とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part1

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夕日が輝く中、上条当麻はとあるスーパーの来ていた―――特売日
そう本日は週イチの特売日―肉.魚.野菜.卵―が激安で売り出される

店の規模は決して大きい方ではない、特売日ともなれば客で店の中は一杯になってしまうほど
店内がザワつく中、彼は静かに特売開始の合図を待っていた―店の入口に出てくる卵を取り、店内左手の精肉スペースへ向かう―この2つは何としてもゲットする構えでプラン立ても完璧

「カンカン♪カンカン♪カンカン♪」特売開始の合図のベルが鳴り響く、彼は目の前に出てきた卵をゲットする為に手を伸ばした……「ちょっとアンタ!」――この声? ビリビリ!?
「(……残念だったな、今は構ってる場合じゃないんですよっと)」彼は最初のターゲット「卵」をゲットし次のターゲットを捕らえに行く。
「ちょっと無視してんじゃないわよ! って……行っちゃった」彼女は御坂美琴、常盤台のエースと呼ばれレベル5のエレクトロマスター(電撃使い)
「(こうなったらアイツが出てくるまでここで待っててやるんだからっ……)」

「(……っていつ出てくんのよ!! もう40分くらい待ってるのに、ちょっと様子を確認する必要がありそうね)」
若干グッタリした様子で店内から上条が出てくる――「ふぅ……卵、豚肉、その他野菜類も大丈夫だな。ビリビリは……帰ったか?」
「(な、何よこれ……入れたと思ったら抜け出せないじゃないっ!)」常盤台のお嬢様が特売の殺伐とした空気に縁がある訳がなく……。
「待ち伏せでもされてる思って覚悟して店から出たけど、本当にいねぇ……って何で俺がビリビリを探してるんだ? 帰るか……?」

―――20分後
「(あのバカの気持ちが少しわかったわ……しかし中に居なかったとなると…入れ違った!? 不幸だわ……)」

いつもの自販機近く、辺りが暗くなって照明に火が灯る。上条は結局美琴を探してしまっていた――家には帰らずに――
「結局探しちまったなぁ……普段なら向こうから現れて言いたい放題言われて、そして追い掛け回され……」
そんな生活も――なんだかんだ言って嫌じゃなかった
「こういう時に限って会えないんもんだな、食料が痛む前に今度こそ帰るか!」上条は腰を上げて、家路に付くハズだったが――「やっと見つけたわよ……!」と後ろから声が聞こえる
「……逢いたかったぜビリビリ~!」荷物を置いて美琴へ向かいダッシュする
「な゛っ! (ど、どういう反応!? なんか変な感じがするわ……)」
「気がついたらオマエを探してたんだよな…俺は何をしてるんだか……」彼は笑っていた。
「ちょ、調子狂うわね……でもアンタ買い物の後でしょ? 早く持って帰らないと痛んじゃうんじゃない?」
「まあ、そうなんだけど……ビリビリの顔見れたし、今日の所は帰るとしますか…!」
「私には御坂美琴っていう名前があるんだから、いい加減覚えなさいよっ!」
――今日は追いかける気になれないわね
「(って……あのバカ、袋置きっ放しじゃない! 不幸というよりドジなんじゃないの!? そうそう追っかけないと、まだそこまで遠くには行ってないはずよね。アイツの行った方向を追っかければ……」

―――上条当麻、自宅に到着
「とうま!ご飯ご飯!」
「わっーてるから、とりあえず本を片付けとけ」――!?やけに手が軽い――恐る恐る手元を見ると……無論手ぶらである
「……不幸だ―!!! ちょっと待ってろ! 忘れた買い物を回収してくる!」ガタン!とドアを締め家から飛び出して行く」
「と、とうま……? おなかへった…」

「(方向はこっちで合ってるわよね……何で走ってるアイツを見つけられて歩いてるアイツを見つけらんないのよっ!)」
「ビリビリを探すなんて慣れない事をしたからこうなったんだな……」と一人呟き帰ってきた道を走る
「あ……ちょっとアンタ! 待ち……って通り過ぎちゃったじゃない、こうなったら…っ!」美琴は電撃を空に向かって飛ばす、辺りは暗いので目立つだろう。
「おっ…花火……じゃないな、あれには見覚えがある! 間違いないビリビリだ」電撃の見えた方へダッシュする
「やっと見つけた……買い物忘れるなんてアンタはどういう神経してるのよ……」
「サンキュ~ビリビリ、それが無かったら今夜の夕飯はパンくずだったから助かったぜ……」
「どうあれ見つかって良かったわ、もし見つかんなかったら一晩中さまよってるところよ」
「わりぃわりぃ、じゃ荷物は引き取らせて頂きますっ!」
「ここまで来ちゃったんだから、家まで付き合うわよ。ここからそんなに遠くないんでしょ?」
「そこまでしてもらうのはアレだけど、ここまで来てくれちゃったんだしお願いする。家は歩いて3.4分の位置にあるから少し話ながら歩けばすぐ着くと思うぜ」

