右手で壁に2度叩き付けた使用人は、頭蓋が割れ脳漿を飛び散らせている。間もなく事切れるであろう壁と頭を同化させた存在に、「戸惑い」を赤く染まる返し手で突き刺す。其れが絶命すると、間髪居れず槍を構えた衛兵の影に溶け込むように床を滑り、旋回する黒い疾風が、左足の腱から膝頭に続き左脇腹の鎧の隙間に「悶え苦しむ」を捻り込む。絶叫し捻り刻まれた側から崩れ落ちる衛兵の首にトスンと刃を落とすと、声が止まる。そして、奧に一歩進むと、あらゆる神の御名を挙げ、命を懇願する歳把もいかぬ少女の姿。竜王様。バイアス様。ウィルホーン様。アスラータ様。ノトゥーン様。ノトゥーン様。の所でクロスされた刃が顔の前で番える指ごと下顎を吹き飛ばし、「がひゅ」という断末魔とともに、そのまま首が宙に浮く。宙をくるりと舞う首に、また十字に刃を踊らせると、美しかった「であろう」少女の額に眼と剣の紋章が刻まれ、左右の壁に抉られ弾け飛んだ少女の眼球がべちゃりとへばりついた。血の晩餐の最中、今、観ている映像の「眼」の下が盛り上がり視界を圧迫する。────笑っている。
─────次に硝子体から脳へと飛び込んだの物は、眩しい光。朝の日射しが、穏やかな輝きを放ち、浅黒い肌を晒し全裸でベットに寝そべる青年の身体を照らす。首を少し傾げると、隣で雪のように白い肌を晒して眠る、馨しい淫靡な香りを放つ女性。そこで、「どうやら、こちらが現実のようだな」と安堵感に包まれ、青年は起床した。眠る女性の白と銀色の混じる猫毛髪に指を滑らせる。髪と肌の温もりが急速に現実を彩る。「んあ?」薄眼の女性の瞳が鈍く深紅に輝き、髪を弄る青年を見つめた。「おぁよ。れーぶん」「・・・・おはよう。カフィン」青年、レイヴンは陽の光が射す窓を背に立ち上がる。背に刻まれた眼と剣の刺青をカフィンに隠すように。「今日中にアキュリースに行きたいだろ。早く用意して、行こう。」パチン。パチン。黒装束を素早く纏い、優しいが憂いの有る笑顔でレイヴンは語りかける。「むーっ!あーっ。わかっらわ~。女の身支度は時間かかるから~。ちょっと待って~」「わかった。しっかり顔造っておけよ。」ギルドから託された呪われた道具の品々が入る背嚢を背負うとレイヴンは部屋を後にした。「しっつれ~ねぇ~」
ゴトン。ゴトン。荷馬車は揺れ、街道をゆっくりと進む。遠くから香る潮の薫風。路の脇では大蛙のゼノプスが、ぐぇごぐぇごと初夏の訪れを謳歌している。この街道も半年ほど前は、闇と絶望が支配し、生有る者を憎む存在が魂を求めて彷徨っていたというのに。しかし、女、というのはけたたましいモノだ。先程まで寝息を立てていた口、今はもう他人の恋慕と噂話で舌乾く暇もなく捲し立てているのだから。やれ、ディンガルの女王様とトンガリ宰相は怪しい。だの。やれ、この前のエンシャントの魔道アカデミーの大爆発は、マノンの正当後継者が現れた証。だの。「そーそーそ。ソレでね。アンタ知ってる?ロストールの街道で出るのよ~!!何が出ると思う?」「さあ」「あんね。風の巫女さん!覚えてる?みんなでお参りに行った。あの巫女さん・・・・らしき人がさ、 一人旅してる腕の立つ冒険者を誘惑して、一晩で干物同然になるまでヤッちゃうって話!」「そうか」「あんなガキんちょがよ!も~、とんだオサセも居たものよねぇ。『妾は汝の倭子を宿したい』つって!」「そうだな」「その内さ、アレ。ロストールの大将軍さん。光の女王様のダンナの。 アイツなんか街道で風の巫女さん?に襲われちゃうかもねぇ。優秀な子供が欲しいらしいからさ。」ここまで喋って。カフィンの口はピタッと止まる。そして、頭をそっとレイヴンの肩に乗せる。「どうした?眠いのか?」「うんう・・・・何でも無い。しばらく、こうさせて。」ロストールの大将軍。で連想ししまったのだろう。カフィンの唯一の肉親の最期を。エンシャントの古城、勇者達による古き神々との決別の闘い。その場に加勢に立ち会ったカフィンの目にしたのは、闇に塗れて錯乱する『孫』の姿。何一つ肉親らしいことをしてやれぬまま、ロストールの大将軍に首を刎ねられる様を、ただ見届けていた。