「言いにくいんだけど僕、パーティを離れるよ……」ナッジは少女に向かって辛そうにそう言った。そして振り返ることなく、その場から立ち去った。「待って……待ってよナッジ!それって、どういうことなのよ!」猫屋敷の前で少女は立ち尽くしたまま、自分の前から立ち去ってゆくコーンスの少年に向かって叫んだ。返答は何も返ってこない。それでも少女は少年の背に向かって叫び続けた。
コーンス族の反乱。獅子帝ネメアの死亡説が流れた後、種族平等の夢が潰えたと考えた将軍ジラークはディンガルに反旗を翻し、コーンスの世界を作るためにアルノートゥンに立て篭もった。コーンスの少年であるナッジもジラークの考えに賛同し、少女のパーティから離脱し、アルノートゥンへ行ったのだと知らされた。少女はアルノートゥンへと向かった。旅の途中、喜びも悲しみも共にした旅の仲間が、こんなにあっさりと自分の前から姿を消してゆくなんて。信じられない。自分はどうしても大切な仲間であるあの少年を取り戻さなくてはならない。
「こんなところで君に会うなんて……」アルノートゥン近くの聖光石の廃鉱で少女はナッジと対峙した。ナッジのその顔からはいつもの柔和さが消えて、きつく思い詰めた影を落している。「ジラーク将軍がコーンス族の世界を作る、その邪魔は誰にもさせない。君と言えども例外じゃないよ」「ナッジ、バカなことはやめて!今までずっと一緒に旅してきたんじゃない、私はコーンスだからと言ってナッジを特別扱いしたことなんかないよ!一緒に……元通り旅を続けて行こうよ!」「人間の君が何を言っても無駄だよ……さあ、僕が相手するよ。聖光石の結晶を使っている今の僕なら君の相手も出来るはずだ」ナッジは少女に向かって何の躊躇もなくスピアを構えた。ああ、こんな理由で戦わなくてはならないのか、かつて一緒に旅をし、笑いあった同胞と。少女は込み上げてくる感情を飲み込んで、剣を構えた。
(そんな、バカな……!ナッジの力がこんなに強いなんて……!)少女の手から愛用の剣が叩き落とされる。バランスを崩しくずおれてゆく少女の身体、その背後からナッジのスピアの柄が首筋を一撃した。ぐらりと視界が揺れる。次の瞬間には、少女は地に倒れ伏して、地面の冷たさを頬に感じていた。「これが聖光石の結晶の力だよ」ナッジの冷たく落ち着いた声が廃鉱の静寂の中にこだまするのを少女は聞いた。「君には……死んでもらわないといけない」信じられない言葉。そんな――自分は、かつての友であるこの少年に殺されるのか。ナッジのスピアが地面を突く硬質な音が聞こえる。少女の頭の中に、この少年との旅の思い出が走馬灯の様に駆け巡った。
「待ちたまえ、ナッジ君」足音と、落ち着いた初老の男のものらしい声がした。「その娘は噂に聞く、無限のソウルを持つ『竜殺し』の娘ではないか?」少女は顔を少し上げて視線を声のする方向に向けた。この場にやって来たその初老の男は白い髭を蓄え、額にはナッジと同じような白い角がある。将軍ジラークだ。ナッジは緊張した面持ちで答えた。「ジラーク将軍……はい、彼女が噂の『竜殺し』です」「それでは、彼女は消すには勿体ない逸材だとは思わないかね?いくら我々に刃向かった敵とは言え、このまま殺すには惜しい」「……どういう事ですか、それは?」「我らがコーンス族の為に彼女の存在を有効利用しようという事だよ。ナッジ君、君は今回の戦いの最高殊勲者だ。こんな秀逸な人材を我らのために手に入れてくれるとは素晴らしい」少女は彼らのやり取りを聞きながら顔色が青ざめてくるのを感じた。自分はどうやら殺されるのではない――しかし、その先に待っているものは何なのか。ジラークは自分をどうするつもりなのか。不吉な胸騒ぎがする。「私に良い考えがある……その娘を運ぶのだ」ナッジと他のコーンスが少女の身体を持ち上げる。顔を布で覆われた――意識が遠くなってゆく。眠気を誘う薬剤が仕込んであるのか。自分がどこかに運ばれてゆくのを感じながら少女の意識は薄らいでいった。
