賢者の森の中に、選ばれた者だけが入れると言う猫屋敷と呼ばれる屋敷がある。その中の一室で、二人の女性が一つのベッドの中に寄り添っている。一人は長い黒髪の美しい妙齢の女性。端正で気品のある顔立ちには、深い苦悩の色が見える。そして着ている服は紛れもない、ディンガル帝国の制服だ。ザギヴ=ディンガル。元はディンガル帝国の玄武将軍だった女性。彼女は今、猫屋敷で守られるようにして眠っている。もう一人はまだあどけなさの残る少女。着ている服装から冒険者だと一目で分かる。少女は時々、慈しむようにザギヴの長い黒髪を梳きながらザギヴに身を寄せて彼女を見守っている。
(こういうのはあまり良くないんだろうな)少女は胸の中に憧れている女性を抱きながら思う。いつからこうなってしまったのか。少女が以前からその聡明さと憂いを帯びた美しさに憧憬の気持ちを向けていた女性。きっかけは彼女にロセンの視察の護衛を依頼されたことだ。それがこの女性、ザギヴの悲しい過去を知る出来事となり、そして、それはまた彼女を守りたいと少女が強く思うようになったきっかけでもあった。ザギヴの体内に巣くう魔人、マゴスの孵化を遅らせるために身を寄せたここ猫屋敷でも彼女の苦しむ回数は日々増えていった。体内でマゴスが孵化しそうになる苦しみ、それを押し返そうとする苦しみ。それを少しでも楽にしてあげようと、少女はザギヴの身体に触れる機会が増えていった。マゴスの影にザギヴが怯える時には、安心させようと少女は親愛の気持ちを込めて彼女を何度も抱擁した。『闇に墜ちてしまいそうで、不安で眠れないの』ザギヴがある日そう言ったのをきっかけに、少女はザギヴが眠りに就くまでベッドに共にすることにした。まどろむザギヴの耳元で、少女はザギヴに教わった子守歌を繰り返し歌う夜が続いた。
最初は純粋に彼女を安心させ、安らかな眠りに就かせてあげたいという母性のような気持ちだけだったのが、少女は気付き始めた、自分の気持ちの中にだんだんとやましいものが混じり始めているのを。この年上の麗しい女性と寄り添うようにベッドの中にいると、今まで経験したことのない得体のしれない情熱に囚われそうになる。ザギヴの付けている白粉の淡い匂い、艶やかな黒髪の香りが少女の五感を甘く苦しめる。ザギヴが眠りに就くのを待ちながら、少女はいつしかザギヴに口付けたい、その身体にもっともっと触れたいという浅ましい欲望を押さえ付けるようになったのだ。ザギヴにはそんな気持ちはないのだろう、同じ女性同士だし、苦しむ彼女にはそんな事を考えている余裕なんてないはずだ。彼女はただ、安心感だけを求めている。自分だけがこんな卑しい気持ちを抱えているのだろうと少女は密かな罪悪感を噛みしめ続けていた。
今宵もそんな事を思い巡らせながらベッドの中で少女がザギヴの顔を見ていると、ザギヴは不意に目を開けた。そして大きな黒い瞳で少女の顔をじっと見つめた。「ザギヴさん眠れないの?苦しいの?」「ううん、大丈夫よ……ちょっと考え事をしていただけ」ザギヴは心労で赤くなった目を擦りながら独白するように言った。「……ベルゼーヴァ様は私に失望しているわね。玄武将軍である立場を放棄して行方をくらますなんて。どんな理由があろうとも、私は軍人として失格だわ」「ザギヴさん、自分を責めちゃ駄目。まずは身体の中のマゴスを何とかしないと。その状態じゃ何も出来なくて当然よ」「優しいのね、ありがとう」ザギヴは笑った。その笑みは少し哀しい。それでも少女にはそれがとてつもなく美しいものに見えて、もっとその笑みを自分に見せて欲しいと切に願った。