後に第一次ロストール攻略戦と呼ばれることになった、ロストール王国とディンガル帝国の戦いは、ロストール側の勝利で終わった。分断の山脈を越えるという史上初めての快挙を成し遂げたアンギルダンを、敗残兵を驚くべき速さで立て直したゼネテスが奇襲により、破ったのである。ゼネテスは救国の英雄と讃えられたが、ロストールの受けた被害は甚大なものであった。ファーロス家当主ノヴィンを初め、名だたる貴族が戦死したが、生存者の中にも、戦死者の中にも、ロストール軍のどこにもノーブル伯の名前は無かった。薄暗い部屋の中、闇以上の暗い瞳をした少女がベッドの上に座っていた。床には割れたグラスが散らばっている。少女が食事を拒否した後だ。少女の目前には、青白い顔をした端整な顔立ちの男が腕を組み、少女を見下ろしていた。男の瞳もまた暗い。「気づかれないと思ったか? 小賢しい真似を…」「危急の事態に何をしているかと思えば、侵略者の先兵となって働いていたとは」少女は口の端を吊り上げて嗤う。「あのぼんくらの従兄弟は敵前逃亡、妹は朱雀軍副将、ちょうどいいじゃない」「お前ごときが副将だとは、ディンガルも存外大したことない。それとも、あの老いぼれを誑かしたのか。物好きなことだ朱雀将軍殿も」レムオンは冷笑を浮かべた。値踏みするかのように、少女の体に上から下まで視線を這わす。かっと頬を染めて、少女はレムオンを睨みつけた。闇のような瞳の中に、燃え盛る炎のような怒りが見て取れた。抑えようの無い、地獄の業火よりも熱い憎悪が、少女の中で燃え盛っていた。少女の怒りに眉一つ動かさず、レムオンは鼻で笑った。「それで負けていては世話がない。いっそのことファーロスのドラ息子にでも、抱かれた方がましだったな」「誰があんな男に」少女は拳を握り締め、吐き捨てるように云った。レムオンは、まるで獲物をいたぶるかのように少女を弄る。はやく殺せばいい。付き従っていたアンギルダンがゼネテスに殺され、少女も逃げる途上、リューガ家の手の者に捕まってしまった。屋敷に連れ戻され部屋に軟禁されて、レムオンの死の宣告を待っていた。逃げることもかなわず、少女はただ待つことしかできなかった。この冷酷な男が、ロストールを裏切りあまつさえ滅ぼそうとした義妹を許すはずが無い。王妃に知れる前に、人知れず始末するだろう。覚悟は出来ていた。少女は待った。男の二本の剣が自分の体を貫くのを、噴出した血が男の美しい顔を汚すのを。命の終わる瞬間に、その白い喉首を噛み千切るのを。少女は待ち望んでいた。はやく殺せばいい。弟を殺した時のように。少女は恐れを知らぬ瞳で、レムオンを見すえた。「何しに来たの? あんたの顔なんで一秒だって見たくない」「口を慎め。お前の生殺与奪は俺が握っているのだからな。それとも、そんなにはやく弟の元へ行きたいか?」少女の怒りをレムオンは嘲笑う。少女の頭の中で何かが弾けた。足元もグラスの破片を拾い上げると、男の心臓めがけて切りかかった。振り下ろされる瞬間、少女の手首にレムオンの手が絡まる。「そんなもので俺を殺せると思ったか。愚か者め」少女の手から血が滴り落ち、高価な絨毯を汚す。少女の視界は涙で歪んでいた。怒りが少女を高ぶらせていた。
