とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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未来を救う



上条当麻は不幸な人間だ。
朝からインデックスに噛み付かれ、登校中に野良犬の尻尾を踏んでしまって追いかけられ、
放課後の補習はみっちり最終下刻時間ぎりぎりまで行われ、帰宅途中どこから現れたかわからない
ボールを踏んづけて盛大に転んでしまい、何故か不良達に絡まれ絶賛逃走中なのだ。
「何で俺が追いかけられないといけないんですかー??」
「うるせえ!何となくテメエがむかつくんだよ!!」
「そんな理由で追いかけられる身にもなれ!あー不幸だー!!」

そして静まった夜の中、何度か行った事がある橋の上に上条は逃げ切った。
「はあ、はあ、ここまで逃げたらさすがにもう追って来ないか。だがもう体力の限界だ」
息をきらせながら鉄柱に体をあずけ一休みする。
深呼吸をし、体力も少し回復したところで上条は再び歩き、自宅に帰ろうとした。
すると後ろから
「見つけたあぁぁぁ!!!!」
「ん?」

上条がその声に反応して振り返った瞬間腹に思いっきりタックルを喰らい、床に叩き付けられた。
「痛ってえ・・・まさかまだ追っ手がいたのかちくしょう!」
少し視界がぼやけたるがすぐに相手の顔がわかった。

「・・・あれ?美鈴さん?」
髪の色は茶色でプロポーションも抜群な女性が上条にマウントポジションをとっていた。

「えっと・・・美鈴さん、お久しぶりですがちょっとどけてもらえないでせうか?」
上条はお願いするが女性は動こうとしない。瞬きもせずジっと上条の顔を見る。やがてジワジワと目から
涙がこぼれ落ち、大声で泣き叫んで上条の胸に顔をうずめた。

「ぐす、ひぐ、うわあぁぁん!!会いたかったぁ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて、何が何だかさっぱりですから!」
「しばらく黙って!!お願い!!」
「・・・・・・・・・・・・」

上条は黙って聞き入れた。自分の右手が彼女の頭を撫でている事には気づかなかった。



「え~っと、大丈夫ですか?」
「ごめん、もうこのまま起き上がれないかもしれない。というか力が入らないわ。起こしてもらえる?」
「はあ、じゃあ起こしますから少し体触りますよ?」
上条は肩を担いで橋の手すりまで運んだ。

「どうしたんですか美鈴さん、急に泣き出したり抱きついたりしてきて。」
「ごめん、ちょっと昔を思い出しちゃって・・・」
「昔?そんな何十年振りの再会でもないのに大げさですよ?」
上条は頭に??をいっぱいに出して訳がわからない状況だが、彼女はまだ完全に泣き止んでおらず、
まだ手で目を塞いでいる。上条はとりあえず黙って言葉を待った。
「だって私は・・・・」
「いや、無理して言わないでいいですよ美鈴さん」
あたふたしだした上条を無視して女性は一言告げた。

「私は20年振りなんだもん・・・」

「はい?20年振りとは?俺はまだ16ですよ?美鈴さん酔っぱらってます?
あーー!ごめんなさいだからまた泣かないでくださいー!!」
「そうやって女の子の心を弄ぶところがホントにアンタらしいわ。私はね、アンタと会うのが
20年振りだって言ってんのよ!!」
「何言ってるんですか美鈴さん!数ヶ月前に会ったじゃないですか!やっぱり飲んでるんですね」
「一滴も飲んでないし最初から言いたかったんだけど私、美鈴母さんじゃないのよね」
「・・・と言いますとあなたは誰でせうか?」
「ほんっとに鈍いわねアンタ。驚いてカエルの足みたいにヒクヒクなっても知らないわよ?」

そうやって女性はふうと深呼吸をし、ゴソゴソと履いているジーンズのポケットからあるものを取り出し、
上条に渡して告げた。
それは普通のゲームセンターのコイン。

「私は御坂美琴。今から20年後の未来からやってきたの。私とアンタの未来を変えるためにね」



上条は動けなかった。御坂美琴と名乗る美鈴とうり二つの人物が目の前にいて理解する
のにかなり時間がかかった。

「え~と、あなたは常盤台のビリビリ中学生のアダルト版という事で間違いないんですね?」
「さっきも言ったでしょ?そのビリビリ中学生だった私が今から20年後から来たって」
「ということは御坂さんはさんじゅう・・・」
「年齢を口に出すなあぁ!!!」
ドッカン!と全力の電撃を上条に向けて放った。
「ぎゃあああ!!」

