「出陣前夜」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

出陣前夜」(2007/12/24 (月) 22:59:50) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p> </p> <p><br>  芒とした月明かりを受け、華麗な城が闇に浮かぶ。<br>  ロストール王宮。南の大国、その中枢。<br>  その一角に昼夜問わず、常に薄闇に包まれている部屋がある。<br>  そこには、闇に囚われた一人の姫君が居ると云う。</p> <p>美しく、そしてひどく儚げな声が薄闇に波紋を広げる。<br> 「どうしても行かれるのですか?」<br> 「ああ。見て見ぬ振りなんて出来ないよ」<br>  不安そうにこちらを見上げる姫君に、大丈夫だよ、と笑いかける。<br>  決して翻る事のない強い決意を込めたその答えに、アトレイアは僅かにためらい、けれどしっかりとこちらの目を見て頷いた。<br> 「わかりました。私も……私もこの国のために何か出来る事をしようと思います。<br> 私に出来る事など、ほとんどないけれど」<br> それでも何か出来る事をするのだと、アトレイアははっきりとそう続けた。<br> その言葉に、僅かに目を見張る。闇の中に留まり、自信を持てず、ティアナ王女に劣等感を感じ、いつも何かに怯えていた彼女が、必死にこの国の―――誰かの力になろうとしている。<br> その事がひどく嬉しかった。そして、安心する。<br> もし自分がいなくなったとしても、きっと彼女は一人ぼっちにはならない。いつだって一生懸命な彼女だから、きっと多くの人が好いてくれる事だろう。<br> 「そっか。うん、頑張れ」<br> 「はい」<br>  控えめに、けれどはっきりと頷く。</p> <p> </p> <p>「さて、そろそろ」<br> 「あ、あの」<br>  夜も更けて来たことだし、とクローゼットへと向かおうとするが、ためらいがちなアトレイアの声に振り返った。<br> 「ん?」<br>  何、と僅かに首を傾げる。<br> 「あの……」<br> 少し俯いて、何か言いたげに口を開き、閉ざす。それを何度か繰り返した後、アトレイアは真っ赤になりながらこちらを見上げた。<br> 「あの……その、私、に………勇気を、ください」<br>  一歩、踏み出すための勇気を。彼女はそう言ってこちらを見つめる。<br> そして、静かに目を閉じた。<br> 「ア、アトレイア?」<br>  予想だにしていなかった事態に狼狽する。けれど、目の前の姫君の肩が僅かに震えている事に気が付くと、不思議と動揺が消えた。<br>  そっと唇を重ね合わせる。<br> 「………ん」<br>  触れ合っていたのは僅かに一瞬。顔を離すと、僅かに声を漏らしアトレイアが目を開けた。これまでに無いほど近くにある瞳に、意識が吸い寄せられる。<br>  僅かに潤んだ瞳―――それは恐ろしく艶かしく蟲惑的で、思わず押し倒しそうになる。その衝動をこらえ、彼女から離れようと……。<br> 「……え?」<br>  離れる前に、袖を小さな手に掴まれる。<br> 「アトレイア……?」<br>  アトレイアが、その声にビクリと肩を震わせる。<br>  それでも。<br>  それでも、彼女は手を離そうとはしなかった。<br>  その様子を見て、こちらも覚悟を決めた。<br> 「アトレイア……いいよね?」<br>  その言葉に、耳まで真っ赤になりながら深窓の姫君はコクリと頷いた。</p> <p> </p> <p> シュルリ、と衣擦れの音が薄闇を震わせる。<br>  闇の中に、白い裸体が浮かび上がった。そのあまりの美しさに息を飲む。<br> 「……あの」<br>  言葉を失い固まる自分に、アトレイアが不安そうにこちらを見上げる。<br> その声に、ハッと我に返った。<br> 「あ、ごごご、ごめんっ!! あんまり綺麗だったから」<br> 「…………ゃ」<br>  その言葉に、アトレイアは恥ずかしそうに顔を両手で覆う。<br>  その仕種に、思わず抱きしめたくなる衝動に襲われながら、彼女の手をそっと取り、動かす。<br>  そしてもう一度、唇を重ねた。<br> 「……ん……ぁ、ぁ」<br>  そのまま、何度も何度も口付けを交わす。<br>  そして、そっと彼女をベッドの上に横たえ、小さな紅い唇から頬へ、あごの丸いラインへ、華奢な首筋へと口付けをする。</p> <p> </p> <p>「ぁ……ゃぁ、―――っ!」<br>  かすれた声で名前を呼ばれると、理性が吹き飛びそうになる。<br> 「ぁ……あっ………、んぅっ!!」<br>  思わず乳房を鷲掴みにすると、アトレイアが眉をひそめて小さく呻いた。