エンシャント国内に建つ魔道の塔――かつては恐ろしい闇の魔物が跋扈したこの塔も、今は何者かの手によって静粛が行われたようにしんと静まり返り、静寂に包まれている。その塔の地下最終階にある広い一室。揺らめくことのない青い光を放つ燭台の蝋燭。部屋の中央の粗末な褥に横たわる一組の若い男と女。長い黒髪をした、屈強な若い男。その端正な顔立ちには、どこか狂気めいた禍々しい威圧感を漂わせて。その顔には見覚えのある者も多いだろう、かつてはディンガル宰相として名を馳せていた男の顔だ。その男の腕に抱かれて、一人の少女が目を閉じている。かつてこの大陸の闇との戦いの際、英雄と呼ばれた少女だ。彼女のその、まだあどけなさを残した愛らしい顔には深い苦悩と憔悴の色が色濃く刻まれている。
少女は浅い夢の中で思いだしていた、約束を違えずにこの男の許へ行った日のことを。この世を統べる竜王を倒せば、この男の精神は解放してやるとそう約束したのだ。少女が愛した男、ディンガル宰相ベルゼーヴァの身体を支配し操る奢れる王シャロームと。「竜王を倒せば、本当にあの人を返してくれるのね?」「そうだ。人類を縛る神代の遺物……竜王。人類の革新を成しえるには邪魔者でしかない。竜王を倒せるのは、愛しいお前だけだ。さぁ、共に人類の革新の為、この神代の遺物を始末するのだ」少女は男の語る革新などには興味はなかった。ただ、愛する男の精神を取り戻したい、それだけのために男の言葉に従った。
あっけなくこの世を統べる竜王は死んだ。響き渡る彷徨。少女が倒した。
「さあ約束よ。あの人の……ベルゼーヴァ様の魂を返して」竜王の骸を前にして男はさも満足そうに、見下すような目つきで少女を見た。その眼差しはまるで鼠をいたぶる猫のように残酷で楽しげな光を帯びていた。「約束?フフ……そして余はまた魔道の塔で吊られていればいいとでも思ったのか?そう簡単に事が運ぶと思ったか?」「何ですって!?」「余がおとなしく我が息子の精神を解放するとでも思ったか?人類の革新を何だと思っている。竜王を倒しただけでは、人類の革新を成したとは言えぬ。超人類である余と可愛いお前の子供こそが人類の革新を担う逸材……お前は余と結ばれ、余の子を成すのだ。さぁ、早く余の子を成せ、可愛い革新の鉄槌よ」少女は青ざめて目の前に立つ男の顔を見上げた。唇がわなわなと震える。「ひ、卑怯者っ!騙すなんてっ!」男はこの上もなく嗜虐的な笑みをその端正な顔に湛え、少女の顎に手を添えた。「何とでも言うが良い。余が憎いか?余を倒したいか?だが余に斬りかかればお前が愛している余の息子の体も傷付き、死に至るぞ。余の子を成し、次にはすべての愚民を屠るのだ。それまではこの身体は解放せぬ」「そんな……なんて……酷い……」――愚かなり、愚かなり。あの時の竜王の断末魔の叫びが少女の耳元で甦った。
気がつけば魔道の塔の一室に瞬間移動されていた。青い蝋燭の炎。この男、シャロームがかつて壁に吊られていた部屋だ。「あ……」その時は既に、少女は目の前の男に二本の剣を突きつけられていた。そのディンガルの堅苦しい制服姿も、ダブルブレードを使いこなす腕も、少女が愛した男となんら変わらないのに――。少女の足が竦んだのを見て、男はにやりと笑って剣を下ろした。「さあ、大人しく言うことを聞けば可愛いお前を傷付けることはない。覚悟を決めて余を受け入れよ」「いや!いやだ!」少女は逃げようとした。男は不敵な笑みを浮かべて近付く。「何を嫌がることがある。余の身体はお前の愛した男のもの。愛した男の身体に抱かれるのなら、お前も本望というものではないのか」「違う!あなたはベルゼーヴァ様じゃない!……ベルゼーヴァ様はこんな酷い事はしない!」少女は必死にかぶりを振って叫んだ。だが、次には両肩をがっちりと掴まれ、少女の赤く熟れた唇に男が唇を押し当てた。初めての口付け。愛していた男であって、そうでない男にされた口付け。男の舌が唇を、歯列を割って入ってくる。抵抗も出来ぬままに口の中を隈無く舌で蹂躙され、一瞬、意識が遠くなる。唇が離れ、お互いの唇から光る糸が伝う。男は笑みを湛えたまま少女に命令した。「愛しい革新の申し子よ、大人しく余を受け入れよ」少女は混乱しぐるぐる回る意識の中で、ベルゼーヴァの事を思いだしていた。
