p>瓦解小説 空想ガルドラン偽予告集</p>
<p>そのいち</p>
<p> 改! 激! 烈!<br>
俺様の名は勇者ガルドラン! バイアシオン大陸広しといえど、ありとあらゆる意味で俺様<br>
の右に出るものはいない。冒険者として、戦士として、策略家として、そしてなにより勇者と<br>
して!<br>
最強の二文字を具体化した、まさに勇者のなかの勇者。鋼のハートと鋼鉄の肉体、そして天<br>
才的な叡智を合わせもつ男、それが俺様! 勇者! ガルドラン様なのだ!<br>
「ふははははははは!」<br>
「グォォォォォ」<br>
うおっ魔物だ! ジャーンプ。<br>
何者かの唸り声が聞こえてくると同時に、俺様は華麗にジャンプ空中一回転。岩の裏へと着<br>
地した(意訳:魔物に見つかりそうになったので転げながら隠れた)。フッ、決まった。<br>
なに、決して逃げたわけではない。いわゆる戦術的撤退というやつだ。</p>
<p> 傍観者諸君らには状況がまったくわからんだろうから、俺様自ら解説してやろう。<br>
バイアシオン大(中略)の俺様が、なぜこのような陰気な森で、怪物どもから逃げもとい撤<br>
退していようとしているのか? それは3万とんで5千秒前(訳:約8時間前)に遡る。</p>
<p> 俺様はリベルダムのギルドに立ち寄り、俺様の助けを求める市民の声を聞くべく、ギルドの<br>
オヤジに話しかけた。ちなみに理由は、路銀が尽きたとか最近仕事をしていないとかそういう<br>
ものではなく、純粋な人助け精神からくるものであることを宣言しておく。<br>
単にソレ相応の見返りはいただく、というだけだ。誤解なきように!<br>
『むん! おい親父!』<br>
『あん? げっガルドラン!!』<br>
ギルドの親父は、俺様の顔を見ると驚愕の表情を見せた。そう、俺様がわざわざ一介のギル<br>
ドごときに立ち寄ることなど、滅多にないことなのだ。<br>
なぜならギルドに行くのは仕事に困るごろつきがやることであり、俺様のように伝説的な冒<br>
険者ともなると、依頼など街を歩くだけで寄ってくるものなのだから!<br>
そんな俺様が尋ねてきたのだ。驚きもしよう。無礼ではあるが、笑って許すのが勇者の貫禄<br>
というものだ。<br>
『ふはははは! そう、庶民の希望、無敵の勇者ガルドランさまだ! 聞いて驚け、貴様ら愚<br>
民の依頼をわざわざ聞き届けにきてやった!』<br>
『表の張り紙が見えなかったのか! てめえは出入り禁止だ!』<br>
表の張り紙? ふむ、たしかに「(勇者)ガルドラン(が中に)立入(る際、最強無敵勇者様への無礼行為は絶対に)禁止 」なる張り紙が入り口前に貼ってあったな。</p>
<p>※カッコ内はガルドランの妄想です。<br>
※つかれたのでもう突っ込まない</p>
<p> なるほどたしかに俺様ほどの英雄といえど、新米冒険者のなかには知らぬ奴もいるだろう。<br>
そんな奴らが俺様に無礼を働かぬように、とのギルドの気遣い、なかなかのものだ。誉めて使<br>
わそう。<br>
『うむ、確かに俺様ほどの実力を有すものを満足させるほどの依頼を、こんなチンケなギルド<br>
が持ちうるはずもないな。だがしかし』<br>
『帰 れ!』<br>
『うおっ! なぜ押し出す! む、貴様まさか勇者の行方を阻むべくギルドマスターに変装し<br>
たうおおおおおおお!』<br>
『二度と来るな!』</p>
<p> そして親父は俺を押し出すと、扉をぴしゃりと閉め鍵をかけた。<br>
くっ、リベルダムのギルドまでもが敵(誰だと? 調査中だ)の侵攻を許していたとは!<br>
だが俺様は町のギャル達に噂されるところの、抜かりない男ナンバーワン!(ガルドラン調<br>
べ)<br>
どさくさにまぎれ、依頼状と思しき書を頂いておいた。早速読んでやろう、どれどれ。</p>
<p>「娘が行方不明になってしまいました。ルンホルスの森の近くで見かけたという話を聞き、と<br>