「……可笑しいわ」ザギヴは不意に、何か思いだしたようにくっくっと笑いだした。「ザギヴさん?」「いえ、あなたがエンシャントの宿屋で私を守ってくれた時の事を思いだしたのよ。苦しかったけれど、覚えているのよ。ゾフォルに食ってかかったときのあなたの事……」少女は少し顔を赤くした。「『ゾフォル、この爺!黙れっ!』なんてあなたすごい剣幕で怒ったでしょう?あなたもそんな風に怒ることがあるのかって、私はあなたの事をもっとクールだと思っていたのよ」「……だってあのままじゃザギヴさんは、ゾフォルの思うつぼになりそうだったから、それで……」少女は恥ずかしそうに答えた。我を忘れて逆上したあの時の事を冷静に思いだすのは少し気恥ずかしい。そして、あれほどあの時怒りに駆られたのはこの女性に強く惹かれていたから、この女性を守りたかったから。「でも、嬉しかったわ……あなたの意外な一面が見られて。ありがとう」ザギヴはそう言うと、少女の返事を待たずに瞳を閉じた。規則正しい寝息が聞こえてくるまで、少女はザギヴのその彫りの深い端正な顔を見つめていた。そしてザギヴが眠りに落ちたのを確認してから、ザギヴの頬にそっと口付けを落した。――いつからこんな事をするようになってしまったのだろう。
「おい、小娘」不意に背後から声を掛けられた。驚いてそっとザギヴを起こさないようにベッドから身を起こすとそこには猫屋敷にいる人語を話す猫、ネモがいた。「びっくりしたぁ、ネモ、黙って入ってこないでよ」「俺はここに住んでいる、いつ部屋に戻ろうが俺の勝手だ……お前、その女に惚れてんのか」恐らく事実であることを不意に突きつけられて、少女はかっと顔を赤く染めた。「……見てたの?」「知っていた、前からお前がその女にやましい事してんのな。小娘の癖に色気づきやがって、お前、男に抱かれるみたいにその女に抱かれたいのか?」「そんな事……」少女はベッドから降りて、首を振った。いくら欲望があっても、人としてこれ以上進んではいけない。そんな事は言われなくても分かっている。「人間てやつは弱いぜ。弱いから一緒にいてられんのな。お前もその女も弱いから一緒にいたがるんだろ、けどな……」ネモは音もなく少女の方に歩み寄って言った。「その女と寝たかったら、命捨てる覚悟が必要だぜ。理由はお前にも分かってるだろ」「……マゴス」「そうだ。お前がその女を抱いたら、たぶんマゴスはその女の身体を食い破って出てきて、お前に棲みつくぜ。お前が無限のソウルだろうがなんだろうが、マゴスが棲みつかない理由にはならない。そしてその女も死ぬぜ」少女にも薄々分かっていた。そういうやましい理由ではなくても――ザギヴの中のマゴスを何とかして退治してしまわないと、いくら猫屋敷にいてもザギヴの容体はだんだんと悪化してゆく一方だろう。ザギヴの精神がもし、マゴスに侵食されてしまったら――少女はその先のことを考えたくなかった。「私、帰る……明日も早いから。また来る。ネモ、ザギヴさんをよろしくね」「そんな事は俺じゃなくてケリュネイアに言いな。俺はただこの女を見てるだけだ」「あ、それからこの事はオルファウスさんや他の人には黙ってて……!」「さあ、どうだかな」
少女は胸の内に秘めたザギヴへの想いに苦しみながらも、ザギヴを励まし勇気づけ、時々臥所を共に出来る日常に感謝をし、喜びを感じていた。マゴスの影に苦しむザギヴをいつまでもいつまでも自分が守りたいという自分勝手な欲望が少女を日々嘖み、それでもザギヴの眠りを見守る時間の幸福感に、このまま時間が止まればいいと願う少女の願いを無視して、時間は静かに確実に流れていった。
