SubStory 1 継承者の出立2


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ひどく壊されたとはいえ、はじめてこの城を訪れたセシルたちと、もともとの構造をよく知る少年では条件に差がありすぎる。あっという間に見失い、諦めて外に出ようとして、ギルバートとかち合った。
「君たち、どうしてこんなところ?」
「お兄ちゃん!! そっちに男の子来なかった!?」
まだおかんむりのリディアは、外で待てと言われたことなどすっかり忘れているようだ。面食らった様子のギルバートに気付かず、勢いよくまくし立てる。
「ひどいんだよ!
 助けてあげたのに、お礼もいわないで逃げてったの!
 あたし、もうちょっとで転んじゃうところ──」
「待ってくれ!
 城の者が……生き残りがいたのか!?」
「え? うん、あの、そうじゃなくて」
「下の、中庭の南側の廊下にいた。瓦礫に隠れていて見つからなかったらしい」
強い調子でさえぎられ、逆に驚く少女に代わって、セシルが事の次第を説明する。ギルバートの顔に喜色が浮かび、そしてセシルは、自分が感じていた引っかかりの正体を知った。
彼はこの国の王子だ。ダムシアンの人間でもないセシルに手を貸し、見ず知らずの女性を救うよりも先に、やらなければならないことがある。
「ギルバート、やはり君は……」
──だから。リディアが気付いたあの少年の気配を、彼は感じなかった。
生存者を探そうともせず、さっさと城から出ようとした。
惨禍に心を痛めるふりをして、結局はローザと、彼女を助けたい自分のことしか頭になかった。
臆病で我が身がかわいい暗黒騎士。一度や二度命令に逆らったぐらいで、都合よく変われやしない。
「君は……」
異様な空気を察した二人がセシルの顔を注視する。後に続く言葉を、なんとかして外に押し出そうとした。
ギルバートは、ここに残らなければならない。
だけどローザが。
「殿下。
 これは一体、如何なる仕儀にあらせます」
結局は口を噤んだセシルを、まるで叱責するかのように、厳めしい声が彼の背を打った。
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