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「はあっ、ああっ、どうして、どうしてこんなことに……。兄上……。」
戦闘の終わった部屋で、息をはずませながら、部屋に兄と二人残されたジリアンは凝った竜の彫り模様のちりばめられたシャンデリアのかかる天井を仰ぎ見た。
つい今までの出来事の全てがジリアンには信じ難く、今にも自分が別の現実に目覚める事ができるのではと願ってしまう。
「まさか、まさかツェラシェルの言う事が、本当だったなんて……。」
目の前の天蓋つきのベッドに死んだように横たわる兄を見つめながら、あふれてくるのはただただ声にならない感情と零れ落ちる涙のみ。
今しがたの事件を思い出して、ジリアンは親指で自分のこめかみを押さえた。
女狐の手先たち。乱心した兄。おまけに、ツェラシェルはリューガ家の当主が一夜を共にする女性を求めているとふれまわって、うら若い女性を屋敷の周りに集めさせるという巧妙な策を使ったおかげで、門の周囲は今しがたまで大混乱。
もしも、あのまま兄がダルケニスとして錯乱したまま外に出ていたら…ジリアンは思わず身震いをした。
「まあ、その女性たちはゼネテスがうまく片付けてくれたからよかったけれど…。」
部屋の中に、兄と三兄妹がいるのを見つけた瞬間からはっきりとした記憶がない。かっとなって女狐の兄妹に剣を向け、ここから立ち去れと怒鳴ったことは覚えている。
その時に、肩に鋭い痛みを感じたことも。兄が自分に爪と歯を立てていたと気がついたのは、肩を流れる血が床に溜まって、足を滑らせそうになった時だ。
後を振り向くこともできず、自分がツェラシェルをま正面から刺しつらぬくようなまなざしで睨み続けていたこと、そこまでは確かに覚えている。

しかし、それから、兄をどうして静めたのか、どうやって三人を追い払ったのか、他の人たちはどうしたのか、覚えていない。

 

ジリアンは這うように体を動かして、ベッドの脇の椅子にくずれるように座り込み、仁愛が生み出す強さと危うさで潤ませた目でベッドの上にまなざしを向けた。
「兄上、しっかりしてください……。兄上………。ご自分をしっかりとお持ち下さい……。」
彼女はいまだ信じられないというように一人頭をふった。
彼女自身も兄に対する噂は知らないことはなかったが、また兄上の地位をおびやかすためのデマを流す、女狐の策のひとつに過ぎないだろうと考えていた。
総ての始まりの、あの初めてロストール王宮にはせ参じたときこそ、彼の出生には何かあるのだとちらと思いが通り過ぎたが、
そんなことなど気にかけられるような状況ではなく、またリューガ家の一員として、「レムオンの妹君」を演じるのに必死で、兄上の出生など気にしたことすらなかった。
それよりも、兄上のために自分ができる事をなす、それこそが弟たちや、ひいてはロストールを守ることにつながる道であると、
ジリアンはただそれだけをひたむきに考え、実行し続けていたのだ。
「………これから、私たち、どうしたら………。」
途方にくれつつも、冷静に彼女は考えをめぐらしていた。今、口には出さずとも兄の考えをよく理解しているジリアンの頭にあるのは、
彼がダルケニスであったことよりも、そのことが暴露されたことを知る彼がどう動くかということだった。
兄の見かけによらないもろさを身をもって知らされていたジリアンは、ショックを受けた彼が自分に黙って予想もつかない行動に走らないか、
万が一そういった事態に陥った時、それに対して自分がどう動けばよいのか、とほうにくれてベッドのそばへ身を寄せ、意識の無い兄に呼びかけた。
「兄上、しっかりして下さい!これを機に、王妃はきっと動き出します。とにかく何か手を打ち、争いを避けないと!
ここで政争などしていては、ロストールそのものの安危にかかわります………!」
彼女は兄上の無事だけでなく、行動を起こしたリューガ家当主が、ゼネテスを逆に陥れようと動くのではないか、その大きな不安にも押し潰されそうだった。

 

ジリアンがベッドから顔を上げると部屋中に散乱した高価な家具や小物に飛び散った血がそこかしこについていて、先ほどの悲壮な出来事を物語っていた。
この事件をいっそ忘れたいと切望しても、肩の傷がずきずきと痛み出す。
ジリアンは、痛みを吐き出すように大きく息をつき、汗のうく額にかかる乱れた黒髪をかき上げた。
「ああ…。でも…、とにかく、兄上が、多分……御無事で、よかった。」
昏睡状態の兄上の手をとると、彼女はその手をそっと自分の両手で包み込んで祈りの形に指を組み、その冷たさの中の温もりを確かめるようにゆっくりと目を閉じた。
「どうか神様、兄上をお助け下さい。どんな時でも私を助けてくれた、私の兄上にお力をお貸し下さい。そのためなら、私がどうなったってかまいません。そもそもこの人に助けてもらった命なんです。私の生きる力を兄上にお与え下さい……。」
そこにいるのは、勇ましい女騎士でもなく、名誉を背負って立つ誇り高き貴族でもなく、金の陽射しと金の穂の中で育ち、今はただ愛しい人の無事を願う、一人の少女だった。
「兄上、しっかりして……。」
香を追い出す為に開けたカーテンが夜風に吹かれてそっと揺れる。その布も破れていて、窓を縁取っている竜の紋章をあちこちに施した高価な装飾も、見るも無残に破壊されていた。
そのカーテンの他には動くものも無く、リューガ家の屋敷は不気味なほどの静けさに包みこまれている。
「兄上……。」

 

「兄さん、あのままにして良かったの?あのじゃじゃ馬、このままじゃすまないわよ、きっと。
ああ、レムオン共々私達に処分させてくれればよかったのに!どうしてあんなところでひいてしまったの?」
「そうね、私もヴィアに賛成だわ。いくら危険といっても、このままあの二人を泳がしておくほうが危険だわ。
それにジリアンの行動は私たちにも予測がつかない。兄さんも、あの娘がこちら側に引き込めるか、いろいろ手は打ったのでしょう?
それでも駄目なら、いっそのこと、兄妹一緒に葬ったほうが……。」
「おいおいおい、ヴァイ、ヴィア、お前達の気持ちはよーく分かるが、俺たちは何も暗殺に来たわけではないぞ。
エリス王妃もそのつもりはない。あいつらはいたほうがロストールの為になっているからな。特にジリアン姫は。……それに。」
「でも、このままじゃ任務をこなしたことにはならないわ、ジリアンに妨害されたもの!」
「それにひょっとしたら彼女がそのままあのダルケニスを鎮めてしまったかもしれない。そうだとしたら今までの努力が水の泡だわ。」
「ああ…。」