「あっ…」少女の唇から苦しそうな呻き声が洩れ、グラスの破片が手から滑り落ちた。レムオンは、その整った繊細な指に力を込め少女に苦痛を与えたのだ。間近で男の凍えるほどの冷たい視線を受け、感覚が麻痺するほどの痛みを与えられながらも、少女は気丈に男を睨みつけた。少女の虚勢に男は楽しげな笑みを浮かべた。「解せんな。俺の片手にも及ばぬ腕で、精強なディンガル軍の副将とは。アンギルダンはやはり間抜けだ。負けるのも道理だな」ぱあん、と乾いた音が部屋に響いた。レムオンは忌々しげに少女を睨みつけた。少女は荒々しく息を吐きながら、男をきっと睨み返す。レムオンは少女に打たれた頬を、確かめるように撫でた。「アンギルダンは立派な人よ。あの人を侮辱することは許さない!」「ならば、どうする」冷たく言い放つレムオンの手に更に力が込められる。「ああ…うぁ…」少女の苦痛の呻き声に、レムオンは歪んだ支配欲が充足されるのを感じた。鳴き声をあげる少女を引き寄せ、強引に上を向かせると噛み付くように口付けした。愛の交歓などという生易しいものではない。少女の呼気さえ奪いつくすように口内を貪る、一方的な略奪のような口付けだった。逃げようとする舌を絡めとり、追い詰め存分に犯す。互いの唾液が混ざり合い少女の口腔を満たし、不快感が増し少女は涙を流す。流し込まれる唾液が飲み込まれると、少女の喉がこくこくと音を鳴らす。吐き気を催す嫌悪感と、体の奥で閃く得体の知れない感覚に少女は脅える。必死にもう片方の手でレムオンの胸を押し、体を離そうとするが、レムオンは少女の腰を引き寄せ、それを阻む。男の胸にこびり付いた己の血を見つめながら、この永遠のように感じられる拷問を只管耐えた。ようやく男が顔を離した。少女は酸素を求め大きく息を吸った。口許には飲み込めなかった唾液が滴り落ち、首筋を流れ少女の衣服を汚していた。少女はがくがくと震える足を何とか地に立たせ、泣き濡れた瞳で男を見上げた。レムオンは涼しげな顔をして少女を観察しており、少女の中で憎悪が膨れ上がる。「俺を殺す千載一遇のチャンスを逃したな。舌を噛み切ればよかったものを。それとも…」レムオンは酷薄な笑みを浮かべた。「感じていたのか? さすが朱雀将軍を誑かした女は違うな」否定すべく声を上げようとするも、喉が引きつったように掠れた声を出すだけで、声が上手く出なかった。舌を弄ばれて、口内を侵略された余韻が少女から言葉を奪っていた。肩で息をする少女の頭の上から、レムオンの冷たい声が響く。「ほぅ…、どうやらその通りのようだな」かぁと少女の頬が紅く染まる。震え座り込みそうになる足、火照った体、荒い息。全てがレムオンの言葉を肯定していた。否定する拠り所は胸に燻る憎悪だけだった。その事実が少女を愕然とさせる。少女は驚愕に体を震わせる。レムオンは相手を嘲笑う冷たい表情から一転して、感情のこもらない瞳で少女を見下ろす。最早、感覚の鈍くなった手を乱暴に引かれ、少女はベッドの上に仰向けに転がされる。はっとして、起き上がろうとするが、それよりも早くレムオンに覆いかぶされ、両の手で手首をベッドに縫い付けられる。「何をするの!?」少女は恐怖と怒りの入り混じった表情をして叫ぶ。ベッドの上に縫い付けられている手を振りほどこうとするが、男との圧倒的な力の差がそこにあり、僅かにも動かすことは出来なかった。レムオンは変わらず、感情の欠落した冷えた目で少女を見下ろす。レムオンの顔が少女の首筋に向かって下りて来る。ぞくりとするざらついた感触が肌に走る。舌は首を汚す唾液を舐めとり、徐々に鎖骨へと向かっていく。「いやっ! それ以上やったら舌を噛み切ってやる!妹が自邸で変死したら、さすがのエリエナイ公爵だってまずいことになるわ!」レムオンが顔を上げる。暗い瞳が少女の潤んだ瞳とかち合う。少女の拙い脅しを嘲笑うかのように、レムオンは薄く笑みを浮かべる。「何も果たさぬまま自ら命を絶つか? 好きにすればよい。仇に脅え、命を絶って逃げることしか出来ない負け犬になりたいと云うならばな」この男! 何度殺しても殺し足りない! 少女は射殺さんばかりにレムオンを睨む。少女の腕が引っ張られ、頭の上に一つで縫い付けられる。