なんとか右手で防げた。威力は今の美琴より遙かにあるかもしれない。
「てめえ!御坂大人版!!何回俺を殺そうとすれば気が済むんだ!?」
「アンタに死んでもらっちゃこの時代にいる私が困るのよ。しかし、久しぶりに全力出せた
から少しすっきりできたわ」
未来の美琴は清々しい顔をして上条を見てくる。
「まさか、未来の俺はまだ御坂と生死を彷徨う鬼ごっこをやっている訳ですか?」
真逆にげんなりとした表情で上条は未来の美琴を見た。目が合った時、未来の美琴はドキっとしたが上条は全く気づかない。
「そんな、やってないわよ」
「ですよねー。大人になった御坂さんはわきまえができてらっしゃる・・・」
「ホントはいつまでもアンタを追いかけたかったけどもうできないの」
「何だ?その若さでもう腰痛とかか?」
上条はふざけてみたが未来の美琴は顔を強張らせて俯いて黙った。

「さっき、私とアンタの未来を変えに来たって言ったの覚えてる?」
「あぁ。そんな気がする・・・」
「自分勝手な理由で私はここに来たんだけど、アンタには近い未来の話を聞かせないといけないのよ」
「そんなこと言っていいのか?話を聞いて俺が未来の通りに動かないようになるかもしれないんだぞ?」
「それでいいのよ、アンタのために・・・一番は私のためだけど」
「さっきから未来を変えるとかよくわからないから簡単に説明してくれ」

やれやれと未来の美琴はため息を吐いた。はっきり言って簡単に言うのは簡単だが気が
乗らない。そして覚悟を決めて上条だけに聞こえるように告げた。

「アンタは明日、この世界の私を助けて死ぬの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」



上条と未来の美琴は上条宅まで歩いていた。美琴が寮まで送ってやると言って今は二人で歩いている。

「それで、俺が死ぬ理由を教えてくれないか?」
「長くなるしちょっと辛いかもしれないけど最後まで聞く勇気ある?」
「教えないといけないって言い出したのはそっちだろ?上条さんは勇気100%だから大丈夫ですよ」
「はあ、死ぬとわかっているのに何故そんな元気でいられるのかしらねアンタは」
「だって今は死ぬ気がしねえもん」
「馬鹿ね・・・その前にアンタ、中学生の私の気持ちには当然気づいてないのよね?」
「御坂の気持ち?また悩んでんのか?」
「ストレートに言うわよ。この世界の私はアンタの事が好きなの。恋人になってほしいとね。
でも告白する前にアンタは死んじゃったから可哀相な私」
「・・・それは事実だとしても未来の本人が勝手に告げていいものなのか?」
「うるさい!というより私の気持ちに気づいてないほうがおかしいのよ!!」
「う~ん、確かに気づいていない俺が悪いのかな・・・すまん」
「そ、そ、そ、それで?アンタは、どどどどどうなのよ返事は?」
未来の美琴が緊張し出した。昔の恋と言っても知りたい事なのだろう。

「未来の御坂に言うのもなんだけど、本当に俺なの?って感じだな。確かに御坂は可愛いし
真面目で優しい一面があるのは俺も知っているからな。ビリビリさえなければ
普通の女の子だし。御坂の心がマジなら考えないことはないが。
もっと格好いいヤツたくさんいるのに本当に俺なのか?上条さんを茶化してない?」
「だ、だからマジなのよ私は!」
「未来の御坂が言うならそうなんだな。付き合って後悔するなよって言ってやりたいぜ」
「ねえ・・・・それってOKって意味なの?・・・・」
「あぁ。御坂の事嫌いじゃないし・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「おい、どうした未来の御坂?」
「・・・・・・・・・・・・・ふにゃーーー」
嬉しさのあまりに未来の美琴は漏電してしまった。
「ぎゃー!20年経ってもそれは治ってないのか!!!」
慌てて右手で再び防いだ。そして上条は未来の美琴の肩に右手の乗せて完全に漏電を止めた。
「未来のお前は俺の知っている御坂のまんまだな。嬉しい反面ちょっと情けないと思うぞ?」
「うぅ、アンタといると嬉しくてこうなるのよ。全部アンタが悪いんだから」
「はいはい、俺より倍以上の年になっても美琴さんは可愛いとこがあるんですね~」
「だから年の事は言うなぁぁ!!」
「そげぶ!」
近距離で強烈なアッパーを喰らった。