そしてマゴスを倒す日が来た。ザギヴをマゴスの呪縛から解き放つことが出来た。もう彼女は闇に飲まれることはない、地獄のような苦しみを味わうこともないだろう。「終わったわ……いいえ、これからが始まりなのね。あなたのお陰よ、あなたが私の剣となり、盾となってくれたのよ」夜風の気持ちいい夜だった。宿屋のベランダで風に吹かれながらザギヴは少女に感謝の言葉を言った。もうその顔には、猫屋敷で苦しんでいた時のような憔悴や苦悩の色はない。これを望んでいた筈なのに、少女は心のどこかで寂しさを感じていた。もうザギヴは自分に助けを求めることも、寄り掛かることもない。彼女は強さを取り戻し、一人で歩いて生きていけるだろう。以前のように寄り添って猫屋敷のベッドの中で眠りを待つ日々はもう決して戻ってこないのだ。
「どうしたの?」ザギヴは少女の心の寂しさに気付いたように聞いてきた。「ううん……」彼女を縛るものはもうない。だから彼女はいずれディンガルに戻ってしまうだろう。この戦いが終われば自分たちは別れ、彼女は自分の手の届かないところに行ってしまうだろう。その事実に考えが到達した時、少女は泣きたくなった。マゴスから解き放たれたディンガル元将軍であるこの人と、『竜殺し』と呼ばれようが所詮、一介の冒険者である自分とが対等に一緒に歩くことなど出来るものか。感情が負の傾斜を駆け降りてゆきそうになる。「ザギヴさんは、もう大丈夫よ。もう私の助けは要らない。これで良かった、これが目的で今まで一緒に頑張ってきたのは分かっている。だけど、何故なんだろう、私、少し、寂しくて……」少女は目を伏せた。「私は……もう少しこのままザギヴさんと一緒にいたかったの……」
「……あなた、私が好き?」不意にそう聞かれた。少女は、ザギヴの顔をまっすぐ見ることが出来なかった。思わず瞳をそらし、ベランダのフェンスに手を付いて夜空を見上げた。「……好きじゃなきゃ」思わず嗚咽のようなものが込み上げてくるのを堪えた。「好きじゃなきゃ、こんなに寂しかったり、こんなに悲しい気持ちになったり、しない……」少女は振り向いてザギヴの静かな美しい顔を見た。狂おしい程の想いが胸の内から溢れる。秘めていた想いが言葉になって唇からこぼれ落ちた。「ザギヴさん、離したくない……好きです」ザギヴの返事を待たずに、少女は唇をザギヴの薄く紅を引いた唇に押し付けた。ザギヴの細い身体を抱きしめ、貪るようにザギヴの唇から体温を奪う。何秒か何十秒か、そのまま少女は我を忘れてザギヴの身体を抱きしめていた。やがて唇を離してからおずおずとザギヴの顔を見た。拒否されるかも知れない。軽蔑されるかも知れない。それが怖かった。けれどもそこにあるザギヴの顔には軽蔑も怒りもなく、思いのほか静かに微笑んでいた。「……だめ?女が女を好きなんて、だめ?」「だめじゃないわ」ザギヴは少女の手を取り、部屋の中に連れ戻した。「今の私には空洞があるの。マゴスのいた空洞……空洞を満たすのは私。あなたがいなかったらこんな感じを味わうことはなかったわ。私と一緒にマゴスの空洞を埋めてくれる?……あなたのすべてで」その言葉の意味を理解して、少女の瞳が歓喜で潤んだ。もう一度、情熱を込めて口付けする。初めての舌を絡めるキスに少女の身体はぞくぞくと震えた。――何度、同じベッドの中にいる時にこれを夢見ただろう「ザギヴさん、本当にいいの?私で本当にいいの?」「ええ……ベッドに行きましょう」喜びに囚われて立ち尽くしたままの少女にザギヴは優しく微笑みかけた。
