とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある少女の悪巧み



ただ今の時刻は6時ちょうど。
とある学校の高校生である上条当麻はいつもの公園を歩いていた。
第三次世界大戦が終わりしばらくは学園都市に帰ってこれなかったがいろいろあって11月末に戻ってくることができた、のはよかったのだが………
2ヶ月近く学校に行っていなかっため出席日数が圧倒的に足りず毎日補習と膨大な課題との戦いの日々である。
本来なら進級など不可能だがイギリスのクーデターやロシアでの第三次世界大戦での活躍、
学校側がそれを考慮して補習をうけ膨大な量の課題をこなせば進級できるようにしてくれたといわけだ。

「はぁ……帰ってこれたのはいいけど毎日大変過ぎる…」

毎日の補習の疲れがたまっているのか上条の足取りは重い。
目元にもくまができているしここまで歩くだけでも体力がゼロになるくらいだ。
少しでも体力を回復しようとあの自販機でジュースを買うことにした。
ヤシの実サイダーのボタンを押し出てきたジュースを取り出す。
金ものまれずジュースも普通に出てきたことに少し安心したのだが

「あつっ!!」

出てきてのはなぜかいちごおでん、完璧な嫌がらせである。
それにあまりの熱さにおもわず缶を落としてしまった。
するといちごおでんの缶が転がった先は1つの人影があった。

「とと…はい、これあなたのですよね?」
「あ、すいませ…ん!?」

上条はおもわず眉をしかめる。
目の前にいるのは高校生くらいの少女。
それだけなら何も驚くことはないのだが問題はその外見。

「み…さか…?」

そう、その少女は御坂美琴にそっくりだった。
だが上条が昨日まで顔をあわせていた彼女とは明らかに違う。
常盤台の制服も着ていないし身長も胸も昨日までの美琴より大きい。
相手も名前を呼ばれたことに少し驚いたようだったがすぐに表情を変える。

「…ひょっとして…上条当麻?」

その少女はニヤリと笑い上条の名を呼んだ。
名前を呼ばれた上条はとっさに数歩下がる。

「お前……何者だ!!」

美琴ではないと完全に理解した上条は声を荒げ、今までの経験から自然と身構える。
そんな上条を前に少女は優しい笑みを浮かべる。

「…ミサカが誰かわからないの?」

そう言ってから少し間を空け

「お父さん♪」

まさかの衝撃発言だ。

「………………………………………………………………………は?」

上条は目の前の少女が何を言っているのか理解できなかった。
お父さん?一体何の話だろうか?
唖然としている上条を気にも留めず少女は続ける。

「だから~ミサカはあなたの子供だよ?もちろん養子とかじゃなくて血のつながったね。」

思考が追いつかない。
補習で疲れているとかではなく普通に意味がわからない。
上条は結婚などしていないし仮に子供がいたとしても自分と同じくらい大きいわけがない。
混乱してほうけている上条。
そこに聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ちょっとアンタ!何ぼさっとしてんのよ!今日も課題たくさんあるんでしょ?」

その声に上条は我に返る。
近づいてきたのは御坂美琴、実は膨大な量の課題は美琴に手伝ってもらっており、いつもこの公園で待ち合わせしているのだ。
もちろん問題を解いてもらうのではなく教えてもらうだけだ。
相変わらず元気いいなぁと思ったが今はそんなことはどうでもいい。

「あ、いや、ちょっとな…なあ、コイツってお前のいとこかなんかか?」

上条は目の前の少女について美琴に尋ねた。
自分の子供であるわけがないし普通に美琴の親類だと考えたのだ。
それだと上条の名前を知っていることに疑問が生じるが美琴から聞いたと考えれば別におかしくない。
だが美琴から返ってきた言葉は