ベルゼーヴァ――ネメアにしか心を開かなかったディンガル宰相――
少女は一介の冒険者である頃に、ディンガル宰相である男、ベルゼーヴァに唐突に執務室に招かれた。「無限のソウルである君自身に興味があるのだ」そう言われて、少女は純粋に嬉しかったのを覚えている。執務室で出された紅茶を飲みながら、少女はベルゼーヴァと話をした。無限のソウルの事。禁呪と呼ばれる魔法の事。そしてベルゼーヴァの数奇な生い立ち。ベルゼーヴァもまた、ディンガル宰相という肩書きを飛び越えて親しげに話すこの少女の存在が気になっていたのだろう。聞けば敵国のロストールの貴族も自国のディンガルの者の中にもこの少女と親しくしている者がいるそうではないか。無限のソウルの持ち主と言うだけではない、この少女には何か人を惹きつける不思議な力を持っている。「ベルゼーヴァ様はお父さんのシャロームが嫌いなの?」ある日唐突に少女が聞いた。ベルゼーヴァはその名前を聞いて顔をしかめた。「あの男を父親などとは呼びたくない。あの男は自分の思い通りに動かせる道具として、私の生みの親を利用して自分の子供を成しただけだ……親に愛されて育った君には私の気持ちは分かるまい」ベルゼーヴァは軽蔑を込めてシャロームの事を話した。ベルゼーヴァの育ての親ゾフォル、義理の父親バロル、彼を取り巻く者はすべて闇の世界に属した者達ばかり。「私は闇に囲まれて育った。闇の世界からの誘惑は常にあった……ネメア様と出会わなければ、今の私は存在しない。私は闇に飲まれていただろう」「……だからネメア様の事が好きなのね、ベルゼーヴァ様は」少女は大きな目を輝かせて無邪気に感想を述べた。ベルゼーヴァは少女の言葉を聞いて少し呆れように冷笑した。「ネメア様は闇に落ちた父、バロルを倒した。……それ以来、私はネメア様を目指した。ネメア様は私を闇の世界への誘惑から救った恩人でもあるのだ」ネメアの事を話す時だけ、ベルゼーヴァの鋭い眼光が優しい光を帯びる。そのことに気付いた少女はいつしか、ベルゼーヴァの冷たい端正な横顔を見つめるようになった。それが目的で、足しげくエンシャントの執務室に足を運ぶようになった。
ネメアが時限の狭間に落ちた後、エンシャントのソウルリープが起きた。闇が、強大なる破壊神を復活させるために。少女とベルゼーヴァはソウルリープの罠に陥ろうとした。その時、奢れる王シャロームはベルゼーヴァに取引を持ちかけたのだ。肉体を貸せば、無限のソウルである少女を助ける、と。「ベルゼーヴァ様!シャロームを受け入れてはだめ!私と一緒に逃げよう!」「そう簡単にこのソウルリープから逃げられるものか、人類の革新のためには君さえ助かればそれで良いのだ。私は完全にあの男に食い潰されることはない。いつか必ず反旗を翻す、その日まではあの男の思い通りにさせておくが良い。君はここから逃げるのだ」ベルゼーヴァは、身を挺して少女を助けたのだ。シャロームとの取引に従い、少女を逃がし、自分はシャロームの魂を受け入れた。その時に少女は気付いた。自分は深くベルゼーヴァを愛していたことを。傍にいた大切なものが失われてしまったことを。
――私は、あなたの氷の心を溶かす炎になりたかった。ネメアしか見つめていないあなたに憧れていた。
