街道でネメアを見つけたときは、夕暮れ時だった。オイフェが付いて行くと言い張った時も、ネメアは特に文句は言わなかった。ただ、少し眉を潜め、オイフェの本意を疑うような顔つきにはなったが。
リベルダムでネメアに出会って以来、オイフェの心は迷いと混乱で満ち満ちていた。そして「生きろ」と言い放つネメアに対する疑いと憤りが新たに生まれた。
「生きろ」とは何なのだ?誰が誰に生を強要することができるというのか。ただの偽善だ、ふざけるな。お前がどれほどの苦悩に、悲しみに打ちのめされたというのか?
エメルは死んだ。冒険者数人に陵辱の限りを尽くされて。かつて傷ひとつなかった体には遊び半分にナイフでつけられたような、無数の引っ掻き傷がついていた。激しく抵抗したのだろう、唇は裂け、殴られた跡も数十箇所に及ぶ。衣服は全て剥ぎ取られ、脚は大きく開かされていた。汚らしい精液が大量にぶちまけられている。死してなお辱めを受けている妹。姉であるオイフェの冒険の助けにと、攻撃補助の道具の原料であるナラジネの実を取りに出たために殺された。何の価値もない虫けらのように…。
その喪失から来る耐えがたいほどの悲嘆と、人間への憤怒に身をまかせ手当たり次第に冒険者を殺してきた。もうその数すら覚えてもいない。
復讐が終わる時は、自分が殺された時だと思っていた。自分もまた、無残に殺されるだろう。だからこそ問答無用で人の命を奪うことの是非に目を向けずにすんだ。妹を殺した。自分もまた死ぬだろう。だから私もまた殺す。それの何が悪い?
だからオイフェは彼女の暴走をいとも簡単に止めたネメアを憎んだ。どうしてもネメアを卑小な人間に貶める必要がある。そうしないと己の罪と対峙を余儀なくされ、彼女の自我は崩れ去ってしまう。
ネメアに無理に付いてきたその晩、オイフェはネメアの部屋を訪れた。ネメアは鎧を脱いで、身軽な服装でくつろいでいた。
「こんな時間にどうしたのだ。明日は早い。私と行動を共にするというなら、もう戻って寝るがいい」
その言葉を無視して、オイフェはネメアの脇からするりと部屋に入り込んだ。少し不快気に眉を寄せる。オイフェは内心でふくみ笑いをする。
(ご立派な救世の勇者。世界から称えられて奢り高ぶっているのだろう。しかし一皮むけばただの卑しい男だということをこいつ自身にもわからせてやるわ)
オイフェはプレストプレートを取り外した。すると、その下からは華奢でありながらも胸も腰も張り詰めて豊かだ。脚もすらりと伸びて美しいが、腿は豊満な曲線を描いている。尻は小ぶりながらもきゅっと上向き、まるで男の手がそこに当てられるのを待っているかのようにそそる外見を保っている。オイフェは自分の肉体の美しさを自覚していた。自分の出自はエルフだ。美しくないわけがないではないか?
ネメアは無表情にオイフェを見ている。彼女はわざと衣服をゆっくり脱いだ。胸が官能的に揺れるようにブラをわざと乱暴に剥ぎ取った。ビキニのショーツを脚から引き抜くときもゆっくり時間を掛けた。赤いけぶった茂みの奥から、秘肉がちらちらと見えるように。ネメアがそれを目にするように。
ダークエルフである彼女の体は闇に染まり褐色に変化している。その肢体は月に照らされ、壮絶な妖艶さを引き出している。
一糸まとわぬ裸となったオイフェは質素な部屋の一人用のベッドに深く腰を掛けつま先をベッドのふちに置いて両脚を大きく開く
次に乳房に手を当てる。やや固く、オイフェの手にあまるほど豊かだ。押し上げて自分の唇に近づける。指先でピンク色の乳首を摘みあげて、舌を突き出してぺロリと舐める。脚をさらに大きく開き、陰部のすべてをさらけ出しながら挑発的に上目使いでネメアを見上げる。
男を欲望の虜にして、自分はせせら笑うつもりだった。しかしこの辺りから、オイフェは欲望に取り付かれているのは自分だと気づきはじめる。脚の間からはずきずきとうずくような刺激を覚えた。とろりとした液体が溢れ出しているのがわかる。思わず股間に片手を当てる。敏感な部分はすでに膨れ上がり、指でなでるとしびれるような快感が体を走る。意識せず甘い吐息が漏れた。