ツェラシェルは妹達の演説に気のないあいづちを打って夜空を見上げた。
「それにしても、あの娘もがんばるねぇ。いくらももらっているわけじゃないのにさ。
それにあいつら、ロストールじゃ潔癖で有名な兄妹だけどさ、新月のダルケニスは処女の血しか吸わないっていうもんな、その噂は本当だったんだな。」
「兄さん、話をそらさないで!私たちは兄さんを心配して言っているのよ?」
「ああ、わかっている。しかし、あのままあの屋敷に留まれば、俺たちが危なかった。お前たちもジリアンみたいに血を吸われていたかもしれないしな。……それに。」
不自然なほどの中途半端な退却に、妹達が納得するわけがないだろうことはツェラシェルにはわかっていた。
「けどな、こんなこと考える時なんて、大酒飲んだって滅多にないんだけどな。」
ツェラシェルは、リューガ家の屋敷で出会った視線を思い出していた。
いつも自分を助けに来る時の妹達と同じ、あの命を懸けるような視線を。
彼は軽くまぶたを閉じてふうっと息を吐き出しながら、
「……俺も、ヴァイやヴィアは金より大事だもんな。あいつにとってもな。」
すでに遠くにあるリューガ家の屋敷の屋根のてっぺんの方を何げなく見やり、つぶやくように言った。

 

「おいチャカ、どうした?屋敷がまだ気になるのか?」
今は貴族街から離れた広場で、チャカは今も心配そうに、貴族街に立ち並ぶ屋根でもひときわ際立つ大きさのリューガ家の屋根を仰ぎ見ていた。
「うん……。だって、姉ちゃんが……。」
「またお前の姉ちゃん姉ちゃんがはじまったな。」
「だって……。ゼネテスさん……。」
チャカはゼネテスがレムオンの屋敷に集まった女性達を追い払うのに手を貸す為にいったん屋敷を離れたが、すでに全く自分の出番は無いと感じていた。
「んもう!レムオン様がお屋敷に誘ってくださるっていうから来たのに、ゼネテス様のいたずらなのねぇ~。」
「ゼネテス様ったらぁ~~。」
ゼネテスのいつもながらうまいやり口で、レムオン目当てに集まった女性たちは今はすっかりゼネテスにしなだれかかっていた。
「ねえっ、ゼネテス様、夜はまだ長いのよん。行きましょうよぉ。」
「そうだな。こんなかわいい子猫ちゃん達を集めて、ムゲに返すほど俺は冷たくないぜ。今日は子猫ちゃんの集まるこの夜を祝って、「舞い上がる白竜亭」で俺のおごりだ!」
その声に、キャアッと女達の歓声が上がる。女達の騒々しさは夜の虫も静まるほどだが、チャカにはそれすらはるか遠くの喧騒に聞こえていた。

 


一人、騒ぎから離れ、ひたと貴族街の方を見つめ続けるチャカに、ゼネテスはとにかく貴族街の方から離れるよう声をかけた。
「ほら、チャカもいくぞ。姉ちゃんが気になるのもわかるがな……。」
その声に、チャカは思いあまったようにゼネテスの方を振り向くと、堰をきったように話し始めた。
「姉ちゃんがああいうとりみだし方をしたのって、初めてなんだ!ほら、レムオン兄さんが倒れた時、姉ちゃん泣いてただろ?
俺以外の人の前で、姉ちゃんがああやって泣くのを初めて見たんだ……!!だから、だから俺、心配で……。」
「ふー………ん。ジリアンが、ねぇ…。」
ゼネテスは、やはりというようににやりとして見せた。
「けどな、あいつのことだ、その、前に泣いてたって時は、やっぱりお前の事が大事で、おそらくお前の身を案じて泣いていたんだろう?」
「え?あ、うん、そ、それはその時はそんな感じだったと思うけど………。」
「で、今回は、兄上の身を案じて泣いていたと。」
「う、うん……。」
「つまり、お前と同じくらい、ジリアンはレムオンの事も大事に考えているってことだよな。いやぁ、あん時の様子からしちゃ、それ以上に想ってるってことじゃないのか?いい妹君をもって、本当にお兄様も幸せ者だよな。」
「え………?えと……あの………、ちょっ、それは、あの、ってことは、つまり、そのっ、」

 

チャカは周りの何もかもが見えなく聞こえなくなるほどの衝撃に叩き落とされた。ゼネテスの言葉の後半部分はもはやチャカの耳には届いていなかった。
「て…ことは…姉ちゃんは……レムオン兄さんのことを…え……、でも…………、
周りからは兄妹だけど、ホントは……で、レムオン兄さんも…だから…つまり……。
んで、今、屋敷には二人きりで……………………ウッ、ウワアァァァァァン!!
帰る!帰る!!やっぱ帰る!絶対帰る!!今すぐ帰る!!!」
チャカは走り出そうとしたが、すでに襟ぐりをむんずとつかまれているのに気がつかなかった。
「ワアァァン!行かせろ!帰らせろぉ!!」
そのままゼネテスの方にぐいと引き寄せられるチャカ。
「おい、みずくさいまねはよしておこうや。な。」
ゼネテスはにやりとしたままウィンクして見せた。
チャカにとってそれは破滅の宣告だった。
「ウワァァァッァアアン!!帰らせてくれよぉーーー!!姉ちゃーーーん!!!」
ゼネテスにひきずられつつ、チャカは月の無く星も雲に隠れた夜空の暗闇に絶叫を響き渡らせた。

 

「ウ………。」
暗闇の中で、彼は夢を見ていた。
どこまでも深淵な闇の縁に彼は立っており、その眼前に広がる行き先の見えない暗闇が、その奥へ入れと誘っているように彼には思えた。
「フフッ、ここにおいでよ。闇の玉座がレムオン殿下をお待ちしているよ。」
「この中に行けということか……?」
頭がズキズキして、何も判断ができない。
闇の手招きするまま前に歩もうとしたとたん、体の中を、何か嫌なものが走った。
「俺は……行きたくない。」
(誰か俺を、他のところに導いてくれ。)
そう思って闇と反対側に伸ばした手を、誰かがつかんだ。
「母上………?」
その白い手に引っ張り上げられるように、レムオンは闇と反対のほうへ走っていった。
「ああ…また彼女が邪魔をする。ホントにわかってくれないんだから、もう!」
声がゆっくりと後ろに遠ざかっていく。
この声と違う方向なら、どこでもいい。レムオンは、走りながらつかまれたその手をきつく握り締めた。

 