「何を考えているのだ?余の可愛い革新の鉄槌よ。おおかた、余の息子のことを未練たらしく考えていたのだろう」少女は男に顎に手を当てられ、そう言われた。なんという酷薄な目つきだろう。「お前は余から逃げることは出来ぬ。余はその気になればこの身体を破壊することも出来る。お前はそれに耐えられるか?お前の愛した男の身体が――」「やめて!」少女は叫んだ。考えたくない。愛した人が自分のために破滅させられてしまう、そんな事は考えたくない。男はさらに酷薄な笑みを広げた。「愛などというくだらぬ感情に囚われているとは、お前も愚かなものだな。大人しく余を受け入れるが良い……お前はかけがえのない存在だ、悪いようにはせぬ」少女はうなだれた。自分は逃げられない。この男がどんなに憎くても逃げられない。がっちりと身体を抱きしめられた。男の胸に抱かれる。自分を抱いているのは愛していた男の姿と何も変わらないのに、全く喜びは感じない。ぞわぞわと小さな虫が全身を這うように、身体中が総毛立つ。頬に唇を当てられ、それが耳に移動する。ぴちゃぴちゃと響く水音、耳の中を舐められる。「あぁ……」全身を走り回るおぞましい感触。跳ね除けたい。だが、男が自分を抱いている力は強すぎる。男の手が自分の上半身を撫で回している。服の上からでも初めて受ける愛撫は不快で、そこにどこかやるせないような甘美な感触が混じっている。顔を上げられ、再び口付けされた。口の中を男の舌が舐め回す。歯茎を、上顎を舌が侵してゆく。水音が耳に響く。少女は全身から力が抜けたように、がくりと膝を突いた。
床に蹲ったまま荒い息をし、眩暈を堪えている少女は不意に後ろから抱きすくめられた。胸を荒々しく揉みしだかれる。「あ、いやっ……!」少女は初めての感触に我知らず甘い声を上げた。前のボタンが外され、胸元を広げられる。男の掌が滑り込み、下着の上から激しく乳房を揉まれた。「い、痛っ……!」「お前はまだ、男の肌を知らぬのか?」少女は顔を歪めた。その通りだ。男は下卑た笑みを浮かべながら、少女の乳房を弄ぶ。下着を外され、開いた胸元から引きずり出された。男ははだけた少女の胸元に手を入れ、乳房を強く揉みしだき、勃ってきた先端を指先でこねくり回した。「あっ、ああっ……いやぁっ……あんっ……」「フフ、快い声を聞かせてくれるものだな」少女は乳房の先端から伝わるもどかしくも甘い感覚に全身の力が抜けた。憎いと思っている男、けれどその外見は愛した男のものだ。自分の身体を弄るその手は、愛した男のものだ。それを考えると自分の意思に反してぞくぞくするような快感が背筋を走り抜ける。少女は知らず知らずのうちに自分の身体の芯が燃えるような熱を持ってくるのを感じた。
背後から手を伸ばされ、ベルトを外された。あっと思う間もなく、上着がたくしあげられる。「やだっ……やめてっ……」少女はもがいたが、男の手の力は強かった。見る間に少女は上着を剥ぎ取られ、下着とブーツだけの姿にされた。男の目に裸体を晒してしまった恥ずかしさに少女は赤面し、手から逃れようとする。年齢の割には大きく育った白い乳房がふるふると揺れる。青い蝋燭の炎に照らされて、少女の白い肌は輝くように妖艶な光を放つ。背後からがっしりと抱きすくめられて膝を立てた状態で脚を開かされる。その間を指で撫でられて、少女は悲鳴を上げた。「や、やっ!」脚に脚を絡ませられ、閉じることが出来ない。男の指が下着の上から敏感な部分を往復する。途端に、身体が跳ねるような痺れるような感覚が脊髄を走り抜ける。湿った音がするのが少女にも聞こえた。「お前の身体は正直なものだな……余の指が欲しいと言っておるぞ」「そんな……こと、ないっ……あ、ああんっ」男の手が下着を引きずり下ろす。淡く茂った茂みを撫で回し、淡い紅色に色づくスリットの中に指を差し入れた。割れ目の中を男の指が上下する。「ああっ、いやっ……やめてっ……」初めて味わう感覚に、身体の芯はますます熱くなり、何かが身体の中から溢れ出す。