「よう」「あ……アクト様」 クローゼットの扉を開けると、そこには俺の理想郷があった。 このところ俺は連日王宮に通っている。 もちろん目的はアトレイアの身体と心だ。 異様に感度がよく、俺の性欲を一身に受け止める素質を秘めた魅惑的な肢体。実に俺好みにコンプレックスと無垢さと少女の本能が奇跡的な調和を見せているその精神。 両方をじっくりと育み、たっぷりと味わうのだ。 平たくいえば、アトレイアを俺のものにしてやるのだ。「来てやったぞ。存分に歓迎するがよい」 アトレイアは俺を見止めてはにかむように笑い、ぺこりとお辞儀をした。「はい……どうぞ、なにもないところですが……ゆっくりしていってください」 アトレイアは丁寧におじぎをすると、落ち着いた口調でそう言った。 が、その語調は相変わらず暗い。というか前より更に暗い感じになっていやしないか。そうはさせん。「ゆっくりしない。アトレイア、今日は外出するぞ」
第四話『おっぱいとお口』
計画に変更はない。ただ、シチュエーションが若干変わっただけだ。「……外出……?」 俺の言葉をオウム返しにし、アトレイアはしばらく呆けたように突っ立っていた。やがて気を取り直すと、彼女は下を向いてぼそりと呟いた。「そ、そうですか……いえ、来ていただけただけでも、とても嬉しく思います……どうか、お気をつけて……」「何言ってる。お前も一緒に来るんだ。なお拒否権は完全無欠にない」 わざわざ付け加えなくともいいような気がしたが、こういう場合の決め文句というものがあるのだ。 アトレイアは今度こそ完全に不意を疲れたようで、目をまん丸に見開き、信じられないとでも言いたげに口をぱくぱくとさせた。「ゆっくりはしないぞ」 俺はアトレイアの綺麗にメイクされたベッドに寄り、ばふんと腰を下ろした。 上掛けをめくり、中身の毛布を、腕の中でぐるぐる巻きにする。清潔で染み一つない毛布を顔が近づくと、なんとなく甘い香りがした。そういえばこれはアトレイアの汗を吸った毛布か。 機会があれば持ち帰ろう。「よーし」 ロール型の毛布の上に上掛けを被せる。
ぱっと見では人間が眠っているように見える。 まあ捲られたりすれば一発でわかるんだが、その時はその時だ。命まで取られるようなことはあるまい。「では行くぞ。来るが良い」「あの?」 アトレイアは俺の目とベッドを交互に見やると、不思議そうに問いかけてきた。「外出とは……どちらへでしょうか……」 そうして疑問を持つこと自体が、アトレイアが成長している証だと言えるかもしれない。が、今はどうでもいい。「外だ」 俺は当たり前のことを繰り返した。 細かく言ってもアトレイアには理解できまい。抽象的なものは抽象的なまま理解させよう。「外に?」「そう、外。『部屋の外にはほとんど出ていない』と言ったな。それはいかん。俺が王宮の外の世界の魅力を紹介してやろう」 王宮の薄暗い一室でひたすら淫欲の宴を続けるのもそれはそれで味があるが、俺はアトレイアにそれ以上のエロスを望む。即ち、彼女は外の世界を知らねばならない。世界の醜さと美しさを知ったうえで、それでも処女性を保ち続け俺の肉奴隷となるべきだ。 なんでかというと、その方が燃えるからである。主に俺が。「世界の……魅力?」「そうだ。この大陸は、世界は、とてつもない魅力に溢れている。溢れすぎて俺がいくら汲み取っても全く果てが見えないほどだ」 もちろん、魅力とは処女とか処女とか処女とか非処女とかのことである。