気がつくと、彼はベッドの上にいた。
(……夢…?だったのか………?)
先ほどと同じように頭は痛み、周りは暗闇に包まれている。そして、片手は夢と同じ、今しがた導かれたその白い手に握られていた。
レムオンが無意識にきつく握り締めたために、爪がくいこんで血がにじんでいる。
「………!」
今の出来事が夢か現か確かめようと顔をあげた彼の目の前に、両目を固くつむり、一心に祈りを捧げ続ける彼女の姿があった。
消えそうなランプのほのかな光に、頬の涙が照らされている。
(泣いていたのか……………俺の為に………?)
今まで、レムオンは誰かが自分の為に泣くなどということは考えもしなかった。
自分と他人に、そんな感情的な接触をつくることがあろうとは思いもよらなかった。
「ジリアン……。人の可能性を呼び起こす力があるのか……お前には………。」
半ば混乱し痛む頭で、彼はつぶやいた。それにも気づかず、彼女は両目をつむったまま、祈りを捧げている。
彼女がなぜ泣いていたのか、それはレムオンには理解できなかった。ゆっくりと半身を起こして、ジリアンに声をかけた。
「ジリアン、何をぼうっとしている。」
その声に、はっと気がついて彼女は目を大きく見開き兄を見た。人の泣き顔に、一瞬にしてこんなにも喜びの表情が満たされるのを、彼は見たことがなかった。
「ああ、兄上!無事で良かった!!体は大丈夫ですか?今、お水を持ってきますね!」

 

「無事?何があったのだ?俺は一体………。」
まだ混乱している頭で、レムオンは一人つぶやいた。
「さあ、お水を……。」
差し出された水を、乾ききった喉にがむしゃらに流し込んだレムオンは、しかし、ジリアンが持ってきた水差しの先が欠けているのに気がついて顔を上げた。
「……!」
暗がりからランプの光をすかして散乱した周りの状況を見たとたん、この夜の全ての記憶が頭の中によみがえった。レムオンは水差しをジリアンの手から払い落とした。
「!…兄上……?」
水差しは、鈍い音を立てて床の上に破片を散らし、それにもかまわずレムオンは立ち上がると搾り出すような声でジリアンに問い詰めた。
「俺は……お前ッ!……………見たのか……!?」
その問いを受けとめたジリアンは、背筋を伸ばし、ややかたくさせた表情でレムオンをひしと見つめた。
「兄上、ツェラシェルを侮ってはなりません。あの人達は、また私達を陥れにやってきます。
エリス王妃は、私達を何処まで利用することができるか瀬踏みしていましたよね。…王妃はもはや私達を見限り、政界から追い出すつもりです。すぐにこちらも手を打たないと…。」
「うっ…!」


それ以上レムオンは耳を貸さなかった。
「来るな!!俺は……。あっちに行けっ!」
レムオンは部屋の中にある散乱した家具や置物をなぎはらうように壁に叩き付け、もの凄い剣幕で彼女を追い払おうとした。
「兄上。」
ジリアンは落ちついて兄を制止しようとした。
「お待ちください、兄上。」
「あっちに行け、行ってしまえ!!」
ジリアンは強い意志を秘めたまなざしで兄を見つめていた。その瞳には一点の曇りもない。
「兄上、こちらもうまく行動すれば、きっと首尾よくいくはずです。どうか…。」
「行け!行ってくれ……!俺は!!」
「どうか逃げないで下さい。私の話をお聞き下さい。」
「去れと行っているだろう!」
「兄上。どうなさるおつもりですか?」
「貴様の知ったことではない!!くそっ……。」
レムオンはそばの棚にどんとこぶしを打ちつけた。勢いで端に乗っていたいくつかの壺の破片が床に落ちる。
「兄上……。」
ジリアンは、レムオンの気迫に押され、もはやここから立ち去るべきかと躊躇した。
切迫した空気の中、入り口の方の人影に、二人とも気がついてはいなかった。


バタン。
突然扉の閉まる音がして、はっと二人は全身を緊張させてドアの方を向いた。
「兄さん、姉さん。安心して。僕だよ。」
突然の来訪者を見て、二人は思わず驚きと安堵のため息を漏らした。
「お前か………?どうして……?」
「エスト!一体今までどこに行っていたの?」
ジリアンは再び目を潤ませ、ロストール唯一の女騎士らしからぬ柔らかな声を上げて弟に駆け寄った。
存在を確かめるように彼のその両手を強く握り締める。
「んもう!いつもいっつもあちこち駆け回って……私が言えた事ではないけれど……せめて屋敷に連絡くらいはよこすようにこの前も言ったじゃない、
なのに、またどっかいっちゃって…今まで大変だったの、ね、エリス王妃が……」
「知ってる。説明は不要だよ。だから来たんだ。」
話したいことがごちゃまぜになってあふれようかとしているジリアンに、エストは深くうなずいてみせた。
「え……?」

 

エストは兄の方を振り向いて続けた。
「兄さんも安心して。僕だって遊んでいたわけじゃない。闇の神器の研究が、いよいよ大詰めになったんだ。
エリス王妃の最近の動向を知って、兄さんや姉さんを守るために、急いで研究を進めていたんだ。」
「エスト……?」
「もう大丈夫だよ、兄さん。さあ、ゆっくり休んで。後は僕に任せてくれればいいよ。」
頼もしげに胸をはるエストを見て、二人は弟の意外な言葉に驚いたが、しかし彼の身を案じたレムオンは口を開いた。
「エスト……本当に大丈夫なのか?」
「心配しないで。僕の研究が、ようやく、兄さんの役に立つときがきたんだ。…ああ、兄さんも姉さんも傷だらけじゃないか…。
さあ、兄さんはベッドで休んで。詳しいことは後で話すから。」
それを聞いてレムオンは、緊張の糸がふつりと切れてベッドに座り込んだ。
「エスト、お前というやつは、まったく…。政争にはかまうなと言ったではないか。」
「僕だって兄さんの役に立ちたい。だから、こうして僕にしかできない方法でがんばってきたつもりだよ。」
「…いざというときに、よもや、お前が来るとはな……。ハハッ、女狐め、目にものみせてくれる…。」
「詳しくは後で。さあ、まず兄さんは休んで。姉さん、行こう。」
「兄上…。では、私もう行きます…。」
部屋のドアを静かに閉め、エストはジリアンの手をぐいとひくと、別棟の自分の研究室へと移動する為に、ジリアンを連れて長い廊下を歩き出した。


「エスト、まったくあなたったら奔放な子で、しばらく出かけて屋敷にいないと思っていたら…、一体これから何をするつもり?
あなたは私達の大事な弟よ、あまり兄上や私に心配をかけないで…。」
手をひかれながらジリアンは聞いたが、エストはただ黙ったままジリアンの手を強くひっぱってすたすたと彼女を自分の部屋に連れて行った。
その普段見せたことのない強引さにジリアンは首をかしげながらも、彼に導かれるまま寒々とした廊下を歩いていった。


「エスト、それで、これからどうするつもり?」
壁いっぱいの本棚に囲まれ、テーブルや床にも不可思議な魔道具や分厚い本が不安定に積み重なった部屋の中で、ジリアンはなおも質問した。
「神器の研究って言っていたけれど、一体どういうことなの?どこまで進んでいるの?それで何をするつもり?」
部屋の中央に進んだエストはようやくジリアンの手を離して、本の山を背景に彼女の方を向き、まっすぐに目を見据えてゆっくりと、彼女の質問に対して話しはじめた。
「神器の研究なんて、とっくに終わってるさ。僕はこの政争にピリオドをつけたいんだ。もうこんなくだらない争いなんて、やめて欲しかったから。」
その目に、今までの柔和な彼とは違うものを見て、ジリアンははっと驚いた。
「え?どういう事?」