「…え!?誰!?この子!?私にそっくりじゃない!!」

上条の期待に反するものだった。
すると少女は美琴をジッと眺め始めた。

「な、何よ!アンタ何者なの!?」
「お母さん!学生時代はこんなかんじだったんだ!」
「………………………………………………………………………は?」

美琴も上条と同じ反応をした。

「いや~まだ胸小さいね。それに2人は付き合う前なんだ!」

頭の上に大量のクエスチョンマークを浮かべる上条と美琴。
そんな2人を前に少女は笑顔でこう言った。

「そういや自己紹介がまだだったね。ミサカの名前は御坂麻琴、上条当麻と御坂美琴の娘だよ☆」
「「………………………………………………………………………は?」」

名乗られてもなんの解決にもなっていない。混乱する一方だ。

「どうしたの2人とも?何か反応してくれないと困るんだけど?」
「い、いやそんなこと言われても信じられるわけ……」
「じゃあミサカのこの外見はどうなのさ。お母さんそっくりでしょ?」

上条は改めて御坂麻琴と名乗る少女をしっかりと見てみる。
………似ている、どう見ても美琴の高校生verにしか見えない。

「じゃあ……本当に未来から……?」
「だからそうだって言ってるじゃん!……あれ?お母さん?」
「お、おい御坂どうした?」

2人が美琴を見てみると顔が紅くなってきておりなんだか様子がおかしい。

「こ、子どもってことは私がコイツとけ、け、け、けっこ、」
「そうだよ、お母さんは上条当麻と結婚したんだよ。」

麻琴のその一言がとどめとなった。

「ふにゃー。」
「おぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!漏電してる!漏電してるから!!」

そして美琴は上条が立っている方向へと倒れしっかりと受け止められた。


◇ ◇ ◇


それから数分後公園には心配そうな上条と麻琴、そして申し訳なさそうな美琴の3人がベンチに腰掛けていた。

「お母さん大丈夫?」
「はい……面目ないです……」

美琴も目を覚ましたので話を聞くことにした。

「それで……本当に俺たちの……娘?なのか?」
「俺たちの……ふにゅ…」

上条の『俺たちの娘』発言に美琴は再び気絶しかける。

「それさっきも言わなかったっけ?」
「あ、ああ悪い。じゃあどうやってここへ……?」
「それは『時空移動装置』を使ってこの時代に来たんだよ。」

麻琴が説明するに『時空移動装置』とは未来の学園都市で開発された過去や未来に自由に行き来できる機械らしい。
かなり科学ってのは進歩したんだなー、と上条はつぶやいた。

「まあそれでミサカはお母さんとお父さんの学生時代が見たいなー、と思ってこの時代に来たわけなのさ。」
「なるほど……そういえばアンタなんで自分のことミサカって言ってるの?私たちが、その、け、結婚したら上条なんじゃないの?」
「ああ、それはお父さんが上条性だと不幸になる可能性があるからって御坂当麻になってるからよ。」
「ま、マジか……俺御坂って名乗ってるのか……」
「そうだよ。で、お父さん自分のこと“上条さん”って言う癖あるでしょ。」
「ああ、あるぞ。」
「それが遺伝したのかミサカは一人称がミサカなんだよね。」

ああなるほど、と上条は納得したが美琴はそれって遺伝するもんなの?と思った。

「もう完璧信じたでしょ?」
「まあ信じたわよ。そ、それで、その、み、未来の私たちって……どんなかんじなの?」

美琴は1番気になっていたことをおそるおそる尋ねた。
すると麻琴はまたニヤリと笑みを浮かべる。

「へ~知りたいの?」
「う、そ、そりゃまあ……」
「じゃー教えてあげる!2人はね、すっごいラブラブだよ☆」

麻琴が言うには未来の2人はいろいろすごいらしい。
30代にもなっているのに休みとなればいろんなところへデートへでかけるし所かまわずいちゃつく。
お互い当麻、美琴、と呼び合って常に桃色空間が広がっているという。

「俺40歳目前にもなってそんなんなのか……」
「さすがに恥ずかしいわね……」

2人はなんかショックを受けた。
40でそんなことしてたら周囲の目とか結構きつくない?とか思ったからだ。

「まあまあ。それに40歳近いって言ったけどお父さんはまだ31歳だよ?まだ大丈夫でしょ。」
「そ、そうなのか!?確かにそれならまだ大丈夫……?」

ここで上条は1つ疑問に思った。

(ん?ちょっと待て。31歳……?それっておかしくないか?だって高校生の娘がいるんだぞ?計算が合わないような……?)