「さあ」 アトレイアに手を差し出す。アトレイアは左右に視線を揺らしながらではあったが、俺の手をいじらしく取ろうとして、手を伸ばした。 二人の手が触れ合う――直前で、俺は差し伸べた手を引っ込めた。「あっ?」 別にからかったわけではない。ひとつ忘れていたことがあった。「よっ」「えっ?」 アトレイアの髪を掻き分けて両手で頭を掴む。「えっ、えっ! っ!?」 そしてアトレイアの唇に顔を寄せ、躊躇なくキスをした。 何の前触れも準備もない、唐突なキス。唇と唇が触れた瞬間、驚きのためか、アトレイアの体が大きく弾む。 その動きをものともせず、れろれろと唇の内部を嘗め回す。熱く潤いに満ちたアトレイアの口内を、俺の舌が蹂躙する。何度進入しても、その口内は瑞々しさに満ちていた。「ふう」「んっ!」 まるで俺を歓迎するかのように、アトレイアの舌が小さく動いた。舌と舌が絡み合い、お互いの唾液が混ざり合って二人の口の間で溶け合う。 いったん口を少し離し、アトレイアの舌を吸い込むように加える。 待ちかねていたとでも言いたげに、アトレイアの舌が俺の口内で細かく震えた。「ん――はぁっ!」 数十秒間、じっくりとアトレイアを堪能したのち、俺は唇を離した。
「はぁ、はぁ……あ、あ、あのっ?」 アトレイアは呼吸を整えつつ、疑問の視線を投げかけてきた。 何でキスしたのか、と聞きたいのだろう。「言い忘れたが、今日からこの部屋に来るたびにキスしてやることにした」 さっき決めた。キスしたくなったとき、一々アトレイアに断るのは面倒くさくてたまらん。 それに日常生活の中での俺への奉仕こそが、アトレイアの清純さと淫猥さを同時に育んでいくのだと俺は考える。異常な生活で奉仕するだけでは、後者ばかりが育ってしまう。それは望むところではない。アトレイアには、最高のレベルで清純さと淫猥さを両立してもらわなければならんのだ。 今後、どんどん条件付けを増やしてやろう。 例えば、ありがとうと言う度に胸をもむ、というのはどうだろうか。 ふむ。かなりいい感じだな。考えただけで勃起するぞ。「あの……ど、どうして、ですか? いえ、決して、嫌な訳ではありません……が……」 と、肩を上下に揺らしたまま。アトレイアが言った。 その唾液で汚れた唇には、細く白い人差し指が添えられていた。「お前は俺の肉奴隷だからだ」 俺は迷いなく即答した。今度は使い方を間違っていないと思う。 俺の返答に、アトレイアは頬を真っ赤に染める。いつかと同じ反応だ。どうやら肉奴隷という言葉に対し、特別な感情を持っているらしい。 しばらくの間の後、アトレイアのか細い声が俺の耳に入り込んできた。 いわく、『ありがとうございます』と。 その声は小さく聞き取りづらかったが、純粋な感謝の念を強く感じさせた。それでこそ俺の肉奴隷である。 俺は満足してうんうんと頷くと、アトレイアを手招き、クローゼットの扉を開けた。
まあそれはそれとして。 今日はおっぱいで楽しむことにした。決定だ。
「そこ、出っ張りがあるぞ。気をつけろ」「……はい……」 スカートを両手で摘みながら、アトレイアが返事をした。 隠し通路を歩く途中、アトレイアはずっと歩きにくそうにしていた。なんでもない石ころやちょっとした段差にも何度も躓いている。その度に手を差し伸べねばならなかった。 まあアトレイアの服装は貴族然としたドレスのままなのだから、当然といえば当然だ。 そういえば、いちおう有名人なんだから変装させた方がよかっただろうか……まあ別にいいか。 怪しまれたら適当にごまかせばいいや。名前さえ知られなければ大丈夫だろう。アトレイアの顔を知っているのは、王宮の限られた人間だけだし。「うおっ」 と、ぐい、と後ろから服を引っ張られた。 振り返ると、こけそうになっていたアトレイアが俺に腕を伸ばしている。ズボンから出たすそを、両手で掴み、支えとしていた。まるで親の助けを求める雛鳥のようだ。「あ……」 目があうと、途端にアトレイアは手をぱっと離した。「おい」「ご、ごめんなさい……あの……えと……」 いい言葉が見つからないらしく、アトレイアの言葉はそこで切れた。 手を腰の前で組み、おどおどと不安げに視線を左右に揺らしている。「ふむ。まあいい、ここを出るまでなら掴んでてもよいぞ」「えっ」 驚きの声を発するアトレイアに対し、シャツの裾をズボンから出して差し出す。