「あー!ここ懐かしい!!」
二人が着いた場所はよく二人がばったり会っていた公園。未来の美琴は急にテンションが上がった。
「なあ、未来はこの公園ないのか?」
「あるんだけどね、アンタとの思い出が詰まった場所だからアンタが死んでから来たことないの。
思い出したくなくてね・・・でもここではまだアンタは生きてるから何とも思わないわ。」
「ふ~ん。じゃあちょっとベンチに座らないか?お前は20年振りになるけど」
「えっ?」
未来の美琴は肩をビクっとさせ、上条は既にベンチに座っていた。早く座れよと上条に
促され、ちょこんと上条の隣に座った。

「未来の御坂よ、俺はお前を守って死んだと言ったけどまた妹達みたいな事件があったのか?」
「・・・いや、アンタにとっては本当にただの不幸になるのかしら。イギリスやロシアで
何回も死にかけていたのにあんな事で死ぬなんてね。私は思い出したくもないわ」
「・・・何だよ?」
「・・・・・トラックに轢かれそうになった私を助けて死んだの」
「あっはっは!御坂はボールを追いかけていた小学生かよ?」
「何でこの場に及んで笑ってられるのよ!馬鹿!!」
「いや、トラックに轢かれそうになる御坂を想像できなくてな。普通御坂なら電撃で
ぶっ飛ばすだろ?変な話だけどさ」
「だから全て私が悪かったのよ・・・」
「えっ・・・・・おい」

未来の美琴は泣き出し、語り出した。
「明日の朝、勇気を出してアンタにデートの誘いのメールを送ってその日の放課後、この
公園で合流するの。珍しく私は冷静でいられてアンタとも普通の会話ができた。
今座っているこのベンチでね」
「・・・・・・」
「そして段々嬉しくてテンションが上がった私はアンタの右手を握ってSeventh mistに出発した。
私の洋服を一緒に選んでやるってアンタは言ってくれて嬉しくて嬉しくて猛ダッシュした。
でもその途中でトラックが突っ込んできて・・・」
「でも何でそこで電撃でガードしなかったんだ?」
「アンタの右手を握ってたって今話したでしょ?」
「あ・・・・」
「確実に私は大怪我、いや、それでは済まないと思った。でもかすり傷一つも負わなかったの。
トラックとぶつかる直前にアンタが私を庇って盾になり、抱きしめられた状態でさ。
私達は跳ねられてかなり飛んだけど地面に倒れる時もアンタが私を庇って下になった。
でもカエル顔の医者が言うには即死だったって・・・・目立った外傷はなかったけど」
「・・・・・・」
「アンタが死んであのシスターはイギリスに強制送還され、舞夏のお兄さんも姿を眩まし、
たくさんの人を悲しませた。私のせいでアンタの周りの人たちを傷つけた。
それから私はしばらく〈自分だけの現実〉を失って精神的にもボロボロになって
黒子と初春さんと佐天さんという友達としか話せなくなった」
「・・・・・・」
「それでね、つい先日、私がいる世界で時間移動機〈タイムマシーン〉が開発されて
私はそれに乗ってここまで来たの。今話したような事故を防ぐために」

未来の美琴はとりあえず一通り話し終えたと言って顔を下に伏せた。未来の美琴は
ちらっと上条を見たが上条は辛そうな顔もせず、微笑んだような顔で夜空を見上げていた。
「アンタ、何回も聞くけどどうして笑っていられるのよ・・・」
「ん~、わかんねえけど御坂が20年も俺の事考えてくれてたと思うと嬉しい気持ちが
先に出てきてな」
「何よ他人事みたいに言っちゃって・・・」
「でも御坂の20年を無駄にさせちまった事は悪いと思ってる」
「それこそ他人事のように聞こえるわよ。責任とってよ」
「未来の御坂までも泣かせてしまったからな。それに、今の俺は寿命が来るまで死なねえよ。
未来の御坂の幻想をぶち殺す!なんてな。もう暗いし未成年の俺は補導されちゃ敵わん
から行こうぜ」
「好き勝手に言っちゃって・・・・惚れ直したじゃない、馬鹿」
「あぁ、ここはお前がいる世界じゃないから好き勝手にやるぞ。俺が死なないためにも御坂が
悲しまないためにも。先手必勝ってやつだな」