「ちょ、ちょっとアンタ何歳なの!?見た目は高校生っぽいけど!?」

どうやら美琴も上条と同じことを考えていたようだ。

「え?ミサカは15歳で高校1年生だけど?」

15歳、それを元に計算してみると……

(えーと未来の俺は31歳で娘が15歳なんだから31-15は……)
(15歳でしょ?未来のコイツは確か31歳なんだから私は29歳よね。29-15は……)

「「え?」」

2人仲良くそう言うと勢いよく立ち上がった。
そんな2人を麻琴は不思議そうに見ていた。

「お父さん、お母さん?急に立ち上がったりしてどうかしたの?」
「じゅ、じゅ、じゅ16歳!!?俺が16歳の時の子ども!?待て待て待てそれ今じゃねーか!!」
「私が14歳……そ、そ、それってもうすぐ私とコイツがベッドでふにゃー。」
「み、御坂しっかりしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!」

美琴本日2度目の気絶。
地面に倒れそうになったところを上条が大慌てで受け止めた。


◇ ◇ ◇


「じゃ、じゃあもう1度聞くぞ?本当に俺が16で……」
「私が14歳のときの……子ども?」
「うん。」

あっさり答えられ上条は頭を抱えてうずくまり美琴は顔を真っ赤にする。

(つ、つまり俺は中学生に手を出したすごい人に……まさか妊娠が原因で結婚したのか!?てことは俺は御坂の人生ぶっ壊しておきながら自分は楽しんでる最低ヤローってことか……?)

上条が真剣に悩んでいるのに対し美琴は……

(コイツの子ども産むんだ……嬉しいけど14だとちょっと早いな……い、いつなんだろ?麻琴の年齢的にもうすぐ?やっぱり下着はゲコ太じゃダメよね……もっとお、大人っぽいのを……)

妄想が暴走を初めていた。

「おーい2人とも?ミサカはそろそろ帰ろうと思うんだけど?」
「え?帰るって……未来へ?」

そう言って上条はふらふらしながら立ち上がった。

「顔青いけど大丈夫?まあまだ向こうへは帰らないよ。少しの間はこっちにいようと思ってさ。」
「そ、そうか、つーか泊まる場所はあるのか?なかった俺の寮に来てもいいぞ?いろいろ話聞きたいし……」
「大丈夫大丈夫♪泊まるとこくらいあるし話はまたするからさ。それにお父さんの寮に泊まるのはまずいでしょ。」
「男子寮でもそれくらい大丈夫なんじゃないの?公園に泊まるとか言わないでよ。」
「いや~だってお父さんはお母さんのこと大好きなんだよ?こっちのお父さんは若いからお母さんにそっくりなミサカ襲われそうで怖いんだよね☆」
「なな!?お、おま、お前何言ってるんでせう!?」
「ジョークジョーク!じゃあまったね~♪」

そう言い残し麻琴はどこかへ帰っていった。
そして残った2人の間には微妙な空気が流れる。
もうすぐ子どもができるとその子どもから言われたのだから話しずらいことこの上ない。
しかし何も話さないわけにもいかないので上条から声をかける。

「あ、あのだな御坂、その、えーとなんだ、子どものことなんだが―――――」
「うえ!?な、何子ども!?ま、まさかアンタ今から子づくりしようってんじゃ―――」
「お前は何を言っとんのじゃあぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」