二人は袋を一つづつ持って上条の自宅へ向かっている、辺りはすっかり暗くなって人通りも少なくなっている
「(な、何話そうかしら……)」
「(……こういう時はどういう会話をしたら良いのかサッパリだ……)」二人ともトホホと言った感じで足を進める

「ホ、ホラ! 見えてきたぜ」
「あ、あれがアンタの家…(結局何も話せないまま着いちゃったわね……)

―――エレベーター前に到着
「ここまでで良いぜ。 今日は振り回して悪かった! 埋め合わせはまたいつかするからさ」ササッと荷物を受け取り――待たな!――「ま、待ち……」
「(結局最後まで言えなかった……埋め合わせとやらを口実に使って次は私が振り回してあげるんだからっ!)」

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

快晴と言っても良いだろう、それくらい綺麗な青空が広がっている。

「ちょっと待ってろ……今取ってやるからな……」
「申し訳ありません……」
「(ん~~~~~よし!)……ほらよっと、もう落とすんじゃねぇぞ」
「ありがとうございます!」
「じゃ、俺は行くから」
「ちょっと待ってください! 是非お礼をさせてください」
「お礼? そんなのいいって、それに誰が見ていてもああしてたぜ。たまたま俺だったってだけの話、それに常盤台のお嬢様がこんな冴えない奴と一緒に居たら逆に迷惑かけちまうんじゃねぇか?」
「そうですか……ではお名前だけでも!」――上条当麻――「じゃあな!」
「上条当麻様……か」

上条当麻は人助けをした、でも彼にとっては側溝に挟まった財布を取る事くらいなんてことはない、それは――いつもの日常――だけどちょっと狂ってしまう

翌日、本日も快晴なり―――
「こんな所まで来てしまった……昨日一日顔見なかっただけなのになぁ」上条は常盤台中学の寮の近くにまで来ていた―目の前に顔を出すのはマズイんじゃないか―と判断し近くまで

上条は家で必死に考えた―有意義な休日の過ごし方―について、とりあえず飯だけ用意しておけば家からは出れる……そして考えた結果が―御坂美琴に逢いに行く―
どうしても彼女の事が頭から離れない……―おととい別れ際に何か言いたそうにしていたし、埋め合わせもすると言った―もちろんこれは「御坂美琴に逢いに行く」理由、口実の一つでしかない
彼は自分の気持ちをコントロールするという観点なら普通の人間を超えてるであろう。我を保てなくなれば「負け」を意味するからだ、彼はどんな時でも自分を強く持っている
でも彼女の事を考えると少し乱れてしまう……そう上条は―御坂美琴に負けてしまっていた―そして一歩を踏み出す、少しでも早く彼女に逢うために……。

「お姉様! どこへ行きますの?」
「ちょっと…ね、私だって色々忙しいのよ」と言い部屋を出て行く
「(また争いごとですの…? 昨日わたくしと買い物に行った時もなんかうわの空と言った感じでしたし……ま、深くは考えないようにしましょう)」

「よぉ! ビリビリ!」
「ア、アンタこんなところで何してんのよ! ちょっと来なさい!」ちょっと離れたコンビニの前まで美琴は上条を無言で引っ張って行った

「で、どうしたんだ……俺とウワサされたくないとかそっちのお話?」
「と、とんでもな…じゃなくて! 今アンタのウワサで持ち切りなのよ……」
「えっと…どういう事でしょうか? 悪いウワサ立てられる事はしてませんよ……?」
「逆よ逆! アンタこの前うちの子を助けなかった? その子ったら私に……」
「素敵な殿方に出会えました、困っていた所突然現れて助けて下さったんです。お礼をさせてくださいと申し出ても「お礼なんか要らない、誰が見ててもああしてたぜ」と言い去っていかれました……
でもお名前だけは聞けました……」私は言ったわ―まさか……上条当麻じゃないわよね…?―そしたら「御坂様お知り合いなのですか!? そうなら是非連絡を取って頂きたいのですが…」
「うちの学校でも物凄く大人しい子が、アンタの話をする時だけ物凄く嬉しそうに話してたわ……で? アンタはどうする気なのよ、会うなら寮の目の前に呼び出すけど」
「そこまでされて、会わないってのは男としてどうなの…? っていう話になりそうだけど、俺は遠慮させてもらうぜ……今日はオマエに逢いにこんな所まで来たんだからな」
「えっ…? わ、私? (コ、コイツ……私と同じ事考えてたって言うの?)」
「御坂! 暇なら付き合え、埋め合わせしてやるから!!」今度は上条が美琴の手を掴み走り出す……。「(こ、これって手をつないでるって事…よね)」美琴は別の気持ちを働かせていた。

駅前の喫茶店にて―――
「今日は俺のおごりだ、遠慮せずに好きなだけ飲んだり食ったりしていいぞ! まあ二千円札のホットドッグのようなものは食べさせられませんが……」
「ううん、気持ちだけでありがたいわよ。(休日の喫茶店に二人……こ、これってデートなんじゃ……いやそんな事ないわよね、絶対にないわ)」
「どうした? 元気ないのか? 体調が悪いなら言えよ。寮まで送っていってやるから」
「そ、そんなんじゃないから安心して! ホラ……元気でしょ?」と指から電撃を出して上条にアピールする
「なら良いんだ……沈んだ顔をしてるオマエは二度と見たくない、それだけだから」
「(コ、コイツったらやっぱり無自覚でこういう事を言うのね……バカ……)」美琴は赤くなる
「御坂、顔赤いぞ……やっぱり熱でもあるんじゃねぇか?」上条は右手を伸ばし、美琴のおデコに手をあてる……「ん~ちょっと熱いかもな……」
「(さ、触られてる……)ア、アンタのせいでしょうが……バカ……」
「(やっぱり分からないなぁ……)」

そんなやり取りをしていた二人だが、窓の外から声が聞こえる。二人とも聞き覚えがあるので窓の方を向くと……
「御坂様と上条様ではありませんか!」美琴のとっては後輩、上条にとっては助けた人……二人とも「「*1」」と心で思っていたのは言うまでもない。

店員にイスを一つもらい、丸いテーブルを3人で囲む
「あ、貴方はどうしてここに……?」
「本日は友人達とショッピングの予定です、待ち合わせまで20分くらいあるので散策してたら御坂様と上条様がお茶をしてらして……もしかしてお邪魔でしたか?」
「そ、そんな事ないわよ! こ、コイツとはそういう関係じゃ全然ないから!!」
「あの…御坂さん? そう全力で否定されると上条さんもショックという物を隠せなくなりますよ……?」
「(仕方ないでしょうが! これが黒子の耳にでも届いたらどうなるか分かったもんじゃないんだから……わ、私だって否定したくてしたわけじゃないんだからっ)」心の中で否定した自分を全力で否定する少女の姿がここにはあった。
「お二人の出会いを聞いてもよろしいでしょうか……?」
「わ、私がコイツに助けられたのよ……」
「御坂様も助けられたのですか!? でも御坂様は常盤台のエース……上条様は一体どのような能力をお持ちなんでしょう……?」
「能力? そんなものねぇよ……目の前に困ってる人が居たら手を貸す、もしくは助けてやる。放置なんざ絶対に出来ねぇ。でも御坂は特別だ、俺はコイツの沈んでる顔を見て本当に苦しかった……
もう二度とあの顔は見たくねぇ、だから俺は御坂を守ってやる事に決めたんだ。何があっても……」
女性二人は赤くなる……その様子を見た上条も赤くなる……
「そ、そろそろ待ち合わせの時間なので失礼します! お邪魔しました、あっこれ料金です。お釣りはこの前のお礼だと思ってください」上条が呼び止める暇もなくササッと去っていく……
「えっ~と、常盤台のお嬢様というのは紅茶一杯飲んだだけで一万円札を置いて行かれるんですか……?」
「五千円ならわかるけどさすがに一万円は多すぎるわね……」
「それでもわかんねぇよ……とりあえずこれは返しといてくれ、どうせ寮なら会うんだろ?」
「で、でもお礼って言ってたんだからこういう時は素直に貰っておきなさいよ」
「お礼ならもう貰ってるよ、あの子のお陰で言いたい事が御坂の前で言えた……なんていうか、もしかしたら俺はオマエの事を……」ピシャっと上条の顔に水がかかる
「で、出直して来なさい! 私はいつでもアンタを待ってるから……」と言ってその場を去る美琴、その後ろ姿は心なしかとても嬉しそうだった……。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆

あれから数日―――
「―――出直してきなさい…か」

帰宅途中、上条は夕焼けに染まったソラを見上げながら一人呟いていた。
実を言うとあれから美琴には会っていない…機会が無かったといえばそれまでだが、自分から動いてもいない。

本日はスーパーの特売日、開始時刻に間に合わなかった上条はダメ元で野菜だけでも…
という気持ちでスーパーへ向かう。

「お、遅いじゃない! 何時間待たせるつもり?」

そこに御坂美琴が居た、両手に買い物袋を抱えて。

「お嬢様がスーパーで買い物ですか~?」
「ま、まあ…そういうこと」
「じゃ、ちょっと残り物の野菜でも買ってくるぜ!」
「ちょっと待ちなさいよ!」

今回はしっかりと上条の耳に届いたようだ、上条は振り向く。

「な、なんだ?」
「今日はアンタの家まで行ってご飯を作ってあげようと思って、材料を仕入れたのよ」
「へ…?家に来る?俺の?」
「ダ、ダメとは言わないせないわよ」
「ちょっと待っててくだせい…」

上条は一旦美琴の視界から消えるように走り出す。

「ア、アイツ電話出るかなぁ?」
「えーっと…(ガチャガチャ…)これかな?」
「もう繋がってますよ~!!!」
「そ、その声はとうま! 帰りでも遅くなるの?」
「い、いや~違うんだ、今日は小萌先生の家で焼肉をやるってウワサを聞いたので教えてやろ~かな~って」
「焼肉!?」
「そ、そう! だからあっちに行った方がお得だぞ~分かった?」
「うん!わかった! そういえば…でんわって一分話すと寿命が一年…!?(ガチャン!)」
「そういえばそんな事吹き込んだ記憶が…まあ、いっか! でも明日小萌先生に何言われるか分かったもんじゃない…」

美琴の元に戻る上条、辺りは徐々に暗くなって来た。

「じゃ、ゆっくり歩いて行くか」
「今誰かと話してなかった…?」
「(ギクッ!)え、ええまあ…色々と複雑な事情が…」
「今更何があっても驚かないわよ、それにアンタと居ると人生が退屈じゃなくなるわ~」
「どういう意味で言われてるのか分かりかねますが…そうだ袋一つ持ってやるよ、この前のお返しだ」
「じゃ、お願いしますっ! で、でもアンタに持たせた途端袋が破けたりしないわよね…?」
「さ、さあ…どうでしょうか?」

上条は実際に破けた経験があるので強気には言えない。

「や…破けなかったな!」
「何袋一つ持つのにそんな慎重になってるのよ…ひょっとして、破けた経験お有りで?」
「あったらどうする…?」
「アンタが自販機に二千円呑まれたことに比べればなんてこと…って!なんで泣いてるのよ」
「なんで思い出させるんですか! あの飲み物を処理するのにどれだけかかった事か…」
「ハイハイ、ごめんごめん。今度は私が飲み物おごるから…ねっ?」

今回は会話が弾んでアッと言う間に上条が住んでいる寮が見えてきた。

「御坂…聞いてくれ!!」
「な、何よ! いきなり声張り上げて」
「俺は…オマエの事が、何と言うか…」
「あ~あ~あ~その話しはまた後! 今はアンタの家に行く方がさ~き。分かった?」
「は、はい…」

上条当麻、自宅前―――
「御坂、ちょっと待っててくれ! あんまりにもひどい状態の家にあげる訳には行かないから…な?」
「わ、分かったわよ、それじゃ袋…痛んじゃうから先に冷蔵庫に入れておいてちょうだい」
「お、おう! わりぃな」

「(よし! インデックスは出発してる…んだけど、この食い散らかした後のような…これは外で待ってて貰って正解だな)」
上条は散らかってる本、食器を手際よく片付ける。周りは汚くとも食器そのものは洗ってもないのに何故かピカピカしている。
「(これだけ片付ければ良いだろう、食器の方が洗い残しで説明が付くだろうし)」

「わりぃ、待たせたな。あがってくれ」
「謝られる程待ってないわよ、5分かそこらじゃなかった?」
「時間はどうあれ女の子を外で待たせたんだから、謝るのは当然ってもんだ」
「で、ここがアンタの部屋…?」
「食器洗っちまうから、ベッドの上でも座って待っててくれ」
「べ、べ、ベッドの上!? ア、アンタ何考えてんのよ!」
「ちょ!家の中でビリビリはマズい! 座る場所は何処でも良いですからっ!」

結局ベッドの上に美琴は座ったわけだが、自分で意識してしまってそういう事を考えずにはいられない状態になっている。

「(そ、そんな事なんかあるワケないじゃない…何意識してるのよ、バッカみたい)」
「御坂? 食器が洗い終わったのでよろしくお願いしたいのですが?」

無反応である、上条は手を拭き美琴の元へ向かう
「お~い! ビリビリ~?」
上条は揺すってみる事にしたが、これが仇となり押し倒す形になってしまった。
横に倒れたので上に乗っかってるというわけじゃない、ただ年頃の男女だと嫌でも意識してしまうシチュエーションなのは間違いない。
「!?……ア、アンタねぇ、順番ってものがあるでしょうが!順番ってものが!」
「へ?順番…?」
「んっ…(や、ヤダ! 私ったら何を言ってんのよ…これってOK出しちゃったようなもんじゃない!)
と、とりあえず!ご飯を作るから、そこどいて!」
「は、はい!」

御坂美琴、上条宅のキッチンにて―――
「(とりあえず、一通りの調味料と食器、調理器具は揃ってるわね…。
でもあのバカはあんな事があった後だってのに、漫画なんか読んじゃって…)」

買ってきた物を見ると、どうやら煮物と魚系の食事を作る事は読み取れた
美琴は材料を切り、魚に至ってはしっかりと内臓も取り出し。非常に慣れた手付きである。

その頃上条はというと―――
「(大体ああいう性格の奴は張り切ったら張り切っただけ失敗に向かっていくんだよな…
ここは運に全て任せて、出来上がりを楽しみに…待ってる間は暇だから漫画でも読むか)」
と電撃○王と書かれた本に手を付ける。

それから数十分後―――
「(味はヨシっと! これならアイツも喜んで…くれるわよね)
出来上がったから、テーブルまで運ぶのを手伝ってくれないかしら」
「やっと完成か! 腹へってたから待ち遠しかったぜ!」

上条は美琴が作った料理を見て……。
「え~っと…こんな家庭的スキルを何処に隠し持っていたんですか…?」
「これが筑前煮、それでこっちが秋刀魚の塩焼き、でこれがお味噌汁、こっちがミョウガとキャベツの浅漬」
「これ全部食べてよろしいんでしょうか?と上条さんは確認を取ります」
「あ、あと多めに作っておいたから、後で保存容器にでも入れて冷蔵庫の中にしまっておきなさい。煮物は二日目が美味しいんだから」

「で、では…いただきますッ!」

あんまりガッツくのはみっともないと思っている上条は少しづつ箸を進める

「ど、どう? なかなかイケてると思うんだけど…って何でここでも泣いてんの!?」
「何が不幸だ…俺ってば物凄く幸運(ラッキー)じゃねぇか…」
「ちょっとアンタ!聞いてるの!?」
「ええ、もちろんですとも! これ食べて本当に御坂を嫁に欲しいと思いました、ハイ」
「よ、よ、よ、嫁!? は、は、いちいち話が超展開すぎるのよ、アンタは!」

上条当麻、自宅にて―――
「ふぅ~。お腹一杯!人生に希望の光が差し込みました!」
「んな大袈裟な…で、でもこんなに綺麗に平らげるとは思ってもいなかったわ…」
「今までの不幸はこの素敵イベントの伏線でしたか~納得、納得!」
「何一回キリ見たいな言い方してるの?アンタは」
「え…また作りに来て下さるんですか!?」
「ア、アンタがどうしてもって言うんなら作りに来てあげない事もないけど…ってそんな目で見つめないでよ!」
「ぜ、是非よろしくお願いします! でも作りに来て頂くだけではなく、美琴先生の指導も受けたいと思っているのですが…」
「(い、いまさり気なく美琴って言ったわよね…)しょ、食器片付けて来ちゃうから!つ、ついでに飲み物も持ってくる!」
「洗い物は後でやるから、そのまま放っておいて良いぞ!」