男の指が自分の中心に挿し入れられる。中を激しく掻き回す。くちゅくちゅ――と音がする。「い、いやあぁっ……やめ、て……っ、あんっ……」「フ、これでも嫌だと言うのか?お前の身体は悦んでいるぞ」男の指がそこから抜かれると、そこから生暖かいものが股を伝うのが自分でも分かった。男が指を自分の眼前につきだして見せた。それはぬるりと光る粘液で濡れている。羞恥心で顔がかっと熱くなった。男はにやりと笑うと、再び背後から少女の身体を抱きしめ、乳房を揉みしだく。この少女は乳房の愛撫に弱いことを男はもう見抜いていた。すっかり固く尖った先端を指で埋没させたり、背後から首筋や肩を甘く噛み、赤い痕を残す。少女は乳房から全身に伝わる甘い恍惚感に身体を起こしていられなくなり、床に四つんばいになって犬のように喘いだ。
男は壮絶に残酷な笑みを湛えて、這いつくばる裸の少女を見下ろしていた。少女は目の前の男の下半身を覆う着衣が下げられるのを見て、顔を上げる。少女の目の前には初めて見る男の男性自身があった。ぬめりを帯びていきり立つそれを見て、少女は嫌悪と驚愕とで顔を背けようとした。「見るのは初めてか?」男は下卑た様子で訊ねるだ。少女は顔をしかめ、男の手を振り払おうとしたが、頭を掴まれまた顔を上げられる。「口を開けよ……開けるのだ」少女は歯を食いしばった。しかし上から腕が伸び、強引に口を、歯をこじ開けられる。あっと思う間もなく、醜悪なそれが口の中に押し込まれる。むせ返るような性臭がした。「うっ……ぐぅっ……」少女は驚いてぎゅっと目を閉じた。頭を引いて吐きだそうとするが、男の手ががっしりと頭を掴んで押さえ付けている。動かせない口の中に、それが奥へと押し込まれる。「歯を立てるな、立てると承知せぬぞ」男が上から命令した。少女の僅かに濡れた紅色の唇が男の醜悪な男性器を銜え込んでいる姿はこの上もなく淫らで、それが男の征服欲をさらに刺激する。少女は口の中でその醜悪なものが大きさと硬さを増してゆくのに驚愕しながら、それでも首を振り、舌でそれを押し返そうとした。だが、それがかえって男を悦ばせる結果になることには少女は気がつかない。涙の溜まった目で上目遣いに男の顔を見ると、男はこの上もなく満足げな顔で少女を見下ろしている。押し込まれる、奥へ、奥へと。咽が詰まる。息が苦しい。無理に大きく口を開けようとして、ずるりと卑猥な音がした。男は少女を苦しめるようにそれを咽の奥に突き上げる。無理にそれを出し入れさせ、扱くように口内を蹂躙し尽くす。少女はえづきそうになるのを堪える。唇の端から唾液がぽたぽたと流れ落ちる。やがて、口の中のものがさらに大きく熱くなったかと思うと、咽の奥に熱いものが広がった。舌の上に生臭い味が広がる。驚いた少女は咽せ、えづいたが、男は少女を解放しなかった。「飲み干せ、すべて飲むのだ」口をまだ塞がれているので吐きだすことも出来ない。少女は咽の奥に注がれた男の精をえづきながら何度かに分けて飲み込んだ。気持ちが悪い。初めての経験に屈辱と苦痛で涙がこぼれた。男は満足げにずるりと萎えたそれを少女の口から引きずり出す、むせ返る少女の唇から白い液の混ざった唾液が糸を引き流れ落ちた。
床に蹲ったまま荒い息をし、吐き気を堪えている少女の肩を男は掴んだ。そして硬い地面へと少女の身体を押し倒す。少女はふらつく頭で、両手を上げて抵抗しようとしたが、上から激しく乳房を揉みしだかれ、身体中の力が抜けてしまう。股の内側に手を当てられ、広げられた。屈辱的な姿勢に少女は目を開けていられない。自分の一番見られたくない箇所が相手の眼前に晒されてしまう。男の自身は、少女の赤く色づき、ひくひくと蠢き蜜を垂れ流すその部分を目にしてまた強くいきり立った。「いやだぁっ……離してっ……!」