夜も更けたロストール。今日は、スラムの酒場から美しい歌声が聞こえてくる。何事かと常連のゼネテスが覗いて見ると、意外な人物が居た。
アトレイア王女だ。何で彼女がこんなとこに…そういぶしかんだゼネテスだったが、ほかに見知った顔を見つけて合点がいった。
レルラがハーブを弾き、ルルアンタがアトレイアの歌にあわせて踊っていた。デルガドが酒を飲みながら楽しそうに手拍子を打っていた。そしてセンナがニコニコと皆の様子を見て笑っていた。
やれやれ、とゼネテスが頭をかいていると、センナがゼネテスに気がついて、手を振って招きよせた。
「何だよセンナ、こんな盛り上がってんのに、お前は相変わらずそれか」ゼネテスがセンナの横に座りながらセンナが飲んでいるお茶をからかうと「いーや、今日はブランデーを落としてるんだ」そう言って誇らしげにティーカップを口に運んだ。「……名前が売れても、酒は相変わらずか。 いつか、お前さんと飲み明かしたいと思ってたが、諦めるべきだな、こりゃ」
しばらくセンナと話していたゼネテスだったが、すぐに酒飲みのデルガドに捕まってした。
そんな酒場の様子を、眉根を寄せた顔で見ている女性が居た。ザギヴだ。肴のテラネ茄子にも手をつけず、かなり強めのお酒をハイペースで飲んでいるのに、まったく酔った様子が無い。
アトレイアの歌が終わり、拍手が沸き起こる。喝采を浴びながら、アトレイアはセンナに駆け寄った。「センナ様! どうでしたか、私の歌は?気に入っていただけましたか?」「うん、素敵だったよ」「本当ですか? ありがとうございます!」そういって笑うアトレイアの笑顔は、かつて闇の王女を自称していた彼女からは想像出来ないほど明るいものだった。
それを見て、ザギブは指をかんだ。その表情は、アトレイアを睨んでいると言って差し支えないものだった。
アトレイアがセンナの横に座ろうとすると客の一人がアンコールを希望してきた。すると他の客も次々にアンコールを希望し、あっという間に酒場は「アンコールッ!!」の大合唱になった。
戸惑っているアトレイアにセンナが頷くと、アトレイアは張り切ってステージへと戻っていった。
「馴れ馴れしいのね。私のセンナに」「其処からどきなさい」「そんな顔でセンナを見ないで」「センナ、そんな人に優しくする必要はあるのかしら?」ブツブツと呟くザギブの声はアトレイアの美しい歌声にかき消されて誰の耳にも入ることは無かった。
「ザギヴ?」気がつくと、ザギヴのすぐ側にセンナが立っていた。アトレイアばかり睨み付けていたので気が付かなかったらしい。「…何か用かしら?」不機嫌を隠すことも無くセンナを睨む。「いやさ、さっきからずっと一人でバカバカ飲んでるから、心配になってさ。 大丈夫か?」「…正直に言えば、ちょっと大丈夫じゃないわ。 ちょっと、飲み過ぎたみたい」大嘘である。「じゃあ、宿まで送っていくよ」「…いいのかしら?アトレイア姫をほって帰っても」「ああ、ゼネテスさんが送ってってくれるって」
センナに肩を借りながら、ザギヴは歩いていた。本当は足取りも確かなのだが、あんなにやきもきさせた罰として、何も言わず甘えさしてもらった。
冒険で鍛えられたセンナの肩に触れていると、妙な気持ちになってきた。酔った振りをして、「ああ、暑いわねえ」と言いながら胸のボタンをはずしていく。センナがあわてて目をそらしたが、ちらちらと胸の谷間を見ているのが解る。
宿に着き、ベッドまで運ばれると、ザギブは「ブーツ、脱がして」と、センナに頼んだ。「しょうがないなあ」と言ったセンナであったが、視線ザギヴの足に向けると息を呑みつばを飲み込む音が聞こえた。
常日頃から、つい視線を送ってしまうザギブの絶対領域なのだ。しゃがんで、おずおずと、ザギヴのブーツを触るセンナ。
「ううん、そこじゃないわ、センナ。 ホックは、太ももの内側にあるの」センナの手を内ふとももに導くザギヴ。
留め金を探して蠢くセンナの手に腰が我知らず動き、声が上がる。センナの位置からだと、間違いなく下着が見えているだろう。だが、不思議と隠そうと思う気が起きなかった。むしろ、食い入るような視線が欲しかった。マゴスの胎動も無くここまで淫らになったのがはじめてだった。
「ええと、これかな」ぱちん、と音がして留め金が外れた。両方の留め金をはずし、センナはするするとザギブのブーツを脱がす。
ミニのスカートからのびた生足は、上半身のきっちりとした軍服と合わさり、なんともいえない色気が出ていた。そしてザギヴはそんな自分の色気を自覚し、もじもじと足をこすり合わせ、更なる色気を出そうとした。
「……ザギヴゥッ」センナは大声でザギヴの名を叫び、ベッドに飛び込んできた。
ザギヴはセンナを受け止め、抱きしめた。そして、センナは……
「…………ぐう」ザギブに抱きしめられたまま、寝息を立て始めた。
「……………はあ?」いきなり眠りだしたセンナを抱きながら、ザギヴは思い出していた。センナが酒場でお茶にブランデーを落としていたことを。「…………………なんなのよ、あれっぽっちで、あなた………」ザギヴはへなへなと体から力が抜けていくのを感じていた。
「…………………まあ、これはこれでいいシチュエーションかもしれないわね」そう呟くと、ザギブはセンナの服を脱がし始めた。
翌朝。センナはひどい二日酔いとともに目を覚ました。そのせいで気が付かなかったが、センナの指は、まるで夜の間中、濡れている場所に入っていたかのようにふやけきったいた
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