<br>  その声を聞き、あわてて手を離す。<br> 「ご、ごめん!!」<br> 「い……いえ。大丈夫、です」<br>  アトレイアが、目じりに涙を浮べたまま優しく微笑む。その頬にキスし、今度はそうっと、壊れ物を扱うように乳房を手で包み込む。その頂点で慎ましやかに色づいた薄桃色の突起を、やさしく唇で挟み込み、舌先でそっと転がす。<br> 「は。あぁっ、……やぁ……!!」<br>  ビクリと体を震わせ、甘やかな声を漏らすその姿に逸る気持ちを抑えながら、彼女の白い太ももの内側へと左手を伸ばす。<br> 「んっ、く―――あぅ………、<br> ぁ―――あ、ああっ! や……待って下さい、そ、そこはっ!!」<br> 「大丈夫だから」<br> 「ん………んんっ!」<br>  慌てたようにこちらの手を押し留めようとするアトレイアを、口付けで大人しくさせると、そうっと誰にも触れさせた事のないだろう聖域に指を触れた。<br>  ちゅ……くちゅり、と粘着質な音がする。そこは既にしっとりと湿っていた。<br> 「あ―――ゃ、……あああっ!!」<br>  そこに指を添え、優しく滑らせると、アトレイアが今までに無く大きな声を上げる。直後、慌てて彼女は手で口を塞ぐ。<br>  その様子を、微笑ましく思いながら彼女の耳元で囁く。<br> 「ね、声を聞かせて……」<br> 「…………っ!!」<br>  時折、体をビクリと震わせながら、ふるふると彼女が首を振る。やがて、彼女の秘所を探っていた指が、小さな突起に触れる。<br> 「……っ!! ぁ―――はああああぁぁっ!!」<br>  瞬間、白い体が弓なりに反り、ひくっ、ひくっと大きく痙攣した。<br> 「アトレイア?」<br> 「は―――ぁ、はぁ、はぁ、はぁ。…………ひどいです」<br>  荒い息を吐きながら、アトレイアが涙目になって抗議する。<br>  その可愛らしい抗議に、ごめんな、とキスをすると彼女はくすぐったそうに微笑んだ。そして、こちらの目をしっかりと見つめる。<br> 「挿れるよ……」<br> 「……はい」<br>  彼女の目に逡巡の色はなく、しっかりと頷いた。</p> <p> </p> <p> ゆっくりと、細心の注意を払ってアトレイアの奥へと進む。<br> 「……っ、―――っ!」<br> 「……アトレイアっ!」<br>  涙を流しながら、必死に歯を食いしばって耐える姫の姿に心が痛む。だが、ここで止めて傷付くのはアトレイアだと、罪悪感を押し殺しさらに進める。<br>  と。<br>  先端が一際強い抵抗を受ける。<br> 「…………アトレイア、いくよ?」<br> 「―――はい」<br>  しっかりとこちらを見て頷く彼女にそっとキスをすると、一気に膜を突き破った。<br> 「―――っっ!! あああぁぁぁっ!!」<br>  破瓜の痛みに悲痛な声が上がる。<br> そのまま更に進めると、こつりと先端が最奥に突き当たった。 <br>  動きを止めてアトレイアが落ち着くのを待つ。<br> 「はぁ、はぁ―――はっ、………ん」<br> 「全部、入ったよ」<br>  痛みを逃がすためか、何度も何度も小さく息をはき、やがて少し落ち着いたのかこちらを見上げる彼女に笑いかける。<br>  汗で額に張り付いた前髪をそっと払うと、アトレイアは幸せそうに微笑んだ。<br> 「私の中に、貴方がいるのですね」<br> 「そうだよ」<br> 「嬉しいです。あの、動いて……ください」 <br>  アトレイアがこちらへと手を伸ばす。その手を取って、指を絡めた。</p> <p> </p> <p>「はっ、あっ、くぅ―――んんぅっ!」<br>  ゆっくりと腰を引く。引き抜いた自身に、姫君の破瓜の印が付着しているのが見えた。<br>  そして、再び奥へと押し入る。<br> 「はっ、ぁ、ぁ、ぁ、ぅんっ!」<br>  じゅぶぶ、じゅぶ。<br>  アトレイアの表情を見ながら、注意深く腰を動かす。<br>  やがて、アトレイアの最奥から溢れ出した潤いがその動きを徐々にスムーズにしていく。<br> 「はぁっ、あっ、あっ、くっ―――あぅ、はぁんっ!!」<br>  いつの間にか、アトレイアの声から苦痛の色が消えていた。腰を打ちつけながら、目の前で揺れる乳房をこねる。<br> 「やぁ……んっ! はぁん、あっ、あっ、あぁんっ、ゃ……っ!」<br> 「もう少し、激しくしても大丈夫?」<br>  耳元で囁くと、彼女は小さく頷き首の後ろへと手を回してくる。<br> 「ひぁっ! あっ、ああぅ、んんっ!! ゃ、何か……へ、ん……<br> くふっ―――ああああぁぁっ!!」<br>  首にしがみつきながら、アトレイアが悲鳴を上げる。<br>  その切羽詰った声を聞きながら、さらに激しく腰を打ち付けていく。