少女とザギヴはもつれ合うようにベッドに倒れ込んでいた。しばらく二人はそのままで抱き合い体温を貪っていたが、やがてザギヴは少女のクロースの前ボタンに手をかけた。「脱がせていい?あなたを見たいの」ザギヴの細い指が少女の粗末なクロースのボタンを外し、ベルトを外し、剥ぎ取った。ブーツも脱がされ、下着姿にされる。少女は思わず両手を胸の前で交差させ顔を赤らめた。自分の冒険で作った生傷のある身体と、簡素な安っぽい木綿の下着が恥ずかしかった。「どうして隠すの」「だって、恥ずかしい……私ばっかり。ザギヴさんも脱いでよ」少女が抗議すると、ザギヴは笑った。そして自らディンガルの制服を脱いだ。眩しいほどのきめの細かい白い素肌と、高級そうなレースの付いた黒い下着が現れる。この世のものとは思えない程の、名画にでも描かれるような神秘的な裸体。少女は眩さのあまり思わず目をそらした。「灯……消して……」ランプの灯が小さくされる。僅かな光の中でもザギヴの白い身体は輝くように美しかった。滑らかな曲線を描く身体のライン。白い丸い肩、引き締まった腰、そして豊かな形のいい乳房。
下着姿のまま、二人は抱き合った。じかに触れる素肌と素肌の感触。感じあう体温と鼓動。ザギヴの身体から、髪から漂う甘い匂いを少女は貪るように呼吸した。「ザギヴさん、いい匂い……」「ふふっ、あなたもそろそろお化粧くらい覚えなさい」そんな言葉を交わしながら、少女はザギヴの身体をベッドに押し倒した。力では剣を使う少女の方が強い。下着の上からザギヴのふくよかな乳房に顔を埋める。柔らかい、他人の乳房の感触はこんなにも柔らかいものか。少女は飢えた獣のように年上の美しい女性の素肌の至る所に唇を這わせ、舌で舐めた。甘い体臭が脳を刺激し、くらくらする。少女はザギヴの身体に何度も口付けを落としながら、熱に浮かされたように打ち明けた。「ザギヴさん、私、ずっと……憧れていたの……」「知っていたわ」「知っていたの?私が……猫屋敷で……」「何度もキスしたでしょ?知っていたわ……でも、あなたなら……いいのよ」ザギヴが下から手を伸ばして、少女の胸を覆っていた下着を取り外した。少女の形のいい豊満な、それでいてどこか青さを残した乳房が露になる。少女もそれに連鎖反応するように、ザギヴの胸を覆う黒いレースの下着を外した。「ああ……」少女は歓喜の溜息をついた。この人のこの肌に焦がれていた。貪るように柔らかな雪肌に口付けして、桜色の先端を口に含む。前歯で軽くそこを噛むと、ザギヴの身体がびくっと震えた。痛みを与えたのかと少し不安になり、それを癒すように舌で舐めた。みるみる、ザギヴの豊かな乳房が少女の唾液でぬめり、てらてらと光る。口付けた所に赤い花が咲く。薄明かりに照らし出された卑猥な、扇情的な眺めに少女は軽い眩暈を覚えた。「あ……んんっ……!」下から手が伸びる。ザギヴの掌が少女の乳房を掴んだ。すべすべした掌の感触。初めて他人の手でそこを触られて、少女の唇から吐息が漏れた。ザギヴの両腕がしっかりと少女の背に回される。「あなたも……」二人の身体は反転し、少女の身体が下になる。ザギヴの細い指が少女の身体の上を撫で回した。指の先が、硬く尖った乳房の先端を軽くひねり、弾く。何故だか泣きたいような感触がそこから生まれて、少女の息は荒くなった。