客観的にみればわけのわからん光景だろうな。 が、アトレイアにとってはそうではなかったらしい。 まるで宝冠を受け取るかのように、うやうやしく両手で裾を掴む。その腕は小刻みに震えていた。恐怖感から来るものではないだろう。 むしろ震えがくるほど感動していると見るのが妥当だ。 それがわからないほど俺は馬鹿ではない。「では行くぞ。足元に気をつけろ」「……はい」 アトレイアは、腕の震えとは対照的にリラックスしきった声で、はっきりと言った。そうでなくてはな。
薄暗い通路を出ると、日は既に暮れかけていた。 西の空にそびえ立つ山に太陽の下半分が隠れている。「これが……外の世界……?」「そうだ。広いだろう」 王宮は小高い丘の上に建っているので、ロストールの町並みや、更にその向こうのノーブルの町までを一望にできる。 無論、王宮のテラスからは更に素晴らしい光景を見られるだろうが、ここからの風景もなかなかよいものだ。「……空気が……違います」「そりゃそうだ」 くんくんと鼻から空気を吸い込むと、新鮮な若葉の香りが存分に感じられた。 アトレイアの部屋が、木造家具の独特の香りに包まれていたのとは対照的だ。 躍動感に溢れた新緑の香りと、落ち着いた古木の香り。 さぞ違和感があることだろう。「さて、街に出るぞ」「街……ですか」「うむ」 俺はアトレイアの手を引き、歩き出す。 アトレイアに世界を見せるのだ。 いや、逆か。 世界にアトレイアを見せるのだ。 俺の自慢の肉奴隷であるアトレイアを。
街に入ると、アトレイアはきょろきょろと辺りを見回し始めた。 そして、何度も質問を繰り返す。 純粋な好奇心に満ち溢れた質問だ。俺は心を込めて、親切丁寧に答えてやった。「あの、あの椅子は何のために?」「あれは俺が疲れた時に休憩するための椅子だ。酒場が俺専用に設置している」「さかば……?」 聞きなれぬ言葉を耳にし、アトレイアは首をかしげた。「そう、酒場だ。一般的には食べて飲んで歌う楽しい場所だが、あの酒場だけは悪の巣窟だ。近づくんじゃないぞ」 なにしろ俺を出入り禁止にしやがってるからなあのファッキンマスターめ。ちょっと女を口説いただけだろうに。「は、はい……?」「では次ー」
「ここがギルドだ」「おう、アクトじゃないか」 ギルドのカウンターにアトレイアを連れてくると、中の親父が声をかけてきた。「なんだ、戻ってきてたのか。ディンガルにゃ良い仕事は無かったか?」「このように、色気の無い親父が色々と余計な世話を焼く場所だ」「は……はい」 アトレイアは素直に頷くと、椅子を見るのと同じ感情で、親父を凝視した。あまりお勧めできないな。目が腐る。「おいおい」 親父があきれたように笑っているが、俺はあえて無視した。「相変わらずだな。ところでそっちの場違いな別嬪さんは?」「では次に行こう。ここに長くいると脳が毒される」「完全無視かよ」
「あ……あの……はじめまして、わたし、アトレイアと申します」 あ、名乗るなってのおい。と、止めるまもなくアトレイアはすっと進み出てお辞儀をした。「お、おお。こりゃどうも」 親父は丁寧な挨拶に、戸惑いながら返事を返した。「……で、アトレイア……?」 そして考え込む。まずいな。 日陰の身といえど、かつて渦中にあった王室の人間なのだ。 それなりの情報通であるギルドの親父なら、すぐにその境遇を思い出せるだろう。「おい、アクト」「ストップザ危険発言。喋ったら地獄送りだ」「……まあ、厄介ごとに関わる気はないが」「理解が早いな。褒めてつかわす」 と、アトレイアが申し訳なさそうに、俺たちに声をかけてきた。「あの……? すいません、ご迷惑を、おかけしましたでしょうか……」 親父とのひそひそ話を不安に思ったらしい。あるいは『厄介ごとという単語が耳に入ったのかもしれない。「いやいや、そんなことはない。こいつが一人で来る方が百万倍迷惑だ」「ザ・黙れ。もういい、出るぞアトレイア」「え? あ、は、はい。し、失礼します」「また来なよ」「あ……はい、こちらこそ」「二度と来るか」 何度も親父に頭を下げるアトレイアを連れて、俺はギルドを出た。 こんなんばっかだな。もっとまともな場所はないものか。