少女はもがいたが、それはただ男の嗜虐心を刺激するだけの結果にしかならない。男は少女の股の内側に舌を這わせた。敏感な部分への愛撫に少女の身体はびくんとのけ反る。舌はそのまま少女の蜜を滴らせる泉へと這った。「や、ああっ、やめ……そんな、ん……く、うんっ」男の巧みな舌遣いに、そこが再び熱を持ち、潤い始める。ぴちゃぴちゃと立つ卑猥な音に少女は耳を疑い、混乱する。赤く膨れた肉芽を舌で弄ばれて、身体を捩りたくなるようなどうしようもない快感が身体を支配し、その下の泉から蜜を溢れさせる。そこが充分なほど濡れそぼったのを見計らうと、男は屹立する自身をまだ誰も迎え入れたことのない一気に少女の泉に挿し入れた。「いた、いっ……いやあぁぁっっ!」焼けつくような感覚が身体の中心から全身を貫く。少女のぎゅっと閉じた目の縁から涙をが流れ落ちた。何かが身体の奥で引き裂かれる。男は自分の脚の上にのし掛かり、強制的に脚を広げさせている。目を開くと、男の屹立した忌まわしいものが自分の中心に突き立てられているのが見え、動かせない身体が激痛と恐怖でがくがくと震えた。「ええい、もっと力を抜け」男は手を伸ばして、結合部の上の少女の震える敏感な肉芽に指の腹を押し当て、それをぐりぐりと押し込んだ。「やっ……あん、ああんっ!」飛び上げるような感覚がそこから生まれ、次に少女の身体はぐったりと弛緩する。少女の身体の力が抜けたのを見計らって、男は男性自身を少女の最奥まで突き立てた。膣口から、赤い純潔の証が愛液に混ざりとろとろと流れ落ちる。痛みと衝撃とで少女の見開いた目から涙がぼろぼろこぼれた。
「どうだ、余のものになった感想は?」「あ、ああ……や、だ……っ」少女は首を振った。痛みと悲しみとで頭の中が掻き回される。男は笑っている、自分の自身を締め付ける少女の媚肉の感触を楽しみながら、快感と征服感に酔ったように。苦しい、痛い、身体が広げられ、心の中まで裂けてしまいそうだ。男の腰が律動を始める。少女の胎内に刺さった男の楔が抜かれそうになり、また突き刺さる。焼けるように痛みがその度に下腹部から身体を走り抜け、少女は悲鳴を上げた。「や、やぁっ、やめ、て……そんなに、しないで……く、ああっ……」ぐちゅぐちゅと結合部から粘性の音がする。肉と肉がぶつかりあうぱんぱんという音が響く。脚を限界まで広げられて、結合部だけでなく身体中が軋み痛んだ。苦痛に歪む少女の顔を男は楽しげに見ていたが、不意に少女の背中に手を回して少女の身体を抱き上げ、座位の体勢をとった。少女の大きな乳房が男の胸に押し当てられ、卑猥な形に押し潰される。男の体温と荒い息を間近で感じた。男が腰を打ち付ける度に、少女のたわわな乳房が踊る。少女は男に抱かれたまま身体を反らす、ゆさゆさと揺れる上を向いた形の良い乳房の先端に男は食らい付き、歯を立てた。「い、いやぁっ……あ、ああっ……うんっ……」少女は口を開けたまま、首を振り言葉にならない声をあげた。髪の毛が踊るようにばさばさと乱れ、開いたままの口の端から涎が流れ落ちる。
男は瞳に飢えた獣のような色を浮かべて笑った。少女の心のうちを見抜いたように。「名を呼びたいか?呼んでも良いぞ、お前の愛した男の名前を」身体が前のめりになり、倒れる。男の顔が自分の顔に近付き、触れる。好きだった、憧れていた男の顔が目の前にある。男は少女の腰を持って激しく揺さぶった。深く結合し、陰核が男の恥骨に擦られ、痺れるように甘い感覚が身体中を駆け巡る。身体がぶるぶると震えた。恐れと痛みがだんだんと恍惚に飲み込まれてゆく。「ああっ……ベルゼーヴァさまっ……!」少女は叫んだ、愛しい男の名前を。触れる頬に、男の舌が這う。流れる涙を男の舌が舐め回す。ぬるぬるする舌の感触。ぺちゃぺちゃという水音が耳に響く。「ベルゼーヴァ、さま……あぁ、ベルゼーヴァさまぁ……!」