憎んではいない。当然の結果だから。そう意志を溜飲させるが空虚な感情だけが積もる。おもむろにレイヴンの手を握るカフィン。応えて握りかえすレイヴンの手は、冷たい。「・・・・アンタ。手冷たいね。」「・・・・俺の手は、他人の血を吸い過ぎた。自らの血が・・・・通わないからなのかもしれないな。」レイヴンの明け方に観る夢は過去の視界。失われた過去が忘却から剥離するように蘇り初めていた。贖罪の旅。再び復興した告死天使が彼の因果を応報せん、その日までの。自嘲的にフフッと笑うレイヴン。カフィンがレイヴンの頭を撫でるように叩く。「・・・・違うわよ。アンタの手が冷たいのは、手が冷たくなるまで人のために働ける『優しさ』の証よ。」忌わむ民ダルケニス。肉親を同胞を失い。自身もいつか命を摘まれるのを待つだけの生き方。互いに傷の舐め合いにならぬよう本音を隠し、他人の幸せの火を絶やさぬための旅のパートナーとして歩む。「ってか何しんみりしちゃってんのレイヴン!ほら!暇ならここでエッチしましょ!大丈夫バレないから!」「・・・・何を言ってるんだお前は?」「アラ?お外でするのも気持ち良くってよ?アンタもボウヤなんだからお姉さんに甘えなさいって」ゴホン。荷馬車の幌の外から咳払いが聞こえる。「アララ?冗談よ、オホホホホホッ」
「ところでさ、アイツ。何してんだろうねぇ。」「ああ、アイツか。奴のことだ、それなりに上手い事生きてるんじゃないのか?」半年ほど前に解散したカフィンとレイヴンのパーティー。その中の、互いに『アイツ』だけで理解できるエルフの賢者のことを語るのは、話題を欠いた時と、淀んだ気持ちを流したい時の合図となっていた。
夕焼けで真っ赤に染まった海、時折、ざぱん、とミズチの幼生が飛び跳ねる。水の都アキュリースは、今日も煌々と水と平和を讃え、一日の終わりを告げようとしていた。「・・・・キレーねぇ」「そうだな」「アタシさ、アキュリース来たらさ、昔の彼氏に会いに行く予定だったんだけどさ、留守なんだって。」「そうか」「会いたい時に限って会えない人って居るもんだよねぇ。逆も有るけどさぁ。そうそう、水の巫女さん。 あの娘が昔の彼氏の子供なんだよね。知ってた?もしかしたらアタシの子だった可能性も有るんだから!」「へぇ」「・・・・アンタねぇ、昔の彼氏の話とかしてんだから少しは嫉妬したりとかしなさいよ!」夕日が一層二人を燈色に染め、そして広場に集まる他の男女も染め、世界は平和の色に染まっていた。「そそ、さっきギルドで換金してきたお金で、今日の宿屋は超VIPルームにしたわよ」「おい。その金はロストールの復興支援金に廻す金だろ。無駄使いするなよ。」「あら、いいじゃな~い。世界の平和も大事だけどアタシ達の夜の平和も大事だし、今日も楽しみましょ!」柵に肘を付き、背を屈めながら語り合うカフィンとレイヴン。傍目からはもう恋人そのものの姿、その姿もまた風景の一部として溶けこむように、アキュリースの広場は恋人達の渦に飲み込まれていた。愛を語る者、口づけを交わす者、ベンチに座る女性は男性の膝の上に膝を重ね抱き締め合う。「あんらら。見て見て。アッツアツよ~。アッツアツ。ウフフフフ」「そろそろ、戻らないか。」「何言ってんの!アタシ等だって負けてらんないわよ!」やれやれと開いたベンチに退散するレイヴン。その膝の上にチョコンと跨がるカフィン。「ンッフフ~★ね、チュしよっか。チュ★」レイヴンの返事を聞かず、左の頬に唇を重ねるカフィン。いつもの事とまるで微動打にしないレイヴン。目の前のベンチの男女に眼をやる。鈍い銀色を放つ胴鎧。過去の記憶から鈍色の物質には事敏感になる。眼を細め人物を計る。青年はやや細みの身体と鴉羽のような綺麗な黒髪。背に射す二本の剣。只ならぬ存在感。名の有る冒険者だろうか。恋人、まだあどけない可憐な少女と唇を重ねる顔は中性的で美しい。「ちょっと~!気合い入れなさいよアンタ!」少女もまた只者ではない力を感じる。亜麻色の髪、小柄な身体に似合わぬ特注の全身鎧と身の丈ほどの大剣。
大剣?