<br> 「やぁ―――っ! あっ、あっ、あっ、はぁぅ!! <br>  だめ……だめ、私―――あ、ああっ! あああっ!!」<br>  ガクガクと腰を震わせ、アトレイアが高く啼く。彼女を強く抱きしめ、大きく腰を動かす。<br>  意識が白く染まっていき。<br> そして―――<br> 「……っ!! アトレイアッ!!」<br> 「はぅっ!! あ―――はあああああああああっ!!」<br> その叫びと共に、アトレイアが全身を激しく痙攣させる。<br> 直後、彼女の肉壁が強烈な勢いで収縮する。<br> その締め付けに耐え切れず、<br> アトレイアへの想いと共に、灼熱する白濁液をその最奥へと注ぎ込んだ。</p> <p> </p> <p> 胸に白い小さな体を抱き、緩やかにウェーブのかかった髪を指で梳く。<br> 「ん……」<br>  トロンとした表情で腕の中にいる姫君が、そっと肩に触れる。そのしなやかな指先が触れていたのは古い刀傷の痕だった。<br>  それに気が付いたアトレイアが少し顔を曇らせる。<br> 「……あの、一つお聞きしても宜しいですか?」<br> 「うん?」<br>  こちらを見上げるアトレイアに、<br> 一つ頷いてみせると彼女は躊躇いがちにその疑問をぶつけて来た。<br> 「なぜ、貴方は戦わられるのですか?」<br>  こんな怪我をして、痛い思いを、苦しい思いをしてまで、<br> なぜ戦うのかと、彼女の目は問うてくる。<br>  その問いに、目を閉じて考える。<br> 答えはすぐに出た、元々考えるまでも無いことだったから。<br> 「大切なものを、大切な人を護りたいからだよ」<br>  そう告げて、少しだけ昔の話をする。<br>  まだ、本当にどうしようもなく弱かった頃の話を。</p> <p> </p> <p> </p> <p>「……姉弟みたいに一緒に育った人がいたんだ」<br>  強情な、強い意志を秘めた双眸を思い出す。<br>  大した才能を見出せなかった自分とは対照的に、非常に高い剣の才能があると師に言われ将来を期待されていた姉。父の後を継ぎ、騎士になる事が夢だった少女。<br> 「その人は強くてね。いつもいじめっ子とかから守ってもらってたな」<br> 「貴方が、ですか?」<br>  少し驚いた表情を浮べるアトレイアに、その頃は本当に弱虫だったんだよ、と苦笑しながら頷く。<br>  自分は、いつも颯爽とした様子の姉の後ろを付いていくだけだった。<br> 「そんなだから、きっと強くなれなかったんだろうね」<br>  そう。だからあの時、何一つ出来ずに、<br> 彼女が自分を庇って傷つくのをただ見ているだけだった。</p> <p>  魔人、アーギルシャイア。あの絶対的な力の前では、少々力があった所で何かが変わるとも思えないけれど、それでも彼女の足を引っ張らないだけの力があれば―――。<br>  自分の目の前で光に包まれ消えていく姉代わりの少女を見て、自分がどれだけ甘えていたのかが良く分かった。<br> 「何も守れず、逆に大切な人に守られる始末だったからね。<br> 情けなくて、悔しくて―――<br> だから次があるならば、今度こそは守る側に立ちたいと思ったんだ」<br>  そう締めくくる。<br> 「あの、その女性の方は、今……」<br>  ひどく心苦しそうな様子のアトレイアに小さく笑いかける。<br> 「ん? ああ、ちゃんと生きてるよ。<br> 今、どこに居るかは知らないけど、どこかで元気に冒険者やってると思うよ」<br> 「よかった」 <br> その答えに安心したのか、彼女は穏やかに微笑んだ。</p> <p> </p> <p> 疲れが出たのか、アトレイアはすぐに静かな寝息を立てて眠りに落ちた。<br>  そのあどけない寝顔を眺めながら、静かに決意を、覚悟を固める。<br> 「またね。アトレイア」<br>  そう告げて、彼女の寝顔にキスをすると服を身に纏い、部屋を後にした。</p> <p> 翌朝。王宮に来ると、若い衛兵が敬礼をしつつ声を掛けてきた。<br> 「龍字将軍閣下、ファーロス総司令閣下が謁見の間にてお待ちです」<br> 「分かった。ありがとう」<br>  それでは、と再び敬礼をして立ち去っていく衛兵を見送り、静かに謁見の間へと向かう。<br>  カツン、カツン、カツン―――<br>  靴底が床を叩く音が響く。<br>  その音を聞きながら、これから戦う敵軍の事を考える。<br>  敵はこちらの四倍の数を有するディンガル帝国、東部方面軍。<br>  敵将―――青竜将軍、カルラ・コルキア<br>  敵副将……</p> <p> 敵副将―――アイリーン・エルメス</p> <p> </p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: