「死にに行くようなことはしないでくださいっ。」ロストール王女であるティアナが、その背にひっしと縋りついてきたとき、ロストールの竜字将軍であり、ロストール王妃エリス子飼いの密偵である男も――名はクーファ、憧れの光の王女が一体何をしたのか、理解するまで数秒かかった。「王女様。それは…できません。」「一国の王女がこんなことを言ってはならないとわかっています。それでも私は大切な人を失いたくないのです。」向き直ったクーファは、困ったようにティアナの顔をまじまじとみつめた。ティアナはそんなクーファの胸に飛び込み白い頬をよせた。「クーファ様がお母様を実の母のように敬愛されているのは知っています。ゼネテス様を実の兄のようにお慕いになられているのも知っています。ですが、どうかクーファ様、今だけ…今だけは、私だけを見つめるクーファ様でいてください!」クーファを見上げている潤んだ青い瞳、濡れた唇、長く美しい金髪、少し赤みがさした象牙のような肌、しなやかな肢体、クーファの目には同い年のティアナの全てが、艶かしい朱鷺色の靄に煙っているように見えた。「クーファ様……どうかティアナと一緒にいてくださいませ。」クーファは、窓掛けから射す黄金色の斜陽に踊るティアナを、魔魅に魅入られたように力強く抱きしめると、ゆっくりと唇を重ねた。
二人は熱いくちづけをかわしながら、寝台に倒れこんだ。だが、唇を離した後、二人は固く抱きあいながら日が沈むまで動かなかった。動けなかったという方が適切だったかもしれない。ティアナは、王女にあるまじき行動を実行に移し、愛する男との刹那的な悦びに身を任せている。王国に恐るべき敵が迫っているという段になって、総司令である婚約者の右腕を、愛情を人質にして束縛するなど、決して許されることではなかった。一方クーファは、亡父を共に見取って以来世話になりっぱなしである、大切な兄貴分を裏切り戦場に出向かなかっただけでなく、その婚約者で亡父の頃からの主人の娘でもある少女を、寝台の上で自分の腕の中に抱いている。二人は服越しに相手の体温と心臓の音を感じながら、互いの罪悪を舐めあい、じっと後ろめたさから耐えていた。せめてゼネテスと彼が率いる軍が、この王城から去っていくまでは、罪を抱えた二人でずっとこうしていたかったのだ。
ありとあらゆるものが寝静まったかのような夜。「本当に、僕が一緒に居て良いんですか?」光の王女が顔を朱に染めながら、コクンと頷くと、クーファもほっとしたように「嬉しいです。」と笑った。ティアナを抱き寄せると、互いの皺くちゃになった白銀のドレスと、クロースを脱がしはじめた。初めてにしては不思議なほど息が合い、静かな音をたてて次々に衣服が滑り落ちていく。ついにティアナとクーファの生まれた時の姿が露になると、二人の口から「あぁ…」という溜息漏れた。ティアナの体は、床に落ちた純白のドレスよりも白く、おとぎ話の妖精のように、触れば折れてしまいそうなほどか細かった。クーファの体は、日に焼け黒く、クロースの上からは信じられないほど、腕も胸も厚い筋肉の鎧に覆われていた。ティアナの裸身を眺めるだけで、頭が沸騰するかのように気が狂いそうだったクーファは、ティアナに覆いかぶさると唇に貪りついた。それまでのくちづけとはまったく違う暴力的なくちづけだった。「はっ…あぁ。」「ん…ふぁっ。」その激しさに最初は戸惑っていたティアナも、すぐに舌を絡ませそれに応える。少しでも肌と肌が触れるようにと、指と指を妖しく絡ませながら、二人は何度も互いのものを吸いあった。しばらくするとクーファは、舌でティアナの口腔をたっぷりと犯しながら、掌でティアナの乳房の吸い付くような感触を堪能しつつ、ゆっくりと下腹部へ指を進めていった。「……んっ。」指が足の付け根にたどり着くと、ティアナは嫌がるように太腿を閉じた。クーファは締め付ける内腿の柔らかい感触を愉しみながら、そっとティアナの聖域に手を伸ばした。そこは既に充分に濡れており、愛液が滴りシーツを濡らしていた。指を動かし蜜壷をかき回すたびに、可愛らしい声を漏らし体を震わすティアナに、思わずクーファは息を呑み、己の獣性がゆっくりと鎌首をもたげていくのをはっきりと感じた。クーファはずっと憧れていた、可憐な金髪の少女をぐちゃぐちゃして、自分のものにしたいと猛烈に思った。彼女をゼネテスから奪い、自分のものにしたいと強烈に願った。