蝦反りになり地面に死んだように倒れるレイヴン。膝の上のカフィンがスルスルと顔の所まで滑り降りる。「あらぁ、な~にレイヴン!こんなとこで一戦おっぱじめたいの?アタシはいつでもオッケーよ♪」ぐりぐりと脈打つ下腹部をレイヴンの尖った顎に押し当て、レイヴンの股間を弄るカフィン。「・・・・ヤバい」「もぉ、何がヤバいの?いいじゃない。みんな自分達にラブラブで目なんか行かないわよ!」さらにレイヴンの鼻先に下腹部をぐりぐりと押し当てるカフィン。甘く粘る淫靡な香りが鼻を覆う。あまり表情の変わらないレイヴンの顔が濁り、ビクッと震え一気に額に汗を噴き、目を皿のように丸くした。「ん?どうしたの?お姉さんのエッチな匂いでちんちん硬くなっちゃったの?オホホホッ」
「カフィン・・・・?と・・・・レイヴン?」聞き慣れた幼い声にカフィンが振り向くとそこには先ほどの胴鎧の青年と全身鎧の少女が覗き込んでいる。「・・・・あ゛゛゛゛ぁぁぁっっっ!!!!ノッ!ノエルゥ~!!!!!!」「!!うわぁぁぁぁぁぁん!!会いたかったぁ!!どうして居なくなっちゃったのぉ!!」少女、元カフィンとレイヴンのパーティのリーダー『無限の魂』ノエルの姿。カフィンに抱き着くと、涙し矢継ぎ早に自分の感情を訴えるノエル。ああよしよしとその頭を撫でるカフィン。「あ、久しぶりです・・・・。カフィンさん。レイヴンさん」「や、やあ・・・・・久しぶりだね、ヘッセリンク」そして、もう一人。無限のソウル『神殺し』ヘッセリンクの姿。意外な出会いに固まる二人と対照的に、ノエルの涙を手で拭うカフィンは自身も涙を少し浮かべながら笑った。
「本当、ナーシェス。寂しそうでした。」「へぇ。アイツも馬鹿だねぇ。折角竜王様の小間使いから離れたのに、まだあんな穴ぐらに引き蘢ってんの」「ええ、僕からも一緒に行きましょうって言ったんですが、竜王の側を離れたくは無いって・・・・」「・・・・だろうな。奴らしい。そもそも、その竜王を殺した人物と旅など出来ないだろうね。」そこでヘッセリンクは気不味そうにベットに倒れる。レイヴンからにやりと笑みが漏れる。「意地悪言って悪かったよヘッセリンク。でも、嬉しいよ。君がノエルと一緒に居てくれて。」「そそ、アタシ等の作戦ドンピシャよ!バレちゃったから言うけど狙ってたんだから~」「そんなぁ、最初から言ってくれればよかったのに、レイヴンもカフィンも意地悪!」「うふふっ、イイじゃない。結果が全てなんだからさ。今はボウヤとよろしくやってるんでしょ~」笑顔のヘッセリンクとはにかむノエル、二人顔を見合わせると手をベットの上で重ね合う。「はい。僕にまかせて下さい!それより意外でした。レイヴンさんとカフィンさんも良い感じで。」にんまりとレイブンに目配せするカフィン、それに気付き首をコキコキと鳴らしリアクションしないレイヴン。「さっ、今日は久しぶりに会えたんだからさ!でっかい部屋も借りたことだし朝まで仲良くしましょ!」「あ、カフィンもお風呂?わたしも行く!」「ウフフフッ、久しぶりね一緒のお風呂も。毛生えた?おっぱい大きくなった?」部屋を後にする二人を見遣り、レイヴンはヘッセリンクに真顔で語る。「本当は・・・・。心配だったんだ。ノエルが悲しんでいないか。」「・・・・安心して下さい!僕が絶対ノエルを幸せにします!」真顔で真摯に応えるヘッセリンク。それを聞き、レイヴンも穏やかながらも少し寂しそうな笑顔を浮かべる。「・・・・今の返事を聞いて、安心したよ・・・・。本当に。本当に頼むよ。」
「?ハァ!?何馬鹿を言ってるんだお前は!?」「だからぁ。ボウヤに前から『お礼』するって言って有るからさ、この際ってことで。」湯上がりのカフィンとレイヴンの口論が廊下に響く。「この際も何も、お前はノエルとの仲を引き裂きたいのか!?」「あらやだ。言うわねぇ。さっきお風呂でノエルとも『淑女協定』結んで来たわよ!」「な・・・・。」「アタシさ、約束破るのイヤなのよ。いいじゃない!ソウルイーターん時やアンタの昔のお仲間の時も アンタだってボウヤに世話んなったじゃない!自分の女を勇者様の慰みに差し出すと思えばさ!」「・・・・それを・・・・ノエルが認めたと言うなら・・・・俺は否定しない・・・・。」「フフフッ。そんじゃあ隣の部屋に鍵掛けとくから・・・・アンタも。頑張ってね・・・・。」意味深に微笑むカフィン。部屋に入る瞬間にレイヴンに向かってウインク。
ややあって、湯上がりのノエルが部屋に戻って来る。淡いピンクに色付く四肢を露出させ、部屋着の薄いキャミソールを湯上がりの肌にぴたりと張り付かせて。「やあ・・・・。」無言で怯えたように微笑むノエル。まだ成長しきらない胸、肌の上で玉になり弾ける汗。キシッ。無言のままレイヴンの座るベットの横に腰を下し、うつむきながら、顔を桜色に染めていた。「あの馬鹿から話は・・・・聞いたよ。」こくり、と下唇を噛みながらうつむき頷くノエル。「・・・・俺が言うべき事ではないけど、奴から頼まれたんだろ?ノエル、無理しないでくれ。 何なら今向こうの部屋に行って引っ剥がしてくるよ・・・・。本当、無理しないで・・・・」ふるふる、と下唇を噛みながらうつむき首を振るノエル。「わたしから・・・・お願いしたんだ。」少し仰け反るレイヴン、その姿を見てレイヴンの膝に手を置くノエル。「な、別にそんな、奴の戯れ言に気を使う必要無いじゃないか・・・・どうして・・・・」「違うの。わたし・・・・わたし・・・・どうしても、レイヴンにお礼がしたくて・・・・」「お礼・・・・?」瞬間、飛び跳ねるようにノエルがレイヴンの唇を奪った。「あの、わたし、寂しかった!レイヴンもカフィンも居なくなって、ナーシェスも。それで、 お礼も出来なくて、いつもわたしを守ってくれた優しいレイヴン。本当に、あの・・・・」次第にえずきだすノエル、ヒグッ、ヒグッと喋れなくなるくらい息を切らせ、涙を浮かべる。「こんな、お礼の、仕方しかできないけど、レイヴン、私の気持ちを、心を、受け止めて下さい!」熱い肌、熱い腕、熱い太腿、熱い吐息を絡め抱き付く。真意を解しレイヴンも背中に手を置く。初めて心の底から守りたいと思った存在。殺める事以外知らなかった男に命の煌を与えた無垢の瞳。今、抱擁の中で互いに想い人が居ながら、一夜限りの伽を訴える。(カフィンは、この事を言っていたのか・・・・)泣きじゃくるノエルの唇を優しくレイヴンの答えが包むと、キャミソールの肩紐に指を滑りこませた。
「レイヴン、上手くやってるかなぁ」「あっ・・ハァ、ハァ、あの、カフィンさん。何かいいました。」寝そべるヘッセリンクに淫魔のように跨がりながら腰を捻り上下させるカフィン。「んん。何でも無いわよ~。ボウヤ?どうお礼の味は。気持ちイイ?もっと可愛い声聞かせてネ♪」舌をぺろんと出すカフィン。情けなくそして艶っぽく口を半開きにするヘッセリンクの口腔に唾液を垂らす。「ぅん・・・・。気持ちいい、です。」乙女のように甘い喘ぎ声を漏らす。
ダンッ!!壁に何かが叩き付けられた音。その音にビクッとする二人。そして、音がダダダダダダッ!!!!と殴打する音に変わり、鍵を掛けたはずのドアの蝶番が粉砕し前のめりに倒れ、暗いドアの向こうに羅刹のような影が浮かんだ。「!!!!!ヘッッズゥヴェリィングゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」羅刹の影の怒轟。基い、オーガの容貌を浮かべた全裸のレイヴンが叫ぶ。そして、その身体にひしと抱き着く全裸のノエルの尻を片手で抱え、ベットの二人に歩み寄った。「なぁ!?レイヴン、アンタ何して!!ちょ!!ノエルに何してるんだよ!!」「黙れっ!!貴様こそノエルに何をしたっ!!返答次第ではこの場で屠る!!」「あっ!アンタこそノエルに何したダヨ!?僕の恋人に!!」キョトン?と謎のいがみ合いを眺めるカフィン。「あ、ごめんなさいボウヤ。レイヴンとノエルのは色々ワケ有りで、言わない方が良いかなって・・・・」「カフィン(さん)は黙ってろ(て)!!」