美琴はササッと食器を台所に運び、コップを取り出すために棚を開けるとそこには…
――カエルのキッチンタイマーとカエルのフライ返しが未開封の状態で置いてあった――
「ちょ、ちょっとアンタ来なさい!」
「……、声が裏返ってるぞ…?大丈夫か?」
「こ、このカエルグッズは何処で手に入れたのか吐きなさい」
「えーっと、確か大分前にあった商店街の福引で俺がティッシュ以外の物を初めて当てた記念に取ってある奴」
「これ物凄く持ち帰りたいんだけど……ダメかな?」
「(そ、そんな目で見つめられたら、俺がお持ち帰りしたくなっちゃう。あ…ここ家なんだけどさ)
どうぞどうぞどうぞ! そんな物で良ければ全部持ち帰っちゃってください!」

何かに火が付いた美琴は―――
「ちょっとアンタの家捜索させてもらうわよ!」
「……えっ、ちょっとお待ちを!怪しい本とかないですから!ってカエル…?」
「(コ、コイツの家…宝の山じゃない! ゲコ太の紙袋にボールペン…。でもなんでこんなに?)
アンタ、どこでこんなに仕入れてくるのよ? 限定品も混ざってるわよ」
「そ、それはアイスクリーム屋のポイントを溜めて貰った奴とか、助けたお礼にって渡された奴とか…まぁ色々」
「不幸体質ってのも悪くないわね…ってアンタってそんな目立たない所でもかなりの人助けをしてるの?」
「目の前で起こるもんだから、放って置けなくてな…この前の常盤台の子だってそうだぜ?」
「でもアンタはそして駆けつけてもくれる…それで受け止めてもくれる…」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん! 何でもない、とりあえずこれは貰っていくわよ?」
「おう、持っていってくれ。今日の礼って言ったら安すぎるかもしれねぇけどな」

美琴はようやく落ち着き、二人で向かい合うように再びテーブルの前に座る

「なにわともあれ、今日はサンキューな御坂」
「感謝されるような事はしてないわよ、それにグッズもこんなに貰えるんだもん」
「それを探してる時のオマエは物凄く楽しそうで輝いてたぞ」
―と言って上条は笑う

美琴は一瞬黙った後に――
「この前から何か言いたそうにしてたわよね? 今なら聞いてあげても良いわよ」

上条の顔付きがグッと引き締まる――
「―――やっと言えるのか、俺はこの時を待ってた」

「今までは言う勇気がなかっただけで、心の何処かでオマエの事をずっと想っていた。
俺は御坂美琴を守ってやる――それは決めていた、いや誓っていた。でも本当にそれだけなのかってな。
いくら悩んでも結論が出て来なかった…でも気付かされたんだ。笑ってるオマエの顔を見る度に俺は幸せになれる。
ならその笑顔を守り通して、一緒に幸せになりたい…そう思った。でも見ての通り俺は不幸に見舞われてる…」

美琴は吹っ切れたような顔で――
「そんなのどうでも良い事じゃない」
「え…?それはどういう?」
「アンタが不幸なら私が幸せになる手助けをしてあげるって言ってんのよ!」
「それってつまり…」
「その代わり条件があるわ、アンタは一生賭けて私の全て守る事…少しでも離れたりしたら絶対に許さないんだからっ!」
「ああ、一生賭けて守ってやる。何があろうと絶対に…。その代わり俺の隣から離れるなよ…美琴―――」
「うん、絶対に離さない…当麻―――」

二人はいつの間にか寄り添い、待ち望んでいたひと時を過ごすハズだった―――

ガチャン!「とうま! 小萌の所で焼肉なんてやってなかったんだよ!」
「へ…? な、不幸だろ…?俺って」
「って短髪!とうまと何してるの!そこを離れなさい!」
「まあまあ、インデックス…ちょっとそのままキッチンへ行って、ほら~そこのお鍋の中見てごら~ん」
「む!これは…美味しい!美味しいよ、とうま!」
「アンタらねぇ……色々と突っ込みたい所があるけど、とりあえずぶっ放さないと気が済まないわ…」

キュイ―――ンという音が上条の耳へ届く

「ちょ、ちょっと美琴さん…? さすがにここはマズイのではないでしょうか、なんかいつもに比べてヤバそうだし…
い、インデックスはお外に出てなさい…」

インデックスもさすがにマズイと思ったのか、鍋を持ち外へ避難する――

次の瞬間、一直線に綺麗な電撃がキッチンの上条へ超至近距離で放たれた。
無論上条は突き出していた右手で反射的に防いだのだが、家はどうなったのかはご想像にお任せする。

~完~


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注釈

*1 どうしてこのタイミング!?