「挿れるよ。」ようやく、クーファが唇をはなした時、二人の舌は名残おしそうに最後まで絡み合い、唾液が糸を引いた。ティアナはクーファの首に腕を絡ませながら口を耳元に寄せ、消え入りそうな声で囁いた。「あの、どうか優しく…痛くしないでくだ…さい…。」クーファはティアナの額にキスをすると、両腿の間に腰を割り込ませ、愛液を滴らせる切れ込みに分身をあてがった。「怖い。」ひしっとしがみつくティアナの背に、手を回し優しく抱きしめると、ゆっくりと腰を進めた。「っ! あっあ、ひ……っ!クーファ様、痛いっ!」少しクーファ自身が入っていっただけで、ティアナは涙を浮かべて、首を振り、腰を浮かせ、クーファの背を掻き毟りながら激しく暴れた。クーファは苦しむティアナを、頭が弾けそうなほど圧倒的な征服感を感じながら、少しだけ眺めていたが、辛うじて残った理性で、そのままティアナを力づくでねじ伏せる事だけはせず一度体を離した。「今日はやめましょう。」苦しそうに横たわる、ティアナの髪を撫でると言った。するとティアナは、ぽろぽろと涙をこぼしながら激しく頭をふったのだ。「嫌っ、やめないでください。私を一人にしないで。」「でも王女様…あなたはとても苦しそうだ。」「ティアナって呼んで下さい、せめて今だけは王女ではなくティアナと呼んで下さい。ティアナを愛していると言ってください!そういってくれるなら私はどんな痛みにも耐えることが出来ます。クーファ様、私を…ティアナを一人にしないで…。」「ティアナ!」クーファは唇で涙をすくいとると、正面から強引に体重をかけて、ティアナが逃げることが出来ぬように寝台に押さえつけた。ティアナも力の限りをこめてクーファを抱擁する。形のいい乳房が二人の間でつぶれ、その感触がまたクーファの劣情を煽り立てる。既にクーファの理性は吹き飛び、背徳感と罪悪感と愛情で練り上げられた獣欲だけに突き動かされていた。「ティアナ、愛してる!僕はお前のことを愛してる。」クーファは再び一物の先端を秘所にあわせると、一気に肉の割れ目を押し開いて挿入した。そのまま大きく突き上げ、ゴツリと先端が子宮口にあたる。白くか細いティアナに、黒く筋肉質なクーファが抱き合い圧し掛かる。その白と黒という鮮明なコントラストは獣の交尾を連想させた。もはや愛欲のみで動くクーファは、容赦なく正常位で腰を振り、激痛から逃れようとするティアナを組み伏せ、一寸の透き間もないように唇を奪い悲鳴をも上げることすら許さない。それでも罪悪感を舐めあう二人は、じきに痛みも後悔も後ろめたさも全てを、欲情に変え恍惚の海に沈んでいった。ティアナが白い足を上げクーファの腰を締め付け、より一層結合部を深めると、二人はぎしぎしと寝台を鳴らし、汗と淫液をあたりに飛ばし、淫靡なあえぎを漏らしながら激しく腰を振り、更に体を密着させて快楽を貪欲に求めあった。「ティアナ、出すぞ!」「いっ、あうっ、クーファ様!」クーファはティアナの細腰をつかむと、ムチャクチャに腰を振りたくり、骨の髄までどろどろにして、一気にティアナの中に果てた。
クーファは身を離した後、放出した筈がかえって何やらが、蜜のように流れ込んできたような気がした。その蜜は全身に周り、例えないような甘美濃厚な痺れになり、クーファ自身を先より強烈に屹立させていった。そして、どうやら蜜が流れ込んだのはクーファだけではなく、ティアナもそうであったようで、クーファの頬に唇が触れ合う距離で彼女は呆けたように繰り返した。「クーファさまぁ、ティアナを助けてください。ティアナは悪いことをしてしまいました。クーファさま、どうかクーファさまの色でティアナ染めて…ティアナの後悔を忘れさせて…。」美しい金髪が頬にはりつき、小さな唇から漏れる熱い吐息。淫蕩なオーラが迸る無駄のない均整のとれた細い肉体。クーファは暗闇の中で、未だ息荒く体を白い乳に濡れたように光らせ、乳房を起伏させているティアナを、舐めまわす様にしばし見つめると、獣のような顔つきで、舌なめずりながら這いより、嬉しそうに嬌声を上げるティアナに再び襲い掛かった。
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