「僕はもう戦争も、政争も、くだらない人間同士の争いはやめて欲しいんだ。だっておかしいだろ?助け合って生きなければならない人間が、憎みあったり殺しあったりするなんて!
だから、もうこれ以上争いを続けて欲しくないから、………。」
エストはそこでしばらく言葉をきり、辛そうに長いまつげを伏せた。
「…だから闇の神器を集めて、争いを止める力を創ろうと思ったんだ。
僕は異国の少年に依頼し、闇の神器を集めてきた。
彼も僕の平和への願いに賛同してくれてね。快く協力を申し出てくれたんだ。
自分で集められそうもなかったところは、彼がうまく魔人やなんかの力を利用したり、他にダークエルフにも協力してもらい、神器の収集は効率良く進んでいったんだ。
ん?ああ、ネメアかい?あの人はいい人だけど、時どきうんざりするよ。僕の平和の願いを無視して、争いばかり大陸にまきちらすんだもの。
おまけに僕の神器を欲しがっているしさ。けれど、一通り僕の平和への道は順調に進んで行った。…でも……。」


そこまで言って、エストはふいにすがるような目でジリアンを見ると、喉の奥の奥から搾り出すような声で苦しげに言った。
「でも、思い通りにならなかったのは、君だった…。君がリューガ家に来るずっと前から、君のことを知っていた。
まだ闇の神器の研究に着手したばかりの時、初めて立ち寄った村で……。」
エストはまた遠くを見ているような目になり、しばらく思いふけるように黙っていたが、やがて言葉を続けた。
「…ボルボラが君達の村を困らせていた時、兄さんはボルボラのすることなんか全然気にかけていなかった。
でも、なんとか兄さんにノーブルに目を向けてもらいたいと思って、ボルボラに僕の父さんの手紙をこっそり送りつけたんだ。
そうすれば、兄さんはノーブルへ行ってボルボラを始末する為に動かざるをえないだろう?」
エストは一人うなずいて続けた。
「あ…あ……。」
ジリアンは、何か言おうと口を開きかけたが、エストの口から出てきた言葉がとても信じられず、そのまま固まってしまった。
「それから様子を見にノーブルへ行ってみたら、あんまり万事うまくいっていて驚いちゃった。しかも君が僕の家族になるっていうんだもの、これ以上嬉しいことはないよね。」
エストの口から立て続けに出てくる信じられない言葉に、ジリアンは何をどう受け止めて聞けばよいのかわからなくなってきた。


「けれど、それから…、」
エストは辛そうに長いまつげを伏せ、しばらくの沈黙のあと再び口を開いた。
「姉さん、姉さんは僕の願いとは別に、どんどん戦争にまきこまれていった。エリス王妃にいいように利用されていたんだ!」
ジリアンは胸をしめつけられたような思いになり、大声で言った。
「私はロストールの人達を守りたかっただけ!もう…、人や町が死ぬのを見るのはいやだから…!!」
「人殺しが嫌だから人殺しに参加するの?そんなの絶対駄目だよ!!」
今までの彼とは違うその目のきらめきに、ジリアンは息をのんだ。
「アンギルダンとの戦いに、君が参加したときは驚いたよ。闇の神器を捜すので忙しいと思っていたのにさ………。
君に神器を追いかけさせていれば、そうすれば、もうジリアンは忙しくなって、戦争にいかなくてもすむと思ったのに……。」


エストのその透き通った目でジリアンを見つめていた。その目の輝きに、彼が今まで進んできた道にわずかな迷いすら無いということをジリアンは悟った。
ジリアンはエストが今までしてきたことと、自分のしてきたことを考えた。二人の、大陸の平和のために闇の神器を集める、という行動は同じだが、
そこには想いのすれちがいやずれが生じているようだった。今までの自分の努力は、一体なんだったのか……。
これまでの自分の想いは、本当の願いをすりぬけて別の方向に流れていっていたのか。行き場の無い怒りや悲しみが彼女の頭の中でぐるぐると廻った。
しかし、エストのにごり無く真摯な目を見ると、さっきまで渦巻いていたものが不思議にすっと消え、なぜか落ち着きを取り戻すのをジリアンは感じていた。
闇の神器のことより、戦のことより何よりも、それを今ここで話したエストの心を理解したいとジリアンは思った。

 

「エスト、ごめんなさい。今まで、姉さんは、何にもあなたの事をわからないで…。いえ、わかったつもりになっていたから、それ以上知ろうとしなかった…。
エストは平和のことをとても考えて、本当によく頑張って来た。私たちは大陸の行く末のためにもっと話し合うべきだったわ。
だって、争いを無くしたいという気持ちは同じなのだもの…。」
「じゃあ何で戦争なんかに参加したんだ!争いを無くしたいのなら、どうしてあんな女狐の命令にあっさり従ったりしたんだ!!どうして殺し合いに参加したんだ!!!」
これまでずっと胸の中で自問自答しつづけていた迷いをつきつけられたジリアンは、何も言えず黙ったままエストを見つめた。
「兄さんだって、本当は……君が争いに身を投じるのをいつも嫌がっていたのに……。」
エストは抑え難い感情に身を震わせ、悲しみを重ね置くようにかたくまぶたを閉じて両のこぶしを握り締めた。
「兄さんも…兄さんもだ…僕が先に姉さんを知っていたのに、兄さんは、体裁の妹としてではなく、君を愛してしまったんだ。」
その言葉にジリアンは飛び上がるほど驚いて叫んだ。
「兄上は、私のことなんて何とも思っていません!妹にでっちあげた以上、仕方なくここにおいているだけ。
でも兄上は私とチャカの命を救ってくれたの。私はそれに報いる為、そして自分達の身を守るために、全力でがんばらなくては……。」

 