レムオンは片手で少女の両手を封じているというのに、びくともしない。男の白い手が少女の衣服に掛けられる。少女の顔が凍りつき、哀れなほど恐怖に歪んだ。少女の体の震えが手の平を通して、レムオンに伝わる。レムオンは少女の耳元に顔を近づけ、冷たく威圧的に言い放った。「始末されないだけ、ありがたいと思え」「あっ……う…!」服越しに豊かな胸が揉みしだかれる。痛みと屈辱で少女は顔をしかめた。しかし、圧倒的な力でベッドに押さえつけられ、体を弄ばれながらも、少女の気はまだ完全にはくじけていなかった。どうにかしてレムオンの支配から逃れようと、自由になる足をばたばたと動かす。だが、それもすぐに少女の足の間に男の膝が割り込まれ、抵抗もむなしく、安々と封じられてしまう。胸元の紐が解かれ、白い乳房が露わにされる。少女の覆い隠された部分は雪のように白い。レムオンの端整な顔が下り、胸の先端を舌が弄ぶ。軽く歯が立てられると、少女は小さく悲鳴を上げる。そうやって胸を弄んでいる間にも、レムオンは少女の腰のベルトに手をかけ、片手で器用に緩め外していく。そのまま手を下方に滑らせ、スリットから覗く瑞々しい大腿を撫でる。少女の肌に鳥肌が立つ。男の手は大腿を上っていき、腰に辿り着く。手は肉感を堪能するように、適度に弾力のある腰を撫で回す。「いやっ!」虫のように体を這い回る手に体をよじらせ、少女は涙声で叫ぶ。「あんたは貴族でも人でも何でもない! 醜いけだものよ…!……んっ!」乳房を強く噛まれ、少女は痛みに喉を詰まらせる。レムオンは顔を上げると、相手を切り刻むような殺気すら漂う眼で少女を睨みつける。少女は息を呑む。恐ろしい眼で射竦められ、捕食者を前にした小動物のように、目を見張って体を震わせる。少女の腰を這っていた手が足の付け根に行き着き、下着をずらし中へ滑り込ませると、少女の微かに湿っている秘所に指をねじ込ませた。「ああ……うあ……!」掠れた声が少女の口から漏れる。レムオンの指が狭い肉壁を押し退け、かきまわす。その度に、男の指を拒絶するように締め付ける。少女の顔は苦痛に満ちている。指の動きを止め、ゆっくりと壊れ物でも扱うように壁を撫でると、苦痛の中にほんの僅かであるが、快楽の入り混じった表情をする。相反する感覚に翻弄される表情も、呪いの言葉を吐く口から洩れる喘ぎ声も、少女の所作の全てがレムオンの劣情をこの上なく刺激した。レムオンは少女に顔を近付け、優しさすら感じられる穏やかな口調で云った。「お前に選択の余地はない。このまま俺に抱かれるか、俺に殺されるかだ。だが、お前は俺をその手で殺すまでは、死ぬつもりはないのだろう?」「あっ…いたい……!」少女の秘所から蜜が溢れ出し少女の下着を汚す。膣内をかき回す指が増やされ、少女の苦痛も増す。痛みを軽減しようと、意志によらず少女の腰が艶かしく動く。ずっと拘束されたままだった腕がようやく解放される。だが、既に少女には抵抗する気力はなくなっていた。下から衣服をたくし上げられ、何の抵抗もなく取り払われる。少女の憎悪は大きな苦痛とわずかな快楽にのまれ、瞳は亡羊と宙を漂う。己の中で動き回る異物を何とか取り払おうと、弛緩した体を何とか動かす。少女の白い裸体がレムオンの下で悶える。だがそれも、余計に淫らな水音をたてて、指を奥に進ませる結果となった。指が動くたびに、少女に苦痛がもたらされる。涙がとめどなく溢れシーツを濡らす。少女に残された抵抗は、声を上げぬようきつく歯を食いしばることだけだった。