「ここは……?」少女は目を開けた。天井が見えた、四方には壁、きちんとした部屋の中のようだ。清潔なベッドの上に寝かされている。だが、剣とブーツは取り払われたのか見当たらなかった。起き上がろうとして気付いた。身体が動かない。何かに縛られたように指一本動かせない。「ごめん……『束縛の糸』を使わせてもらったよ」ナッジの声が聞こえ、次に顔が見えた。その表情は固く強張っている。「ナッジ、どうして……何をするつもりなの!?」「お目覚めかね?」続いてジラークの声が聞こえた。威圧するような見下すような視線で少女の顔を見下ろしている。「『竜殺し』の娘。我々コーンスは君の存在を歓迎するよ。君は他の無能な人間とは違う、逸材だ。君には他の種族に数で劣るコーンスの種族繁栄に多いに貢献してもらうとするよ」「……どういう事なの!?」「分からないかね。君はコーンスの次の世代に向けて、君の血が流れた優秀なコーンスの子供を多いに産んで貰いたいのだよ。例え人間と言えども他の無能な輩とは違う、無限のソウルたる君の血が流れたコーンスが生まれれば、その血族の優秀なコーンスはきっと種族平等を成しえる。やがて来る次の世代ではバイアシオンを支配できるやもしれぬ」その言葉を聞いて少女は身体ががくがくと震えだすのを感じた。この男は自分を――自分の身体を利用しようとしているのだ。少女の恐れに歪んだ顔を見てジラークは続けた。「はは、心配することはない、何も君に不特定多数のコーンスと交渉を持ってもらおうなどという下賎な考えは私にもない。君の『夫』となる人物はこの戦いの最高殊勲者であるナッジ君、ただ一人だよ。安心したまえ、優秀な人材同士が結ばれてこそ、次の世代を担う強い種族が生まれてくるというものだ」「あ、あなた、正気なの……!?」「不満な事でもあるのというのかね?君はあの時、無残に討ち死にしようとしていた運命ではないか。それを我々に刃向かった人間である君を許し、暖かく迎え入れようとしているのだよ。それにナッジ君と君とは見知らぬ関係というわけでもないのだろう。感謝して我々の選択を受け入れたまえ!」「ナッジ!何とか言ってよ!こんな事って……!」ナッジは少女の訴えを無視して、黙って目を閉じて首を振った。それはどうにもできない拒絶だった。ジラークは怒りに言葉を失った少女の顔を満足したように一瞥すると、踵を返した。「さて、私はこれで失礼させてもらうよ。ディンガルから次に何らかの攻撃が来るだろうからね、それに備えなくてはならない。ナッジ君、彼女は今から君の花嫁だ、大切に扱うのだよ」
ジラークが立ち去った後、少女はナッジと二人、部屋に残された。しばし、重い沈黙が流れる。やがて、ナッジが重い口を開いた。「こんな事はしたくなかった、けれど、こうしないと君は殺されちゃうんだ。ごめんね、僕は君を死なせたくない……だから、言うこと聞いて」ナッジは横たわったままの少女を見下ろした。その顔は青ざめて、それがますます少女の目鼻立ちの美しさを際立たせている。この少女と共に旅をしていて、彼は密かに少女の美しさや青い色香に憧れていた事を改めて感じた。いつの日か彼女に触れたい、知らず知らずのうちに自分はそう思っていたのだ。「ナッジ……本気なの?……嘘だって言ってよ!」少女は動かない身体で必死に訴えた。だが、次の言葉は飲み込まれた。唇をナッジの唇が塞いだのだ。少女にとっては初めての口付け。そのまま何秒か時間が流れる。唇を離してからナッジは囁いた。「僕はジラーク将軍を尊敬してる。将軍の決定には何があっても従う。それにね……僕は前から、君が好きだった」ごくりと少女が唾を飲み込む音がした。少女の白い喉元、僅かに見える胸元は汗で濡れて震えている。微かな甘い色香を匂い立つようだ。「ごめんね、こんな形で告白するとは思わなかった。君を悲しませることは嫌だけれど……これしか君が、そして僕たちが生き残れる道はないんだ」もう一度、口付けが降りてくる。ナッジの温かな唇の感触。唇をぎこちなく舌の先で舐められる。もし、共に旅をしていた時にこの口付けを受けていたら少女は嬉しいと思ったかも知れない。しかし今の状況では、これは恐怖以外の何者でもなかった。