痛みと悲しみとそして経験したことのない快感に少女は我を忘れて愛しい男の名を呼んだ。自分を抱いているのは愛した男ではないのに、愛した男に抱かれている錯覚に陥る。少女は憎しみも忘れて男の首に縋り付いた。陶酔と絶望が胸の内を交錯し、狂ってしまいそうだった。男は笑いながらさらに少女の腰を持って激しく揺さぶる。乳房の先端も、膨れた陰核も男の身体に密着し、擦られて、快美感に頭の芯が蕩けそうだった。下から男が激しく自身を突き上げるたびに、身体の中を抉られ、頭の中に赤い火花が飛び散った。思考能力が打ち砕かれ、何も考えられない。男は激しく下から突き上げながら、少女の腰に、背中に爪を立てた。終わりは近い。泣き叫ぶ少女の身体を揺さぶり、そのまま床に押し倒して、両の掌を握る。それを身体の前で交差させ強く両手を引っ張った。「ひっ……!い、いやぁっ……あ、あんっ……!」結合が一気に深くなり、ぐちゅりと音がした。腰を激しくグラインドさせ少女の胎内を激しく掻き回した。血の混じった愛液が飛び散り、床に飛沫を散らす。「あぁ、いやぁぁぁ……も、もう、だめ……やめてえっ……!」開かれた脚の付け根が痛い、ぎしぎしと身体が軋み、悲鳴を上げる。尿意に似た感覚が激痛に入り交じり、脳の奥で白く弾ける。ふっと身体が持ち上がるような感じがして、そのまますっと意識が遠くなった。少女の視界が暗闇で覆われる。それと同時に少女の身体の中に、どくどくと男の欲望が迸る。数回にわたって迸るそれは満ち潮のように少女の胎内に広がり、吸い取られた。最後の一滴まで少女の胎内に己の欲望を注ぎ込んだ男は、征服し尽くされてただしゃくり上げながら涙を流す少女の顔を見、満足そうに少女の胎内から萎えた自身を引きずり出した。
男が身体を離した後も、少女は焦点の定まらぬ目で天井をぼんやりと見ていた。すべては終わったのだ。こめかみと脚の間がずきずき痛む。涙で天井がぼんやりと霞んで見える。何かが身体の中から溢れてくる感触がし、不快だった。放心状態のまま動けない少女に向かってその酷薄な男は冷たく言い放った。「お前は余のものだ。余だけの愛しい革新の鉄槌だ、忘れるな」
それから、何度目の昼と夜を迎えたのか。幾度となくシャロームに身体を犯され、魔道の塔に閉じこめられている現状ではそれさえも分からない。冷たい褥の中で、今や自分の身体と心を完全に支配しているこの男の腕に抱かれている。少女が疲労困憊して眠っている間に男は食物を手に入れてきて少女に与えるのだ。少女は半ば流し込むようにそれを食べるが、味はほとんど分からない。その後に待つのは、終わりのないような陵辱。それが繰り返されて、時が流れる。時が流れるにつれ、身も心も傷付き磨り減り、抵抗しようとする気力さえも失われてゆく。この邪悪な男は少女の心も身体をも操り、服従させようとしている。
――愚かなり、愚かなり。浅い夢の中でまた、あの竜王の彷徨が耳の奥に甦ってくる。風の便りに聞いた。ネメアはバイアシオンを離れ、新天地に旅立ったと。ベルゼーヴァが唯一心を開いていた相手、ネメア。彼がいれば、この地獄のような日々に終止符を打ってくれるかもしれない。けれども、ネメアはここにいない。――お前さえいれば、事は足りたのだ。男に言われた言葉を思いだす。自分はこのままでは、シャロームの都合のいい道具と成り下がってしまう。自分はやがて男の子を孕み、産むだろう。抗うことも出来ず、その次は、男の言われるままに人々を殺め――不意にベルゼーヴァの事を思いだした。彼が今ここにいたら、自分のこのていたらくを何と言うだろうか。――君は人類の革新への無限の可能性を秘めている。その君が何と言う有り様か。失望させられたよ。耳元でそう言われた気がしてはっと我に帰った。ベルゼーヴァが今ここにいたら――あの時のように身を挺しても自分を逃がすのではないか。