キュッと膣に力を加えるカフィン。その快感で勢い無くへろへろ寝そべるヘッセリンク。「ちょっとちょっと!!ボウヤが怒るのは解るとしてさぁ。アンタは何を怒ってんのよ~」無言で鬼の形相を保ったまま直立不動のレイヴン。見ると、抱えるノエルがゆさっゆさっと蠢いている。命の煌を与えた無垢の瞳、は両眼にはもう無く、穢れと快楽に染まる濁った瞳で躍動するノエル。「あっ、ああ~・いもじぃぃ(気持ち良い)へ~ぶんもっとひんぼついて~♪(レイヴンもっと突き上げて)」上の鬼を見遣り、目の前の変わり果てた色情魔を見遣り、そして、八の字に歪めた眉でヘッセリンクを見遣る。「・・・・ナニしたの・・・・・・?」
「れね~♪へっへいんくさんにね~。おまんごににせひんぽいれらりてわんわんのまねさせられたり~・」ゆさゆさとレイヴンの上で小さな尻を欲望任せに振るうノエルを中心に、車座に集まる4人の座談。「らとね~★わんわんのかっこうでねおそとでおひっこさせらえたぃね♪おひりほじほじさぇてうん」ビタ、とカフィンの手がノエルの口を覆う。その掌をぺちょぺちょと舐めるノエル、だったハズの存在。「ボウヤ。凄いじゃない。まるで物狂いみたいよノエル。」白い顔が月明で一層白く染まり、即座に命を奪わんとせん鬼女のごとく静かに怒り震えるカフィン。「・・・・まあ、他人の、情事に、俺達が、口出しする、権利なぞ、無いんだろうが。」土色の肌を赤銅色に熾らせ、すでに二人ほど突き殺してきた荒ぶる牡牛のような形相で諌めるレイヴン。「・・・・あんまりじゃぁ無いか!?」「あ・・・その、レイヴンさんもカフィンさんも、お、落ち着いて。」「えーぶん★もっとびんぽうごかひて~♪のえぅひぇぶんだいしゅぎぃ~・」ベットに手をつき、サカリのついた雌犬のように腰をくねらせ、小さな尻が産む快楽でレイヴンの顔が少し緩む。「あの、普段からこんなんじゃないんだ、ホント、夜だけだよ。僕だってこんなになるなんて・・・・」「こんなになるなんて、で、外に裸で連れ回したり、縛り上げて犬の真似させて辱めたりしたのね。」月夜の闇にぎらりと光る赤い瞳。その瞳に怯え、正座で縮こまるヘッセリンク。「は、はい。すみません。でも、でもノエルを愛してるってのには変わりないです!ホントです!」
・・・・・・・静寂に、ぺちょ、ぱちょ、と濡れた肉のぶつかる音と子犬のような吐息だけが響く。「・・・・わーかったわ。アタシ等がボウヤ達のお勤めに口出す筋合いも無いもんねぇ。」「・・・・ああ。」「あ、ハハハッ。なんか、興醒めしましたよね・・・・今日はもう寝ません????」なんとか言い繕ってこの場を逃げようとするヘッセリンクの肩をグイっと抑え、「あらヤダ『ヘンタイ』ちゃん。まぁだ夜は始まったばかりよぉ。」と耳もとで囁くカフィン。「ウフフ。アタシ達のノエルをこんなにしてくれたお礼もしてあげなくちゃあねぇ。でないと不公平ね。 ノエルと一緒にボウヤにも、エルズの先からはざまの塔まで観たこと無いトコ連れてったげるわヨ♪」赤い瞳が燃え盛る炎のように染まり、ぞわり、と背に悪寒が走り、動けなくなった。
枕に顔を埋め腰を浮かせて俯せるヘッセリンク。浮かせた尻の双丘にカフィンの細長い舌が蠢く。カフィンが怖くて動けない。レイヴンも怖くて動けない。何より今与えられる快楽で動けない。くちゅ、むちゅ、と今まで誰にも弄ばれたことの無い「器官」に指で舌で突かれる悦楽。「はぁっ、ぁっはぁっ」ヘッセリンクの声のオクターブが高まり、女そのそもの吐息へと変わる。「んー、むちゅ・・・・・んどう?ボウヤ?ちんちんよりも気持ちいいでしょ~。」舌を離しても器用に指をくねくねと蠢かせ、ヘッセリンクを導くカフィン。「もぉ・・・・ホント、許して下さい。イキそうです、駄目です。もぅ・・・・・あぁぁぁっ!!」カフィンの余った手がヘッセリンクの乳首をにじりと抓り上げ、細い悲鳴を漏らす。「イクなら勝手にイキなさいボウヤ。