それを聞いたエストは燃える両目をいっぱいに開いてジリアンの手を握り締めた。
「ジリアン、僕は弟だよ。大好きな兄さんのことなら何でも知ってる。
兄さんの力になりたくて、兄さんの役に立ちたくてずっとがんばってきたのに!」
エストは握ったジリアンの手を強く手前へ引っ張り、ジリアンの華奢な首に片方の手をかけた。
「兄さんには渡せない!ジリアンは僕のものだ!もう戦にも行かせない!
ジリアン、君が欲しい!君は僕のものなんだ!!」
「エスト?何をする気!?」
ジリアンは、自分を抱きしめた思いがけないほど強い力に驚いた。この白い腕に、こんなに力があったなんて。
ジリアンは、エストの思いをはかりかねて、平静を取り戻そうとしながら、一言一言かみしめるように聞いた。
「エスト、でもあなたは弟よ?家族じゃない。
たとえ本当は赤の他人でも、保身のためのごまかしに過ぎなくても、
今まで協力し合ってきたから、少なくとも私はずっとそう思ってきた。
兄上に対してだって、とにかく私のできることで役にたちたいと思っているだけなの。」
「嘘だ!君はまだ偽りの家族だ、でも兄さんには譲れない!」
「エスト。偽りだなんて、そんな風に思っていたの?じゃあ、今までどんな思いで私と話していたっていうの!」
エストはじれったそうに頭をふって続けた。
「君が欲しいんだ……。ずっと君のことが好きだったから……。
だから、リューガ家に来た時は、この想いを伝える事より、同じ屋敷の下でジリアンと一緒にいられる事のほうが大事だと思ったんだ。
…でも、兄さんが僕のジリアンをとろうとするなんて思わなかった。だから!もう!姉弟ごっこは終わりにさせるんだ!!」

 

エストは、駄々をこねた幼子のようにジリアンをきつく抱き寄せた。ジリアンはいまだエストの言い続けている意味が理解できず叫んだ。
「エスト!!何をするの!?やめ………ッ!!」
激しいキスに口を封じられてジリアンは頭の中が真っ白になった。
「うう…ッ。」
ジリアンは普段のおとなしい彼とは全く違う目をさせたエストに怯えて強く身を引こうと体をそらしたが、
この手を払いのけることで、エストがショックを受けるのではないかと思い、それ以上は逆らえなかった。
この敵の多いロストールの政争から、我が道をひた進むエストの身を守ってやれるのは、自分と兄上だけなのだ。
あくまでも姉としてエストの精神的な支えでありたいと願っていたジリアンにとって、エストを拒絶し、その支えを外すような真似はできなかった。

 

「……う……ん。」
今まで誰とも経験の無かった唇に、突然あまりにも情熱的な口づけを味わい、ジリアンは止まりそうな思考をなんとか繋ぎとめようと、エストを自分から離そうとしたが、
エストはジリアンをしっかりと抱き寄せてその手をゆるめなかった。
エストはゆっくりとジリアンの唇から顔を離して言った。
「兄さんには渡さない。空中庭園で、ジリアンから気をそらして、兄さんをティアナ王女に集中させようとしたけど、でもダメだった。
それどころかエリスが兄さんをつけこむ機会を与えてしまった。」
「!じゃあ、あれは……!!」


ジリアンは、エストにしがみつかれるように抱きしめられたまま、ようやくの思いで言葉を発した。
「エスト、あなたは一体何をしたいというの?自分の一族まで利用して……。
闇の神器は危険な力よ。私はあなたが闇にのみ込まれないか心配なの!
依頼を受けたシャリがその為に何をしたのか知っているの?
それから、それに関わってしまったばっかりに命を落とした人達のことも……。」
「タルテュバは、すでに人間らしい生き方を失ってしまっていた奴だ。僕は、一人一人が人として尊重されるロストールを創っていきたいんだ。
王宮のごたごたさえ片付けば、兄さんにはそれができるのに……。
最近の兄さんは政治ではなく、ティアナ王女ではなく、ジリアンのことばかり見ている。僕のジリアンを……。
どうしても今ここで、君を手に入れるからね。」


そういうとエストは、ジリアンの体を壁の本棚に叩きつけるように押さえつけた。その勢いに本棚の中からバランスを失った本が何冊かばさばさと床に落ちる。
その内の一冊の角がジリアンの肩の傷に当たり、痛みに思わずジリアンは顔をしかめたが、
エストが夢中になって彼女の両腕をきつく本棚に押さえつけたので打った所をさすることも出来なかった。
エストはそのままジリアンを散乱した本の上に押し倒すと、彼女の黒髪を払いのけその首筋に強く唇を押しあてた。


「エスト!!いやっ、やめて!やめて!!!」
その乱暴なふるまいにジリアンはエストのただならない決意を理解して震え上がり、今度は何も考えられず、本気でエストを拒絶しようともがいたが、
今までのことで体力、精神力ともすでに消耗しきっている上に、彼女には自分がすばやいかわりに相手に先制されると非常に弱いという泣き所があった。
ジリアンはあらんかぎりの思いを込めて叫んだ。
「私は自分に嘘はつきたくない!だからあなたを受け入れられない!だから、お願いだからやめて、やめなさい!」


エストはそれに応じず、ジリアンの首に更にキスをしようとして、肩の傷に気がついた。
「この傷の形は…ダルケニスの……そうか、兄さんが………。僕が治してあげる……。」
そう言うとその傷口にむしゃぶるように舌を沿わせる。
「やめて………!!エスト………!!!」
ジリアンの首や肩にたくさんのキスのあとをつけると、研究に没頭している時のように心躍らせて彼女の胸の谷間と服の間に手を差し入れ、
そのままジリアンの質素な薄い布地の服を思いきり両側にびりびりと腰の辺りまで引き裂いた。
「いやーーーっ!!やめて、お願い!!」
ジリアンの細くしまった美しい裸体が、恐怖におののく彼女がもがく度に、皮肉にも破れた服の合間からあらわになっていく。
幾度もの冒険を越えて美しく引き締まった絶美な太もも、そして柔らかに揺れる豊満な胸。
「ジリアン……。」
ちぎれた布をはねのけて現われた、彼女のその豊かな胸を見たエストは、愛おしげにその柔らかい中へ顔をうずめ感触を確かめるように頬をすりよせ続けた。
「エスト、お願いだから、もうやめて、あなたが今まで苦しんできたことはわかった、だけど………お願い…やめて………!!」
ジリアンはショックで気を失いそうになりながら叫んだ。
「そして兄さんに君を渡せっていうの?そんなことはできない。僕が先にジリアンと出会ったのに…僕が先に好きになったのに…。」
そこまで言うとエストはむしゃぶりつくように乳房をくわえこんだ。


「ああっ………!!」
エストはゆっくりと、ふっくらとしたジリアンの胸の麓から頂上まで駆け上がるように舌先を転がし、
そのままその先端の突起を口の中に含み、舌一杯でそれを包み込んだ。
舌の中で何回もその突起を上下左右に転がし、歯を立てずにそっと噛みしめる。
乳輪のふちにも舌を沿わせ、一つの丘陵を堪能しつくすと、快感に満ちた表情で谷間に顔をうずめ、もう一つの丘陵へと舌を登らせる。
「イヤ……!気持ち悪い………。やめて……!」
初めての感触に恐れを抱き、ジリアンの頬に涙が流れたが、エストは愛撫に夢中で気にとめなかった。
「うう…イヤ………ああっ………。」