ということで、俺は最終目的地にやってきた。 ここならギルドや酒場よりは楽しいことになるはずだ。「ここが住宅街だ」「じゅうたくがい?」「平たく言えば、人間が住む地区だ」 王宮も人間が住む場所ではあるが……。まあその辺の細かいことは説明しても仕方あるまい。 アトレイアは物珍しそうに辺りを見回している。特に目の前の一軒家が気になっているようで、二階の窓や花壇の植え込みを興味深そうに眺めていた。「気になるか?」「はい……こんな、お家は、はじめてです」「そうか。では中に入るぞ」「え? よいのですか?」「いいに決まってるだろ。ここは俺の家だ」「……アクト様の、お住まい、ですか?」「昔住んでいた」 この家には長年世話になった。特におばさんにはとても感謝している。 あの人は俺が、性欲の対象とせずに尊敬申し上げる唯一の人だ。 ま、それはそれとして、今日は部屋を利用させてもらおう。 おばさんはいつもこの時間は働いていて留守の筈だ。もう一人の住人は今頃各地を放浪している。確か聖杯を取り戻すまでロストールに戻れないとか言ってたから、まず三年は帰ってくるまい。 ふとアトレイアを見ると、家のドアを食い入るように見つめていた。「興味があるか?」「……はい」 アトレイアはやや躊躇しつつも、はっきりと言った。
「よし。では招待してやろう」 つかつかと庭を横切り、ポケットから鍵を取り出してドアを開ける。 そこには懐かしい香りが充満していた。戻るのは一年ぶりだ。 狭い玄関に、質素だが機能的な靴箱。頭上に詰まれた食料品の木箱。どれも旅立ったあの日のままだ。まあ一年で変わったら逆に驚くが。「うーむ。相変わらず狭いな」「そうですか? とても、落ち着ける家だと……思います……」 落ち着くというか庶民的というか。まあ王宮とはあらゆる意味で違う環境だということは確かだ。「ま、いい。部屋で休もう。こっちだ」「はい」 階段を上がると、正面に俺の部屋がある。 扉を開けると、中には旅立ったその日のままの光景が広がっていた。 おばさんのはからいか、家具類もそのままだ。 部屋の隅にベッド。その横に机と椅子。立てかけた本棚には俺が集めた人間心理や歴史に関するさまざまな蔵書が残っている。なおエロい本は別の場所に保管してあるので安心だ。「ここが(元)俺の部屋だ」「この部屋が……?」 アトレイアはこれまで以上に好奇心をそそられたようで、俺の部屋に入ると目を輝かせて辺りを見回した。「ここで、アクト様が生活されていた……」「当たり前だ」「……」 アトレイアはつかつかとベッドに歩み寄ると、いとおしげにシーツを撫でた。どうやらよく掃除されているらしく、シーツは俺が寝起きしていたころより格段に綺麗そうだ。「なんだ? 眠いか」「あ、いえ……あの……」「まあどっちでもいい。とりあえず休もう」「あ、はい……」「ベッドに座れ」 言ってから、俺は椅子に座った。 アトレイアは俺の言葉に素直に頷き、ベッドに腰を下ろす。 そして俺は立ち上がる。なぜって? 決まってるだろうが。
