「入っていいわよ。――」 落ち着いた女の声が室内に響く。部屋に迎え入れた相手は、先の戦いにおける英雄、そして今は彼女の親衛隊長――いや、ナイトを務める男だった。「鍵くらいかっておけよ。無用心だぜ」「あら?そんなことが無いようにあなたがいるんじゃないの?親衛隊長殿?」 憮然とする男の様子に、クスクスと笑いを漏らす。黒髪の女は自室に用意された机から身を離して、棚に置かれた茶葉を取り出して、予めテーブルに置かれていたポットを用いて茶を入れだす。夜着を纏ってのことであったから、不自然な光景ではあったが。「…こんな時間まで仕事やってたのか。無茶するなよ」「ふふ、ありがとう。寝ようとは思ったけどね。直前で気になったこと思い出しちゃって。はい」 差し出されたカップに注がれた液体を口の中に入れる。彼が好んで飲むエイジア・ティーの味であった。「皇帝陛下に茶を淹れてもらうなんてなんだか悪いな」 冗談めかしていう彼に対して、他の人間には絶対見せない穏やかでどこか幼さすら感じさせる表情をする。「もう。他の人にはやらないわよ。他ならないあなただからなんですから」「光栄に思います。ザギヴ様…」 大げさな手振りで礼をすると、ザギヴは長い黒髪を掻き揚げて、悪戯っぽくする。「あなただけが受けることの出来る特権よ。光栄に思って貰わないと困るわ」 お互い目を見合わせて、少しの間笑いあう。穏やかな、ディンガル城の一室での夜が更けていく。
「にしてもさ、本当にあんまり無理するなよ。けっこうお前、自分を追い詰めることが多いみたいだから」「そんなに心配?」「ああ、俺はお前が苦しんでいるところ、沢山見てきた積もりだからさ。マゴスは居なくなったとはいえ、やっぱりな」 ザギヴの中に住み着いていた円卓騎士の魔物、マゴスは彼の力に助けられた彼女自身が追い払うことに成功した。それでも、あいも変わらず心配をしてしまうのは、彼女の生真面目に考えすぎる性格が、どこかで自分を追い詰めてしまってはいないかという漠然とした不安。それと、なによりは、愛するが故といったところなのだろう。しかし、「ふふ、心配してくれるのは嬉しいわ。でもね――」 薄く紅を塗った唇を彼に近づけて、そっと求める。彼もそれに応えて唇を重ね合わせる。「ん…でも、あなたこそ、無理していない?」 一旦唇を離して、若干目を潤ませて彼の顔を真摯に見上げる。それに彼は一瞬つまるが、「俺が?」 と、軽い様子で返そうとする。但し、彼女の瞳からは逃げるようにして。そんな彼を見て、ザギヴは彼の裾をくいっと引っ張る。「不安…なんじゃないの?」「だから、何がだよ」 彼の様子に苛立ちが生じる。だけど彼女はひるまない。「…あなたの中の、ウルグのこと」「!…」 一瞬彼の緊張がザギヴにも伝わった。それは彼女だからこそ理解しえたこと。自分で無いもの、悪意の塊を内に秘めて、その異物に対してなんでもなくいられる筈がないということ。
彼は不安の原因までも言い当てられて、少しの間呆然としていた。が、彼女に心配を掛けたくない一心で、つい嘘をついてしまう。「な、何言ってるんだよ。俺は大丈夫だって」「嘘」 間髪いれずに、ザギヴの切なそうな声が飛ぶ。よろめく彼をそっと引き寄せて胸に抱く。彼はほのかに甘い香りを感じた。「ねえ。あの時、あなたに出会って以来、きっと私はずっとあなたに助けられてきたのよ」 優しくそう言う彼女に向かって、彼はかぶりを振った。「違う…あれは、お前の力さ」「ええ、そうね。確かに私の力でもあるわ。でも、矢張りあなたがいたからこそこうやってここに居ることが出来るの」「ああ…」「今だってそう。私はあなたにずっと助けられている。それは凄く嬉しいことなの。でもね」 彼に向かって更に身を寄せる。「やっぱり、それだけじゃ満足は出来ないの。私たちは…その、恋人でしょ?だったら、助けてもらうだけじゃなくて、あなたの力になりたいのよ。そのほうが、ずっと素敵でしょ?」「…ザギヴ」 泣きそうな声で彼女の名前を呼ぶ。それに応えるのは、限りなく優しい音色だった。「なに?」「…ゴメン」「ここは謝るところじゃないでしょ?」「…ありがとう」「…うん」 すすり泣く彼を、彼女はどこまでも優しく包んだ。
