─「おまえを、愛している。」─
リューガの変の後、ふたりきりで、宿をとった。「…よいのか?」背を向けてベランダにたつ少女に、少しだけ、とまどい気味にレムオンは問いかけた。…返事はない。彼女に近寄り、後ろからそっと抱き締める。「…本当によいのだな?」声を落とし、耳もとでささやくように再び問うと、彼女はわずかにうなづいた。小柄な身体を抱き締め、彼女の金髪に頬を寄せた。そこからは襟元がみえる。レムオン自身がつけ、彼女の血を奪った牙の傷跡が。その傷跡に唇を這わせると、瞬間、彼女の身体がビクリと跳ねた。「すまない。」あの事件のトラウマに触れたようで反射的に謝ってしまう。しかし彼女は少しためらうと、レムオンに正面から向かい合った。レムオンの手をとり、彼の指を自らのくびもとの傷跡に触れさせ、その次にそっと唇に触れさせた。「間接キス…ですね?」ちょっと恥ずかしげに義妹は、ふわりと笑った。
「まったく、おまえという奴は……。」どうして、こうもたやすく、私の心の中に入ってくるのだ。ほんの少し天を仰いだもと冷血の公子は、義理の妹だった少女の顎に手を添え上を向かせた。すぐ間近にお互いの顔がある。「愛している。」ささやくように告げる。「その言葉を、もう一度、聞きたかった。 まるで夢か、幻のように、信じられなくて…。」切なげに目を細める彼女の唇にキスを落とした。ついばむように何度も。何度も。額に、瞼に、頬に。身体が熱を帯びてきて、手に触れる肌はしっとりと吸い付くようだ。彼女の吐く吐息も、熱く、甘く、艶をおびてきている。レムオンは少しかがむと、彼女の背と膝裏に手を差し入れ抱え上げた。「フフ。意外というか、やはり、というべきか。軽いものだな。」少し、ふくれたように見える彼女に、からかうように言い添えた。「ほめたのだ。」
まだ無言の抗議の視線をくれ続ける義妹を、寝台の上に横たわらせる。自分は枕元に腰掛、彼女の顔を覗きこんだ。その金髪をいとおしげにすきながら「…もし…嫌になったら、言うがいい。それがはやい程、欲望は止められる。傷つけずに、すむ。」ランプの光を逆光に浴びて、表情の見えにくいレムオンだが彼女にはレムオンこそ、その自身の言葉で傷ついているようにみえた。ダルケニスだから。愛し合い、生まれてくる子供はダルケニスとなる。愛する者ともども、迫害を受ける対象となる。拒まれても、仕方のないことなのだとレムオンの冷静な部分が、諦めている。「そんなこと、たぶん、しません。お願いです。これ以上、私に誘わせないでください。…恥ずかしいんですから…。」「…そ、そうか。…とにかく、そう決めたのだ。…泣き言を聞くなら、はやい方がいい。」先程よりやや無器用に額にキスをすると、フと笑ったようにみえた。レムオンは紅い貴族服を脱いで、誰も使っていない寝台の上に投げ出した。
「ノーブル伯は自ら脱ぐほうが、お好みか? それとも脱がされるほうが、お好きかな?」ノーブル女伯は、耳やくびまで真っ赤になって、そっぽをむいた。「意地悪をいっているわけではない。わたしもこういったことに慣れていのではないしな。…あの男と違って。」『あの男』を思い出したのか、そこだけ言葉の響きが苦くなった。「…『ま、なるようになる』…か…。」レムオンはそっぽを向いた彼女の顔に手をそえ、息が詰まるくらいの深い深いキスをした。かさねた口から、レムオンは舌を差し入れる。彼女は恐る恐るそれを受け入れた。唇を舌を嘗める。縮こまっていた舌を探り当て、絡ませ、強く吸った。息が上がる。肌に触れる体温が熱く、しっとりと湿る。ほどなくして、ふたりぶんの唾液を彼女の喉元が、こくん、と飲み下した。