そう言って上条は携帯を取り出し何やら操作を始めた。どうやらメールを打っているようだ。
「アンタ、まさか・・・」
「うん、御坂にメールした」
「・・・・・・なんて?」
「明日の朝7時に公園で待っていてくれ。と」
「・・・・・・・・・・ふにゃー」
「ぐわあぁ!またかよ!!」



「でさ、俺が死なないためにどうするかはわかったけど未来の御坂、お前はどこまで付いてくるんだ?」
「・・・・・・・・・」
二人は上条の部屋の玄関前にいる。未来の美琴は送ると言っていたがまさか玄関前までとは
と上条は少し驚いていた。
「私、泊まる場所がない」
「ちょっっっと待て!未来のお前は知っているハズだ、インデックスがいるし俺が
ヤツに噛み付かれる、いや、お前まで噛まれるぞ?事故死の前にここで俺が死ぬハメになる!!」
「大丈夫、あの子は今ここにいないから」
「・・・何故そんなに自信たっぷりに言える」
「あの子は今アンタの担任の家にいるはずよ。警備員のデータをハッキングしたから知ってる。」
「俺が死んだ後にですか?」
こくん、と未来の美琴は頷いた。確認をとらせてくれと上条は一人で部屋に入り、
テーブルに書き置きがあるのを見つけた。、

『こもえの家でしゃぶしゃぶパーティがあるからからあしたのあさごはんまでいらないんだよ』

恐るべし未来の御坂。浮気調査の探偵に今すぐにでもなれると上条は思った。
「とりあえず上がってくれ。汚いけどさ」
「う、うん。ありがとう」
モジモジして未来の美琴は入ってきた。中学生の美琴が時折見せる仕草と同じだった。
「なんだ中学生に戻ってるぞ?それともその年で男の部屋に入るのは初めてとか?」
「・・・・悪かったわね」
「え?正解ですか?」
「だってアンタが死んでしまったんだから他の男なんていないわよ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「と、とりあえずもう遅いからシャワー浴びろよ、な?シャワー貸すから。さすがに下着は
ないけど寝巻くらい貸すぞ」
「・・・・ありがとう」

上条からバスタオルを受け取り未来の美琴はバスルームへ入っていった。
数分後、バスルームから出てきた未来の美琴と変わって上条が入り、今は二人テーブルで
向かい合って座っている。

「あのさ、一つ質問なんだけど」
「何よ?」
「もし俺が死なずにいてお前が未来に戻った時俺は生きているのか?」
「・・・・生きていない」
「どうしてだよ!結局俺は死ぬのか?」
「いや、私が住んでいる世界に死んだアンタが復活してるのはおかしな話でしょ?
時間移動機で来たと言っても違う世界なのは変わりないんだから。この世界でアンタは
生きていても私がいる世界にアンタがいる事はないの」
「てことはお前、無駄足じゃねえか・・・」
「無駄足じゃないわよ。この世界の私とアンタを助けたかっただけ。それに、いきなり
おっさんになったアンタに会っても嬉しくないわよ」
クスクスと未来の美琴は笑った。

「なんだよそれ、お前が可哀相すぎる・・・」
「憐れみはやめてね。なるべく考えたくないから。それと私、叶えられなかった夢があるの」
「その夢にできるだけ協力するよ・・・」
「この世界の私はアンタが生きていたら告白するんだろうけど私は告白してないの。
何回も言うようにアンタが死んだから。だから、言わせて?」
「うん・・・」



「一生で一度の恋をさせてくれたアンタに会えて本当によかった。中学生だった頃からずっと
アンタが忘れられなくて、今もアンタに対する思いは変わってないの。大好き。
全部ひっくるめて大好き。大好きでは表せないくらい大好き。それと・・・・・」
「俺はもう死ねる・・・・」
「馬鹿!この世界の私のために生きてよ!」
「違う、それくらい破壊力バツグンって意味だ。もう不幸な事に御坂にメロメロにですよ」
「あ、ありがとう。あと、二つお願いがあるんだけど・・・・いい?」
「ここまで言われて断る上条さんなんていませんよ」
「やっぱりアンタ、大好き。一つ目だけど・・・・」