「や……ザギヴさん、そこはだめ……!」ザギヴの指が下に降りて、少女の一番敏感な部分を下着越しに撫でている。下着が肌に張り付くくらい濡れているのは少女自身にも分かった。「うそ、正直になりなさい……」耳元に口付けされて、囁かれた。ザギヴの指がそこに、敏感な場所に触れる。濡れた下着の上から爪の先で弾かれ、指の腹で撫でられる。下着越しの感触が、布が敏感な部分に擦れて頭が蕩けそうになる。「あ、ああっ……んっ」少女はザギヴの背中を抱きしめ、爪を立てた。声を抑えようとしたがうまくゆかず、唇がわなわなと震えた。下腹部に焦燥感にも似た鈍い痛みを感じる。「気持ちいいの?どうなの、答えて……」ザギヴは右手で少女の秘部を弄びながら、左手では少女の乳房を優しく愛撫している。細長い綺麗な指が、少女の豊満な乳房の中に埋もれる。掌に硬くなった先端が擦れて、その度に甘い感触が伝わる。「んんっ……いい、すごく……!」ザギヴの指が下着の中に入る。茂みの中を掻き回し、少女のしとどに濡れた花びらの中に侵入する。ねちゃねちゃ、と卑猥な音がした。指は的確に、少女の敏感な肉芽を探り当てる。とぎれとぎれの吐息を漏らしながら、少女は何か言おうとする。しかしそれもすぐに甘い嬌声に変わってゆく。ザギヴの耳元で聞こえるそれは、ザギヴの心のうちに眠る嗜虐心に火を付けようとしていた。ザギヴの指は優しい愛撫からいつしか少女の肉芽をいじり回すように弄んでいた。少女はしっかりとザギヴの首に震える両腕を回した。今まで何度か、この女性のことを夢見ながら自分を慰めたことはあった。けれども、今彼女から与えられている快楽はその時の何倍も強く、甘い。「あ、あぁっ、ザギヴさん……!」このまま達してしまいそうになって、少女はザギヴの指の動きに身を任せようとした。しかし、ザギヴはそこで指の動きを止め、少女の紅潮した顔を見る。「だめよ……一緒に、ね?」ザギヴは少女の濡れた下着を引きずり下ろす。まばらに生えそろった茂みと赤く震える秘部が顔を覗かせる。
ザギヴは少女の傍から体を起こし、自ら下着を脱いだ。少女の目に一瞬、彼女のなだらかな丘と黒く煙る茂みが映る。ザギヴは少女の足下に移動し、半開きのままの少女の片脚を持ってさらに開かせる。少女は温かい、湿ったものが太股の内側に押し当てられるを感じた。ザギヴの脚と少女の脚とが絡まり合う。快楽を与えられたままそれが中断させられていた箇所に、ザギヴの濡れた秘部が押し当てられる。ぐちゃり、と淫猥な音がした。「ふ……あっ……!」少女の身体に電流が走る。知らず知らずのうちに腰をうねらせ、そこに当たる愛しいものにもっともっと自分自身を押し付けて、押し付ける。このまま溶け合いたい、この愛しい女性とそこから一つに溶け合いたい。「ザギヴさん、ザギヴさんも動いて……!」「ええ……」ザギヴも少女の秘部に自らの秘部を押し当てたまま、脚を絡ませ激しく腰をうねらせる。お互いの秘部が溶け合うようにぶつかり、ねちゃ、ぐちょり――といやらしい音を立て続ける。泉からわき出た蜜は二人の股の内側から流れ落ち、シーツに染みを作る。身体を揺らすザギヴの黒く長い髪が揺れる。ランプの光がそれを淡く照らし、なんとも幻想的な眺めを少女は夢現つの中に見た。「あ、あぁっ……も、もぅ……だ……」既に溢れるほど快楽を注ぎ込まれていた状態で、今与えられる刺激は大きすぎた。少女は手近にあった枕を掴み、それを抱きしめて身体をのけ反らせた。堪えることももう出来ず、がくがくと身体を震わせて少女は達した。