名残惜しげに口元に残る唾液を嘗めとり、唇離す。彼女の白い頬は上気して妖しく、その瞳は潤んで彼を見つめる。それが男心そそるとは露ほどにも知らずに。少しずつ少しずつ、しかし確実に、冷血の公子と呼ばれた男から、理性を奪い取っていく。レムオンは義妹のクロース服を脱がせはじめる。チョッキを、スカートを。下着を。ごく、ごくわずかにレムオンの腕が震えていた。ノーブル女伯はランプの下、その白い裸身を愛する男の眼に惜しげもなくさらした。「ほう、…美しいな。」思わずためいきがもれる。『意外』に豊かで形のよい双胸。桜の蕾のような頂き。腰。触れるとしっとりと手に吸いつき、弾むような弾力が気持ちよい。軽く揉むと彼女の口から、聞いた事もない甘い吐息がもれた。両の手でそっと、そっと宝物のように慈しむように肌に触れ、彼女の全身の感触を楽しむ。その微妙な、くすぐったいような感触に彼女は身体をかたくし、羞恥や刺激に耐えようとして、眉根を僅かに寄せていた。
「…どうする? 今なら止められる。この先は、無理だ。」彼女は羞恥と刺激で真っ赤になりながら、くびをふった。「止めないで、きて、ください。義兄さま、」「そうか。…だが、『義兄さま』は、もういい。…おまえは、わたしの『花嫁』になるのだからな。」潤んだ瞳を笑みのカタチに変えて、彼女はこくりとうなずいた。それにうなずきを返し、レムオンは寝台に背を向けて、絹のブラウスやズボンを脱ぐ。その予想外に広い肩幅や、ランプにも映える長いダルケニス特有の銀髪の姿を彼女は、美しい、と感じた。視線が合う。魅了される。この人しか、欲しくない、と思う。互いを求めて腕を伸ばす。指が絡まる。引き寄せされる。生まれたままの姿で、肌を重ねる。再び深いキスを交わし、ベッドに倒れ込む。互いを強く感じるように、足を絡ませながら。レムオンの激しいキスは胸元や乳房、腹へと移り、柔らかな金色の繁みへと降りていった。
「…あぁっ…ッ!」羞恥に彼女の身体が反り、跳ね、その途端、彼女はふとももを固く閉じてしまった。「かわいいな、おまえは。だがもう、泣き言も、拒絶も聞かん。それにもう、止めるつもりも、もうない。」レムオンはわずかに、嗜虐めいた笑みを浮かべた。かまわず手を背中に回し、尻の割れ目を指でさすり刺激する。「…はぅっ…っ!」刺激にゆるんだ、ふとももの間にひざを差し入れ、身体を滑り込ませる。片足を腕で固定し、大きく、開かせた。金色のけぶりの中、スリットとその奥の秘所が、レムオンの前に露になる。ひくひく、と生き物のように、淫らな美しさで、男を誘っていた。そこにレムオンの男性自身を、埋め込むのだ。はやく。「…ぁ、あま、り、みない、で……。」彼女はそんな己の恥じらいの声が、痴態が、いきづかいが、レムオンの下腹を、いっそう熱くすることなど知らない。理性を呼び戻し、指でスリットと秘所を何度も何度も、なで上げる。
レムオンの指先に、金色の繁みの中のスリットにはマメのような感触が、秘所からは染み出してきた液体が、ピチャピチャと絡んだ。液体のからんだ指でマメを捜し当てる。触れただけで、彼女の背が弓のように反る。それをコロコロとさする。「…っッ…、あっ、ぁっッ…!はぁ、…、おねがぃっ、ダメ、…ダメ、イヤぁッ…!」それまで極力声を堪え、冷静でいようとしていた彼女の口から、懇願めいたあえぎがでる。レムオンは、少なからず驚いた。神官家系出身の清楚に育てられた彼女が、感じて、『よがって』いる。いとおしい。もっと。もっと、狂わせたい。おれの事しか、考えられないくらいに…。さらに激しさを増し、強弱をつけた指の動きに「…ひぁ…っ…っ!! …はぁ…っ…」その言葉と共に、彼女の身体がピンと張り、震え、脱力した。「……ん、ノーブル伯? 行儀が悪いぞ。」それだけではなく、ごく僅かに失禁し、それがシーツを染めていた。