未来の美琴は自分の携帯を取り出して、
「一緒に写真とってくれる?」
「御坂さんの願いならなんなりと」
未来の美琴は過去に携帯の契約をした時のような恥ずかしがりではなく、ズイっと
上条の右肩に体を寄せ付け、携帯のカメラシャッターを押した。
しかし一枚では終わらず未来の美琴は携帯のデータがいっぱいになるまで写真を撮り続けた。

「うん!バッチリね!全部よく撮れてる!」
「つ、疲れた・・・んで、二つ目は?」
「・・・・・・・・・今晩一緒に寝てくれない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ダメ・・・かな?」
「いや、ダメというかさっきの撮影から理性を保てるか不安で」
「じゃあOKってことで。アンタ、優しくしてね」
「うるせえ!!」

結局上条は鉄壁の理性を保とうとして一晩眠れなかった。隣で幸せそうに寝ている未来の
美琴は上条の腕にしがみつき、中学生時代より著しく成長した胸を押しつけ、上条の
胸板に頭を乗せてきたりと幾つもの試練を与えてきた。

(落ち着け上条!相手は御坂でも美鈴さんとそっくりな未来の御坂なんだ!そうだ、
美鈴さんに似てるからコイツは人妻という設定で・・・・だあー!余計理性が崩れそう
なのは何ですかー!?)
このような思考が永遠とループしながら夜が明けた。


午前6時。上条は一睡もしないまま朝を迎えた。もう眠れないなら起きて仕度でもやろう
と考えてカーテンを開け、朝日を浴びた。カーテンを開けた音で未来の美琴は目を覚ました。
「おはよう、早いのね」
「あぁ、御坂を7時に公園に呼び出してるから。多分御坂ももう起きてるハズだし俺が遅刻したら
御坂とお前にも悪いだろ?」
「ふ~ん、ようやく私の気持ちが少しわかるようになったのね。」
「わかったというか御坂を不安にさせたくないだけだよ」
「初めからそうしてくれたらよかったのに・・・」
「上条さんは自分に都合が悪い過去は振り返りません」
「・・・あっそ。この世界の私はアンタと待ち合わせする時、必ず30分前には着いてるからね」
「え?ということは、今御坂は起きているだけじゃなくてもう公園に向かっていると・・・」
「多分ね」
「言えよ早く!」
上条は急いで制服に着替えようとした。未来の美琴はその姿を見て笑っていたが上条が放った一言で我に返った。

「何のんびりしてんだよ!?家主の俺が出かけるんだからお前も出ないと鍵は誰がかけるんだ!」
その言葉に未来の美琴は急いで着替えを持ってバスルームに駆け込んだ。

二人とも急いで着替えを終え、公園までゆっくり歩いた。この調子で歩くとちょうど
6時半に着くペースなので得に急ぐこともなかった。そろそろ公園に着く頃。

「私は見えない所で見てるから。それでいい?」
「見るのかよ!恥ずかしいからやめてくれ!」
「恥ずかしいって幼い私に何をしようと思ってるのかな~?」
「うるせえ!いつまでも精神年齢14歳なんだなお前は!!」
「ひ、ひどい!!私はもう立派な大人だっつーの!」
「その大人が学生同士の恋を冷やかすのは完全にガキじゃねえか!はは~ん、未来の御坂、
さてはまだ思春期が終わってないとか?」
「思春期なんかなかったわよ!!それに学生の片方は昔の私なんだから冷やかしてもいいでしょうが!!」

現在と未来の(?)恋人が朝からギャーギャー痴話喧嘩を始めた。周りの人達は何だ?
と二人を冷たい視線で見てきたがお構いなしに二人は言葉で罵り合った。
周囲は二人を避けるように歩いていたが一人だけ二人にまっすぐ歩いてきて、
目の前で立ち止まった。

「アンタ、私を呼び出してんのにそこで何やってんの?その人は誰?」

「「げっ!!御坂(昔の私)!!」」



二人の前に常盤台中学2年生の御坂美琴が立っていた。美琴は非常に不機嫌な顔で上条を睨んでいる。

「朝から私を呼び出してんのに何やってんのよアンタ?」
「あ~、これはだな、深~い理由があって今に至るんですよ」
「へえ~、その深~い理由とその人は誰か教えてくれないかしら?」