「やめて…お願いだから…ああ……。」
「兄さんもジリアンのことが気に入ると思っていたけど、ここまでとは考えなかった…。まさかエリスの前で妹にしちゃって、しかもそれ以上に愛してしまうなんて……。」
それ以上言葉を続けず、エストはジリアンが腰につけていた騎士の勲章に手をかけた。
「僕は、金の大地を守っていた君も、旅をしている君も、ドレスを着ている君も、みんな、みんな好きだ。…でも。」
そう言って、エストは騎士の勲章をちぎり捨てた。
「僕は、騎士の格好をしている時の君は好きじゃない……。騎士として、みんなの前でもてはやされて、
でもそれは君がみんなの為に犠牲になるからだ、戦争なんか…。戦を止めるにはもっと別のやり方があるはずだよ……。」
そこまで言うと、エストはそのままジリアンの腰に残っていた布に両腕をあて、ほんのお飾り程度に腰のまわりを隠していたそれを引きちぎった。

 

「キャッ!……やめて………!!!」
ジリアンは羞恥で体を真っ赤に染め、嫌がって腰を振ったが、そんなしぐさすら彼にとっては一層そそられるものでしかなかった。
彼はうっとりとジリアンの女らしい美麗な線を描く体を隅々まで眺めた。
「ああ…ずっとこの時を夢見ていた。兄さんと君が一緒にいる所を見るのがつらくて……。ゼネテスと一緒に戦に行く君を見るのも耐えられなかった。
そうなってしまうのが嫌だから、だから魔人に闇の神器のありかを教え、賢者の森に君を導いてそれを追いかけさせたのに…。
そうすれば君はロストールに留まらない、兄さんのそばにいないと思ったから……。
だけど君は、帰ってきた。このロストールに……騎士として戦うために………。そんなの、結局はエリスのいいなりになって争いを増やすことになるだけなのに……!!」
「エスト……あなたは…………ううッ……。」


「ジリアン………。」
今や激しい欲情に我を抑えきれなくなっていたエストは、彼女の艶やかな太ももをつかんで押し広げた。
足をいっぱいに広げられ、今まで日の目を見なかったピンクの女性器がエストの前にあらわになる。
エストはその秘められていた両のふとももの間に指をさし入れた。
「ヒイッ!いや!ダメッ!!」
花びらのようなひだを指先でなぞり、そのままつまんで左右にひっぱる。
「もうやめて、ね、エスト、いい子だから…………。」
かすれた声でなおも懇願するジリアン。エストは彼女の全身をながめながら至福のため息をついた。
「ジリアン……やっぱり君はステキだ……とても…。」
エストは更にジリアンの股間に顔を近づけた。
「ヒャアッ!!ああっ!!いやっ!やめてっ!!エストッ!!やめて!やめて!」
舌を使いジリアンの股間の隅々を調べつくすように舐めていると、ふいに舌先が彼女の深くまで入り込んだ。そのまま舌をぬぷぬぷと中へ中へさし入れる。
「ああっ!!!やめて!お願い、入れないで!!」
どうにかして彼を離そうと足を曲げ、太ももをエストの頭に押し付けてなんとか引きはがそうとしてみるが、
かえって彼の頭を自分の股間に押さえつけているような格好になってしまった。


「やめて!やめて!お願い!!」
「ジリアン……。どうしてそんなこと言うのさ……。」
エストはゆっくりと、そしてだんだん激しく舌を出し入れさせていった。
「やめて……やめて…………うっ……。」
口の中に入る涙が苦いほど塩辛い。
「ああっ………。何でこんなことに………。」
ジリアンは最後まで彼を拒みつづけようとしたが、エストの激しい舌使いに反応して彼女の蜜がぬちゅぬちゅと音を立ててあふれ出てきた。
エストはしたたりおちるその液体を自ら舐めとるように舌を這わせ、口の端からあふれ流れるそれを指先でひだや太ももにも塗りつけた。
「あん……いや……あ………。」
エストはジリアンのひだをさらに押し広げようと手を股間に押さえつけるようにあてがい、その間中彼女のあちこちにキスをし続け、半ば無心に語りかけた。


「ジリアン。ようやく、僕の願いが叶う…。いつもいつでも、君のことを想ってた…いや、考えるのをよそうとしても君の事が頭から離れないんだ。
旅先で君の噂を聞くと舞い上がるほど嬉しくて、なのに実際に会えたときは何を話したらいいのかわからなくなったり…屋敷に帰ってちょうど君がいたときは嬉しいような、
君が兄さんといるのを見て悲しいような、複雑な気持ちだった…。でも、これでようやく、僕の想いが……。」
それ以上何も言わず、彼は自分の衣服をずらした。
「ヒィィッ………!!」
すでに硬くそそり立っている、予想をはるかにこえた大きさの彼の肉棒を見て、彼女は怯えきった悲鳴を上げる。
「ジリアン……!!」
彼は彼自身の本能に従い、濡れた液体にすべるように導かれジリアンの中へその肉棒の先端を侵入させた。
「ああっっっーーーーーー!!!!!」
これ以上だけはやってほしくなかった行為をされて、彼女の絶望のうめきが部屋中に響き渡る。エストは彼女の感触を味わう嬉しさに身を震わせた。
「ああっ………ジリアン………。」
エストがそのまま慎重に肉棒を進ませると、途中に抵抗を感じるものがあった。
「ああ……。」
「ううっ………。エスト、何で……………やめて…お願いだからやめて……。」
「ジリアン、一緒になろう。兄さんではなく、他の誰でもなく、この僕とだよ。」
エストは肩をひきしめるとジリアンの体をはしとつかみ、そのまま勢いよく肉棒をすべりこませた。


「痛い!やめて!やめて!やめて!あっ!ああっ!ああーーーーーっっっ!!!」
処女の最後の絶叫が部屋を揺るがす。エストはジリアンの感触に全神経を集中させ、彼女の奥深くまで自身の肉棒を進ませた。
「あーーッ!!!ウウッ……!!!」
ジリアンの涙がとめどなく頬を流れ落ちたがエストは彼女の中を感じるのに夢中だった。
「ああっ…温かい………。……ジリアン……最高だよ…………。」
エストの肉棒をジリアンの膣が吸い付くように深く包み込み、そのざらざらとした感触がエストにこの上ない快楽を与える。
エストは己の本能のままに、激しく腰を動かし始めた。
「ハア、ハア、ハアッ……。……ジリアン……。」
「ううっ、ああっ、ああっ、ああーっ!」
激しく全身を貫かれ突き上げられ、ジリアンはもう何が何だかわからなくなってきた。
「あんっ、ハアッ、ハアッ……。い、痛い……痛い……。」
エストは興奮に充血させた目でジリアンをこの肉棒から放すまいと見つめた。
「ジリアン!ジリアン!!誰にも渡さない!絶対!絶対!!」
「あんっ!!痛いっ!!!ああっ…。」
「ハアッ、ハアッ……。」
「エスト!私は……。ハアッ、ハアッ、ううっ…。」
「ハアッ、ハアッ。どうして、そんなに泣くのさ。僕が嫌いなの?」
「そうじゃない……。ハアッ、でも………。」
「ああっ…………。」
ぬちゅっ、ずちゅっと肉と肉、肉と液体のぶつかる音が響き渡る。
「ハア、ハア、ハアッ。」