そこまで言った美琴の口を上条が手で塞いだ。
これ以上何かしゃべられれば人が通ったときにまずいことになる。

「おい御坂……少し落ち着け!今の発言はヤバいことこの上ないだろ……ん?」

何か気配を感じたのでその方向を見てみると……

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!?」

ものすごい勢いでものすごい量の鉄の矢が飛んで来た。もうこれだけで誰かがはっきりわかる。

「ちょ、おま、白井いきなり何すんだ……」

上条はびびりまくっていた。
なぜならば矢も怖いが今日の黒子は威圧感がハンパないからだ。

「上条さん……今何をしようとしていましたの?」
「へ?あ、いや誤解だ誤解!!」
「あらそうですの?わたくしてっきりお姉様に手を出されたのかと思いまして。」

顔は笑っているが中に鬼が見える。
それにその静かなしゃべり方が逆に怖い。

「それにお姉様から何やら『子づくり』などという不穏な言葉が耳に入ってきた気がするのですが……」
「い、いやなんでもないわよ!ほんとになんでもないから!!」

必死に否定するがあまり意味はなかった。

「詳しい話しは寮でお聞きいたしますわ。それから上条さん?」

そういうと黒子は上条に近づいてきて耳元でこういった。

「何か間違いを起こしたら………ぶ・ち・こ・ろ・し・ま・す・わ・よ?」
「はい……」

上条は黒子のあまりの威圧感に完全に萎縮してしまった。

「それではお姉様、まいりましょうか。」
「え、ちょっとま――――」

美琴としてはこの場にとどまりたかったが黒子のテレポートで強制的に連れて行かれた。
そしてその場に1人取り残された上条はこうつぶやいた。

「未来から娘が来るとか……これ夢とかじゃないよな……」


◇ ◇ ◇


「さ~て今日もあの2人に会えるかなっと♪」

次の日の夕方、麻琴はスキップを織り交ぜながら昨日上条と美琴に会った公園へと向かっていた。
麻琴にとって2人があれからどうなったか楽しみでしかたがない。
ひょっとして付き合い始めちゃったり!?など考えながら公園に到着した。

「さてさて、いるのか「アンタそれ本気で言ってんの!!?」な……?」

公園内に少し足を進めたところで大声が聞こえてきた。
その声の方向へ急いでみると……

「ああ本気さ……俺とお前はもう会わないほうがいい。」
「ふざけんじゃないわよ!じゃああの子はどうなんのよ!」

上条と美琴が口論をしていた。
ちょっとしたものではなく本気で言い合っているようだ。
それを見た麻琴は慌てて止めに入る。

「ちょ、ちょっと2人ともどうしたの!?」

そんな麻琴を見た2人は複雑そうな表情を見せる。

「い、いやちょっとな……」
「いや理由教えてよ。なんで言い争いなんてしてるの?」
「聞いてよ麻琴!コイツったらこのまま一緒にいると子どもができちまうから会わないほうがいいっていいだしたのよ!?信じられる!?つまり麻琴に消えろって言ってるようなものよ!」
「い、いやそうは言ってねぇだろ!昨日俺が調べた限りパラレルワールドはありえるだろうし俺たちが何もしなくても麻琴が消えることはない!」

そしてまた言い争いを始める。
そんな2人を見た麻琴は

(…………やっば……ミサカのせいでなんかややこしいことになってんじゃん……)

少し焦りを覚えた。
予想外の方向に話しが進んでしまったことにどうしようもなくなってしまった。
少しでも解決に向かわせるため何か策はないかと考えていると

「お前は好きでもなんでもない男の子どもを生みたいってのかよ!」
「うえ!?そ、それは、その、好きってその……あう…」

上条のその言葉を聞いた美琴が何やらやたら顔を赤くした。
それを見た麻琴に名案が浮かんだ。

(チャーンス!!この恥ずかしがってるところに笑いを起こして一気に場を和ませるしかない!!)

正直よくわかんない名案だ。
というか名案じゃない気がするがとりあえず実行に移す。

「何言ってんのよお父さん!お母さんはお父さんのこと好きに決まってるじゃない!」
「へ?」
「ミサカは向こうのお母さんに聞いたんだけど『妹達』の件で助けてもらってからお父さんにべた惚れなんだってさ!ね!お母さん!」

そう言って美琴のほうを見てみると……

「ま、麻琴……なんでそれ今言っちゃうのよ………」

麻琴が見た中で1番顔を真っ赤にしていた。


「え……まさか図星……?」

麻琴としては『そんなわけないでしょ!』からの『そうだよな~ありえないよな~』を期待していたのだが予想外だった。
まあこんなんで笑いが起きて場が和むとは到底思えないのだが……

すると上条が

「御坂……マジなのか?」

割と真剣な声で美琴に尋ねた。

「えと、その…………ぇぇそうよ……」
「御坂……?」
「私はアンタのことが大っ好きなのよ!!」
「!?」

美琴は大声で告白した。
自分の娘に上条が好きだと言うことをばらされたためやけくそである。

「麻琴の言う通り『妹達』の件の後くらいからアンタのことが好きで好きでどうしようもないの!だから麻琴が現れて結婚できるって聞いたときは昇天するくらい嬉しかったのよ!!」
「ちょっとお母さん!?なんか暴走してない!?」
「アンタは黙ってなさい!!で、それなのにアンタは会わないようにするって言うし……アンタと会えなくなるなんて嫌なの!っていうか最近結構積極的にアタックしてるんだからちょっとは気づきなさいよこのバカッーーー!!!」

すべて言い切った美琴は少し息切れしている。
そんな美琴に唖然としている上条と麻琴。
それに麻琴の顔色はあまりよくない。

(告白って……なんかヤバい方向に話が進んじゃったんだけど……このままふられたら全責任ミサカにあるっぽいよね……)

あるっぽいのではなく完全にある。
と、ここで黙り込んでいた上条が口を開いた。

「そうか……御坂、わかったよ。」
「わかった!?わかったって何が!?私の気持ち!?」

興奮状態の美琴はそう言いながら上条に歩み寄った。

「お、おいちょっと落ち着けって……わかったのは…俺の気持ちだ。」
「へ?」
「ここ最近御坂と勉強したりして2人で過ごすのが楽しかったんだ。」
「そ、それで……?」

落ち着きを取り戻した美琴はおそるおそる尋ねた。

「ああ、それと昨日麻琴が現れて未来の俺たちについて話してくれただろ?そのとき御坂との将来を想像してなんだか幸せな気持ちになれたんだ。だから俺から会わないほうがいいっていったけど本当は嫌だった……」
「え、それって……」
「そして今御坂が俺のこと好きって言ってくれてすべてわかったんだ、俺は、上条当麻は御坂美琴が好きだって。」

そして……

「だから御坂、俺と付き合ってくれ。」

上条は真剣な表情で美琴に告白した。
それに対して美琴は

「ふにゃー。」
「なんでだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

昨日と合わせて3度目の気絶、とても幸せそうに上条の方向へと倒れ込んだ。

◇ ◇ ◇

それから数分後、びっくりするくらい幸せそうな美琴が上条にくっついていた。

「えへ、えへへ~と~ま~♪」

これには上条もびっくりだった。
だってこんなに美琴の態度が変わると思ってもいなかったし……
ちょっとキャラ変わり過ぎでないかい?と上条はツッコミたかった。
まあ嬉しいので何も言わないのだが。

「いや~一時はどうなることかと思ったけどこれで一件落着だね!ミサカも安心したよ。」
「ほんと麻琴さまさまね!」
「でもこのままだと1年後にはマジでミサカ生まれてそうだよね。」
「え………あ…しまった……そのことすっかり忘れてた……」

上条の顔色がサーっと青くなった。
美琴の告白がインパクトありすぎてもうすぐ子どもができるかもしれないということを忘れていたのだ。

「そうだ麻琴、未来の俺たちについてもう少し詳しく教えてくれないか?」
「あ!私も聞きたい!ファミレスにでも行ってゆっくり教えて!」

上条としてはこのままいつ間違いを起こしてしまうか心配なのでその対策を練るためにも未来の自分や麻琴のことをもっと知りたかった。
だが―――――――――――

「あ、あのさ~残念だけどミサカそろそろ未来に戻ろうと思うんだけど……」
「へ?どうして?昨日はしばらくこっちにいるって言ったじゃない。」
「実は今日気がついたんだけどこっちに来る期限の申請を間違えちゃってて……今すぐにでも戻らないといけないんだよね。」

申請、そんなものがいるのか…じゃあ話し聞けないしヤバくね?とか上条は思った。

「そんなのか……残念だな……また会えるのか?」
「多分来ようと思えば来られるはずだけど……」
「そっか……じゃあ元気でね!また会いましょ!それにいろいろとありがとね!」

美琴は目に少し涙を浮かべている。
上条も寂しそうだ。

「う、うん!それじゃ、ま「おォ?なんかマジで面白れェことになってンじゃねェか。」た……」

感動の別れの時、というところでどっかで聞いたような声が聞こえてきた。
というかこの声としゃべり方から普通に誰かわかる。
3人が声のする方向をゆっくり見てみると……

「一方通行!なんでここに?」

一方通行が妙な笑みを浮かべながら立っていた。

「久しぶりだな三下ァ、まァここに来たのはちょっとした野暮用だ。」
「野暮用って……アンタまさかまた実験に協力したりしてんじゃないでしょうね!」
「それはねェから安心しとけ。俺は黄泉川に言われてコイツを呼びにきただけだからよォ。」
「コイツって……」
「「え!?」」

そういって指さした先にいるのは―――

「あ、あはは……」

麻琴だった。

「ったく……携帯くらい持てって言ってンだろうが……」
「お前…麻琴のこと知ってるのか?」
「麻琴?誰だよそりゃ。」
「い、いやだからアンタが指差してる子のことじゃない……」

4人の間に沈黙が生まれた。
そして数秒の静寂の後

「くっ、ぎゃははっははははははっっははははは!!!!!!!!」
「うおっ!?どうしたんだいきなり!」

突然一方通行が爆笑し始めた。

「お前、まだバラしてなかったのかよ、いろいろと面白すぎンだろよォ!」
「ちょ!ミサカのことは言うなって!」
「へ?一体どういうこと?」
「あァ、俺が説明してやンよ。コイツはいつまで経っても言いそうにねェしなァ。」

全く訳が分からない上条と美琴に一方通行は説明を始めた。

「つーか三下には1回話しただろ?いつもの『妹達』と打ち止め以外にも超電磁砲のクローンがいるってなァ。」
「あ……なんか前に聞いたような……ま、まさか…?」

そう、その少女は未来から来た上条と美琴の娘でもなんでもない。

―――――――――――――――――――――――――――番外個体である。

つまり昨日話したことはすべて真っ赤なウソ、番外個体が1週間かけて念入りに作り上げた作り話だった。
番外個体としてはすぐに本当のことを言うつもりだったが2人をあまりにうまく騙すことができ、楽しくなってきたので『御坂麻琴』を演じ続けたのだ。
そして上条に未来について教えてくれと言われウソにも限界がきたので一旦未来に戻ると言って逃げ、また話を練るつもりだったところを一方通行に見つかったのだ。

ちなみになぜ上条が自分のことを『上条さん』と呼ぶことを知っていたかというと『ミサカネットワーク』を駆使していろいろと情報を集めたのだ。

「じゃ、じゃあ俺と御坂の娘ってのは……真っ赤な嘘?」
「私が14歳で子ども産むってのも!?」
「……未来から来た2人の子どもってのは昨日俺も聞いたけどよ、それ以外にどんな嘘ついてンだよ……話ぶっ飛びすぎだろ。つーかお前らも信じンじゃねェよ。」
「あ、あはは~……ま、まあ面白かったでしょ?ミサカとしては結構うまく演技できたと思うんだけど……」