ナッジは少女が寝ているベッドの傍らで、いつも着用している重いローブを脱ぎ捨てた。薄い、木綿の下着姿になる。少女の顔は恐怖と嫌悪で強張った。花嫁というのは都合の良い言い訳にしか過ぎない。自分はこれからこの少年の――一夜の慰みになるのか。「ナッジ、そんな急に、いやだ……!」「ごめん、この部屋から君を置いて黙って出るわけにはいかないんだ。君の身体にはすぐに他のコーンスが検査する。君を……抱かないと僕も裏切り者として処刑されるんだ」ナッジは横たわる少女の首に腕を回した。少女は嫌悪感で表情を固くする。逃れたくとも身体が動かず、ただ首を振ることしか出来なかった。少女の耳元でナッジが囁いた。「すぐに終わるから……安心して」少女の身体と髪からは甘酸っぱい汗の匂いがする。それがナッジの理性を狂わせようとする。憧れていた少女が今、自分の手の中で自分のものになろうとしている。それは罪悪感を伴いながらも抗えない誘惑でもあった。ナッジはベッドに上がり、少女の身体にのし掛かった。ぎしりとベッドが軋む。コーンスである彼の身体は少女の身体より遥かに大きい。例え少女の身体の自由が利いても、この状態では少女は抵抗できないだろう。少女は激しい恐怖感と動悸に胸が押し潰されそうになる。こんな形で、この少年と関係を持つ羽目になるとは。この少年のことは嫌いではなかった、寧ろ彼の持つ優しい心が好きだった、それだから今の状況が余計に悲しく、受け入れられない現実であった。
「ナッジ、いやだよ……離して」ナッジの身体の下の少女は身体を震わせ、蚊の鳴くような声で訴えた。そこにはもうかつてのような『竜殺し』たる堂々とした恐れを知らぬ風情は何処にもない。ナッジの心の中に、徐々に征服欲が頭をもたげてくる。かつてパーティのリーダーとして指示を受けていた憧れていた少女を自由にできる、この機会に我知らず酔いそうになる。ナッジは少女の青ざめた頬に両手を当てて、何度も口付けを落した。髪にも、首筋にも、至る所に口付けを落す。少女は嫌悪と混乱に泣き出しそうに顔を歪める。それさえも今のナッジには征服欲をかき立てる材料にしかならなかった。「ずっと、好きだったんだ……」自分の身体の下で動かない身体を僅かにくねらせて喘ぐ少女の身体から漂う体臭、じかに感じる少女の体温が彼の理性を狂わせてゆく。次第に彼の息が荒くなる。「好きだ、好きだ、君が好きだ……!」譫言のように叫ぶこの少年の精神がだんだんと狂気に陥っていくのに少女は驚愕した。共に旅をしていた時にはいつも冷静に自分の傍にいてくれたこの少年が、今まるで瘧病に掛かった病人のように震えながら自分の身体を貪ろうとしている。ナッジの両手が少女のクロースの胸元を掴んだ。たちまち、胸元がはだけられ、白い胸の谷間が顔を出す。そこにナッジの唇が這う。舌が生き物のようにその上を這い回る。「はぁぁ、やだ、ナッジ、気持ち悪い……!」ぞくぞくする感触が少女の身体を走る。抵抗したくとも、自由の利かぬ身体ではどうすることも出来ない。少女は唯一動く首を必死に振り、叫んだ。「ナッジ、私はナッジを受け入れられない!ナッジをそんな目で見たことなんかなかったもの!だからやめて、お願いだからやめて!」「今になってそんな事を言うの?僕の気持ちが分からない!?僕は君がこんなにも好きなのに!」ナッジは少女の拒絶の言葉を聞き、いつもは冷静な頭にかっと血が上るのを感じた。少女のクロースを持って力任せに引っ張るとそれはびりびりと音を立てて破れた。「ひっ……いやぁっ……!」少女はナッジの豹変ぶりに恐怖の淵に突き落とされ悲鳴を上げた。たちまち、少女のきめの細かい白い素肌が顔を覗かせる。少女の胸部を覆っている白い布、それも力任せに引っ張ると簡単に破れた。形のいい美しい果実のような双丘がふるりと揺れ、桜色の先端がナッジの目前に晒される。初めて見る少女の裸身。長い冒険によってよく引き締まった見事な曲線を描く女性の身体。恐怖におののく少女の気持ちの代弁のように、それは美しく震えている。ナッジの理性は完全に消し飛んだ。