「ううっ、あんっ、あ、あうっ……。」
「ああッ!ああーッ!」
エストは彼女に対していままで積もりに積もったあらん限りの欲情を彼女自身にぶつけ続けた。
めちゃくちゃなほど荒々しく腰を動かし、ジリアンは己が壊れてしまいそうなほどの衝撃と、処女を奪われた悲しみに、ただただ悲鳴のような嗚咽を漏らすのみだった。
「あッ、あッ、ああッ、………ううっ……。」
「ウッ、ハアッ、ハアッ…。」
「はあッ、はあッ、ああっ!!」
「あっ…!!もう、さすがに……ああっ!!」
エストはジリアンの初々しい締めつけに限界を感じ、彼女の中に欲望のつまった白い液を放出した。
「あああーーーーーっ!!!」
どくどくと自分の中に流れ込む熱いものを感じて、ジリアンは背をのけぞらせ再び悲壮な絶叫を響き渡らせた。
「ううっ………。」
ショックに遠ざかりそうになる意識を何とか留まらせるために震える体をこわばらせようとするが、
エストはなおもジリアンの体をきつく押さえつけたまま、最後の一滴まで注ぎ込もうと肉棒を深く差しいれて腰をふりつづけ放そうとしない。
「ああっ、はぁっ……。」
「ハア、ハアッ。」
「はぁっ、はぁっ………。」
「う……。」
「ハアッ、はぁっ………。」
「エスト………。」
ジリアンの中に心ゆくまで射精しきったエストは興奮がやや落ち着くまで、そのまましばらく彼女を抱きしめたまま余韻を味わうように目を閉じていた。
ジリアンはショックに目を大きく見開いたまま震えていた。


衝動がややおさまったエストがゆっくりと腰をひくと、彼の肉棒と一緒に、精液の混じった紅い血がだらだらと流れ出てきた。
「ああっ………。」
ジリアンが見あげると、エストは恐怖すら感じさせる笑みを浮かべて、彼女に話しかけた。
「ああ……。良かった………。兄さんとは、まだ……。世間じゃ人を寄せ付けない潔癖の兄妹なんて言われているみたいだけど、
兄さんが手を出していないかずっと気が気じゃなくて……。でもようやく、僕のものにできた……。」
「ハアッ、ハアッ……エスト、どうして、…………。」
ショックでジリアンは体の震えがとまらない。
「ジリアン……。」
エストはしばらく快感と喜びに酔いしれていたが、ジリアンの体を抱きしめ、再び彼女と唇を重ねた。
「うっ……ああ……。」
「ジリアン、もう戦には行かせないよ。争いなんて……。」


「エスト!!このばかっ!!」
そのまま彼女の乳房を愛撫しようと手を伸ばした隙をつき、ジリアンはエストの興奮に上気させた頬に乾いた音をたてて平手打ちをくらわした。
「!!」
ふいの反撃にうろたえたエストは一瞬身を引き、そのチャンスを逃がすまいとジリアンは後ろに身をひねってはいつくばり、本棚に手をかけ立ち上がろうとしたが、
あっという間に背後から両手がのびて、彼女の乳房をわしづかみにしてしまった。
「ジリアン!」
「やめて!!」
そのまま体当たりされるような形で本棚に体を押さえつけられたジリアン。
柔らかい乳房が本棚に押し付けられて変形し、たぷんと両脇にはみ出る。
どうしようもなくなったジリアンは泣き叫んだ。
「エストのばか!!私だって、私だって本当は、どんなことがあっても争いを避けなければいけないと思ってる……!!
戦を止めるために戦いに出るなんて、間違った事だとわかってる……!
でも、私が戦に出なかったら……アトレイア様やティアナ様は………。兄上は………。
ロストールの人達を守る為には、どうしても剣を持たなくてはならないのよ!!!…………うっ…………助けてぇ、兄上ぇぇ、うわああぁぁん、あああぁぁーーん!!!」
彼女は子どものように泣き叫び続けた。その他に何が出来ただろうという疑問と行き場の無いやるせなさに身を震わせて。


「ジリアン………。」
彼女は泣きじゃくりながらなおも叫び続けた。
「このけだものエスト!人間の心はどこにいったのよ!あなたは闇の神器に正気を奪われているわ!!
持っている神器をすぐに渡しなさい、どこか遠くに捨ててやるから!!!」
エストは表情を変えず、彼女の存在を確かめるように胸を愛撫し続けながら言った。
「ジリアン、僕は正気だよ。狂ってなんかいない。闇の神器の研究は、もう……終わったんだ。
せっかく人類の新しい可能性を求めて取り組んでいた研究だけど、それで分かったのは、あれには人間の未来を豊かにする力なんてないって事だけだった……。
あれは人の心を虚無に返す力しかないんだ。人間がそれを利用して敵を陥れる事は非常に危険だし、下手したら自分が闇に堕ちてしまう。
その事に早い時点で気づいた僕は、研究を取りやめることにした。神器も、すでに全て手放している。」
「!!じゃ、じゃあ、神器は、今、誰が………?」


「僕の集めていた分は全て、彼が持っていった…。
あいつは勝手に神器を持ち去ると、そのまま姫をさらい、行方をくらましたんだ。
でも、僕は闇の神器の研究にはあいそをつかした。あとはそれで彼が何をしようと、僕の知った事じゃない。
神器を狙う他の奴等にも、いいかげんうんざりだったし……。」
「エ、エスト………!!!ばか!!ばかっ!!!それで多くの人達が危険にさらされるとは考えなかったの!!!」
「そんな事にはならないさ………。神器はもともと、人間の弱さが出ているところにのみ力が働くんだから………。」
「エスト………ばかっ………!!!」
「それより僕は、新しい研究を始めるんだ。君には、無限の可能性がある………。
君の力なら、竜王の支配だって退ける力があるんだ………。
僕たち人間自身で未来を切り開く事ができるんだ………。」
「エスト………もうやめて………。」
「そのためには、くだらない目の前の戦争にかまっている暇なんかないんだ。ジリアン………。」
ジリアンが何か言おうと口を開きかけたとたん、彼女の弾力を持った肉づきの良いその尻に、再び硬くなったエストの感触を感じ、瞬時に全身を寒気が走りぬけた。
「エスト!もうやめて!!」
「嫌だ!!ジリアン!!!」
彼は叫ぶと、再びジリアンを貫こうとふくよかな彼女の尻に手をあて、股間をまさぐった。
「ハアッ、…ハアッ……いやぁっ、やめて、やめて……。」
冷たい汗が彼女の背中を流れ落ちる。
「ハア、ハアッ………。」