番外個体は場を和ませようと必死である。
しかし美琴と上条にギロリとにらまれたため

「い、いやほんとはすぐに本当のことを話すつもりだったんだよ!?でも予想以上にうまく騙せたもんだからこのまま2人の子どもって立場を利用して2人を付き合わせたほうがいいと思って……」

などと慌てて言い訳を始めたが……

「いや、お前昨日“楽しくなってきたからこのままでいいや。あの2人があたふたしてるとこ見るの面白いし☆”とか言ってたじゃねェか。」

一方通行に本当のことを思いっきりバラされた。

「あ、あれ~そうだったっけ~?……あ、あれお姉様?なんか帯電してない?それに上条当麻さん!?なんで拳を握っているのかな!?」

なぜか上条をフルネーム+さん付けで呼ぶ番外個体。
そんな番外個体に美琴はバチバチと電気の音をたてて、上条は拳を握りしめて近づいてくる。

「アンタ……初対面だけど少しお仕置きが必要な妹のようね?」
「やっぱり性格がひねくれたやつには1発『そげぶ』しなきゃダメだよな。」
「いや、ミサカのおかげで2人は付き合えたんだからそれでチャラじゃない!?」
「それとこれとは……」
「別よ!!」

実は上条も美琴も昨晩はかなり真剣に悩んだのだ。
もし本当に子どもができたらどうしようとか、
今子どもができなかったら麻琴の存在は消えてしまうのだから運命は決まってるのだろうか?
とかいろいろだ。
だから上条は必死にパラレルワールドについて調べたし、万が一を考えて会わないということも視野にいれていた。
それなのに番外個体は2人があたふたする姿を楽しんでいたということがわかったのだ。
これはもう2人がお仕置きモードに入ってもしょうがない。

「さあ……番外個体…」
「覚悟しなさい!」
「ちょ、ちょ、ちょ、タンマ!ミサカ何にも悪いことしてなくない!?ちょこっと嘘ついただけで―――」
「「それが悪いことだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

そう叫ぶと上条と美琴は番外個体を追いかけ始めた。

「あーもう!不幸だぁぁぁあああああ!!!!!ていうか一方通行!よくもミサカのことバラしやがって!後で絶対仕返ししてやるからなぁぁぁあああ!!!!!!!!!!」

上条と美琴に追いかけられる番外個体、そしてそれを見てまた爆笑する一方通行。

「ぎゃははははははははははははは!!!!!!やれるもンならやって……あァ?電話か?」

一方通行が携帯を取り出し誰からの電話か確認せずに耳にあてる。

「もしも『あ、一方通行?もうそろそろ番外個体連れて帰ってくるじゃん?』し……」
「なンだ黄泉川かよ……もう少し時間かかりそう『まだかかる!?』……」
『今日は用事があるからあれほど早く連れてくるよう言ったじゃん!』
「いやこっちもいろいろあンだよ。もうちょっと待っとけ。」
『いいから早くするじゃんよ!そうでないと“打ち止めと微笑ましく遊ぶ一方通行の動画”が流出するじゃん。それじゃ。』

それだけ言われ一方通行は電話を切られた。

「……………………待てこらそこの3人、止まりやがれェェェェェェェえええ!!!!!」

こうして4人による壮絶な追いかけっこが行われることとなった。
追いかけっこ終了後和解はしたが番外個体が一方通行の焦りっぷりに何かあると思い(意図的に)帰るのをさんざん粘ったので
『打ち止めと微笑ましく遊ぶ一方通行の動画』は黄泉川の部屋で上条や美琴達にバッチリ見られた。
ちなみに一方通行は打ち止めにより能力を封じ込められ番外個体の電撃で麻痺させられ動けなくなっていた。

「ぎゃはははは!!!仕返し成功☆」
「番外個体……い・つ・か・こ・ろ・す」

とある少女の悪巧みのおかげで?今日もにぎやかな学園都市だった。


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