焦燥感を覚え、早くネメアが覆い被さってこないかと待つがその様子はない。しかしネメアの股間に目をやると、その部分は大きく膨れ上がり彼の興奮をしっかりと伝えている。しかし目は冷たく、言葉はひとことも発せられない。ましてやこちらに来る様子も見受けられない。
「何をしているの?抱けばいいじゃない。どうしてこちらに来ないの?」沈黙は耐えがたく、オイフェはたまらず口を開いた。
するとネメアはようやく足を踏み出し、オイフェが脱ぎ捨てた服を拾ってベッドの上の彼女に掛けた。
「ここで私よりも優位に立つことが、君のこれからに役立つとは思えない。私が君を抱くことで、君の苦悩は深まるだろう。さあ、自分の部屋に戻るがいい。明日は早いといったはずだ」
まるで平手を喰らったようなショックを受けた。顔が熱く、目に涙が滲む。
しかし泣くわけにはいかない。気力を奮いおこさねば。これは拒絶ではない。負けそうになった男の言い訳にすぎない。もう少し押せば間違いなくケダモノのように襲い掛かってくるはずだ。
そう思い、ネメアの顔をひたと見据える。しかし彼の目にはもう冷たい光すら浮かんでいない。彼の欲望もすでにしぼみ、オイフェは自分の力が及ばなかったことを知った。ネメアは慈父のように彼女を見つめている。しかし厳しく部屋から出て行くように求めている。オイフェは服を身にまとい、ネメアの部屋から出て行った。
翌日、オイフェは宿屋の前で朝早くからネメアを待った。ネメアは何も言わない。オイフェも何も語らない。そうして何日も同じ戦いの中に身を置いた。オイフェはネメアを知るほどにどうしようもなく彼に惹かれる自分に気づいた。
そしてちょうど一月ほどしてオイフェは再びネメアの部屋を訪れた。
ドアを開けたネメアはいぶかしげにオイフェを見る。しかし警戒はしていない。その信頼がオイフェには何よりも嬉しいことに思えた。
ネメアはオイフェを部屋に通した。「何か用か?」彼が問い掛ける。オイフェは両手でネメアの手を取って、その甲に口付けた。
「どうぞ私をあなたの従者として任命ください。忠誠を誓います」
静かな声で語りかけ、オイフェは彼の顔を見上げた。「妹のためにできることとは何か。犯した罪をどう贖うか。闇に穢れた体でどう生きていくか。答えがでたわけではありません。でもあなたと共に、闇をこの世から払拭することが今や私の目的になりつつあります。どうかお仕えすることをお許しください」
ネメアは少し考えるように彼女を見つめる。しばらくして重い口を開く。
「……。今はまだ私は放浪の身だ。考えはあるが、まだ闇の動きを見定めるのが先決。しかしお前の希望は受け入れよう。いずれ何らかの形で私の元で動いてもらうようになるだろう。それまでは今まで通り、パーティを組んでの探索を続ける」
オイフェはうなづき、もうひとつの願いを口に出す。「それではネメア様、今宵私を抱いてください」
案の定、ネメアは顔をしかめた。オイフェには部屋の中の空気が急に張り詰めたように思えた。「そういう仕え方は私は望まない」
拒絶は覚悟の上だったオイフェは負けずに言い返す。「仕えるから抱かれるではない。女として貴方に抱いてほしいのだ。そして慰めが欲しいのでもない。思いを成就させたいだけだ。それがただ一度だけの成就でも何の問題がある?部下は抱けないというならば、仕えるのは明日からでいい。ただこの夜だけ女としてみて欲しいと言っているのよ」
あえて仕える者としての言葉は使わなかった。顔を紅潮させて、ただ必死に訴えた。ネメアは耳を傾けながら何かを考えている。そして驚いたことに、困ったように軽く笑った。「いや、すまない。器用な言い分だと思ったのだ。私もそれほど器用になれれば…」
続きを聞かずにオイフェはネメアの胸に飛び込む。彼の唇に自分の唇を重ねる。ネメアは彼女の頭を離し、重々しくささやいた。「では一度だけだ。オイフェ。この後は何があろうと君を抱くことはない。それならば君の想いに応えよう」