「え? アクト様?」 疑問の声を無視して、アトレイアの正面に立つ。 そして、俺ははじまりの声を口に出した。「仰向けに転がれ」「は」 不思議そうに首を傾げるアトレイア。それでも俺の支持に従い、ベッドに寝転がる。腕をお腹の上で組み、俺を不思議そうに見上げる。 俺はアトレイアの傍に近寄り、手を合わせて言った。「ではいただきます」「あ……えっ!?」 そして、アトレイアのドレスに手をかけた。 そう。今日はアトレイアのおっぱいでたくさんエロいことをするのだ。 理由はありがとうと君が言ったから。完璧な動機だな。「っ!?」 ドレスの上部がはだけて、アトレイアのおっぱいがぷるんと揺れた。形が良く、ボリュームのある乳房。程よい大きさの乳輪。自然に出来た谷間。そして、ピンと起つ乳首。そのどれもが、俺の理想と完全に一致していた。「う……ああ……」「おおー。素晴らしい」 思わず感動を声に出す。 俺は欲望のままにアトレイアの胸の谷間に耳を押し付けた。顔の真正面にぷよぷよとしたふくよかな感触が伝わってきた。思わず手をその側面にそえると、すべすべしていて、それでいて弾力に満ちた手触りがした。
「……う……」 胸の谷間から見上げると、羞恥に耐えるためか、アトレイアは手を目に当てて口をきつくかみ締めていた。全身が緊張していることがよくわかる。ただ俺が触れている箇所だけが、甘菓子のように柔らかく、安らぎに満ちていた。「アトレイア」「……」「アトレイア。目を開けろ」 俺はアトレイアの腕を掴むと、そっとアトレイアの顔から離した。まぶたと腕に隠されていたアトレイアの瞳が、ゆっくりと開く。その瞳は、何かを訴えたげに、俺の顔を映していた。「アク……ト……さま……」 アトレイアがかすれたソプラノの声で言った。「そんなに恥ずかしいか」「……は……は……い……っ」「なぜだ」 貴族の常として、余人に肌を晒すことに抵抗があるということは理解できる。が、それにしても、アトレイアの羞恥心は度を越している。なぜだか、その理由に興味が沸いた。たしか風呂に入ったときはここまで怯えてはいなかったはずだ。 そう、アトレイアは怯えている。何にだ? 自らをさらけ出すことに、だろう。「わたし……こんなに……こんな……わたし……を……アクト、さま……!」 自らの肌をさらけ出すことに、怯えているのだ。 アトレイアの詰まった声は断片的で、ほとんど意味を成していないため、その理由はわからない。ただ、深い深い自己否定の感情だけが、正確に俺に伝わってきた。「綺麗だぞ、アトレイア」「っ!」 その感情を、俺は即座に否定した。自己卑下は嗜虐心をそそられるよいものではあるのだが、度を越すと悪影響の方が強い。 俺はアトレイアにぐいと頭を近づけると、強い口調でふたたび断言した。
「お前は美しいぞ。俺が今まで見たこともないぐらいな」「……あ」「誰に何と言われたか知らんが、俺の美的感覚の方が正しいに決まっている。アトレイアは綺麗だ。もし自分で自分が醜いと思っているのなら、お前の感覚の方が間違っている。さっさと修正しろ」 流れるように口から言葉が紡ぎ出される。アトレイアに関することならこの十倍は続けられるが、やめておいた。 なぜって、アトレイアの行動に、素晴らしい変化が訪れたからである。 俺が言い終えると、アトレイアの腕がそっと宙に浮き、ぴと、と、その白魚のような手が、俺の頬に添えられた。 驚いた。とても驚いた。確か、アトレイアが俺との接触を求めたのはこれが初めてだったはずだ。「……あっ……」 アトレイアも、自らの手の動きを自分でも信じられなかったようで、視線を何度も手と俺の間で往復させた。「……っ」「アトレイア」 名を呼ぶと、アトレイアは腕をぴくりと動かした。 何かの間違いだった。気の迷いだった。そんな言い訳をして、腕を引っ込めるかと思った。少なくともさっきまでのアトレイアであれば、そうしていたはずだ。「…………」「どうした」 が、アトレイアはその手を離さない。それどころか、頬に添えた手を、指をゆっくりと動かし、俺の頬を撫でる。盲人が対象の存在を確かめ、形を確認するのと同じように、ゆっくりと肌をなぞっていく。「……」 アトレイアは俺の顔を真っ直ぐに見つめている。 その口がゆっくりと開き、言葉を紡いだ。「……お……お願いします……」 涙声だ。しかし、はっきりと強い意志が感じられる。