はあはあと荒い息の下から、彼女は元義兄を恨みがましい目で見た。「…ですから、どうなる、か、自分でもわからなかったので、ヤメテください、と…。」「…次からは善処しよう。」レムオンは苦笑し、彼女の手をとり、くちづけた。「加減を覚えねばならんな。」彼女の息が少しだけおさまるのを待つ。本当なら痛いほどに張り詰めたものを、なだめるのは辛いのだが。「…もう、つらくはないか?」「…は、ぃ…。」 元義妹は、ふたたび求められているのを感じとり、頬を染める。「今度は少し、痛いぞ。」肌を合わせる彼女の身体の心地よさに、なかば恍惚としながらも、容赦なく愛撫の指を秘所にすべらせた。くちゅくちゅ、と彼女自身が滴らせた液体の音がする。指を奥深くに差し込むと、彼女が苦痛の声をあげた。「大丈夫だ…。体から力を抜いて。」これなどは、まだ序の口ですらない。腰を浮かさせて、胸や乳房にキスを降らせて安心させつつ、秘所をゆっくり念入りに、こね回しはじめた。
しばらくすると彼女自身の体液が潤滑油となり、指も2本入れられるように、こなれてきた。「…そろそろ、ゆくぞ。」身体も正面から向かい合い、レムオンは己の男性自身を恥ずかし気ではあるが、大きくエムの字に足を開いた、彼女の秘所に当てがう。金色のけぶりの中に、己の張りつめて猛るモノを挿し入れる。先端が入った。「…くっ。」「あ、つっ…、義兄さまっ、義兄さま、いたぃ…。」レムオンの声は、彼女の中の熱さと心地良さと、乙女ゆえの強い締めつけのため。元義妹の声は侵入してくる、巨大なモノに対する痛み。義兄さまと呼ぶなと、釘をさされたことも痛みで吹き飛び、涙を浮かべ必死で耐えている。「…ゆくぞ…っ…くっ。」レムオンは彼女の呼吸に合わせ、締めつけが緩くなる一瞬をついて、その処女を奪いとった。「……。」レムオンが愛しい名前を、ささやく様に、呼ぶ。「…義兄さまっ、レム、義兄さま…っ。」
レムオンに秘所を強引に突かれ、その痛みにぽろぽろと涙を流している彼女の顔を真下に捉える。罪悪感が胸に刺さる。おれは、おまえを泣かせてばかりいるような気がする。顔を寄せて、唇で涙をすくいとる。彼女の腕が伸びて、彼の銀髪の頭を抱えこんだ。彼女はついばむようなキスをすると、あのすべてを許したような、ふわりとした微笑みをみせた。『義兄様の、好きに、して、ください。』ゆっくりとした唇の動きだけで、そう伝えた。限りなく優しい笑みを浮かべつつも、冷たい物言いで返してしまう。「言っただろう? 泣き言も、もう聞かんとな。覚悟するのだな。今夜は、果てるまで、おまえを抱く。」そう言いながらも、ゆるゆると、気遣いながら、腰を動かす。
理性が痺れてゆく。欲情に流されてゆく、体の中の獣が目覚める。互いの手を握る。強く、離れないよう、感じ合えるよう。触れあう肌、胸と胸はじっとりとして淫靡。淫らな水音。軋むベッドに、乱れ混じる、金の髪と銀の髪。
獣のように、荒くせつない吐息。ささやくように、叫ぶように、名前を呼びかわす、ふたりの声。
夜の闇に、月がセリューンだけが、彼の従者が、新たなる花嫁を迎えた、その夜をみていた。
終わり。
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