「エスト、どうして、…………。」
「ハアッ、ハアッ、ハアッ。」
「ハアッ、ああっ……やめて………。」
彼女は女性らしく弓なりに背をそらせ、はい上がろうとでもするように棚の上の方へわなわなと血の気を失った指先を伸ばす。
「ハア、ハアッ。……。ジリアン…逃がさないよ………。」
「はん……いや……どうして………私は……ひっく……うう……。」
再び強く本棚に押し付けられジリアンは苦しげにうめいた。彼女の肩や胸にはエストの爪痕がくっきりと残されている。
「ジリアン………僕のものだ……逃がさない………!!」
エストはジリアンの中に再び、その硬くそそり立った肉棒を挿入した。
「いやぁっ、痛い、痛い!!」
無理やり股間を広げられ、今度は背後から入れられて、彼女はかれた声で叫び続けた。
「ああっ、熱い、やめて、もう、お願いだからぁ!!」
「ハアッ、ああっ、いいよ、ジリアン、ジリアン!!!」
「やめて………やめてぇ………。」
「ハアッ、ハアッ。」
「ああっ……。はうっ……痛い……いや………。」


「ハア、ハアッ、ハアッ。」
「そんなに……………しないで………痛い………!!」
「ハアッ、ハア、ハア、ハアッ。」
「ハア、ハアッ、何で…こんなことに……。やめて……!」
「ハア、ハアッ、ジリアン………愛している………。」
「あんっ、ああっ、エスト、もうやめて………もう自由にして………。」
今までひたすら嫌がり暴れ続けていたジリアンだが、それでもとうとうエストの激しい快感の波には耐え切れず、
無意識のうちに柔らかな尻をふり始め、エストのそれを一層自分の中へ送り込もうと身悶えするように体をよじらせた。
「ハア、ハア、君のためだ……君が自由になるためだ………。」
「うっ……ハア、ハアッ………どうして………こんなことに………エスト………。」
「ハア、ハア、ハア、ハアッ、ハアッ。」
「はあんっ、アンッ、アアッ。」
「ハアッ、ああっ……。」


「はああん、はうっ、ふうっ。」
「ハァ、ハァッ…。」
「ああん、あぁっ!!」
「ハアッ、ハアッ!」
「あんっ、あっ、あんっ、あああああーーーーーーーーーーーっ!!!」
脳天まで快感が駆け上がり、ついに彼女は闇を切り裂く悲鳴を轟かせた。
「ああっ、ジリアン、ジリアンッッ!!」
その膣の締めつける威力にエストの精液が再び激流となって彼女の中に流れ込む。
「ジリアンっ………!!」
「ううっ………。」
ジリアンは全身の力を失い、ぐったりと両手足を投げ出しその場に倒れこんだ。体がびくんびくんと痙攣したようになり、震えがとまらない。
「ジリアン………っ。」

「ああっ………。エスト………。私………。」
秘所に再び熱い快感を感じて、ジリアンはすぐに意識を取り戻した。
「エスト、何を………。ああっ……。」
「ジリアン…。」
床の上に倒れた自分の体に、エストがまたも覆い被さっていのをジリアンは見た。
「はあん………やめて、そこは………。あぁん………!!!」
エストは彼女の穴と、そしてそのそばの突起を激しくこすり上げていた。
「ああぁん!!やんっ!!はぁうう………。」
再び彼女の愛液が噴き出していて、エストの指をぬらぬらと包み込んでいる。
ジリアンはまたもや絶頂を迎えてしまいそうな衝撃に全身を震わせた。
「ああんっ……。私……もう………。」
「ああ、大好きだよ、ジリアン……愛している………。」
「エスト………。」
「誰よりも、誰よりもこの僕が、君を正しい方向に連れて行くことができるんだ………。」
エストは彼女のひだや太ももに自身の、すでに様々な液体であやしく光る肉棒をこすりつけ始めた。
「ああっ………。」


ジリアンの体にはもはや、抵抗する力も愛撫に応える力も残されていなかった。
先ほどから痙攣したようにがくがくと体の震えがとまらず、頭の中は真っ白で、ひたすらに正気を保とうと努力する事だけで精一杯だった。
「ジリアン………。」
エストはそのまま彼女の中心へと、すでに復活し先走りの液まで垂らした肉棒を擦りながら進ませ、
再び彼女の、快感の波にひくひくとさせている穴の先へと先端をあてがった。
「ああっ………。」
またもや貫かれてジリアンの唇の端からうめき声が漏れる。
「ハアッ、ハアッ、ああんっ。」
「ハア、ハアッ。アアッ、ハアッ。」
エストは少しでも深く繋がろうと何度も何度も腰を打ちつける。
「ハア、ハア、ハアッ。」
床の周りは流れ出る二人の色々な体液であちこちにしみができていた。
「アアッ、うんっ、あうっ。」
膣から伝わる熱い感触に思わず腰を浮かせると、エストはより一層締めつけられるその快感にうめき声を出す。
「ああっ、ジリアンっ。ああっ…。」


「ああっ、エスト…、私、もうだめ、もうだめっ………。」
「ハァ、ハァ、ハァ。」
エストはより彼女の奥深くに入り込もうと、がむしゃらなほどに腰を動かした。
「ああっ、エスト………。」
彼は夢中で腰を動かし続け、ジリアンもそれにあわせて腰を振ろうとするが、激しい疲労からか体が思うように動かない。
「ううっ、ああっ、あんっ!!!」
「はぁっ、はあっ、あんっ!!」
「あうっ、はんっ、ふぁっ、ああーーーっ!!!」
どくんどくんと膣中に流れ込むものを感じて、ジリアンはすでにかれてしゃがれたような悲鳴を上げた。
「ううっ、はああっ、くううっっ!!」
「も、もうやめて……………出さないで………。」
ジリアンの哀願に応えず、エストはどこまでも己の液を注ぎ入れようと腰を振り続けた。


「ああっ、やめて、エスト、もう………。ふぁっ………。」
「ジリアン………。ああっ………。」
さすがに彼自身も疲労しきったのか、二人ともしばらくぐったりと力が抜け倒れていたが、エストがようやく腰を上げると、肉棒につられて流し込んだ白い液体が膣からたらたらと漏れ出した。
「ああ………エスト………私は一体これからどうすれば………。」
絶望をもらすジリアンの唇にエストは自身の唇を重ねた。
「ジリアン………。ずっと一緒だよ………。僕と一緒に争いの無い世界を創るんだ……。」
「エスト、…何をする気なの………。」
エストはジリアンの手を自分の胸に持っていくと、ジリアンを見つめて言った。
「ジリアン、一緒に戦争を終わらせよう。君と一緒なら僕はできる。僕と一緒に行こう。禁呪を解放し、平和のために新しい力を手に入れるんだ。」
それ以上何も言わず、立ち上がったエストは、ぐったりと無抵抗になったジリアンを抱き上げ、新しい旅立ちのために部屋を出た。窓から見える空は、朝焼けに輝いていた。


Fin