何があろうとこの愛しい少女の身体を自分のものにしたいと思った。少女の乳房を掴む、しっとりと掌に吸い付くそれは手の中で面白いように形を変える。強く掴むと少女は飛び上がるように呻いた。「いたいっ……!」発育途上のそこは強すぎる刺激に痛みを走らせる。だが次には掌で優しく捏ね回された。痛みと優しい感触が交互に与えられ、少女は思わず甘い吐息を漏らす。「あっ……く、うんっ……やだっ……」艶っぽいその声がナッジをますます狂わせる。ナッジの身体の中心が痛いほどに熱く熱を持つ。貪るように少女の乳房に唇を当て、先端を吸い、柔らかなそこを甘噛みした。「あっ、ああんっ!」心の中は拒否しているはずなのに、ナッジの舌と掌が這い回る乳房の上、脇腹から伝うくすぐったいような感触がだんだんと甘美なものに変わってゆき、少女は甘い声を上げた。
少女の冒険者に似付かわしくない華奢な身体にナッジの大柄な身体が絡みつく。ベッドが二人分の体重でぎしぎしと軋んだ。「はっ、はっ……やだ、ナッジ……」「君が好きだ、好きだ……」「ああっ!やめてっ、そこは……!」少女は動かせない脚を広げられて、下着の上から秘部を指で撫でられた。途端に、びくっと電流のようなものがそこから走る。次の瞬間には、下着は引きずり下ろされ、脚から引き抜かれていた。いつの間にか火照ってきた少女の秘部に冷たい風が当たるひんやりとした感触がする。「あ、ああ……!」ナッジの指がそこを嬲る。淡く茂った茂みを感触を楽しむように掻き回し、その下の割れ目の中に指が差し入れられる。ぐちゃり――と粘性の音がした。最も感覚の鋭い肉芽に初めて触れられ少女は飛び上がった。ぴりぴりと虫に刺されたような感じがする。「ああ、君のここは、こんなに……ほら」そう言われて、少女は自分のそこからとろとろと蜜が溢れ出していることに気付いた。拒んでいるはずなのに、どうして。少女は羞恥心と自己嫌悪に顔を赤くした。「ああ、ナッジ、見ないで!いや、いや!」不意に下腹部に冷たく硬いものが当たる感触がした。ナッジの角が触れる。そして何かぬるぬるしたものが秘部に触れる。「ひっ!いやだっ、そんなとこ……!」一番敏感な部分を舐め回され、指先で擦られる。緊張に強張っていた身体からみるみる力が抜け、ぐったりとなってしまう。くすぐったいような、それがだんだんと得体のしれない感触になって、少女は初めて感じる感覚に翻弄されて涙をこぼし、嬌声を上げ続けた。
「はっ、はぁっ……」少女はしどけなくも脚をM字に開いたまま、抵抗する気力も失せたように天を向いて喘いでいる。脚の間から、ナッジの唾液と、自分の泉から溢れ出した愛液とが混ざってだらだら溢れ出し、シーツに染みを作っていた。服を脱ぐ気配に少女は顔を上げた。ナッジが下着を脱ぎ捨てている。初めて見る醜悪な男性の器官に少女は思わず息を飲み、恐怖で顔を背けた。あれで何をされるというの。あれで今から自分は掻き回され、壊されてしまうの?恐怖で歯がかたかたと鳴る。股の内側に手を当てられる。ナッジの掌が汗ばんで、小刻みに震えているのを感じる。止める手だてもなく、今以上に脚を広げられる。「ナッジ、いや、お願い!やめて……!」涙に濡れた瞳で必死に訴えても、今やそれは相手の征服欲を返ってかき立てる結果にしかならない事に少女は気付いていなかった。それでもナッジは理性の端で、少女を必要以上に痛がらせたくはないと思った。恐怖か、先ほど与えられた刺激からか、濡れてひくひくと蠢いている少女の泉に指を挿し入れて動かした。すぶずぶと挿し入れられた二本の指は、侵入してきたものに驚いた肉壁に締め上げられる。少女の中は温かく濡れて、きつい。指を伝わり、蜜が流れる。「ああぁ、ナッジ、やめてっ!お願い、いやっ……!」指が動くとねちゃねちゃと水音が響く、少女は羞恥で顔を赤らめる。異物感と初めて挿入されたしくしくとした痛みとで下腹部に熱く重い感触が走る。