「続けて……どうか、続けてください……」 アトレイアは言葉を切ると、大きく息を吸い込んで、次の言葉に備えた。 アトレイアの懇願の声は相変わらず震えている。瞳には、ほとんど涙が浮かんで、零れ落ちそうになっている。 だが、アトレイアからは強い決心を伺うことができた。アトレイアは必死に耐えている。涙を流さず、なんとか自己の意思を表現しようととてつもない努力を重ねている。 まるで世界から活力を吸収するかのような大きな呼気。 その後、彼女は言った。その手を俺の頬に添えたまま。「どうか、どうかわたしに触れていてください。お願いします……!」 彼女がいかなる思考の経路を辿り、どういう結論を出したのか。 詮索する気はまったくなかった。結論が出た以上、俺のやることは決まっているからだ。
そこまで言うなら、遠慮なく揉んで揉んで揉みまくってやろう。 たわわに実った乳房をわしづかみにすると、アトレイアはぴくんと全身を反応させたが、それ以上の抵抗はなかった。「ん……!」 むしろ積極的に俺を受け入れようという意思が、漏れる声から伝わってくる。「あ、う……」 柔らかくそれでいて弾力のあるふくらみを、手のひら全体で掴むと、指の隙間から肉の一部がはみ出た。そこに唇を近づけ、ちゅぽんと肌を吸い込む。「あ、あ、あっ!」 肌への口付けを繰り返し、キスマークを乳房の側部につけた。「うあ……ん……んっ……」 手を開き、親指と人差し指の間で、下から上へ、押し上げるように乳房を圧迫する。 吸い付くような肌の感触が、じんわりと手の先端から伝わってきた。 同時にアトレイアの耳にふっと息をふきかける。「ひゃっ!」 ここからが本番だ。 俺はアトレイアに顔を近づけ、唇を押し付けてキスをした。「――!」 アトレイアとのキスと言ったら、舌で口内を存分に舐め繰り回すディープキスだと相場が決まっている。なぜなら俺がそう教育したからだ。 手加減せずにアトレイアの舌を吸い、唇を噛み、口唇の奥深くを舐めまわし、ちゅぱちゅぱと音を立てて情欲の熱を共有する。「ん、あ――!」
その間も、胸への愛撫はやめない。アトレイアの乳房を横から包み込むように手のひらで多い、圧迫と弛緩をゆるいペースで繰り返す。手のひらのなかで、アトレイアの魅惑的なバストが自在に形を変えていた。「ん!」 まだ足りない。俺はいったん唇を離して鼻から息を吸い込むと、アトレイアともう一度唇を重ねた。ぐにぐにとべろを動かすと、アトレイアの唾液が愛液の泉のように粘膜から湧き上がってくる。それを残さず汲み取る。「……ん……っ……ん、んっ」 アトレイアは俺の意図を理解したらしく、唾液を積極的に俺の口内に送り込んでくる。 その行為が妙に愛らしい。弾みで、何度も唾液を飲み込んでしまいそうになった。「ふぁぁ……」 十数秒後、今度こそ唇を離す。アトレイアの唾液をたっぷりと口に含んだまま、再びおっぱいの近くに顔をやる。 そして、張り詰めたリンゴ色の突起をはむっと噛んだ。「ひあぁっ!」 唇で突起を圧迫し、コリコリとした感触を楽しみながら、唾液を開放していく。 俺の口から大量の粘液がじゅるじゅると流れ出て、まずアトレイアの乳頭をぬらりと覆った。次いで、肌色の丘の頂点から、たらりと液体が垂れて乳房に跡を残し、谷間へと落ちていった。「んぁ……ん……」
残った唾液をばらまくべく、顔を反対側の乳首に近づける。口を開いて、だらりと唾液を落とす。白く泡立った二人の粘液を、たっぷりとアトレイアの胸にまぶしていく。「ひあぁっ……あ……」 まず先端に落ちたつばを、唇と鼻で広げていく。 さらさらとした乳色の肌を、ぬらりとした淫靡な粘液によって塗り替えていく。「ん……ん……っ」 アトレイアの快楽の声に満足しながら、俺は乳首を口で強く吸った。更にアトレイアに顔を近づけ、おっぱいを頬で圧迫する。 俺の顔がアトレイアの胸乳ににゅむりと埋もれていく。柔らかい感触が首と頬に伝わる。