「ね?…話すだけで、大分楽になるものでしょ?」「ああ…」 ザギヴの胸に寄りかかりながら、落ち着いて呟く。トン、トン、とまるで子供をあやすようにしながら、ザギヴは彼の苦しみを聞いていたのだ。「…ありがとうな、ホント…」「いいえ。どういたしまして…」数刻ほど時が流れると、彼はためらいがちに呟く。「なあ…その、また、いいか?」「ふふ、スケベねあなたって…」 既に身体を交えたことは何度もあるのだが、彼は毎回求めるときにどもる。そんな彼を軽くからかうのも、いつもの習慣であった。ゴクリと彼は一旦唾を飲み込み、ザギヴを寝台につれていく。そして、寝かせようとしたときに、彼女に手を払われた。「ん?…ど、どうしたんだよ」 急に拒まれて、彼はうろたえ始める。いつもなら彼女はここでベッドに押し倒されて、そのたおやかかつ、男の欲情をそそる身体を存分に味あわせてくれるのだが…。ザギヴは悪戯っぽい顔をして、「フフ…考えてみれば、こっちもいつも貴方にしてもらってばかりだったわね…。だから…」 急激に艶を増した微笑で、「たまには私からしてあげる…」 と、指をぺロリと舐めて、上目遣いで見上げる。その仕草に息を呑んで、「ああ、よ、よろしく頼む…」 と、これからの情交に期待を寄せた。
「フフ、汚れると行けないからこれは脱ぐわね…」薄着だった上に、脱ぎやすい形状であったので、しゅるり、ふぁさ、と音を立てた先には、もう既に彼女の裸形が、室内の灯りに浮かび上がっている状態であった。ザギヴを特徴づけるのは、勿論その丁度良い熟れ頃の肉付きでもあるのだが、それ以上に透き通るような白い肌が挙げられる。どこかしら魔性が漂うその白さ。それが余計にゾフォルの予言に更なる信憑性を持たせていたのだろうと予測される。もっとも、こと身体を交えたときには、それがなんとも言えない朱にそまって、更なる色っぽさが出てくる、なんてことは、彼しか知り得ない事実であったのだが。 おもむろにザギヴは、彼をベッドの端に座らせて、かしずく体勢を取る。彼はそれを冗談めかして、「こうしているとどっちが上司なんだかわからなくなるな」 などと言うのだが、皇帝陛下は、それをフフ、と笑って返した後、ゆっくりと彼のパンツに手をかけて下ろし、下着を露出させる。そして、その下着すらも下ろすと、彼の逸物は微妙な硬さでもって、彼女の目の前に姿を現した。「あら…まだ元気が無いのね…。フフフ…」 ぽう、と顔を赤くさせながらも、彼のモノに指を絡めて、ゆっくりと擦りはじめる。その行為は最初はぎこち無いものであったが、徐々に彼の先が濡れてくるにつれて、スピードもアップしていく。硬さや反りも、猛烈に回復していった。
「フフ、そんな苦しそうな顔しちゃって…意外とこういうのに弱いのね。…次のとかに耐えれるのかしら」 挑発的にそういうザギヴの台詞に、彼はピクリと反応した。「…いつもは、お前だって…」「ふふ、なぁに?かわいいわね…」 そんな彼にとっては何かショックな一言を呟いて、次の行為に移っていく。ぺロリ、と、彼の赤黒いそれに、舌を這わせていく。「ふふ、奇麗にしてあげるわね…」 先走りを舐め取るようにして、丹念に舌で舐め上げる。何とも言えない中途半端な快感に顔をしかめる彼であったが、尿道のあたりに舌先があたると、思わず呻いてしまう。白濁した先走りを舐めているザギヴは、「ん…あ、苦いわぁ…」 などといいつつ、一旦舌を離す。