ナッジの下で喘ぎながら涙を流している少女は、破られた衣服の間から乳房を覗かせ、脚を開いて秘部を自分の前に露に晒し、そこから粘液を垂れ流し、これ以上ないくらい淫らで扇情的な姿を見せつけている。まるで生贄の山羊のようだ。少年は燃え盛るような獣欲に支配される。もう、行為を止めることはナッジ自身にも不可能だった。先ほどから充血して痛いほど怒張している自身を、少女のそこにあてがった。「……いくよ」「あぁぁ、いやぁぁぁ……!」恐怖におののく少女をそれでも痛がらせないように、なるべくそっと挿入したつもりだったが、その瞬間少女の身体はばね仕掛けのように飛び上がった。「いっ、いっ……たい、いたいっ、ナッジ……!」『束縛の糸』の効き目が薄れてきたのだろうか、少女の身体が動くようだ。上半身を起こして、もがく。未知のもので身体を押し広げられる感覚と痛みで少女は錯乱し、脚を僅かにばたつかせる。「じっとしてて……力抜いて……!」「いやだぁっ、い、たい、いたいっ……!」ずぶずぶと少女の中に自身を埋め込んでゆく。少女の中は熱く、吸い付いてくるようだ。きつい、締め上げられて吸い取られそうな感触。少年の楔はやがて何かに侵入を阻まれる。それを突き破ると、一気に最奥まで自身を進めた。「あぁぁっ、ううっ……!」少女はぼろぼろと涙を流した。破瓜の痛みと純潔を奪われたという現実に打ちのめされて悲鳴さえも出ない。ただ、哀しみと怒りと絶望とが交じり合った感情が涙となってぼろぼろと両目から流れ落ちる。ナッジは少女の脚をもって肩に担ぎ上げた。結合している部分が目に入る。ナッジの自身をいっぱいに広げて銜え込んでいるそこから赤い血が粘液に混じって流れ出している。少年は何とも言えない満足感が胸の内に広がるのを感じて、少女に宣告するように言った。「……ほら、今、君の中に僕がいるんだよ」「ああ……うっ、いやぁっ……」少女はそこを見てさらに涙を流し、いやいやするように首を振った。見たくない、こんなものは見たくない。圧迫感で息が苦しい、しゃくり上げながらはぁはぁと荒い息をした。
――この愛しい少女を壊してしまいたい激しい欲情と自身から伝わる快楽に我を押さえつけられないナッジの腰は律動を始めた。肉と肉とがぶつかり合う音がする。少女の胎内でナッジの楔が引き抜かれそうになり、また突き刺さる。その度に、擦り剥けるような痛みが走る。動きはだんだん早くなり、少女は胎内の痛みと心が引き裂かれる痛みに悲鳴を上げた。「い、たい、いたいよ……あぁ、ナッジ、動かないでっ……!」「ごめん……もう、止められない……!」愛しい少女が目の前で涙を流しているのには微かに胸が痛んだが、自分自身を包み込んでいる少女の媚肉の温かさとそこから伝わる感じたことのない程の快楽に、彼はもう理性も処女への気遣いもなく腰を動かし、少女のそこを目茶苦茶に掻き回した。ぐちゃりぐちゃりと結合部から粘性の音がする。ナッジの律動に合わせて、少女の身体が翻弄される。豊かな乳房が踊るように揺れる。汗と愛液がそこから飛び散りあちこちに染みを作り、ベッドがぎしぎしと悲鳴を上げた。「ああっ!ナッジっ……いやだぁっ!やめてっ!」少女はまだ自由に動かない手足を必死に動かして、逃れようとした。しかしナッジは少女の腰を強く抱きしめて離さない。何度も何度も腰を打ち付けられ、少女の身体は前後に激しく揺さぶられる。不意に、背中に腕を回されて身体を持ち上げられ、膝の上に乗せられた。ずぶりと音がして、結合が深くなり、少女の身体は驚きと痛みに反り返る。ナッジは目の前の少女の身体をしっかりと抱きしめ譫言のように言った。「君が……好きだ……好きだ……!」「いやぁぁぁっ!……離してぇっ!」密着した相手の体温を感じる、ぜいぜいと言う荒い息が聞こえる。少女の見開いた目から涙がぼろぼろこぼれ落ちた。泣き叫んでもがいても身体は自由にならない。結合部から響 くぐちゃぐちゃと言う音。愛液と血が混じりあい、胎内で泡立ち流れ落ちる。圧迫感で息が詰まりそうになる。「はぁっ……や……だぁっ……!」少女の視界は絶望で黒く淀む。暗がりの中でナッジの楔が胎内を抉るたびに、瞼の裏に白い光を明滅させる。頭に鈍痛がずきずきと響く。「はっ、はっ、もぅ……いくよ……!」「や、だぁっ……やめてぇっ……!」少女は最後の力を振り絞ってもがこうとしたが、それが逆にナッジの自身を締め付ける結果となった。泣き叫ぶ少女の声さえも甘い。欲望のままに己の中に詰まった劣情を一気に少女の中に放出した。「う、ああぁっ、やだぁ……っ!」少女は身体の中に熱いものが広がる感触を覚えた。自分の身体の中で何かが――恐らく子宮――が収縮するのがはっきり分かった。胸が引き裂かれるような絶望と、身体の中が白く塗り潰されるような錯覚に、ゆるゆると気が遠くなってゆく。
