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瓦解小説 空想ガルドラン偽予告集

そのいち

 改! 激! 烈!
 俺様の名は勇者ガルドラン! バイアシオン大陸広しといえど、ありとあらゆる意味で俺様
の右に出るものはいない。冒険者として、戦士として、策略家として、そしてなにより勇者と
して!
 最強の二文字を具体化した、まさに勇者のなかの勇者。鋼のハートと鋼鉄の肉体、そして天
才的な叡智を合わせもつ男、それが俺様! 勇者! ガルドラン様なのだ!
「ふははははははは!」
「グォォォォォ」
 うおっ魔物だ! ジャーンプ。
 何者かの唸り声が聞こえてくると同時に、俺様は華麗にジャンプ空中一回転。岩の裏へと着
地した(意訳:魔物に見つかりそうになったので転げながら隠れた)。フッ、決まった。
 なに、決して逃げたわけではない。いわゆる戦術的撤退というやつだ。

 傍観者諸君らには状況がまったくわからんだろうから、俺様自ら解説してやろう。
 バイアシオン大(中略)の俺様が、なぜこのような陰気な森で、怪物どもから逃げもとい撤
退していようとしているのか? それは3万とんで5千秒前(訳:約8時間前)に遡る。

 俺様はリベルダムのギルドに立ち寄り、俺様の助けを求める市民の声を聞くべく、ギルドの
オヤジに話しかけた。ちなみに理由は、路銀が尽きたとか最近仕事をしていないとかそういう
ものではなく、純粋な人助け精神からくるものであることを宣言しておく。
 単にソレ相応の見返りはいただく、というだけだ。誤解なきように!
『むん! おい親父!』
『あん? げっガルドラン!!』
 ギルドの親父は、俺様の顔を見ると驚愕の表情を見せた。そう、俺様がわざわざ一介のギル
ドごときに立ち寄ることなど、滅多にないことなのだ。
 なぜならギルドに行くのは仕事に困るごろつきがやることであり、俺様のように伝説的な冒
険者ともなると、依頼など街を歩くだけで寄ってくるものなのだから!
 そんな俺様が尋ねてきたのだ。驚きもしよう。無礼ではあるが、笑って許すのが勇者の貫禄
というものだ。
『ふはははは! そう、庶民の希望、無敵の勇者ガルドランさまだ! 聞いて驚け、貴様ら愚
民の依頼をわざわざ聞き届けにきてやった!』
『表の張り紙が見えなかったのか! てめえは出入り禁止だ!』
 表の張り紙? ふむ、たしかに「(勇者)ガルドラン(が中に)立入(る際、最強無敵勇者様への無礼行為は絶対に)禁止 」なる張り紙が入り口前に貼ってあったな。

※カッコ内はガルドランの妄想です。
※つかれたのでもう突っ込まない

 なるほどたしかに俺様ほどの英雄といえど、新米冒険者のなかには知らぬ奴もいるだろう。
そんな奴らが俺様に無礼を働かぬように、とのギルドの気遣い、なかなかのものだ。誉めて使
わそう。
『うむ、確かに俺様ほどの実力を有すものを満足させるほどの依頼を、こんなチンケなギルド
が持ちうるはずもないな。だがしかし』
『帰 れ!』
『うおっ! なぜ押し出す! む、貴様まさか勇者の行方を阻むべくギルドマスターに変装し
たうおおおおおおお!』
『二度と来るな!』

 そして親父は俺を押し出すと、扉をぴしゃりと閉め鍵をかけた。
 くっ、リベルダムのギルドまでもが敵(誰だと? 調査中だ)の侵攻を許していたとは!
 だが俺様は町のギャル達に噂されるところの、抜かりない男ナンバーワン!(ガルドラン調
べ)
 どさくさにまぎれ、依頼状と思しき書を頂いておいた。早速読んでやろう、どれどれ。

「娘が行方不明になってしまいました。ルンホルスの森の近くで見かけたという話を聞き、と
ても心配です。どうか連れ戻してください。報酬は1500ギア」

 オズなんちゃらとかいう村に連れ戻せばよいらしい。うむ、1500ギアか。まあまあだな
、引き受けてやろうではないか。決して路銀に困ったからではなく、純粋な人助けの精神でな!