ても心配です。どうか連れ戻してください。報酬は1500ギア」</p>
<p> オズなんちゃらとかいう村に連れ戻せばよいらしい。うむ、1500ギアか。まあまあだな<br>
、引き受けてやろうではないか。決して路銀に困ったからではなく、純粋な人助けの精神でな!</p>
<p> ――というわけだ。</p>
<p>そのに</p>
<p>「ついてく」<br>
「何か言ったか、子供」<br>
「サティ」<br>
いきなりだ。会話がかみ合わぬ。<br>
「なんだそれは。コーヒーの銘柄か」<br>
「なまえ」<br>
「貴様の名前など誰も聞いとらん!」<br>
「しらないひとにはなのるのがれいぎ」<br>
ちっ、しまった。幼女に先に名乗らせるとは一生の不覚なり。<br>
「うむ。俺様の名は、大勇者ガルドラン様だ。ガルドラン将軍閣下大勇者様と呼んでも構わぬ」<br>
「ながい。がまでいい?」<br>
「略しすぎだ!」<br>
「わざと。とにかく、ついてく。だめ?」<br>
「ふっ。常識的な冒険者であらば、孤児の幼女など足手まといと断るもの。だが! 俺様は、<br>
あえて断らん! 俺様に付いてくるがいい!」<br>
「わーい」<br>
サティは無邪気に(相変わらず無表情にだが)喜んだ。<br>
うむ、確かに子供は足手まといだ。だが、絶対無敵の未来勇者である俺様を慕う孤児を、見<br>
捨てて冒険に赴くのが正義か! いや正義ではあるまい、むしろ邪悪だ!<br>
俺様の英雄行につき従う以上、命の危機はひとつやふたつでは済むまい。だが、俺様の間近<br>
で旅をする経験は、他のなにものにも代えがたいもの。それを阻むことは、竜王だろうと俺自<br>
身だろうと不可能なのだ!<br>
「だがなぜだ? 貴様も将来冒険者になりたいのか、この俺様のように、強く美しく華麗な!」<br>
「それはない」<br>
「うむ賢明だ。俺様のみたところ、貴様には冒険者の素質がまったくない! からな」<br>
「ガルドランほどじゃないとおもう」<br>
「ふははははは」<br>
俺様が笑うと、サティも釣られてふははははは、と笑った。あくまで無表情に。</p>
<p><br>
そのさん</p>
<p> 俺様はギターをかき鳴らした。フィーリングだ。そう、ギターとは技術ではなくフィーリン<br>
グなのだ。俺様の熱いハートが弦を揺らし、観客に熱狂を巻き起こすのだ。巻き起こすのだ。</p>
<p> そのはずなのだが、なぜかサティはぽかんと口を開けたままだった。むう、感動のあまり声<br>
も出ないか?<br>
「ガルドラン、へた」<br>
正反対の言葉が出た。<br>
「なにぃ! どこがどうへただとッ!?」<br>
「……ぜんぶ」<br>
なんだその抽象的極まりない中傷は! くっ。所詮は乳飲み子、音楽の真髄はわからぬか!<br>
「ぐぐっ、ふん! あと10年も経てば、貴様にも理解できるようになる。覚! 悟! せよ!」<br>
「ほんとかなあ」<br>
「本当だ! もーいい、先を急ぐぞ!」<br>
「うん」<br>
サティは頷くと、立ち上がって俺様のギターを片付け始めた。</p>
<p><br>
そのよん</p>
<p>「ガルドラン、見損なったよ。いやずっと見損なってたけど、なお見損なったよ!」<br>
「なんだそのヤケクソに失礼な言い草は!」<br>
「幼女偏愛なんて、コーンスは決して許しはしないんだ!」<br>
「誰がペドだこのねじまきツノ!」<br>
「人種差別! 訴訟! 賠償!」<br>
「どこのプロ市民だ貴様!?」<br>
と、サティがとことこと歩いて俺様とナッジの間に立つ。<br>
そして、ナッジを見上げていった。<br>
「つの。かんちがいしてる」<br>
「そうだサティ、もっと言うがよい」<br>
「がるどらんは、やさしかった」<br>
ちょっと待てい。<br>
「GODDEEEEEM! 最 悪 だ! もう僕は神様を信じられない!」<br>
「最悪は貴様の思考だ!」<br>
言い争う俺達をよそ目に、サティはなぜかあやとりをしていた。</p>