微妙に白濁液が糸を引くのを見ながら、パクリ、と彼のモノを咥えた。絶妙な暖かさがモノに加わる。「くちゅ、んちゅ…ちゃ…」 淫猥な音を立てながら、赤い唇がモノを奥、手前へと扱き始める。その動きは緩慢ではあったが、舌による攻撃も交えながらのもので、当然ながら相当の刺激を生む。それに加えて、この光景。身体全体を赤く火照らせて、アレを加えながら上目遣いに見上げてくる。こちらの反応を確かめながら、懸命に気持ちよくさせようとする心が伝わってくるのが何よりの刺激となった。
「ん…くちゃ…ぴちゃ…くちゅ…」 徐々に彼女の唇によるストロークは激しくなっていく。更に左手で袋をもいじられたことで、彼の我慢も限界に来ようとしていた。「やば…ザギヴ、出る…!」 するとザギヴは嬉しそうにして、更に動きを速める。髪を振り乱しながら、続けるザギヴに、本当に限界を感じた彼は思いっきり彼女の頭を引き寄せて、口腔に精を放った。「うぁぁぁ!」「ん…ん…んぐぅ…」 余りに勢いよく放たれたそれに、ザギヴは頭を離してしまったので、白濁液は口からこぼれ、胸の合間を伝ってそれを汚した。が、「ん…あ…こくっ…」 口の中に残ったそれを飲み下し、口の端にこぼれた分も指ですくって舌で舐めとる。その様子がすざまじく淫靡で、高揚してくるものを彼は感じた。「ふふ…凄い量。そんなに良かった?」「ああ…」「ありがと…じゃあ、ベッドの上に仰向けになって…」
言われたとおりに天井を向いてベッドに倒れこむと、彼に背を向けるようにして、彼にまたがった。四つんばいになって、その肉付きの良い臀部を揺らしながら彼の頭に近づけると、無意識に伸ばされた彼の手によって、その桃尻がやわやわと揉まれているのを理解した。「ん…あん…ちょ、ちょっと待って…」 尻をやわやわと揉まれる感触に耐えながら、なんとか、彼の顔に、それを近づける。彼の目の前に現れたのは、僅かに濡れたサーモンピンクであった。「ねぇ…私がしてあげたように…ね…」 四つんばいのまま振り向いて、懇願の瞳を向ける。自分のペニスからも、彼女による手淫が行われているのが分かる感触がするが、また咥えてくれるのだろうか、とも思ったのだが、「その代わり、私もあなたの好きなコレでしてあげる…」という声で、それを理解して、期待をする。「じゃ、いくぜ…」 と一声掛けてから、顔の近くまで来ているサーモンピンクに舌を這わせていく。すると、女の香りが鼻から頭に向かって入ってくるような気がした。「ひ…ひぃあ…あ、ご、ご褒美…上げるわ…」 既に余裕が無くなっているというのに、ザギヴは虚勢を張って、「彼の好きな」モノで、逸物を挟み込んだ。
「う…うぉ…」 極上の柔らかさが、彼自身を包み込んでいるのが伝わった。「ふ…ふふ…どうかしら、私の胸の中は…」 そう言って、やわらかくておいしそうな胸を、上下にゆさぶり始める。「熱い…ピクピクしてるわ…」先ほどの彼の分がかかっていたので、それが潤滑油の役目を果たして、動きをスムーズにさせた。胸を使って絶妙な感覚で扱いてくるのを受けて、彼も途切れ途切れながら、彼女への口撃を再開する。「ひ…ああん…ま、負けないわ…」 何故か張り合うようにして、胸による締め付けと、上下への揺さぶりを強くする。それに応じる彼、と、順々にお互いを高めあう。彼は、挟まれている様子も見たいなどという欲望を持ちつつも、彼女自身へ舌をつたわせ、時にあふれ出してきている汁をすするようにする。それに対抗するように、彼女もやわらかさの中で暴れ狂うモノに舌をはわせようとして、既に先走りが出てきているのに気付く。そして、行き成り上半身を起き上がらせ、行為を止めてしまう。