アタシはポコチンに触る気は一つも無わよ。世の中甘く無いの。 ボウヤは責めるのが好きだった癖にこういう嗜好も有るのねぇ。可愛いんだからぁ。」ぼた、ぼた、と情けなく性器から溢れるカウパー。水上げされ初めてを味わう娼婦のように枕を噛む。「どう?『おまんこ』の味は。気持ちイイでしょ。今、可愛い可愛い女の子にしてあげるからネ。」いつの間にか、カフィンの腰には男性器のハリボテが装着され、そそり立っていた。「そこで問題です。ボウヤは今どうして欲しいでしょうか??」ぐりぐりとヘッセリンクの尻に其れをあてがうカフィン。「・・・・うぅっ。あ・・・・え?」今度は両手で両乳首を抓り上げる。溜まらず嗚咽を発するヘッセリンク。「言わないとずーっとこうよ?シタいんでしょ?あと、喘ぎ声は『あん』と『きゃん』意外認めないわよ」「いっ・・・・・入れて・・・・・欲しいです・・・・」「どこに?はっきり言いなさい?」躊躇するヘッセリンクの乳首がカフィンの指握で潰され、行き場の無い苦しみと快楽が思考を狂わせた。「お・・・・おまんこに」「ん?ボウヤは男の子なのにおまんこがあるんだ、ヘンタイねぇ。でも何処のおまんこ?言ってごらんなさい」「お尻、お尻のおまんこです。お願いします。入れて下さい。」「フフフッ。よーく出来ました『子猫ちゃん』ご褒美よぉ」
ズンッ。ヘッセリンクの直腸、ではなく、女性器が炎の柱に貫かれた。今まで、カフィンが吐いてた台詞と同じようなことをノエルに吐いていた自分が、悦に狂わされたという事実。狂わされ「んっっ!あんんっっ!!」と女のように喘ぎ尻を犯されるヘッセリンク。その姿を見て「流石に気の毒だな・・・・」と同情するレイヴン。そして、もう一人の『気の毒』が彼の膝の上で絶頂を迎えていた。「うっっぁっっっぁぁ♪いぐぅぅ!!へーぶん★のえぅあっちにいっぢゃう~・」恐らく、相当前からアッチに行っているノエル。千年の恋は醒め・・・・無いが、あまりに気の毒。ガクガクと腰を震わせると、じわりと愛液が溢れだし、白目を剥き鼻水と涎を吹き出して、果てた。が、直ぐに復活。違う意味で千年を見通した目のノエルがレイヴンの性器に今度はアヌスをあてがう。「えーぶん★こんどおしりぃ!!いっぱいおかんちょおしでっ♪」レイヴンがリアクションを取る取らないの前に、ノエルの尻がレイヴンを飲み込んだ。今まで我慢していた絶頂に達しそうになるレイヴン、アヌスのきゅんきゅんと締め付ける感覚。「ノ・・・・ノエルッ!だっ・・・・駄目だ、こんな、間違ってる。ヤメ・・・・」「だめぇ♪のえぅのけつでへーぶんぴゅっぴゅするまでやめなぃよぉんっん・」ドクン。我慢の限界がノエルの腸壁を覆う。汗がつらつらとレイヴンの顔を伝い、虚無感に包まれる。「あはぁ★へーぶんせ~しでたぁ★のえうのけつでいったったぁ・おかんちょきもぢいぃよぉ!」「・・・・もう、辞めよう。ノエル。そんな言葉吐かないでくれっ!!」少し涙を浮かべるレイヴンにかまわず、また腰をくねらせだす。「だぁめぇ★のえうまだおひりでいってなぃもん!のえぅもぴゅっぴゅするまでやめなぃよぉんっあ・」
阿鼻。叫喚。
過去の絶望とはまた違う、自らすらも飲みこまれてしまいそうな退廃的で淫靡な絶望。四つん這いになり腰をくねらすノエルの小さく細くいやらしい背中を見ないように、顔を手で覆う。「・・・・レイヴン、アンタもさ、意地はってないでコッチ来ればいいのよぉ。」同じく四つん這いになる、ヘッセリンクという名の『女』を責め立てるカフィンの声。「見てボウヤを!すっかり女の子よ!いつかアンタにも味あわせたげるね。アタシの男は皆体験してるのよ」一瞬。赤鎧の巨躯を駆る老戦士の姿が眼底に浮かんだが、レイヴンは敢えて其れを無視した。「ンッ!あっ・・・・アッ・・・・あんんっ!!んっ・・・・・」ヘッセリンクはもう、彼の『女性器』と『男性器』が交差する快楽で女の其れと変わらぬ声で喘いでいる。神をも殺した魔剣士。世界を平和へと導いた勇者。様々な女性との浮き名も馳せた美丈夫。は留守のようだ。「見てぇ。ボウヤも、それにノエルも幸せそうじゃない。肩肘張らずに幸福を満喫してるじゃない♪」