暖かな安心感がアトレイアの胸の奥から、鼓動とともに伝わってくる。このうえない一体感、そして快感が俺を包んでいた。「ん……っ……アクト……さま……」 うわごとのようにアトレイアは俺の名前を呼んだ。それに答えるために、再び先端をちゅぽんと吸い込む。同時に、もう片方の乳首を人差し指と中指でつまみ、しごき上げるように指を上下させた。「んあぁっ!」 アトレイアが快感を隠しきれなかったのか、腰を左右に淫猥にくねらせた。 俺は更に動きを早める。何度も何度も、欲望にまかせて乳頭を吸う。時には強く、時には優しく。おりを見て軽く歯を乳輪に突き立てると、アトレイアは嬌声を一際強く上げた。「あ、ふあっ、ん、ふぁあっ!」 直後、アトレイアはくたりとへたりこんだ。 軽く達してしまったらしい。
「よし……頃合だな」 俺のモノも気持ちよくしてもらおう。 俺はアトレイアの胸から顔を放した。名残惜しいが、更なる段階に進むためだ。 距離を取って見るとアトレイアの形のいい乳房には、俺のキスの跡がついており、俺にこのうえない征服感を与えてくれる。アトレイアの乳房は、大量の唾液にまみれていやらしく光っていた。「よっ」 俺はそれを見て満足すると、ズボンと下着を脱ぎ、ギンギンに張り詰めたペニスを開放した。 アトレイアは最早俺から目を逸らそうとはしない。俺の行為を、ただ黙って見つめている。多分意味はわかっていないだろう。だが、これから何をしようとも、彼女は俺を受け入れるはずだ。「……あ……」 ベッドに仰向けになったアトレイアをまたいで、腰を腹部の近くに落とす。自然と、ペニスと乳房が触れ合う形になる。 今日はおっぱいにこだわる日なのだ。アトレイアの初パイズリで、いかせてもらおう。「アクト……さま……」 アトレイアが、声とともに僅かに腕を上げた。まるで救いの手を差し伸べる聖母のようなその仕草は、きっと俺を受け入れる準備が整ったことを意味していた。そういうことにした。 俺は腰を進め、ペニスを乳房の谷間にそっと置く。 唾液のぬめりが俺のペニスを包む。試しにそっと前後に動かしてみると、アトレイアの熱で温まった粘液が、ペニスを下から「アトレイア。もっと唾を胸に垂らしてみろ」「……はい……」 アトレイアは戸惑い無く頷くと、口をもごもごと動かした。 そして首をあげると、なまめかしく唇を開き、胸の谷間に粘液を追加していった。 アトレイアの唾液が、ちょうど俺の尿道口に当たった。
「くっ」 敏感な先端に対する刺激に、俺はたまらず声をあげた。 俺は我慢することをやめ、アトレイアの両胸を左右の手で横から寄せた。我慢汁と唾液で光る亀頭を残して、ペニスがすっぽりと乳房で覆われた。「ん……ん……ぁっ……」 アトレイアは俺の命令を忠実に守り、胸を蹂躙されながらも、唾液を生み出してはペニスに向かって放出し続けている。素晴らしい肉奴隷っぷりだ。成長したなあ。「そろそろ、強くいくぞ」 俺は宣言し、アトレイアの返答を待たず、身体をゆすり始めた。 腰を前後に動かし、茎と亀頭で谷間のぬめりを堪能する。 腰を前に勢いよく突き出すと、狭く熱い閉塞部に、ペニスをぬるりと挿入する形となった。白い泡と共に、亀頭部がアトレイアの口先にまで突き出される。袋がアトレイアの下乳房にぱしんと当たり、その音を引き金とするかのように、アトレイアの唾が亀頭の先端にぽとりと落ちた。「ん……ぁっ……」 腰を引くと、吸い込まれるような感触がペニスの先端から全身に伝わってきた。唾液を潤滑油として、カリ首が乳房に擦られる。合わせて乳房が亀頭を強く強く包み込んだ。「アトレイア。いいぞ」「……」 返事の代わりに、アトレイアは俺に視線を向けた。純真で、無垢で、それでいて淫猥な輝きが、その黒い瞳を満たしていた。「今度は俺のこれに、キスしてみろ。ただし、歯は立てずに」「は……はい……」 アトレイアは俺の命令にこくんと頷くと、目を閉じて唇を開けた。そしてゆっくりとあごを引き、ペニスに口付けをすべく、顔を下に向ける。「おおっ」