――いつか反旗を翻す。ベルゼーヴァは確かにそう言った。けれどその日はこのまま待っていて訪れるのだろうか。その日が訪れるまでに、恐らく自分はシャロームの子を宿すだろう。人類の革新――それはシャロームもベルゼーヴァも常々口にしてたこと。しかし、その方向性は全く違うものだ。ベルゼーヴァが望んだ人類の革新とは具体的にはどういうものかは少女自身にも分からない。ただ一つ言えることはこのままシャロームの奴隷と化すことだけはベルゼーヴァは望んでいないということだ。――ここにいてはいけない。逃げなくては、どこか遠くへ。
男は今、部屋にいない。先ほど自分が眠りに就いた際に外へ瞬間移動したようだ。今しかない。褥から起き上がり、そっと枕元に脱ぎ捨てていた衣服に袖を通した。ずっと床に放り出したままであった剣を腰に携える。そして部屋の出口へと走り出しそうとした。「何処へ行くつもりだ」不意にそう呼ばれた。振り返ると男がいた。少女は目の前の男の顔を見た。黒髪は長く乱れて顔に振りかかり、彫刻のように端正な顔には狂気のような禍々しい気が纏わりついている。少女は思いだした。かつてこの魔道の塔の壁に吊られていた奢れる王の姿を。今目の前にいる男の顔は、もはや自分が愛していた男ベルゼーヴァの顔ではない。この男の顔はあの時見たシャロームの顔そのものだ。男は乱れる黒髪をかき上げ、愉快そうに目を光らせている。「逃げる気か?余に愛想を尽かしたか?フフ……だがそう簡単に愛しいお前を手放せるものか」がっちりと腕を掴まれ、そのまま褥に再び引きずり込まれようとする。「離してっ!離してよ!……私はもう、あなたの自由にはならないわ!」少女は男の手を振りほどき、腰から剣を抜いた。破邪の剣――聖属性の剣。剣がありながら、今までこの男と戦うことは出来なかった。弱みを握られた自分には剣を振るう力がなかった。けれども今なら戦える。「余に剣を向ける気か。だが愛しい男の身体を傷付ける事がお前に出来るのか?」「あなたの革新なんて私には興味がない!あの人は……ベルゼーヴァ様は私がこうなる事を望んではいない!」「面白い、やってみるが良い」男は携えていたダブルブレードを構え、瞬く間に一刀目を振り下ろした。空気が鋭く切り裂かれる音。少女はそれをかろうじてかわしたが、切られた髪の毛が数本、宙を待った。爛れた生活で脚が萎え、身体が重い。それでも少女は伊達に『竜殺し』の通り名で呼ばれていたわけではなかった。男の二刀目は少女の剣で弾かれた。少女の頭に逡巡がよぎる。――殺せない、けれど、急所を外せば。「……ベルゼーヴァ様、許して!」少女はそう叫びながら、男の肩に剣を振り下ろした。ざっと赤い花びらのように鮮血が飛び散り、男は一瞬怯んだ。
少女はその隙をついて部屋の扉の方へと走った。逃げなくては。だが、扉を目前にした時、男が目の前にいた。瞬間移動したらしい。斬られた肩から流血し、ざんばらに乱れた黒髪の下からぎらぎら光る残酷な目で少女を見据えながら男は言った。「逃がさぬ、余の愛しい革新の鉄槌、決して……」「黙れ、金蝿の王シャローム……その娘にそれ以上触れるな」不意に男の咽から二つの声が同時に発せられる。少女は耳を疑った。その話し方はまさしき、愛していた男のもの――「ベルゼーヴァ!?ベルゼーヴァ様!?」男はその名前を聞いて苦しそうに、だが穏やかに僅かに微笑んだ。男の手から、握っている剣が滑り落ちる。その顔からは先ほどまでの狂気めいた雰囲気が消え去っていた。「やっと私が反旗を翻せる時が来たよ、君はもっと早くこうすべきだったのだ……時間がない、早くこの男に、シャロームにとどめを刺すのだ……」「黙れ、我が息子よ……この娘をみすみす逃がせるものか……」「……私の身体が傷付けられたことで、私の意識は戻ってきた。