「な、なんで止めるんだよ」 急に快感を止められて、彼は不満そうにする。出来れば胸の中の心地よさの中で果てたいと考えていたからだ。ザギヴはそれを受けて、すっと目を細めて、彼の顔のほうに身体を向けて、彼の腹のあたりに座り込む。「ふふ…別に今日だけとは言ってないから、その時は胸でしっかりとイかせてあげるわ。だから、そろそろ…」 彼女の意図するところを察知して、身体を起き上がらせようとするが、彼女に止められる。「だから、今日は私からしてあげるって言ってるじゃない…」 そう言って、上体を膝をついて起き上がらせる。彼の舌の攻撃によって存分に濡れたピンクが、室内の灯りをわずかに反射した。そして、可愛らしい花弁を自ら開いてゆっくり、ゆっくりと腰を落としていき、天に向かってそそり立つ怒張に向かってずぶずぶ、と沈ませていく。「ああん!あ、あ…」 一旦沈み込ませると、甲高い嬌声を上げる。そして、彼を一瞥した後、猛スピードで腰を上下させていく。「あん、あああ…いい…」 きゅう、と締め付ける膣の感覚に良いながらも、ザギヴの痴態に見蕩れる。髪をふりみだして、喘ぎ声を上げて恍惚の表情をし、その大きな乳房は、ずっしりとした量感をあらわすかのごとく、上下にたぷん、たぷんとピンク色の頂点の軌道が見えるほどに激しく揺れている。その様子に更に興奮をまして、彼もそのままではいられなくなる。
「あああ!いやあ!」 彼が自分から腰を動かし始めたことで、腰をうちすえる音は、更に倍になる。スピードが増し、倍化した快感に身を委ねて、全身に珠のような汗を浮かべ喘ぎ声を思う存分上げるザギヴ。パン、パン、と音をさせながら、痴態と膣求めてくるの感触に酔っていた彼に限界が来そうになる。絡み付いてくるような襞を感じつつ、彼は、「ザ、ザギヴ、出るから…」 と言って、彼女を放そうとしたが、ザギヴはただただ喘ぎ声を上げるだけであった。「…しゃ、しゃあないか…」 離す事は諦めて、もう自分もイくことだけに専念することにした。更に腰の動きを強くし、彼女の淫らに揺れる胸に手をやる。「あ、あ、ああ、いい…」 喘ぎ声も激しさを増し、掠れるほどになってくる。そして…「イクぞ…」「あぁぁぁぁ、はぁあん!」 更に一際大きな声を出して、思いっきり身体を仰け反らせるザギヴの膣に盛大に精を放つ。あまりの快感に痺れを覚えているザギヴの股の間から、白いものがこぼれ出した。お互いの荒い息が響いた後、ふらふらしながら、彼から身を離して、彼のモノに口をもっていって、「後始末するわね…」 と一言伝え、愛液と精液が混じったそれを、丁寧に唇で拭っていった。
「ふぃ…どうだった?私にされるのは」 同じベッドの中でシーツを羽織ったザギヴが、嬉しそうに聞いてくる。「…気持ちよかった」 彼は憮然としつつも、認めざるを得ない、といったふうに返事を返す。それに更に機嫌を良くしたザギヴは、「ふふ、またしてあげる…勿論、約束も忘れないわよ」 と悪戯っぽくして、シーツにもぐって、彼に抱かれた。「それと、恋人同士なんだから、悩みはちゃんと言わなきゃ駄目だからね…」 と釘をさす。そして、「あなたの苦しみは、わたしが受け続けているものと似ている。だからこそ、一緒にいれば打ち破れるはず。わたしのときがそうだったように…」 そう言って、穏やかな瞳で彼を見た後、「お休みなさい、私だけのナイト様…」 と、彼に唇を求めた。それにナイトも応えて、「ああ、お休み、俺だけの皇帝陛下殿?…」 茶化してそう言ってから、お互いクスリと笑いあって、夜にまどろんみ沈んでいく。
ディンガル帝国皇帝ザギヴ=ディンガルは、その夫と共に歩み続けて善政を敷き、歴史上においても類稀なる堅君にして、良妻として名を知られることとなる。
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