「はっ、はっ……はぁっ……」「あら、一緒にって言ったのに……だめね……」ザギヴは起こしていた身体をそのまま少女の上に倒した。脚は絡ませたままお互いの股に秘部を押し付けて。そしてまだ震えている少女の身体の上に指を這わせ、唇を押し当てたまま腰を擦り付けてくる。擦れ合うお互いのそこからぐちゃぐちゃと音がする。ザギヴの唇が少女の乳房に吸い付き、硬く尖った先端を軽く噛んだ。先ほど達したばかりの身体はそれだけの快楽にも過剰に反応し、全身が打ち震えた。「あぁザギヴさん、好き……!」少女は譫言のように叫んだ。二度目の絶頂に身体が向かい始める。少女の身体を抱きしめながら、ザギヴは激しく少女の股に自分の秘部を押し付けて、腰を震わせた。少女の秘部にもザギヴの股が強く押し当てられる。どちらのものとも分からない粘性のいやらしい水音が部屋の中に響く。「さぁ、あなたも動いて……!」「ザギヴさん、好きよ、好きよ、好き……」少女は何度もその言葉を繰り返し、愛しい女性の唇を、首筋を貪るように口付けた。ザギヴの耳に届く少女の声と喘ぎ声が、彼女を急激に高みに導いていく。お互いの乳房は動きに従って卑猥に揺れ、押し潰されて形を変えた。二人の女性はお互いを貪るようにベッドの中で溶け合ってゆく。鼓動も、体温も、呼吸も溶け合って一つになってゆく。汗が、蜜が交じり合って飛び散り、甘い性臭が漂う。二人の腰は激しく律動し、お互いの股に己の花びらを擦り付け、目もくらむような高みに昇り詰めた。
果てた後も二人の女性は溶け合ったようにお互いを抱きしめたまま動かなかった。しばらくザギヴの身体を抱きしめたまま、快楽の余韻に浸っていた少女は、やがて我に帰り目の前のザギヴの顔をまじまじと見つめた。その顔はほんのりと朱が差し、目は潤み、見とれてしまう程美しかった。自分たちは今、溶け合うように身体を重ねた。けれどこれは侘しい一夜の慰めではないのか。このまま時が流れれば、自分たちは別れなければならない運命なのではないか。少女の胸に微かに哀しみと虚しさが交錯する。この人と同じ道を歩めないのなら、せめて証が欲しい。この人と一夜を共にした証が欲しい。「ザギヴさん、お願い……」「何?」少女はザギヴの細い指を掴んだ。ザギヴの指は細長く、爪は綺麗に伸ばされ、薄紅のマニキュアが丁寧に塗られている。その四本の指を掴んで、それを自分の秘部へとあてがうようにした。「ザギヴさんに……貰って欲しい」ザギヴは少女の望みを理解した。そして困惑したように聞き返した。「初めてなんでしょう?本気なの?あなた将来、誰か素敵な男性と結婚するかも知れないのよ。その時……」「いいの。私、今日のことを忘れたくないの。ザギヴさんに貰って欲しいの。お願い……」「……本当に後悔しないのね?分かったわ」ザギヴは指を少女の秘部に伸ばした。少女の身体は小刻みに震えている。覚悟を決め、自分から言い出したとしても、未知の体験にはやはり恐怖を覚えずにはいられない。ザギヴは少女の恐怖を取り除くように、左手で少女の首を抱いて、少女の頬に自分の頬を押し付けた。少女は脚を開いて、その儀式のために少しでも指を受け入れやすくする。やがて、くちゅり、という水音と共に自分の中にザギヴの指が入ってくるのを感じた。一本――二本。初めての挿入にそこが収縮するのが分かった。しくりと鈍い痛みを感じる。ゆっくりと自分の中を押し広げ、鈍痛と共に彼女の指が入ってくる。「うっ……」「痛い?やめましょうか?」「いいの……続けて」先ほどの行為の名残で、少女のそこは弛緩し、蜜に溢れていた。難なく二本の指が根元まで入れられ、そして三本目が入ってくる。