君の持つ『破邪の剣』……それでシャロームを滅ぼすことが出来る。さぁ時間がない、早く……私の意識が消え去る前に……」「そんな、そんな事出来ない!」男の咽から発せられる二つの声を聞きながら少女は叫んだ。自分はシャロームから逃れたいと思っただけだ。だが、ベルゼーヴァは自分を殺せと言っているのだ。そんな哀しい結末は望んではいない。「おのれ、我が息子よ、余の邪魔をするとは……」目の前の男は髪を振り乱しながら少女の首をめがけて両手を伸ばした。首にがっちり両手が食らい付く。すんでのところで少女はそれを振り払った。男の顔を狂気が支配し、また消えてゆく。二つの人格が男の身体の中で戦っている。男は声を振り絞るように叫んだ。「……早く、傷が癒えれば私はこの男を押さえられなくなる。早くするのだ!」「あああぁぁぁっ!」半ば訳も分からぬままに、少女はベルゼーヴァの言葉に後押しされるように、目の前の男の胸に破邪の剣を突き立てていた。
男の胸から赤い血潮が迸る。ディンガルの制服が瞬く間にどす黒く染まってゆく。男の唇から赤い血飛沫が飛び散った。「ぐはぁっ……!おのれ……!我が革新は水泡と潰えるか……だが、余だけでは死なぬ。お前の愛したベルゼーヴァも道連れだ……悔やむが良い……」男は地面に蹲るように膝を突いた。返り血が少女の頬を染める。少女はそこでやっと我に帰ったように剣を取り落とし、目の前の男の許に駆け寄った。男は顔を上げた。その先ほどまで狂気と殺意に充ち満ちていた瞳からは険が消え、穏やかな光を宿している。少女はそこで張りつめた糸が切れたように悲鳴を上げた。「ベルゼーヴァ様!あぁぁ、許して!……死なないで!」「謝ることはない、こうしなければ私の魂は解放されなかったのだろう。奴は……シャロームは死ぬ。私の肉体が滅びれば、奴も死ぬ、もう君を縛るものはない。君は……生きるのだ。私が目指す人類の革新への世界を築くのだ」「うわぁぁぁっ!」少女の目から涙が迸った。少女はとっさにシャロームによって手にした究極呪文、ユニオンスペルのリーインカネートを唱えようとした。戦闘不能から自動回復する呪文――これを唱えればこの男の肉体は助かるかも知れない。しかし、目の前の男は血を吐きながら少女に命令した。「駄目だ、その呪文を唱えるな。私の肉体が助ければ、奴も、シャロームもまた私の魂を支配する……奴を滅ぼすには、私の肉体が滅ぶしかないのだ」「でも、このままではあなたは!」「君を軽蔑するぞ、そんな脆弱な理由で奴の道具と成り下がるのか?奴の子を宿し、世界を滅ぼすのか?弱さは悲しみを産む……君には人類の革新を――新しい世界を作れると言う可能性があるのだ。ネメア様……必ずや近い未来、君はネメア様にまた会えるだろう、その時二人で……人類の革新を……新しい世界を……築くのだ」「ベルゼーヴァさまっ……!」少女はくずおれていく男の身体を抱きかかえた。長い髪の毛に覆われたその顔は今まで少女を支配していた邪悪な男のもの。しかし、その瞳の色は違った。かつてネメアの事を語る時だけ見せていた優しい、慈愛に満ちた光がその瞳の中に宿されている。少女は男の返り血に汚れた顔を拭い、その唇に口付けした。男の唇が冷たくなってゆく――血の味がした。少女は涙を流しながら、初めての、そして恐らく最後の告白をした。「ベルゼーヴァ様、私は……あなたが好きでした」「フフ、君も甘いな。あえてシャロームと同じ台詞を言わせて貰うよ。愛などという弱い感情に左右されていては、人類の革新は成しえない……」ベルゼーヴァは穏やかな笑みを湛え、そっと右手を上げて、少女の肩に手を置いた。「君に世界を託す。見届けられぬのが心残りだが……ネメア様と、必ずや新たな世界を作ってくれ……」
-終-
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