どくんどくんと響くお互いの鼓動の反響のように、少年は最後の一滴まで己の劣情を少女の胎内に注ぎ込んだ。あまりの快感に頭の中が真っ白になる。しばらくそのまま、その余韻を楽しむように彼は少女の震え喘ぐ身体を抱きしめていたが、ようやく我に帰り、そっと少女の身体をベッドに横たえた。少年の自身が引き抜かれると少女の泉からごぼりと音を立てて血の混じった白濁液が流れ出した。少女は泣き出しそうに痛みの余韻とその感触に顔をしかめる。しかし、打ちのめされた少女は起き上がる気力もなく、ベッドに仰向いたまま、天井を焦点の合わない涙で 濡れた目で見上げていた。
やがて少女は身体を起こした。その身体は胸の内から溢れる感情で激しく震えている。ナッジは気遣うように少女の肩を抱こうとした。しかし、少女はそれを振り払った。「触らないで!ナッジのばかっ……私は、ナッジを、信じていたのに……うわあああぁぁぁっ!」少女は堰を切ったように顔を覆い、激しく泣き出した。紅潮した頬に、止めどなく涙の跡が筋を作る。裏切られた、傷付けられた、信じていたこの少年に。「泣かないで、お願いだよ……泣かないで」「ナッジなんか……あっちへ行ってよ、ナッジなんかっ!」「じゃあ、そのままで聞いて」ナッジは少女の傍らに腰掛けて語り始めた。「ジラーク将軍の野望だよ。コーンスの王国が作られるんだ、ドワーフ王国の様にね。君はもう、危険な戦争も旅も続けなくていい、王国が作られれば、僕たちコーンスと暮らすんだ。王国の玉座に座るのは君だ、君は王国のお姫さまになるんだ」「うっ……ひくっ……」「君は僕の子供を産む。僕たちの子供はこの王国で愛されて幸せに育つ……種族平等のために、やがて来る次の世代のために」「そんな事、そんな事出来るわけないじゃない!私にはやらなきゃならない事がまだいっぱいあるのに!」少女は痛みに疼く頭の中で思いだしていた、旅の他の仲間達。ロストールの、ディンガルの大切な人たち。時限の狭間に落ちたネメア。そして自分を中心に回り続けている運命の歯車。その歯車をこんなところで停止させられるなんて。――隔離王国の中の王子と姫。篭の中に囚われた番いの鳥。子供を産み続ける女王蟻。そんな単語がぐるぐると少女の頭の中を回る。ナッジは落ち着いた、しかし冷酷な声で続けた。「誰が君を取り返しに来ても、僕は君を離さない。君はもう、僕のものなんだから。そしてコーンスの王国のものなんだから」少女は不意に部屋の外に遠くから響く爆撃音を聞き、はっとした。ナッジは冷静に言葉を続けた。「ディンガルが来たんだね。けれど、アルノートゥンは陥とせないよ。聖光石の力がある限り、誰にもジラーク将軍の邪魔は出来ない。誰が襲ってきたところで、反撃されるだけさ……コーンスを今まで虐げて、角を奪った人間たち、思い知ればいいんだよ、コーンスの今までの哀しみ、苦しみを」ナッジの言葉に氷のような冷酷さを感じた少女はぞっとして、自分の肩を抱いた。この場から一刻も早く逃げ出したいと思った。しかしそんな少女の心のうちを読んだのか、ナッジは少女に優しく微笑みかけた――まるで以前一緒に旅をしていた時のように。「僕と一緒に生きてゆこう、僕たちと一緒に、新しい世界を作っていこう」少女は自分の道が閉ざされたことを悟った。長い旅の強引な完結は、少年の残酷なほどに優しい微笑みだった。
-終-
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