上条は大変困った。この人は未来のお前だなんて言えないし理由も御坂が原因で自分が
死ぬ事を防ぐために未来の御坂がやってきたなんて口が裂けても言えない。
上条はここで死んでしまうのではないかと思っていたが未来の美琴が口を開いた。

「はじめまして美琴ちゃん。私は美鈴さんのはとこにあたる「美枝」です。私、あなたに
話があって美鈴さんにあなたの連絡先を聞いたんだけど何故か上条くんの連絡先を教え
られてね。仕方ないから上条くんから美琴ちゃんに連絡してもらってここまで送って
もらったの。いきなりでごめんね」
「そうだったんですか、喧嘩してるように見えたし美枝さんが誰かわからなかったので
・・・・ごめんなさい」

丁寧な言葉使いで美琴に挨拶をした未来の美琴。
これは上手い。美鈴さんなら上条の番号を勝手に教える事もありそうだ。
はとこという所に突っ込まれたら終わりだがそれ以外は完璧だと上条は思った。
未来の美琴は上条の方へ振り向き、
「上条君、さっきは怒鳴ってごめんね。ここまで送ってくれてありがとう。終わったら
美琴ちゃんからあなたに連絡してもらうからちょっとどこかに行っててくれる?」
「あぁ・・・じゃない、わかりました。」
危ない、普通に接すると御坂にばれる。とりあえず上条はここにいるといつボロが出るか
わからなかったので素早くこの場所を離れた。

未来の美琴は上条が去ったのを確認してから美琴に話しかけた。
今はいつもの美琴ではなく架空の人物の美枝で。
だが未来の美琴にも不安はあった。
(うわあ、昔の私、私と全く同じ電磁波が出てる。気づきませんように・・・)
「あのさ、美鈴さんにも言われてるかもしれないけど上条君の事好きなんでしょ?」
「・・・・・はい」
「だったら早く気持ちを伝えなさい。私の二の舞にならないために」
「え?む、無理ですよ。私、努力しても素直になれないですし・・・」
「じゃあさっさと上条君の事諦めなさい。あの子が他の女の子に奪われるのを指を咥えて
見ていることね」
「い、いや!!それだけは絶対にいやです!!」
中学生の美琴は泣きそうになりながら顔を真っ赤にして反論した。

(やれやれ、昔の私ってこんなに純粋かつ弱虫だったのね。今も変わってないけど)
未来の美琴は呆れながら中学生の美琴を見た。なんだか子供をあやしているような感覚も
あって、若干楽しくなったのだが二人の未来を切り開くためにも厳しく美琴に接した。


「あのね美琴ちゃん、今日の夕方までに上条君に告白できないと彼は二度とあなたの前に
現れないわよ」
「どうしてですか?」
「それは教えられないわよ。私と上条君は知っているけどあなたはダメ。今のあなたには
刺激が強すぎるからね」
「アイツが知っているって?もしかして先に告白した人がいるんですか?」
「もしいたら奪えばいいじゃない。そんな事よりもっと悲惨かも」
「そんな、私には告白する以外の選択はないんですか?」
「そう。振られる事よりも悔やむ事になるわ」
「・・・・・・・・・・」

美琴は下を俯いて黙った。それを見かねた未来の美琴はあーもう!!と怒り、両手で美琴の
頬を掴み、怒鳴り出した。
「アンタね、いつまでもウジウジしてると振り向いてくれないのよ!
アイツの事が好きでしょ?好きでたまらないんでしょ!?
私のためにも自分でしっかり気持ちを伝えて、自分の未来を切り開きなさい!!」
「美枝さんのため?」
「あっ・・・」
未来の美琴は興奮してつい言ってしまった。このままでは未来の自分だとバレてしまう。
恐らく既に電磁波に気づいているだろうしそれについて言い訳できるハズがない。

「あ、あのね、私は美鈴さんと一緒であなたの応援団なんだから!告白できなかったら
こっちだって悲しいの!!だから私のためにも!」
ダメだ、こんなへたくそなウソつくんじゃなかった。
「じゃあ、私が言いたかった事は全部言えたから。学校遅れるわよ?」

