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アンティノ・マモン。
彼にはおよそ人間的な徳は存在しない。
およそ人に好かれるような魅力は一切ない。
しかし一つだけ、悪魔の如き才能がある。バイアシオンの長い歴史をみても、
彼が成しえたことは類を見ぬ。
類を見ぬ、「外道の所業」であった。人はその手で武器を造る。その手で建物を造る。
(だが俺は…)
この、アンティノ・マモンは、自らの手で「新しい生命」を作り出せる。
無論、シェスターという優秀な研究者がいたことは否めないが、基礎段階に関わったにすぎない。
人間とモンスター、いわば人魔融合という偉業を成しえたのは彼だった。


ロティ・クロイスの娘、クリュセイスが目の上の瘤として邪魔になり始めたのはここ最近、
謀略で陥れ、ロティ殺害の濡れ衣を着せた冒険者がクリュセイスと解放軍に使われだしてからだ。
どうにも、この娘は小賢しくなってきて、もはや無視できなくなっていた。
そして同じ頃、彼の研究は一つのステージを迎えていた。
モンスターと人間の融合に関してである。
融合を試みる際、最も大事なことは人間としての意識を保つことである。
すなわち、自分の意思に従う、「改造人間」をつくりたいわけである。
しかし、強いモンスターと融合したものは必ずといっていいほど獣性が前面に押し出される。
様々な実験から、融合理論は行き詰まりつつあった。

 

あの日、ある細胞と現象を偶然発見するまでは…。
特定のモンスターには自らの欠損した身体部位を驚異的な速度で自己修復するものがある。
それらはより上等のモンスターに見受けられる特徴であるが、理論的には人間の男性体と融合を果たした場合、
再生能力を持った改造人間が生み出される。
しかしそれらは下級モンスターに毛の生えた程度の力しかなく、戦闘モンスターとしては、
とても使い物にならない代物だった。女性体との融合はあらゆる研究の初期段階で、戦闘向きではないと
判断され、検証する価値もないと考えられていた。
なんの拍子にか、シェスターが怪我をし、出血した。怪我は指先を少し切った程度で、大したことはない。
しかし、その際に滴った血はその下等生物の分離細胞にかかった。
それを観察したところ、驚くべきことに細胞が活性化している。
それだけではなく、爆発的な勢いで自己増殖しはじめたのである。
様々な検証の結果、幾つかの展望が発見された。
ある種の上級モンスターは人間の女性体と融合した場合、戦闘タイプとは全く違った進化の可能性がある。
モンスター生命体の次なる段階へのステップアップは、どうやら女性体のほうが適しているようなのだ。
そして、アンティノの悪魔的脳髄に相応しい、悪魔的発想が鎌首をもたげていた。
そう、普段から何かと目障りな。
親友を装いながらも心底憎悪していた男の娘。
(……クリュセイス!!)
あの、小賢しい小娘をただ殺すのは簡単だ。
しかし、その前に役立ってもらうとしよう。文字通り身体を張ってもらうのだ。
なんと素晴らしき発想ではないか!

 

意識が戻るとき、クリュセイスは真っ白な霧の中から抜け出るような感覚を覚える。
だけど、今日は違った。
いつもより目蓋が重く、四肢の感覚がない。重い目蓋を開くと、霞んでいてよく見えない。
意識が未だ眠りからさめていない。
眠気と錯綜する、気が遠くなるような恍惚感。

(いいえ、これは――――)

ズクンッ!!
覚醒を促す疼きが、頭の芯を突き抜けて、意識が急速にクリアになる。
その疼きは。
「ああああぁッ!!!!」
無理矢理に絞り出される声――。
思いもよらぬことに快楽であった。ただし、当のクリュセイスは生娘であったため、
それが快楽であるとは認識してはいなかったが。