下着が取り払われ、少女は四肢を投げ出し生まれたままの姿を晒す。レムオンはしばらく少女を観察する。今までレムオンの指が弄んでいた秘所からは、蜜がとめどなく溢れている。少女が呼吸をする度に、白い豊かな胸が揺れる。乳房には歯形がくっきりと赤く残り、痕を指でなぞると少女がびくりと震えた。レムオンは、この憔悴しきった少女を抱けることに、暗い喜びを感じた。誰にも屈することのない気高い少女を組み伏せ、白い肌に自分の痕跡を残すことを。己の衣服を全て脱ぎ捨てて、力なく横たわる少女をうつ伏せにする。肌触りのよい背中に唇を這わせながら引き寄せ、自分の膝の上に座らせる。少女を背後から抱きしめ、全身で少女の感触を堪能する。大腿を掴み、足を大きく広げさせ秘所をなぞるように触れる。「んあ…」体は生理的な反応を示し、少女に意味を成さない言葉を放たせる。少女は背中に伝わる男の体温で覚醒し、次いで少女の内股に擦り付けられている、屹立した男自身を五感の全てで認識する。抗う暇もなく、背後から少女の蜜壷に挿入される。内側から引き裂かれる痛みに、少女は悲鳴を抑えることが出来なかった。止めるてだても無く、少女自身の重みで、それはずぷずぷと音をたてて呑み込まれていく。「ひ…! いた………いたい…!あああ…あ…」「くっ…力を抜け……」少女の腹にレムオンの手が伸び、体を引き離そうとする少女の動きを封じる。それでも無理に引き抜こうとすると、余計に痛みがひどくなった。「く、ひ…ああ…! ああ…ひぃ……!」少女は悲鳴に近い嬌声を上げる。常の凛々しさも強情さも、そこにはない。レムオンは半ば反射的に痛みで咽び泣く少女の顎に手をかける。柔らかい手つきで上を向かせると、慰めるように少女に口付けした。自身に起こったことと、体を引き裂くような痛みに放心し泣き崩れていた少女は、されるがままに憎い男からの口付けを受け入れる。レムオンは、少女の目尻に浮かぶ滴を舐め取り、優しげな動作で少女の頬を撫でた。ついばむような口付けをされながら、少女は縋るようにレムオンを見上げた。「いた…いたい……ん、お願いだから、抜いて…!」少女の内股を赤い滴がつたう。レムオンは少女の懇願を黙殺し、赤い滴を指で掬い取り舐め取る。太腿を這う刺激に、少女は自身の中に入れられている剛直を締め上げる。レムオンがわずかにでも動くと、少女は痛みで身を震わせる。故郷を追われ、弟を殺され、仇の妹に仕立て上げられた。挙句、殺しても飽き足らない男に無理矢理抱かれる。きっと今まで以上に少女の憎悪は心身に刻み付けられるだろう。死んだ弟でも慕っていた朱雀将軍でもない。この少女が己の全てを賭けて復讐を誓い、他の誰よりも激しく憎み、心に住まわせているのは自分なのだ。他の誰でもない。レムオンは少女を強く抱きこみ、激しく突き上げた。少女の口から一際高い悲鳴がこぼれる。締め上げる肉壁をかきわけ、更に奥へと突く。それを阻もうとするかのように、少女の中は大きく波打ち、レムオン自身を締め付け、しぼり尽すように動く。手を伸ばし、少女の乳房を掴みあげると、呼応するかのように少女の内が狭まり、レムオンに、思考が砕け散るほどの快楽を与えた。