身体の中から熱いものがさらに溢れてくるのを感じる。快感からではなく、自己防衛のためそこは蜜を流し続けている。これ以上進むのは怖い。けれども少女は内心の怯えを隠して、ザギヴの髪に顔を埋め、抱きしめるように首に両腕を回す。ザギヴは少女が抵抗しないのを確認してから四本目の指を入れた。四本の指が少女の膣内を押し広げる。やがて指は狭い場所に侵入を拒まれる。「いいのね?」少女は頷く。ザギヴは注意深く、しかしねじ込むように指を進める。手ごたえがあった――それを貫く。「くうっ……!」少女は呻き声を上げて、ザギヴの首に震える腕を回した。鈍い痛みが走り、何かが自分の中で裂けたと感じた。紛らわすように、ザギヴの口付けが唇に、顔中に降りてくる。少女は痛みの中で何とも言えない満足感が自分を支配するのを感じた。一瞬、意識が遠くなった。
再び目を開けると、ザギヴが心配そうに自分を見つめていた。生臭いような匂いがする。「……大丈夫?」ザギヴの指が見えた。ぬるりとした液体に赤いものが混じって指に纏わりついている。自分の股の内側も何かべとべとした不快な感触を感じる。儀式は終わったのだ。これが最初で最後の経験であろう。「……ありがとう、ザギヴさん」下腹部がずきずきと痛んだが、それよりも喜びの方が大きかった。枕元に置いてあった薄紙でザギヴの血に汚れた指を丁寧に拭いてから、口付けした。「本当に良かったの?後悔していない?」「していない、ありがとう……」契りを交わした、自分はこの人のものになった。それが純粋に嬉しかった。下半身に広がる痛みすら幸せの延長だと思えた。――自分は何でもいいから、大切なものをこの女性に捧げたかったのだ
夜が更けてくる。肌寒い。少女とザギヴはベッドの中で身を寄せ合った。少女は思い切って一番気にかかっていたことをザギヴに問うた。「ザギヴさん、この戦い……すべてが終わったらどうするの?ディンガルに戻る?」「どうかしら……たぶんそうなるわね。ディンガルがまだ私の場所を用意してくれているのなら、私は戻るわ」予想していた答だった。少女は胸が詰まる思いがした。ザギヴが淡々とその言葉を言ったのが、余計に悲しかった。しかし次のザギヴの言葉を聞いて、少女は目を見開き、息を飲んだ。「……あなたも連れていっていい?いいえ、力づくでも連れてゆくわ、ディンガルに」言葉に詰まってしまった少女の頬に軽く口付けてから、ザギヴは続けた。「私はもう闇に怯えたりしない、と言えたらいいのだけれど、今でも一人でいると、時々怖くなるのよ。私が闇に怯える夜には、あなたに傍にいて欲しいの、これからも……私だけの騎士になってくれない?いいえ、騎士なんてお堅いものじゃなくていいのよ、ただ私とこれからも一緒の道を歩いて欲しいの」「嬉しい……すごく……」少女は声を詰まらせた。この女性の傍にいられるのなら、自分はどんな事も恐れない。この女性を守るためならどんな困難な道でも切り開いてゆける。「ザギヴさんはもう、誰にも守られなくても大丈夫よ。だけど、それでも私は、ザギヴさんの傍にいたい……この先もずっと、ザギヴさんを守りたい」「……ありがとう、私の騎士様」ザギヴは微笑んで、手を伸ばし少女の髪に触れた。少女はそのザギヴの手を取って掌に口付けた。掌の温もりに、少女はこれ以上ない至福が自分を包み込むのを感じた。「私は……あなたに永遠の忠誠を誓います」
-終-
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