「お帰りなさい――」
全てを終らせたて帰ってきた俺を迎えてくれたのは、幻でなく本物の母さんだった。
感動にむせび泣く俺を優しく抱きしめてくれた母さんの、色違いの瞳からも涙がこぼれていた。その顔を見ると、何故か胸の高鳴りを感じる。すると母さんは俺の体を一旦離して、「今、お前のために晩の用意をしていたところなんだよ。もう少しで出来上がるから待っていなさい」と言って、台所に向かっていく。そういえば先ほどからいい香りが漂っていた。おそらくクリームシチューであろう。言われたとおりに俺は出来上がりを席について待つことにした。
おたまにコトコトと煮立つシチューをすくって小皿にうつし、それを唇からいれる。その動作に何とも言えない温かみを感じつつも、艶かしさまで俺は見てとってしまった。内からふつふつと黒いものが湧き上がる。そして気付いた時には俺は母さんの後ろに立っていた。
「ん…こんなものかな…」自らの料理の味に納得したのか一つ頷いてそう言った母さんを背後からそっと抱きしめる。それに驚いて母さんは疑問の声を発っして振り返る。「え?…どうしたの…ん!…」俺はそう言った母さんの唇に自分の唇を強引におしあてる。「ん…ん!」母さんの上げたうめき声に引きずられるように、口腔に舌を入れる。「んん?…ンン…ん!」暴れようとする母さんの腕を抑える。更に夢中になって舌を絡めていく。甘いクリームシチューの味がする。首をふっていやいや、といった素振りを見せる母さんだけれど、そんなことは俺を興奮させる材料にしかならなかった。カラン、とおたまが床に落ちる音がする。一瞬それに気を取られて、唇を離してしまった。
「な…なんでこんなことを?私たちは親子…」 わずかによろめき、そう言って困惑した表情で投げかける母さんに、心の中の大きくなった黒が台詞をぶつける。「でも、血は繋がっていないんだよ!」「!!っ…それは…」 一瞬、母さんの顔から赤がひいていく。そう俺たちは血が繋がっていない。それを知ったときは確かにショックだったけど、同時にどこか嬉しく思ってしまったことも否めなかった。母さんは昔からずっと美しかった。ここを訪れた冒険者たちもそろって皆賛辞を述べるほどに。ずっと前から、密かに劣情を向ける相手は母さん一人だった。あんなことがあってから世界中を見て回ったが、どんな美人も、帝国の将軍や、王国の姫君、四人の巫女の美しさも、到底母さんに勝ちうるものには感じなかった。形だけの美しさだけでなく。そのまとう雰囲気も。そして、今昔から秘めてきた想いをぶちまけてしまっている。血の縛りがないならば、もう妨げるものは無いはずじゃないか。真っ青になっている母さんを拘束している手を下にずらし、そのまま量感のある胸を後ろからがっしりと掴む。
「い…いやぁ…」 否定の声を上げはするけど、それは力弱いものであった。構わず服の上から乳房に指を沈み込ませる。幾枚かの布に遮られても、しっかりと感じるその弾力に俺はますます興奮していく。「あ…ああ…?んっ…」 再び母さんの唇を封じるために舌をもぐりこませる。抵抗は段々と弱いものになっていく。次第に掌と乳房の間にある布が邪魔に思えてきたので、ブラウスの前を開かせる。ボタンが弾けとぶと、レースの刺繍を施したパープルのブラジャーが見えるが、それをずらすと、ピンクの可愛らしい突起が目に入る。が、まずは真っ白くて大きな乳房を堪能することにして、持ち上げるようにして形の良いそれを揉みしだく。(や…やわらかい…) 先ほどより直に触れている分、その感触の良さが圧倒的に伝わりやすい。無我夢中になって好き放題に嬲り、段違いの感触に酔っていると、母さんの顔にも段々と朱が差してくる。少しずつ自ら舌を差し出してくるので、こちらのほうの快感も倍化する。それに気をよくして、ピンク色の突起を急に摘む。
「んあああ!」ピクリ、と急激な刺激に耐えられず、喘ぎ声を上げてのけぞる。それを見て取った俺は、左胸のほうには刺激を与えたまま、右胸の先端にむしゃぶりつく。「あっ…ああ…」 恥ずかしさに目をそむけるような形でいる母さんを見つつ、さきっぽを舌で転がしたり、赤ん坊がするように思いっきり吸いたてたりしてみる。気のせいか甘い香りがするように思える。それが興奮を幾重にも煽りたてる。何度も何度も、感触に夢中になって吸いたてていると、 ふわっと後頭部の辺りにやさしいものが舞い降りてきた気がした。「えっ…?」
上を見ると、俺の頭を優しく撫でる母さんの慈母の如き笑み。神々しさすらも感じさせる、その微笑を見た途端、俺の瞳からは涙が溢れ出ていた。「ごめんね…」急に謝る母さん。「え?…」何で謝られるかわからない。何も母さんは…「お前の気持ちに、少しも気付いてやれなかった…私は、母親失格なのかもしれない」違う。母さんは何も悪くない。悪いのは…俺一人だ…。「ち…違う…母さん…俺は…」 先ほどまで心を占めていた黒いものが流れさって残るのは、母さんに対する罪悪感だけだった。愕然としてへたれ込んで泣き叫ぶ俺。それを、母さんは優しく撫でて、少しづつ癒してくれた。
時間が経って、大分落ち着いてきたものの、母さんを抱いて手篭めにしようとしてしまった事実は拭いされない。「母さん…俺…」その事実の重大さに思い至って、母さんの顔が直視できなくなる。だけど、母さんはここでも俺を許してくれた。「お前だって…『男の子』だものね…それに、お前は辛いものを背負わせてしまっている」「辛い…もの?…」「ウルグ様…その思念がお前の想いを大きく肥大化させてしまったのかもしれない」頭を撫でながら、母さんはそういった。確かに、ウルグは俺の中にあのときから眠っている。けれど…「けれど…」「それにね」
声色を少し変えて、母さんは信じられないことを言った。「私も、心のどこかで望んでいたみたい…」「え…」顔を上げて母さんを見ると、頬を染めて俯いてしまっている。「ずっと…お前を拾ってから…逞しくなって育っていくお前に…」すっと俺を抱きしめる。乳房が頬にあたるが、いやらしい感じはしなかった。「お前を…心の中で男として見ていたみたい…」「か、母さん…」信じられない。母さんも、俺と同じように…「気付いたのは、今なんだけど、ね…」
「母さん…」そう呟いて口付けを交わそうとすると、人差し指で唇を封じられる。「イヤ…」「え?」お互い通じ合えたのに何故拒むのか、と言おうとする。すると母さんはクスリと笑って、「こういうことするときは、名前で呼んで…」あ…。だが、改めてそういう風に言うのは何か照れくさい。「あ、アスティア」「ええ、――」お互いの名前を呼んで、唇を交わす。それは先ほどまでのどんな行為よりも優しく、目の前の人への愛しさをあらたにするものだった。
一つの関係が、ここに始まった。
FIN(?)
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