そしてオイフェののどに軽く唇を当てる。オイフェは思わずあえぎ声をあげた。ネメアの手は大きく、しかし指先は優雅にオイフェの体をなぞる。抱き合ったまま、ネメアの指先はオイフェの股間に辿り着いた。
薄い衣服の上から、優しくなぞり上げる。何度も何度も指が往復する間に、オイフェの股間はじっとりと濡れ始めた。充分に濡れたのを確認すると衣服の脇から指を入れ、今度は直接指で愛撫する。その部分はもはや濡れそぼって、上部の突起も腫れあがり指がもたらす刺激を待ち構えている。彼の片手はオイフェの尻を包み込み、もう片方の手と同じように衣服の中に滑り込んで、菊を優しく刺激する。
敏感なふたつの部分を同時に刺激され、たまらずオイフェは声を漏らした。「あっぅ…。はああぁ…」
促し、甘えるような切ない声だ。ネメアは声を出さないが、息遣いは荒く、オイフェに押し付けられる腰の部分の高まりはすでに大きく熱い。
執拗に秘所をまさぐる指の早さが増す。あの部分の痺れるような欲望は全身を貫き乳首も悦びをたたえて固く尖り上向いている。彼がその乳首を口に含む。舌先で軽く転がす。同時にクリトリスを円を描くように何度も何度も擦り上げた。オイフェは軽く開いていただけの脚が、快感でガクガク震えるのを感じた。
「お願い、今入れて。立ったままでいいから」
するとネメアは彼女を抱き上げ、ベッドに連れて行き横たわらせた。お互いにまだ付けたままの衣服を脱ぎさる。オイフェは自ら脚を開き、歩み寄るネメアを導く。彼女にのしかかるネメアの体は引き締まり、鋼のように硬い。
オイフェは彼の一物を優しく手に取った。そして根元まで口に含み、舌を縦に横にと動かしてネメアの男性に刺激を与える。次に、吸い付いたまま頭をピストン状に動かした。舌は相変わらず口の中で男根に絡み付いている。
ネメアの高まりを感じ、オイフェはじらすように口を離した。彼の亀頭の尖りを舌で舐め回し、袋を優しく刺激しながらまた口に含む。
しかしそろそろオイフェ自身が彼を欲していた。そこで四つんばいになって、ネメアに訴える。
「後ろからお願い…」
オイフェは後ろから挿入されるのが好きだ。男が彼女の尻を握り締め、突き動かす感触が好きなのだ。ネメアの男根が、柔らかく敏感な場所にゆっくりと入ってくる。それがネメアのものだと思うと、悦びのあまり声を上げる。
「うっ…」ネメアも声をあげる。オイフェが悦ぶとともに内部がきつく締まりネメアを容赦なく高みに導く。オイフェの突き出された形いい尻を掴み、下から思い切り突き上げる。最初はゆっくりだった動きが、次第に早まり、激しくなる。戯れに掴んだオイフェの尻を開き、菊門に軽く指を入れてみる。
「あんっ…、いやあ…」オイフェが驚いたせいか、中での締め付けはさらにきつくなり愛液もたっぷりと染み出てきた。ベッドはきしみ、大きくゆらいでいる。
彼女はネメアの動きに合わせ片手で自分のクリトリスをなぞる。下半身の敏感な部分すべてを刺激されている彼女は意識が朦朧とするほどの快楽に我を忘れて腰をうねらせる。尻もそれにあわせて淫靡な動きを見せる。
ネメアの男根は彼女の中で、熱く波のようにうねる肉に絡み取られこのまま長くこらえることは難しくなっている。二人のあえぎ声は戸切れることなく続く。オイフェが遂に爆発しそうになる。「ああああぁぁあ…、もう駄目。いい、いい、出して、全部中に出して。イってちょうだい」
それを合図にネメアの動きはさらに激しく、一声うめいた後にオイフェの背中に崩れ折れた。
しかし、オイフェはまだ彼を解放するつもりはなかった。
ネメアは彼が明言したように、二度と彼女に触れることはないだろう。ならば今夜、彼を一生分味わいつくすと心に決めているから。彼女はネメアに見られぬように、涙を拭った。
明日からは私は戦士だ。だから、今は…。今だけは…。そう考えながらネメアを引き寄せ口付ける。夜はまだ始まったばかりだ。
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