そう言って未来の美琴は逃げるように走り去った。
「美枝・・・さん?」
美琴は美枝と名乗る女性が見えなくなるまで顔を赤くしたまま立っていた。



「遅いな~二人の御坂。まさか俺を忘れて仲良くなってるとか?」
上条は近くのコンビニに寄り、そろそろ登校時間もぎりぎりなので公園に向かって歩いていた。
だが遅刻は確実なので常習犯の上条は急がず普通の歩幅で歩いている。
すると前から一人の女性が走ってこちらに向かってきた。
「おう、未来の御坂。御坂はどうしたんだ?」
「・・・・・どうしよう」
「はあ?」
未来の美琴は経緯を上条に全て話した。

「どうしよう、この世界の私大丈夫かな?」
「大丈夫じゃねえの?まだ俺生きてる訳だし」
「事故が起こるのは放課後の夕方よ?まだ生きてて当然じゃない!」
「なあ、御坂が夕方までに俺に告白すれば死なないのか?」
「わからないけど、とにかく私は告白できないで終わったから。一応告白するだけで未来は変化すると思うわ。」
「でも御坂はとてもできそうにない雰囲気だと」
「・・・・うん」
「じゃあ俺が未来を変えてやるよ」
「どうやって?」
「まあ、お前と一緒にいるのを御坂に見られたから俺の計画はぶち壊されたんだけどな」
「は?計画って何よ?」

「・・・・・俺が御坂に告白する」
「ふにゃー」
「ぐわ!!何でここでそうなる!?」


「ど、どどどどどうして??何でアンタが私に告白するの?」
「好きだからって理由だけじゃだめか?」
「違うわよ!私の事好きだったの!?」
「好きだったというか好きになったが正しいな。昨日のお前からの告白でな。
不幸な事に御坂にメロメロになったって言ってなかったっけ?
お前の世界では俺が死んで20年もたっているのにまだ俺を好きでいてくれてさ、
だったら俺が生きていても御坂はずっと好きな気持ちは変わらないハズだろ?
その御坂の気持ちに男上条が応えないでいられるか!」
「告白してどうするの?」
「御坂が嫌じゃなければ清らかなお付き合いをしたいと思っております。とりあえず、
お前が予想しているような事はもう起こらないぜ?」
「・・・・何でそんなに自信があるのよ?」

「その幻想をぶち殺す!それが上条さんですよ。それとお前に一つ頼みがある」



20年後・・・
「・・・という事が付き合い始めた記念日にあったんだよ。凄い話だろ?」
「ふうん、だからあの日の放課後急に呼び出して私にあんな事を・・・」
「だあぁぁ!!思い出させるな恥ずかしい!!」
「それにしても、ぐす・・未来の私は当麻と結ばれてないんだね。」
「ま、まあそうだけど俺らの恋のキューピットはお前だったという事なんだよ美琴」
「そうだけど、最後まで黙って話を聞いてて、許せない所が一つ!!」
「どうした、血相変えて・・・」
「アンタ、付き合ってから私が初めて部屋に泊まりに行った時、美琴が女子で泊まったの
初めてだって言ってたじゃない!!」
「・・・・初めて泊めた相手は私だけど私じゃない・・・と?」
「そう!!」
「ちょ、待て!美琴の言いたい事はわからないでもないが未来の美琴は仕草も何もかも今の
お前と変わってないんだ!だから違う人間じゃないんだぞ!?」
「うぅ~この歯がゆさは何なのかしら・・・怒ろうにも怒れないわ」
「あ、未来の美琴よりも今のお前が綺麗だぞ!」
「それは未来の私に失礼よ!!!」ビリビリ
「うぉい!!機嫌をよくしてもらおうと思って放った一言が逆効果とは!」
「そんなんで良くなるか!当麻、今日は付き合い始めた記念日を再現してもらおうかな~」
「再現する度に漏電して気を失うのは誰だよ?」
「あ~!!うるさいうるさい!」
「はは・・・そうだ、お前宛の手紙を預かってるんだよ。ホイ、これ」
「何このきったない封筒。ボロボロじゃない」
「この日に渡してくれと頼まれたから保管するのも大変だったぜ。中身はとても輝いてますぞ」
「・・・・・・・?」

美琴は手紙を読んだが最初の一行で涙が出て来て読み続けられる状況ではなくなった。

~私から私(当麻と一緒にいる私)へ~

この手紙の続きの内容は上条と美琴しか知らない。


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