挑むように激しく腰を打ち付ける。汗が互いの体に纏わりつき、境界を曖昧にする。少女は強く揺さぶられる。痛みと共に脳髄を刺激する陶酔感に恐怖を覚え、死にたくなるほどの絶望感と羞恥心で少女は満たされる。突き上げられるたびに、蜜と破瓜の血があふれ出し、少女の大腿を汚す。体に刺激を与えられる度、熱く中に侵入しているものを締め上げる。少女の表情が、苦痛と恍惚との間で揺れ動く。「う、う…ああ……ん…!」少女の行き場のない手が、寄るべき場所を求めて彷徨う。背後から自分を突き上げている男の腕を掴む。レムオンの白い腕は少女の腹部に絡みつき、びくとも動かない。少女が痛みを訴えるたびに、手は少女の乳房を掴み先端を刺激して愛撫する。振り落とされないように少女はその腕にしがみつく。律動が激しくなる。少女もレムオンも限界が近づいていた。「あ、あああ……!」達して、体を駆け巡る初めての感覚が少女の全てを支配し、衝動のまま嬌声を上げる。少女の中が、大きく波打ち、レムオン自身を呑みこもうと締め付ける。レムオンは泣き叫ぶ少女から、苦しそうに自身を引き抜くと、少女の瑞々しい大腿に擦り付ける。白く濁った液が吐き出され、少女の大腿を汚し、飛沫が下腹部や脚に散らされる。少女は荒く息をし、背後の男に身を預ける。熱い体に青白い手が這うのを感じる。男の胸に抱かれながら、少女の胸にじわじわと黒いものが広がっていく。「う、離して! 離してよ…!」少女はもがいたがレムオンの手は彫像のように動かない。男の体液で汚れた自身の脚が目に入り、男に対する嫌悪と怒りがこみ上げてくる。「こんな、ことして…、満足なの? 殺せばいいじゃないの…!どうして…! まだわたしから奪い足りないっていうの…?」少女の目からまた涙が溢れ出す。レムオンはしゃくりあげる少女の耳元に唇を近づける。少女の耳たぶに唇が触れ、少女は短く悲鳴を上げる。レムオンは恐怖で体を震わす少女を落ち着かせるように髪を梳く。あれほど掻きたてられていた支配欲や征服欲がすっかりなりを潜め、自身でも信じられないことに、少女に対する労わりの心情が生まれていた。「もう、何もしない。この件で俺はお前を殺さない。エリスにも手を出させない。ディンガル帝国の朱雀軍副将は、もう死んだのだ。…今は眠れ。次に眼が覚めたとき、俺を殺す算段でもたてるがいい」そう云って少女を腕に抱いたまま、掛布でくるむ。疲労が少女を覆う。脳裏に、快活に笑うアンギルダンが、チャカが浮かぶ。彼らに心中で必死に謝りながら、少女は男の腕に抱かれたまま意識を手放した。
次に意識を取り戻した時、レムオンの姿はなかった。汗や体液で汚れた体は清められ、破片で怪我をした手の平には包帯が巻かれていた。椅子の上には緑色の服が丁寧にたたまれ、少女は淡い色の夜着を着て、ベッドで横になっていた。下腹部や足の付け根が痛くてたまらない。起き上がることもままならず、少女は天井を向いたまま、涙を流した。吐き気がする。気持ち悪くてたまらない。愛する弟を殺した男に抱かれ、あまつさえ痛みに屈して男に縋り、喘いでいた。少女は包帯の巻かれた手を握り締めた。じわりと温かいものが滲む。自分を含めた全てが憎らしかった。泣き疲れ、再び眠りについた少女をレムオンはおとなった。ベッドに近づき、穏やかな寝息をたてる少女の髪を撫でる。夜着の袖をまくると、指の形の痣が少女の手首にはっきりとついていた。少女に抱く感情は劣情でも憎しみでも侮蔑でも、ましてや愛情でもない。それでも、少女の手首の痣を見ると、胸中に暗い歪んだ喜びが広がる。レムオンは、少女の頬を伝う涙を掛け布で拭い取ると、音も無く部屋を後にした。
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