 ――というわけだ。

そのに

「ついてく」
「何か言ったか、子供」
「サティ」
 いきなりだ。会話がかみ合わぬ。
「なんだそれは。コーヒーの銘柄か」
「なまえ」
「貴様の名前など誰も聞いとらん!」
「しらないひとにはなのるのがれいぎ」
 ちっ、しまった。幼女に先に名乗らせるとは一生の不覚なり。
「うむ。俺様の名は、大勇者ガルドラン様だ。ガルドラン将軍閣下大勇者様と呼んでも構わぬ」
「ながい。がまでいい?」
「略しすぎだ!」
「わざと。とにかく、ついてく。だめ?」
「ふっ。常識的な冒険者であらば、孤児の幼女など足手まといと断るもの。だが! 俺様は、
あえて断らん! 俺様に付いてくるがいい!」
「わーい」
 サティは無邪気に(相変わらず無表情にだが)喜んだ。
 うむ、確かに子供は足手まといだ。だが、絶対無敵の未来勇者である俺様を慕う孤児を、見
捨てて冒険に赴くのが正義か! いや正義ではあるまい、むしろ邪悪だ!
 俺様の英雄行につき従う以上、命の危機はひとつやふたつでは済むまい。だが、俺様の間近
で旅をする経験は、他のなにものにも代えがたいもの。それを阻むことは、竜王だろうと俺自
身だろうと不可能なのだ!
「だがなぜだ? 貴様も将来冒険者になりたいのか、この俺様のように、強く美しく華麗な!」
「それはない」
「うむ賢明だ。俺様のみたところ、貴様には冒険者の素質がまったくない! からな」
「ガルドランほどじゃないとおもう」
「ふははははは」
 俺様が笑うと、サティも釣られてふははははは、と笑った。あくまで無表情に。


そのさん

 俺様はギターをかき鳴らした。フィーリングだ。そう、ギターとは技術ではなくフィーリン
グなのだ。俺様の熱いハートが弦を揺らし、観客に熱狂を巻き起こすのだ。巻き起こすのだ。

 そのはずなのだが、なぜかサティはぽかんと口を開けたままだった。むう、感動のあまり声
も出ないか?
「ガルドラン、へた」
 正反対の言葉が出た。
「なにぃ! どこがどうへただとッ!?」
「……ぜんぶ」
 なんだその抽象的極まりない中傷は! くっ。所詮は乳飲み子、音楽の真髄はわからぬか!
「ぐぐっ、ふん! あと10年も経てば、貴様にも理解できるようになる。覚! 悟! せよ!」
「ほんとかなあ」
「本当だ! もーいい、先を急ぐぞ!」
「うん」
 サティは頷くと、立ち上がって俺様のギターを片付け始めた。


そのよん

「ガルドラン、見損なったよ。いやずっと見損なってたけど、なお見損なったよ!」
「なんだそのヤケクソに失礼な言い草は!」
「幼女偏愛なんて、コーンスは決して許しはしないんだ!」
「誰がペドだこのねじまきツノ!」
「人種差別! 訴訟! 賠償!」
「どこのプロ市民だ貴様!?」
 と、サティがとことこと歩いて俺様とナッジの間に立つ。
 そして、ナッジを見上げていった。
「つの。かんちがいしてる」
「そうだサティ、もっと言うがよい」
「がるどらんは、やさしかった」
 ちょっと待てい。
「GODDEEEEEM! 最 悪 だ! もう僕は神様を信じられない!」
「最悪は貴様の思考だ!」
 言い争う俺達をよそ目に、サティはなぜかあやとりをしていた。