また、ヘッセリンクの白濁がベットのシーツを汚した。「あらボウヤ。またおまんこが気持ちよくて潮吹いちゃったの?駄目ねぇ」「は・・・・はぃ。ぼくぅ・・・・わ、わたしはおまんこが気持ち良くて射精しちゃうヘンタイです」その阿呆なやり取りを悲し気に望むレイヴンと、にへらへらとにやけて気をやるノエルの躍動。這い這いとノエルはヘッセリンクに歩みよる。互い目を合わせる。「へっへぃんくさん・かわいぃ♪すごいえっちらよぉ♪らいすきぃ・」「ノ・・・・ノエルゥ・・・・・」レズビアンのように、四つん這いで互いに身体を弄ばれながらも、二人だけの空間のごとく唇を重ねた。「見てよ。二人とも、凄い嬉しそう!」「・・・・」「アタシさ、幸せならどんな形だって幸せなんだって思うのよ。ビビって目の前の幸福逃すなんて馬鹿よね」「・・・・」「ボウヤも、ノエルも、喜んでくれるならこれも幸せの形で、いいじゃない。それにアタシ達も。 真夏のって真夏じゃなわね。初夏の夜の夢ってことで、幸せの夢に溺れていられるなら、それでさぁ」「・・・・」「ねえ、レイヴン。アタシ達も、チュウしましょ。」窮屈そうに背と首をレイヴンの方に伸ばすカフィン。唇を尖らせて目を瞑る。・・・・無言で、レイヴンもカフィンの唇に応えた。濡れた舌を絡め。短いながらも愛を確かめあった。薄目を明け、カフィンの顔を確認しようとするレイヴン。ガキュウウウウウウウウウウウッ────────赤い眼が輝き、レイヴンの漆黒の瞳から右脳と左脳へと稲妻のような波動が押し寄せた。世界が・・・・回る。「・・・・アンタもさ、たまにはいいじゃない。一緒にアッチ行こうよ、アタシの彼氏なんでしょ。お願いよ」精神を操る魔法?それとも快楽にふけさせて従僕させる魔法?とにかく心を砕かれたのは事実。唇にまた柔らかい感覚。赤い瞳。「好きよ。レイヴン」と言葉が耳に粘り、世界が1080度回転し記憶が飛んだ。
─────次に硝子体から脳へと飛び込んだの物は、眩しい光。朝の日射しが、穏やかな輝きを放ち、浅黒い肌を晒し全裸でベットに寝そべるレイヴンの身体を照らす。首を少し傾げると、レイヴンの股間ですやすやと眠るノエル、俯せに死んだように眠るヘッセリンクの姿。そこで、「・・・・こちらが現実なのか!?」と焦燥感に包まれ、レイヴンは起床した。
明け方の悪夢は見なかったが、昨日の夜の記憶も無い。悪い酒でも呷ったか?断片的な記憶を紡ごうとする。ノエルも裸。ヘッセリンクも裸。確か、昨日、カフィンと廊下で口論になり・・・・?─────潤むノエルの瞳。汗ばんだキャミソール。─────小さな躍動、果てても消えぬ悦楽のような絶望。─────カフィンの嬌声。優しい唇。─────唇を交わす、白い肌と薄桃色の小さな体、その姿を眺めながら何故か自らにも、絡む『舌』─────股間でぎこちなく唇が蠢く、長い睫毛の『黒髪』の女。キャラキャラと笑う少女と女の朧な影。─────ボルダン女のような美しく隆起した筋肉を描く背中。汗で濡れる後ろ髪。愛おしく絡む肉壁。─────「レ・・・・レイヴンさん・・・・わたし、おまんこでイッちゃ!!」紡いだが、何かが自分を邪魔して、いや自分を「守ろう」として、記憶はそこで途切れていた。・・・・商売女でも雇ったのか?いや、違う、とにかく何か危険な橋を渡らされたような・・・・。「おっはよ~!レイヴン!」カフィンが壊れたドアを背にすでに支度を済ませて立っていた。「さ!今日も元気に頑張りましょ!ってかアタシがアンタより早く起きたの初めてよね??」
