"アドリアーナ・ルクヴルール"

対訳

訳者より

  • 実在したコメディー・フランセーズの女優アドリエンヌ・ルクヴルール(1692-1730)の愛と死を題材にしたオペラ、もともとは19世紀フランスの人気劇作家ウジェーヌ・スクリーブによって1849年に戯曲として書かれ、19世紀後半にフランスで大当たりした作品のオペラ化です。プッチーニの傑作にも負けないほどの魅惑のメロディーにあふれた近代イタリアオペラの秀作、私には「マノン・レスコ―」の溢れる歌心と、「ラ・ボエーム」の陽気なアンサンブル、それに「トスカ」の激しいドラマ性を皆兼ね備えた聴きごたえのある素晴らしい作品に思えます。CDにすると2枚組、2時間強の作品なのですが、今回用意されておりましたテンプレートが何と4千行を越える膨大なもの(普通2時間のオペラでしたらその半分の2千行前後です)、登場人物が大勢いて彼らが皆饒舌なのと、コメディ・フランセーズが舞台らしく他のフランスの有名な舞台作品が巧妙に引用されているのが膨大となった理由でしょうか。第3幕のバレエ「パリスの審判」はえらく詳細なト書きがあって途中で訳すのが嫌になってしまいましたが、非常に雑駁な訳を付けておきました。参照したCDのリブレットでもここまで詳細なト書きのものはなかったのでかなりの誤訳があるとは思いますがご容赦ください。
  • 劇場の仲間達、ダンジュビル・ジュヴノー・キノー・ポアソンの軽妙で陽気な掛け合い、舞台監督ミショネの朴訥で包容力のあるアドリアーナへの情愛(まったく報われないのがとても物悲しいものがあります)、皇太子とその腰巾着の僧院長のとぼけたやりとりと多彩なサイドストーリーに彩られながらも、この物語のメインはアドリアーナの抱えた三角関係、それがもとで最後は彼女は毒殺されてしまうのですからげに恐ろしきは女の嫉妬。アドリアーナと恋敵の皇太子后との激しいぶつかり合いの神経戦(2幕と3幕)はとりわけ息を呑む凄さです。アドリアーナを愛しながらも、政治的な立場から皇太子妃に近づいて利用しなければならなかったマウリツィオ(ザクセン公モーリッツ)も、彼女に気を配りながらも結局死なせてしまうという結末。何とも激しいお話ではあります。

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@ 藤井宏行

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アドリアーナ・ルクヴルールとは

  • アドリアーナ・ルクヴルールの27%は血で出来ています。
  • アドリアーナ・ルクヴルールの25%は厳しさで出来ています。
  • アドリアーナ・ルクヴルールの24%は白インクで出来ています。
  • アドリアーナ・ルクヴルールの20%は成功の鍵で出来ています。
  • アドリアーナ・ルクヴルールの2%はやらしさで出来ています。
  • アドリアーナ・ルクヴルールの2%は汗と涙(化合物)で出来ています。
最終更新:2014年08月16日 08:49