そして、はむっ、と、いきなり亀頭全体を口に含んだ。 たまらず俺は声を上げた。唾液でいっぱいのアトレイアの口唇に亀頭が触れている。裏筋がアトレイアの舌に当たっており、心地よい暖かさが俺のペニスに伝わってくる。 くわえろと命令したわけでもないのに。すばらしい。教育の成果だ。「う……んっんっ!」 ペニスが舌で転がされる。尿道口が先端で細かく突付かれる。裏筋を対象に舌が舞い踊り、ざらざらとした感触が身震いしそうなほどの快感を与えてくれる。「ちゅ……ん……」 アトレイアの乳房を両手で強く掴み、こね回す。痛そうなほどにぴんと張った乳頭を指で掠めるように弾くと、アトレイアはかわいく身体を弾ませて反応を示した。「んっ! んっ!」 ちゅぱちゅぱと吸われるペニス。アトレイアが俺の精液を吸い上げるべく、一心不乱にペニスに熱いキスを繰り返す。アトレイアの唇が、舌が、亀頭の周りを這い回る。尿道がくすぐられる感覚。じわじわと熱いモノが腰の奥から湧き上がってくる。「くっ」 俺は乳房を欲望のままに揉みしだいた。腰の動きに合わせて肉を寄せ、ペニスを圧迫した。先端をぎゅうっと中身を絞り取らんばかりに摘んだ。「あ、あ、あ、あ、あっ!!」 アトレイアの身体がぷるぷると震える。俺のペニスを谷間に挟んだまま、身体全体が左右に小刻みに揺れ、弓なりに反っていく。
俺も、そろそろ限界だ。 一気にスパートをかけるべく、親指で両の乳首を押さえて、乳房をペニスに押し付ける。そしてとめどめなく湧き上がってくる欲情のままに、腰をおっぱいに叩きつける。「や、あああ! ふあっ! ん……んっ!」「ッ!?」 と、アトレイアが俺のさきっちょをぺろり、と舐めた。 亀頭が快感でぶるりと震える。 それはきっと、俺の命令を忠実に守り続けた結果だった。 激しい挿送の中でのその優しい快楽は、素晴らしいアクセントとなって、俺に精の放出を強制した。「くっ!」 どくん、とペニスが震える。袋から尿道口までに電撃のような快感が走る。直後、ペニスの先端から白い液体がびゅくんと宙に吹き出た。「あっ!?」 精が空中を飛び、アトレイアの顔を、胸を汚していく。ぶるぶると震えがくるほどの快楽を大量の精液という形にして、アトレイアに存分に叩きつける。 俺は快感を最大限に味わうべく、射精の間にアトレイアの乳首をつまんで強く捻り上げた。するとアトレイアは両の手でシーツを掴み、一際高い声を上げた。「あ、あ、あっ、ふああああぁぁぁあ………!」 アトレイアも同時に絶頂に達したようだ。 その身体はどんどん俺の精液で汚されていく。頬をべっとりとした粘液が伝う。唾液で汚れた唇に、新たに精液が加えられた。額に濃い性の証がべっとりと張り付いた。
ようやく放出を終えた俺は、アトレイアの髪を無意識的に撫でた。「……あ……」 アトレイアは俺の精液を受け止め終えると、目を細め、上げていた顔をくたりと横にし、ベッドにぐったりと横たわってしまった。 その顔を覗き込むと、既にまぶたが閉じている。 どうやら気を失ったらしい。
意識を失ってしまったアトレイアに、毛布をかける。顔にかかった精液を拭き、アトレイアの髪を撫でながら余韻に浸る。 もう、最後までやってしまってもよかったか?「いや」 いやいや妥協は禁物だ。お楽しみは最後の最後まで取っておかねば。いざというときは躊躇わないが、今日はこれで終わりだ。 焦っても急いでもいけない。時間はあるのだ。 当初の予定通り、アトレイアの全てを犯しつくしてやるのだ。 俺は決意を新たに固めた。 とりあえずこの場は、アトレイアのさわさわとした髪の感触を楽しむだけで、満足しておいてやろう。
(終)
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