「じゃあ、寂しいけどここでお別れね。ノエル、道中気をつけるんだよ」「ハイ!カフィンも、レイヴンも気をつけて!また会おうね!」「うん。ノエル。アルノトゥーンに行くんだったね。しっかりな。それと・・・・ヘッセリンク」目を伏せていたヘッセリンクがレイヴンの声でビクリと震え、顔を真っ赤に染め長い睫毛を濡らせ目配せた。「・・・・昨日のこと、何が有ったが俺も覚えてないが、もし迷惑をかけたのなら済まない。 ノエルのことは頼んだよ。昨日の約束は俺は忘れていない。キミ達の活躍と約束、どちらも期待してるよ」耳まで真っ赤に染まるヘッセリンク。その姿に、何か場違いなことを言ってしまったかなと不安になる。「は・・・・い。わた・・・・・僕頑張ります・・・・・。」するりとその肩にカフィンの手が伸び、またビクつくヘッセリンク。「ホント、ボウヤには頑張ってもらわないとね。ノエルにアレ渡しといたから夜はいつでも変身できるわヨ」小さく頷き、頬を燃やすヘッセリンクを、ノエルは不思議そうに見遣り。解らないがとりあえず微笑んだ。昨日の記憶はカフィンとヘッセリンク以外には無い。ノエルは夜ならば思い出せるが。
「そ~んじゃ~ね~!!また逢いましょ~!!」揺られる馬車の中のカフィンとレイヴンに、元気に手を振るノエルと頬を染め小さく手を振るヘッセリンク。その姿がやがて小さくなっていき、地平線から消え。またいつもの二人の一日が始まる。むふふと笑うカフィンに、何だと問うレイヴン。記憶が無いなら何も無いのだと心は既に旅先へと向かう。「アレらし~わよ~。男がね。男と男の営み覚えちゃうと抜け出せなくなるらしいわよ~」「そうか」「まして、男のオンナノコの身体だったら尚更らしいわよ~、特にオンナノコの方がぁ♪」「そうだな」「あ、そうそう、アタシ先に起きたついでにギルドで仕事請け負ってきたからね。」手配書を渡され確認する・・・・。タレモルゲ・・・・・竜王の島・・・・・。「おい、何でこんな誰の為にもならない仕事を?そもそもタレモルゲなら乙女の鏡ので良いだろ?」「んまぁ、言うわね~。少なくとも一人くらいの為にはなるってもんよ!」「誰のだ?酒屋のか?それなら行方不明や魔物の討伐の方がよほど役に立つだろ」「竜王の島の洞窟で、一人でウジウジして引き蘢ってる馬鹿を引きずり出すくらいの役にはさぁ」たなびく金髪の賢者のことを思い出す。そう言えば、昨日ノエルが、奴は竜王の島に居ると・・・・。「アイツ、今まで沢山の人を不幸にしてきた。竜王様の意志って奴で。でも結局アイツだって縛られていた。 その呪縛から離れたのに、アイツはずっと存在しない鎖に縛られてる。流石に不憫だなってさ・・・・」「しかし・・・・奴の自由だろ。そもそも歴史を良いように改編させてきたのに今さら・・・・」「違う。血とか、信奉とか、宿命とか、時代とか、そういった物に縛られて生きていくなんて間違ってる。 アイツには1300年分の償いをする『権利』が有る。だから、ゴメン。上手く言えないわ・・・・」血、時代、それに縛られて。抜け出せず散華した『孫』の姿。脳裏で呪い恨みつらんだ断末魔が聞こえる。少し悩み。カフィンの顔色を見て、レイヴンはカフィンの手を繋いだ。「・・・・そうだな。俺も、奴のいじけたツラに一発お見舞いしないと気が済まん。」曇った表情のカフィンが、その言葉を聞き、少しだけ笑顔が戻る。「・・・・お前の手は、温かいな」握られた手を指一本一本重ね、冷たい手が温もる手と絡まり合う。「・・・・あったり前じゃない!アタシの手が温かいのは、 他人の為に一生懸命働けるアンタの手を温めてあげる『強さ』の証なんだから!」いつもの笑顔が戻り、赤い瞳がまた輝きを戻した。優しく頷くレイヴン。その姿を見てまたいつものカフィン節で場を盛り上げる。「全く、昨日今日生れたガキんちょと一緒にしないで!アタシが何年生きてると思ってんのよ!」「120年」「そぉ~、ひゃくに・・・・って何!歳のこと言わさないでよ!」「先に何年生きてるって行ったのはお前だろ」「んもぉ~可愛く無いわねぇ!!」
ゴトン。ゴトン。荷馬車は揺れ、空は希望色に染まり。世界は平和に包まれていた。
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