01 いとおしきものに、うつくしきものに



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いとおしきものよ、うつくしきものよ。
咲け、散れ、舞え、かくして、また、強く、凜と。


(まどか)なる月が、欠かされたとしても
めぐりあわせた、その叢雲(くも)の小粋なはからいとしましょう。

咲き誇る花が、飛ばされたとしても
風の行く先に思いを馳せて、その旅の無事を祈りましょう。


変わる季節ごとに、趣を変え、
その命を集めて、彩と為す。

さぁ、誰の手も借りることさえなく、
大地を、咲かせ。

地を満たせ、大輪の花
人の及ばぬところ、あるがまま咲き誇る。

―そんな世界こそが、どこまでも美しい。


命の限り
悠か永久に失われぬ華の色をして、
永遠を為す。

わたしは見守るばかり。


生まれ出でたものが、枯れ朽ち行く様も
一つの環を為す中になくてはならないもので。

同じように見えて、同じものは二度と
めぐりあわせることなどないまま、その姿、栄華の万華鏡。


終わる季節ごとに、また新らしく、
その(いろ)戻して、彩を生む。

いざ、誰の手も借りることさえなく、
空へと、還せ。

天に舞え、大輪の花
人の及ばぬところ、全て今還り逝く。

―そんな世界こそが、どこまでも愛しい。

儚きものに
悠か永久に失われぬ華の色を添え、
永遠と呼ぶ。

わたしは見守るばかり。


…誰よりも傍に、(ともがら)として。
その権化にして表象たる、私として。

―かつて、いとおしきものに、生まれ出で、
そしてうつくしきものの、夢を見た。


咲き誇れ、大輪の花
何も欠けることなく、競われることもなく
どんな弾幕(わざ)よりも輝きを放てよ。

ああ、凜として
悠か永久に失われぬ華の色を魅せ、
永遠とする。

わたしは見守るばかり。


咲け、散れ、舞え、
かくして、長きこの旅路の行き着く果てに。
また、強く、凜と。

わたしは見守るばかり。
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最終更新:2023年10月22日 12:11
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